トランプ氏の二期目に期待する。
<打つ手が読みやすい
1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に就任した。
アマゾン、メタ、マイクロソフト、それにアップル,グーグル、TIKTOKのトップまで、これまで反トランプだった人物まで加わって、テクノロジーの巨人が集結した就任式は、トランプ氏自ら語ったように、「アメリカの完全復活と常識の革命」の幕開けを内外に宣言する舞台となった。
筆者は、あらためて「トランプ大統領の再登板で良かった」と感じたものだ。まず、トランプ氏の場合、打つ手が読みやすい。
もちろん、その言動に懸念はある。トランプ氏の政治方針の基軸は、言うまでもなく「アメリカファースト」であり、徹底した「反中」であり、また官僚機構や進歩的勢力への「報復」である。
事実、トランプ氏は大統領就任前から、デンマークの自治領であるグリーンランドの獲得に並々ならぬ意欲を見せ、1999年にパナマに委譲したパナマ運河の管理権奪還にも、「軍事力」までちらつかせながら言及してきた。
いずれも「対中国」や「対ロシア」を意識したもので、グリーンランドで言えば、レアアースの鉱床もあるため、ここを手に入れられれば安全保障と資源の両面でアメリカの国益にかなうことは間違いない。
他メディアも報じているとおり、トランプ氏は就任後、さっそく数々の大統領令に署名し、バイデン前政権で出された大統領令78本を取り消す文書をはじめ、パリ協定から脱退する文書、議会襲撃事件で有罪となった人たちに恩赦を与える文書に署名した。このほか、これまでのエネルギー政策を見直し、新規の石油・ガス採掘に乗り出す考えなども明確にした。
これらの中には「不適切にもほどがある」と言いたくなる政策もあるが、「アメリカファースト」「反中」「報復」という3つの基軸は明確に示されている。日本にとってみれば、トランプ氏の狙いは分かりやすいという点で、事前に対処しやすいとも言える。
「トランプの暴走、幕開けに大混乱に陥る世界…それでも「日本にとって良かった」と言える4つの理由」と清水 克彦(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授)氏はトランプ登場を歓迎している。
1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に就任した。
アマゾン、メタ、マイクロソフト、それにアップル,グーグル、TIKTOKのトップまで、これまで反トランプだった人物まで加わって、テクノロジーの巨人が集結した就任式は、トランプ氏自ら語ったように、「アメリカの完全復活と常識の革命」の幕開けを内外に宣言する舞台となった。
筆者は、あらためて「トランプ大統領の再登板で良かった」と感じたものだ。まず、トランプ氏の場合、打つ手が読みやすい。
もちろん、その言動に懸念はある。トランプ氏の政治方針の基軸は、言うまでもなく「アメリカファースト」であり、徹底した「反中」であり、また官僚機構や進歩的勢力への「報復」である。
事実、トランプ氏は大統領就任前から、デンマークの自治領であるグリーンランドの獲得に並々ならぬ意欲を見せ、1999年にパナマに委譲したパナマ運河の管理権奪還にも、「軍事力」までちらつかせながら言及してきた。
いずれも「対中国」や「対ロシア」を意識したもので、グリーンランドで言えば、レアアースの鉱床もあるため、ここを手に入れられれば安全保障と資源の両面でアメリカの国益にかなうことは間違いない。
他メディアも報じているとおり、トランプ氏は就任後、さっそく数々の大統領令に署名し、バイデン前政権で出された大統領令78本を取り消す文書をはじめ、パリ協定から脱退する文書、議会襲撃事件で有罪となった人たちに恩赦を与える文書に署名した。このほか、これまでのエネルギー政策を見直し、新規の石油・ガス採掘に乗り出す考えなども明確にした。
これらの中には「不適切にもほどがある」と言いたくなる政策もあるが、「アメリカファースト」「反中」「報復」という3つの基軸は明確に示されている。日本にとってみれば、トランプ氏の狙いは分かりやすいという点で、事前に対処しやすいとも言える。
外交面でも早期の成果を狙う
2つ目の理由は、トランプ氏が成果を急ぎ、それに伴い、変化も早く表面化している点だ。
アメリカ国内で言えば、メタやマクドナルド、小売り大手のウォルマートなどが、トランプ氏の就任前から、バイデン前政権まで続いてきたDEI(ダイバーシティ=多様性、エクイティ=平等、インクルージョン=包摂性)を重んじる社会的な取り組みを方針転換させた。
