CNNの大チョンボ。

<ドナルド・トランプ氏は2021年1月にアメリカ大統領を退任して以来ずっと、自分に好意的な右派メディアと熱心な支持者の集団に囲まれ、守られた状態で過ごしてきた。 ところが、2024年大統領選への立候補を表明しているトランプ氏は10日、そのバブル(安全圏)の外にあえて飛び出し、米CNNが中継する、90分間のタウンホール集会に登場した。

  CNNは、トランプ氏が繰り返しフェイクニュースだと非難していたメディアだ。そこに同氏が現れたことで、時に混沌(こんとん)とした状況が生まれた。それは、2016年にホワイトハウスへの道を荒々しく切り開いたトランプ氏を追いかけていた人なら、誰もがよく知っているものだった。 この夜の6つのポイントを紹介する。
 ■1)2020年を過ぎたことにできない 
 この日のイベントはCNNのケイトラン・コリンズ記者が司会を務めた。北東部ニューハンプシャー州に設けられた生放送会場の観客は主に共和党支持者で、無党派層も何人かいた。 トランプ氏が入場すると、観客はスタンディングオベーションで迎えた。 コリンズ氏からの最初の質問は、アメリカ人はなぜトランプ氏を再びホワイトハウスへ送るべきなのか、という自由回答が可能なものだった。
 トランプ氏は、民主党のジョー・バイデン大統領への批判を交えてこの問いに答えることも、自らの政策を紹介することもせず、すぐに2020年大統領選の批判を始めた。
 トランプ氏は、投票箱の細工や不正投票があったという、すでに否定された主張を蒸し返し、「八百長選挙」だったと言った。
 コリンズ氏が反論すると、トランプ氏は頭のいいコリンズ氏なら分かっているはずだと返し、コリンズ氏は何らかの思惑があって司会しているのだろうと非難した。 このやりとりは、トランプ氏の2024年大統領選立候補の主な動機が、2020年の敗北をほじくり返すことだと改めて示した。トランプ氏はそこから離れられないのだ。 トランプ氏の忠実な支持層にとっては、これは喜ばしいことかもしれない。だが、大統領選の本選挙の有権者は、そして共和党予備選の有権者の一部も、前に進むことを望んでいるかもしれない。 
■2)E・ジーン・キャロル裁判をあざ笑う 
 トランプ氏は、元コラムニストのE・ジーン・キャロル氏が起こした民事訴訟で9日に出た評決について、真正面から質問された。性的暴行と名誉毀損(きそん)を認定し、トランプ氏に約500万ドル(約6億7500万円)の損害賠償の支払いを命じたものだ(トランプ氏側は11日に控訴した)。 
 トランプ氏は、キャロル氏と一緒に写っている写真が出てきたにもかかわらず、同氏との接触を繰り返し否定した。「私は彼女を知らない。彼女に会ったこともない。彼女が誰なのかまったく知らなかった」と述べた。 続けて、キャロル氏の主張をあざ笑い、「フェイクニュース」と呼ぶと、会場の観客から笑いが起こった。 コリンズ氏はこの日のイベントで、さまざまなトピックでトランプ氏に答えを迫り、ある時は非常にいら立ったトランプ氏が「とても嫌な人」と呼ぶほどだった。しかし、観客は明らかにトランプ氏の味方だった。 トランプ氏は今なお共和党に圧倒的な影響力を持っていると、この夜の観客はまざまざと示していた。2024年大統領選の共和党候補指名をめぐり、トランプ氏と争おうとする対立候補は、さぞかし大変な思いをするだろうというのも、この夜の観客の様子から、生々しく想像できた。 集会の最後、トランプ氏は「みんなのことが好きだ」と観客に語りかけた。その気持ちは互いに共通していた。 
■3)債務上限問題への最後通告 
 ワシントンでは共和党と民主党の議員が、デフォルト(債務不履行)を回避するため、法的な債務上限の引き上げをめぐる緊迫した協議のただ中にある。 しかし10日夜のトランプ氏は、共和党が要求する多数の歳出削減に民主党が応じないなら、アメリカは史上初めて、債務の崖から飛び降りる必要があるのかもしれないと述べた。 
