欧州には「おひとり様」外食する習慣がない理由とは。

「どこまで’’おひとり様’’で行動できるか?」というトピックは、SNS上や友人との会話内でしばしば登場する。筆者は長い間一人で海外を旅し、数ヶ国を転々と滞在しているが、諸外国の人々に比べると、日本人は概しておひとり様での行動範囲が広い民族だと感じる。日本社会はおひとり様にかなり寛容だ。
 特に欧州は個人主義のイメージが根強いが、実際には一人行動を嫌がる人はすごく多いし、一人で行動する人間を前提として社会が構築されていない。いわば「おひとり様天国」の日本と「おひとり様不毛地帯」である欧州。特に違いが顕著なのは「一人で外食すること」に対する人々の感覚だ。今回は筆者が実際に長期間滞在したフランス、ポルトガル、ジョージアの三ヶ国において、一人で外食する文化がどれだけ希薄か紹介していく。そして、なぜ欧州の人々が一人で外食をすることをここまで避けたがるのか考えていきたい。

カフェは一人でも利用するけれど…

 続いては、ユーラシア大陸最西端のポルトガル。ポルトガルにもフランスに負けないほどのカフェ文化が根付いており、「カフェ=一人で利用する場所」という感覚はフランス以上に強いかもしれない。
 また、ポルトガルは全体的にとてもゆっくりした国だ。時間にアバウトな人も多いため、待ち合わせ時間に相手が遅れた場合の時間潰し用の場所としてカフェが機能しているのは、なんともポルトガルらしい。
 そんなポルトガルでも、外食に対する感覚はフランスに近いものがある。「カフェは一人で利用するものだが、食堂やレストランで食事をするのは複数人で」という暗黙の了解が、ここでも根付いている。

一人客はだいたいが常連
 ポルトガルのカフェは食堂の役割を兼ねている場合も多く、食事メニューも充実している。日本で言う「日替りランチ定食」のようなセットメニューが用意されている場合もあり、スープ、ワイン、メイン、デザート、コーヒーが数十分おきに順番に運ばれてくるものだ。 こちらは一人でも注文できるし、量も一人客を前提としている。
 しかしながら、いくらポルトガルで日替りランチが一人でも注文しやすいとはいえ、食事目的でカフェに足を運ぶ客の圧倒的多数は複数人だ。一人客はだいたい店の近所に住む常連客で、店の人とお喋りしながらのんびりと食事を楽しみに来る人ばかり。しかも一人客はほぼ100%が高齢男性で、若い男性一人や女性一人で日替りランチをゆっくり楽しむ人というのは、筆者は見たことがない。

時間を持て余してしまうことも
 ポルトガルの飲食店は、日本人の感覚からすると信じられないほどに提供に時間がかかる。スープを飲み終わってからメインが提供されるまで30分以上待つことは普通だ。そしてメインを食べ終えるとデザートが来るまでもう30分…といった具合なので、一人だとどうしても時間を持て余してしまう。だからこそ複数人で来た客は料理を待ちながら会話を楽しむし、一人客も店の人や他の客とお喋りしたがるのかもしれない。
 フランスに比べればまだ一人での外食に寛容なポルトガルであっても、「外食=コミュニケーションの場」という感覚が強いのだ。

そもそも一皿の量が多い
 最後に紹介するのが、ヨーロッパの東の端に位置するジョージア。この国においても「一人で食事をする」という文化はかなり薄い。
 食堂やスタローヴァヤ(ソ連時代に広まった労働者用の大衆食堂)に足を運べば、一人で食事をしている人も見かける。しかしこちらも女性一人客の姿はいっさいなく、男性率100%だ。
 食堂以外のレストランや居酒屋においては、老若男女問わず、一人で利用している客を見かけることはない。ジョージアのレストランでは、数人で数皿の料理を注文してシェアする食事スタイルが前提とされているため、一皿の量がとても多い。そもそも一人客が食事に来ることを想定していないのだ。
 そんな空間に外国人が一人で食事しようと足を踏み入れると、まず店の人に「どうして一人で……?」とでも言いたそうな不思議な顔をされる。そして他の客たちによる「どうして一人で……?」の視線をも浴びることになる。
 中には「一人で食事に来ている外国人=話し相手が居なくてかわいそう=一緒に飲み食いしてあげよう」と考える人もいて、自分たちのテーブルに招いて一緒に食事することを提案してくれる人もいる。それはそれで嬉しいのだが、正直困る場合もある。誰にも邪魔されずに好きな店で食べたいものを食べるために、こちらはわざわざ一人で店に来ているのだから。

一人でもOKな場所とNGな場所の線引き
 ジョージアの場合もフランスやポルトガルと同様に、一人でもOKな場所とNGな場所の線引きが人々の間にある。ワイン発祥の地としても知られるジョージアでは、外での食事の場においてアルコールがセットであることも多く、「外食=数人で食卓を囲んでお酒とともにワイワイ長時間楽しむもの」という感覚がとても強い。「一人ぽつりと無言のままさっと食べたいものを食べる」という概念自体がないのだ。
「ラーメンも牛丼もビュッフェも一人で行けるし、むしろ一人で食事する方が食べたいものが食べられて、いろいろと煩わしさがなくて良い」と考える筆者にとっては、欧州における「飲食店=複数人で利用する場所」という見えない圧は、とても堅苦しいものに感じられる。人々のおひとり様外食に対する拒否感についても「いったい一人で食事することの何がそんなに嫌なのだろう?」と疑問に感じる。