この後戻りは、「自由の国、アメリカ」らしからぬ現象だが、トランプ氏の政治姿勢や彼を支持する保守層の考え方を先取りした動きとして注視しておきたい。
アメリカ国外で言えば、イスラエルとイスラム組織ハマスが、1月15日、パレスチナ自治区ガザでの停戦などで合意したことは特筆すべきだ。
何カ月もかけてバイデン前政権が交渉を続けてきた成果でもあるが、それ以上に、トランプ氏が中東担当として送り込んだスティーブ・ウィトコフ特使が、イスラエルのネタニヤフ首相ら当事者に「圧」をかけたことが功を奏した結果と言える。
その一方で、すでに3年近く続いているロシアとウクライナの戦争に関しては、さすがのトランプ氏も、「大統領就任後24時間以内に終わらせる」から「半年以内に終わらせる」と発言を後退させたが、ロシアのプーチン大統領は「トランプ氏と会談する用意がある」(12月19日)と明言している。
ロシアが置かれた現状を見れば、戦況ではロシアが優勢とはいえ、毎日1500人を超える将兵を失いながら、ウクライナのドネツク州1つ占領できていないのが実情で、この3年の間、ロシアの国防費は約8兆円から約20億円へと膨れ上がり、北朝鮮兵の援助なくしては優勢が維持できないほど厳しい状況に陥っている。
そうした中、ラブロフ外相が「どうなるか見てみよう」(12月30日)と、トランプ政権の出方に着目する発言をしたのは、国力が限界を迎えつつあるロシアとして、米ロ首脳会談での事態打開に期待をしているからだと思うのである。
当のトランプ氏自身も、関税や不法移民だけでなく外交面でも早期の成果を狙っている。
これは、2026年11月に中間選挙が控えていることに加え、通常であれば2期8年までしかできない大統領職について、「大統領任期を2期に制限する憲法条項は、連続せずに就任する大統領にも適用するとは書いてない」(スティーブン・バノン元首席戦略官)と解釈し、あわよくば3期目も、などと考えているからだ。
日本はトランプの「最初のターゲットではない」
3つ目は、トランプ氏が子どものような性格の持ち主で、夢中になっていることを最優先させるフシがあることだ。
「アメリカはあまりにも長い間、情けないほど弱い貿易協定を通じて世界の国々に成長と繁栄をもたらしてきた。我々は、アメリカとの貿易でもうけている外国の人々への課税を開始する」(トランプ氏のSNSより抜粋)
これは、自らを「タリフマン(関税男)」と称するトランプ氏が1期目から見せてきた本音で、今回も、すでにメキシコとカナダからのすべての製品に25%の関税、そして中国からの製品にも、現在の関税に加え10%の追加関税を課す方針を明らかにしている。当然、その火の粉は、日本にも降りかかってくる。
ただ、トランプ氏寄りのメディアとされるFOXテレビの元プロデューサーは、筆者の問いに、「今、トランプ氏が夢中になっているのは日本ではない」と指摘する。
経済同友会の新浪剛史代表幹事も、1月15日に開いた記者会見で、トランプ氏による関税強化の方針について、「アメリカの国別貿易赤字で日本は5番目。最初のターゲットではないと思う」との認識を示している。
トランプ政権は、議会承認を経た後、スコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、それにジェミソン・グリア通商代表部代表といった名うての保護貿易主義者が揃う。
トランプ氏の忠臣ばかりなので、日本だけ「見逃してくれ」は通用しないが、関税を強化すれば、アメリカの消費者物価も上昇するという副作用があることも理解している。
それ以上に、「彼が夢中になっているのはグリーンランドとパナマ運河、それに不法移民の締め出し」(前述のFOXテレビ元プロデューサー)であるため、日本政府や企業からすれば、高関税に備える時間ができたと考えていいだろう。
今後、日本の立ち回り方はどうか
このほか、トランプ政権が、経済が低迷する中国からの輸入品に高関税をかけて締め上げれば、習近平指導部はその対応に追われ、台湾統一どころではなくなるというメリットも生まれる。
中国は今、たとえば、上海では、「就職難に喘ぐ大学生が課題で書くレポートは、『私たちは、なぜこの時代に生まれてしまったのか』という怒りのテーマで溢れ、出生率も、将来を憂いて子どもを作らない傾向が強まり、過去最低の0.7%まで落ち込んでいます」(上海在住テレビプロデューサー)という惨状だ。
習氏が、2027年秋に予定される共産党大会で総書記として4選を果たしたいと考えるなら、まず国内経済を上向きにさせるため、トランプ政権と向き合うことが最優先課題になる。
日本について言えば、トランプ政権が石破政権に「守って欲しければ、駐留米軍への負担を増やし、日本も防衛費を増やせ」と迫ってくるなら、日本にとっては、長く続いてきた「対米重視」「軽武装」から自立する契機にもなる。
このように「トランプ氏で良かった」ことは多々あるが、筆者が4つ目の理由に挙げるのが、トランプ氏の話し相手が石破首相だけになってしまうかもしれないという点である。
この先、グリーンランド購入問題やウクライナ戦争などをめぐり、アメリカとヨーロッパの対立が予想される中、EUや英国などの中に、トランプ氏に正面から意見ができ、腹を割って話ができる首脳はほとんどいない。唯一、イタリアの女性宰相、メローニ氏くらいだ。
アメリカの政治学者、イアン・ブレマー氏は、2012年に出版した著書『「Gゼロ」後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか』(日本経済新聞出版社)で、アメリカの威信低下とG7やG20諸国の中でリーダー不在の現状を憂いてみせたが、まさにその状況が生まれてしまっている。
G7の中で、冷静に、しかも丁寧にトランプ氏と話し合うことができる素地を持っているのは石破首相だけかもしれない。
理詰めで話が長い石破首相とトランプ氏とではソリが合うとは思えないが、石破首相が自分が思っていることをストレートに言えるなら、2月前半に行われるとみられる日米首脳会談は成功し、防衛が専門の石破首相は、ある面、トランプ氏の軍師にもなれるのではないかと期待している。
トランプ氏は、日本の戦国大名に例えれば、織田信長タイプだ。比叡山焼き討ちという暴挙もあれば、常識にとらわれない考えの持ち主である。であるなら、石破首相は、徳川家康の立ち位置になればいい。
現在行われている大相撲初場所で例えれば、トランプ氏は、横綱級のパワーと平幕の宇良のような奇想天外な技を併せ持っている。であるなら、正面から受け止め、慌てず騒がず四つに組み、逆に「Make Japan Great Again」くらいのことを打ち出せば、雰囲気が和らぎ、日米関係強化への道筋も開けると思うのである>(以上「現代ビジネス」より引用)
2つ目の理由は、トランプ氏が成果を急ぎ、それに伴い、変化も早く表面化している点だ。
アメリカ国内で言えば、メタやマクドナルド、小売り大手のウォルマートなどが、トランプ氏の就任前から、バイデン前政権まで続いてきたDEI(ダイバーシティ=多様性、エクイティ=平等、インクルージョン=包摂性)を重んじる社会的な取り組みを方針転換させた。
この後戻りは、「自由の国、アメリカ」らしからぬ現象だが、トランプ氏の政治姿勢や彼を支持する保守層の考え方を先取りした動きとして注視しておきたい。
アメリカ国外で言えば、イスラエルとイスラム組織ハマスが、1月15日、パレスチナ自治区ガザでの停戦などで合意したことは特筆すべきだ。
何カ月もかけてバイデン前政権が交渉を続けてきた成果でもあるが、それ以上に、トランプ氏が中東担当として送り込んだスティーブ・ウィトコフ特使が、イスラエルのネタニヤフ首相ら当事者に「圧」をかけたことが功を奏した結果と言える。
その一方で、すでに3年近く続いているロシアとウクライナの戦争に関しては、さすがのトランプ氏も、「大統領就任後24時間以内に終わらせる」から「半年以内に終わらせる」と発言を後退させたが、ロシアのプーチン大統領は「トランプ氏と会談する用意がある」(12月19日)と明言している。
ロシアが置かれた現状を見れば、戦況ではロシアが優勢とはいえ、毎日1500人を超える将兵を失いながら、ウクライナのドネツク州1つ占領できていないのが実情で、この3年の間、ロシアの国防費は約8兆円から約20億円へと膨れ上がり、北朝鮮兵の援助なくしては優勢が維持できないほど厳しい状況に陥っている。
そうした中、ラブロフ外相が「どうなるか見てみよう」(12月30日)と、トランプ政権の出方に着目する発言をしたのは、国力が限界を迎えつつあるロシアとして、米ロ首脳会談での事態打開に期待をしているからだと思うのである。
当のトランプ氏自身も、関税や不法移民だけでなく外交面でも早期の成果を狙っている。