外食における目的の違い
 日本では「外食=美味しいものを食べるための行為」だ。その場に他者が介在しようがしまいが関係ない。自分自身を満足させるために食べたいものを食べること、それが外食の最大の楽しみであり、最大の目的だろう。
 一方の欧州では「外食=家族や友人や恋人と美味しいものを囲みながら仲を深めるための行為」だ。自分が食べたいものや料理の美味しさは言わば二の次で、気の置けない関係の人物たちと楽しい時間を過ごすための場と言えるかもしれない。
 だからこそ、フランスでは一回の食事を一時間や二時間もかけてお喋りしながら楽しむし、外食の際の待ち時間が長いポルトガルでは、お喋りしながら前菜やチーズをゆっくりとつまむ。ジョージアではひたすらにワインを飲み交わしながら数皿の料理を全員で分け合う。

欧州における同調圧力
 こうした文化圏における外食という行為は、他人と同じ時間を過ごすための装置として存在していると言えるかもしれない。そのあたりが、自分が食べたいものを食べることが外食の第一の目的となっている日本とは大きく異なるのだ。
 なので欧州では、コミュニケーションをするための場である飲食店に一人で来て黙々と食事をする人というのは、場違いと思われてしまう。人々も周りにそう思われたくないから一人での外食を避けるようになる。一人で食事する客がいないから日本のような一人客メインの外食システムがなかなか発展しない……といったように、
一人外食をしない文化が現在の欧州で形成されたのではないかと筆者は考える。
 今回は「一人で外食すること」に焦点を当てたが、欧州のおひとり様嫌いは食事の場面だけにとどまらない。映画などのエンターテイメントや旅行などのレジャーにおいても、「一人ですることではない」といった見えない同調圧力のようなものが欧州には強く存在している。
 普段日本で生活する中で意識することはあまりないかもしれないが、世界的に見ても日本はおひとり様にかなり寛容な社会であると言える。自分が好きなときに好きなことを誰に気を遣うでもなく一人でできる日本の自由さが、筆者は時々とても恋しくなるのだ>(以上「現代ビジネス」より引用)




じつは「おひとり様」嫌いなヨーロッパ…日本との「決定的な違い」があった」とは何だろうかと、小山 のぶよ(翻訳家・ライター)氏の文を読んだ。そうすると「食事をする文化」の違いだと分かった。
 欧州人は「外食をする=仲を深める」ための時間だという。ポルトガルなどでは注文してから食事が提供されるまで30分も時間がかかるのは普通だという。そして食事が済んでからデザートが出るまでも30分ほどかかることを覚悟しなければならない。そうすると「おひとり様」では手持無沙汰になる、という塩梅だ。だから外食には仲間と行ってワイワイと会話を楽しむということになる。

 ただ居酒屋などでは「常連の男性」が「おひとり様」で訪れることはあるという。しかし、そこでも女性の「おひとり様」はまず見かけないそうだ。女性が「おひとり様」で訪れると、他のテーブルの客から「一緒に食事しよう」と誘われる。だから日本の「おひとり様」の女性客でも気にしない「外食文化」は気兼ねしないで良い、と小山氏は書いている。
 欧州人でもないし女性でもないから私には解らないが、欧州人女性にも「おひとり様」で外食したい時があるはずだが、そんな時はどうしているのだろうか。

 欧州文化といえばそうだろうが、欧州は一つの大陸に様々な民族と国々が存在していることから「おひとり様」を阻む「同調圧力」が自然と働くのかも知れない。なぜなら、かつて欧州諸国は陸続きに他民族の国家をお互いに攻撃し合った長い歴史があるからではないか。
 見知らぬ一人がレストランで食事するのは「自然」ではない。ことに女性が一人で外食するのは自然ではない、と見られるのではないか。それに対して、日本は島国で概ね単一民族だから「大きな家族」のようなものだ。だから群れていようと、おひとり様でいようと、他の日本人は気にしない。なぜなら何処にいようと誰といようと、日本人は大きな日本という家族の一員だからだ。

 小山氏によると「欧州のおひとり様嫌いは食事の場面だけにとどまらない。映画などのエンターテイメントや旅行などのレジャーにおいても、「一人ですることではない」といった見えない同調圧力のようなものが欧州には強く存在している」という。ソロ・キャンプを楽しむ者にとっては厄介な同調圧力だ。
 私たちは気付かないが「世界的に見ても日本はおひとり様にかなり寛容な社会であると言える。自分が好きなときに好きなことを誰に気を遣うでもなく一人でできる」自由が日本にはあるという。郷に入っては郷に従えというが、欧州を旅行する時は「おひとり様」の外食を楽しむのは同調圧力を無視しないようにしたい。

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