これは、2026年11月に中間選挙が控えていることに加え、通常であれば2期8年までしかできない大統領職について、「大統領任期を2期に制限する憲法条項は、連続せずに就任する大統領にも適用するとは書いてない」(スティーブン・バノン元首席戦略官)と解釈し、あわよくば3期目も、などと考えているからだ。
日本はトランプの「最初のターゲットではない」
3つ目は、トランプ氏が子どものような性格の持ち主で、夢中になっていることを最優先させるフシがあることだ。
「アメリカはあまりにも長い間、情けないほど弱い貿易協定を通じて世界の国々に成長と繁栄をもたらしてきた。我々は、アメリカとの貿易でもうけている外国の人々への課税を開始する」(トランプ氏のSNSより抜粋)
これは、自らを「タリフマン(関税男)」と称するトランプ氏が1期目から見せてきた本音で、今回も、すでにメキシコとカナダからのすべての製品に25%の関税、そして中国からの製品にも、現在の関税に加え10%の追加関税を課す方針を明らかにしている。当然、その火の粉は、日本にも降りかかってくる。
ただ、トランプ氏寄りのメディアとされるFOXテレビの元プロデューサーは、筆者の問いに、「今、トランプ氏が夢中になっているのは日本ではない」と指摘する。
経済同友会の新浪剛史代表幹事も、1月15日に開いた記者会見で、トランプ氏による関税強化の方針について、「アメリカの国別貿易赤字で日本は5番目。最初のターゲットではないと思う」との認識を示している。
トランプ政権は、議会承認を経た後、スコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、それにジェミソン・グリア通商代表部代表といった名うての保護貿易主義者が揃う。
トランプ氏の忠臣ばかりなので、日本だけ「見逃してくれ」は通用しないが、関税を強化すれば、アメリカの消費者物価も上昇するという副作用があることも理解している。
それ以上に、「彼が夢中になっているのはグリーンランドとパナマ運河、それに不法移民の締め出し」(前述のFOXテレビ元プロデューサー)であるため、日本政府や企業からすれば、高関税に備える時間ができたと考えていいだろう。
今後、日本の立ち回り方はどうか
このほか、トランプ政権が、経済が低迷する中国からの輸入品に高関税をかけて締め上げれば、習近平指導部はその対応に追われ、台湾統一どころではなくなるというメリットも生まれる。
中国は今、たとえば、上海では、「就職難に喘ぐ大学生が課題で書くレポートは、『私たちは、なぜこの時代に生まれてしまったのか』という怒りのテーマで溢れ、出生率も、将来を憂いて子どもを作らない傾向が強まり、過去最低の0.7%まで落ち込んでいます」(上海在住テレビプロデューサー)という惨状だ。
習氏が、2027年秋に予定される共産党大会で総書記として4選を果たしたいと考えるなら、まず国内経済を上向きにさせるため、トランプ政権と向き合うことが最優先課題になる。
日本について言えば、トランプ政権が石破政権に「守って欲しければ、駐留米軍への負担を増やし、日本も防衛費を増やせ」と迫ってくるなら、日本にとっては、長く続いてきた「対米重視」「軽武装」から自立する契機にもなる。
このように「トランプ氏で良かった」ことは多々あるが、筆者が4つ目の理由に挙げるのが、トランプ氏の話し相手が石破首相だけになってしまうかもしれないという点である。
この先、グリーンランド購入問題やウクライナ戦争などをめぐり、アメリカとヨーロッパの対立が予想される中、EUや英国などの中に、トランプ氏に正面から意見ができ、腹を割って話ができる首脳はほとんどいない。唯一、イタリアの女性宰相、メローニ氏くらいだ。
アメリカの政治学者、イアン・ブレマー氏は、2012年に出版した著書『「Gゼロ」後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか』(日本経済新聞出版社)で、アメリカの威信低下とG7やG20諸国の中でリーダー不在の現状を憂いてみせたが、まさにその状況が生まれてしまっている。
G7の中で、冷静に、しかも丁寧にトランプ氏と話し合うことができる素地を持っているのは石破首相だけかもしれない。
理詰めで話が長い石破首相とトランプ氏とではソリが合うとは思えないが、石破首相が自分が思っていることをストレートに言えるなら、2月前半に行われるとみられる日米首脳会談は成功し、防衛が専門の石破首相は、ある面、トランプ氏の軍師にもなれるのではないかと期待している。
トランプ氏は、日本の戦国大名に例えれば、織田信長タイプだ。比叡山焼き討ちという暴挙もあれば、常識にとらわれない考えの持ち主である。であるなら、石破首相は、徳川家康の立ち位置になればいい。
現在行われている大相撲初場所で例えれば、トランプ氏は、横綱級のパワーと平幕の宇良のような奇想天外な技を併せ持っている。であるなら、正面から受け止め、慌てず騒がず四つに組み、逆に「Make Japan Great Again」くらいのことを打ち出せば、雰囲気が和らぎ、日米関係強化への道筋も開けると思うのである>(以上「現代ビジネス」より引用)
「トランプの暴走、幕開けに大混乱に陥る世界…それでも「日本にとって良かった」と言える4つの理由」と清水 克彦(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授)氏はトランプ登場を歓迎している。
しかし「トランプの暴走、幕開けに大混乱に陥る世界」とは何だろうか。トランプ氏が大統領になった初日に大統領令にサインした主なものは以下の通りだ。
これらの何処に「トランプの暴走、幕開けに大混乱に陥る世界」をもたらす要素があると云うのだろうか。「米国ファースト」を打ち出した大統領として、極めて常識的な政治課題ばかりではないだろうか。 清水氏は奇しくも日本も「MJGA」を打ち出せ、と主張した私と同意見だ。トランプ氏と渡り合うには日本も「日本ファースト」を打ち出し、そのための取り組むべき政策課題を明確にして米国に関する部分は直接トランプ氏との会談で突き付けるべきだ。
トランプ氏は実務家だと書いた。実務家が最も嫌がるのは率直な意見ではなく、回りくどい謀略などだ。そうした意味で、日本の政治家向きの米国大統領ではないだろうか。なぜなら現在の政界を見渡して戦略的な国家運営を考えられるほどの「知の巨人」がいないからだ。
ただトランプ氏が掲げた政策で日本も採り入れるべきものが幾つかある。その最も重要なのはパリ協定からの離脱だ。日本の自動車産業を狙い撃ちしたパリ協定から離脱して、製造業を力強く蘇生させるためにCO2排出基準などでギューギューと搾り上げるべきではない。その代わり省エネ基準を設けて、結果として窒素酸化物などを含めたCO2などの日本独自の排ガス基準を設けて、国際的な新しい排ガス基準を設置すべきと提唱してCO2排出基準から転換する運動へ転換すべきだ。
移民に関しても米国の不法移民を祖国へ帰還させるのを批判するよりも、移民(難民を含む)はいずれ祖国へ帰還させる、という原則を設けるべきだ。つまり移民したとしても、それは一時的なもので本国へ復帰させるべきだ、という大原則を国際的な合意にすべく提唱する必要がある。さもなければ、中国から経済崩壊に伴って大量の中国人移民(難民を含む)が日本へやって来る事態が考えられるからだ。しかも中国人には中共政府が制定している国防動員法が適用され、日本国内で中国人による集団蜂起などの事態も考えられるからだ。
日本に駐留する米軍への負担増に関してトランプ氏から要求があれば、今後日本の負担を増やしたら駐留米軍は日本の傭兵と化すことを明確に伝達すれば良い。現在、駐留米軍で日本が負担していないのは米軍の給料だけだからだ。それまで負担すれば駐留米軍は日本の傭兵そのものになる。それでも良いのか、と反対に問い返せば良い。
さらに米国のポンコツ兵器は購入しない、と日本政府は伝えるべきだ。日本独自に開発しているジェット戦闘機(米国の介入を避けるために英国、伊国と共同開発の体になっているが、実質的には日本単独開発だ)やレールガンやレーザー砲などで専守防衛の装備を充実させるべきだ。そして極東の安定化のために米軍と自衛隊は対等なパートナーとして軍事協力することを明確化する必要がある。
関税に関して、日本の対米輸出品に重課するのなら、互恵主義に則り日本も米国の対日輸入品の関税引き上げを通告すべきだ。そして今度こそ日本国内の米作を全面的に奨励して、コメ粉のパン普及などを図るべきだ。
日本の漁獲量が年々少なくなっているのは一説に日本近海のCO2濃度が低下したからだと云われている。云うまでもなく、CO2は植物プランクトンが光合成をおこなう際の「餌」だ。それが少なくなれば食物連鎖の上位に位置する魚が減少する。だから漁獲量が減少しているという理屈だ。その原因は日本がCO2排出を厳しく規制したため、偏西風に乗って太平洋上へ吹く風の中のCO2濃度が低いため海水に溶解するCO2も減少したからだという。
ただトランプ氏に組しない政策課題も見られる。その一つが「メキシコ湾」の名を「アメリカ湾」に変えると云うものだ。国際的に定着している地名を勝手に変えるのは良くない。