「大規模な歳出削減に(民主党が)応じないなら、デフォルト(債務不履行)もやむを得ない」と、トランプ氏は述べた。 トランプ氏の意見は、議会の一部の保守的な共和党議員の見解と一致する。連邦予算を修正しない限り、アメリカはすでにデフォルトと大惨事に向かっていると、共和党保守派は考えているからだ。 「いずれにせよ、デフォルトに陥ることになる」と、トランプ氏は述べた。「だが、はるかに散々な事態になるだろう」。 このメッセージは、一部の共和党員に支持されるだろうし、党内強硬派は確実に勢いを増すだろう。デフォルトはアメリカと世界に壊滅的な影響を及ぼすと、多くのエコノミストが警告している。その事態が来月現実のものとなる可能性が、今まさに高まったのかもしれない。 
■4)ウクライナ侵攻、誰の味方か明言せず 
 トランプ氏はもう何カ月も、自分が大統領だったらロシアがウクライナに侵攻することは決してなかった繰り返してきた。そして、自分が再び大統領に返り咲いたら、24時間以内にウクライナで和平を取りまとめてみせると。 CNNのイベントでも、トランプ氏は同じ発言を繰り返した。ただ、ウクライナ紛争で誰に勝利してほしいのか、回答を迫られたトランプ氏は、繰り返し明言を避けた。 
「私は勝ち負けではなく、事態を落ち着かせるという観点で考えている」とトランプ氏は述べた。「みんな死なないでほしい」。 また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ侵攻で間違いを犯したと思うとしつつ、戦争犯罪人というレッテルを貼るかという質問に対しては、そのつもりはないと答えた。 複数の調査では、米共和党員はウクライナの戦闘努力に対するアメリカの支援について、ますます不満を募らせていることが示されている。この日の観客たちは、ウクライナに関するトランプ氏の発言に繰り返し熱烈な拍手を送っていた。 一部の共和党議員やバイデン政権が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領への支援継続を約束しているとしても、トランプ政権2期目が実現すれば、アメリカのウクライナ政策は決定的に転換するだろう。このことは日に日に明らかになっている。 
■5)中絶をめぐる泥沼 
 保守的なキリスト教福音派の有権者にとって、トランプ氏の大統領としての最も顕著な功績の一つが、人工中絶をめぐるものだ。「ロー対ウェイド」判決で長年認められてきた中絶権の保障を連邦最高裁が昨年覆すに至ったのは、トランプ氏が複数の保守派判事を最高裁に送り込んだからだ。 CNNのイベントでトランプ氏は、これは自分の手柄だと主張した。ただ、中絶問題で次に何を望むかと問われると、繰り返し答えをはぐらかした。 連邦政府による禁止を支持するのか?  共和党が優勢ないくつかの州がそうしているように、妊娠6週目以降の中絶は制限すべきだと考えているのか?  それ以上か?  それ以下か?  
 コリンズ氏がいくら質問しても、トランプ氏は明確な答えを口にしなかった。そして、大統領としてこの問題を検討し、「全員にとって正しいこと」をすると言うにとどめた。 だが、こと中絶に関しては、アメリカ人全員が一様に幸せになるひとつの答えはない。 昨年の議会の中間選挙が共和党にとって予想を下回る結果に終わると、トランプ氏は中絶問題とそれに対する保守派の強硬な立場が、同党の票が伸びなかった原因だと考えていると述べた。 この夜のトランプ氏は、極力あいまいにしか答えないと、決めていた様子だった。 
■6)議会襲撃事件の恩赦 
 テキサス州で最近行った選挙集会で、トランプ氏は2021年1月6日の連邦議会襲撃事件の裁判を待つ勾留中の被告たちが国歌を歌うビデオを流した。その映像には、襲撃事件の映像や、トランプ氏が「忠誠の誓い」を暗唱している映像が挿入されていた。 この夜、トランプ氏は襲撃に加わった人たちへの共感を一段と強めた。 襲撃事件で有罪判決を受けた人たちの「多く」を恩赦すると約束。下院本会議場近くの部屋に侵入しようとして射殺されたアシュリ・バビット氏を改めてたたえた。そして、同氏を撃った議会警察の警官を「殺し屋」と呼んだ。 トランプ氏はさらに、事件当日の自らの行動を正当化した。抗議デモ参加者らに平和的な行動を呼びかけたことを示すとする発言やツイートが記載されている紙を数枚提示した。 トランプ氏が公職に就こうとする限り、議会での暴動と、その事件で同氏が果たした役割に関する疑問は、つきまとい続けることになる。 あの日に議会にいた議員らを含め、多くの共和党員はこの事件を、アメリカの歴史における暗黒の時とみなしている。そうした人たちは、あの日の意味をトランプ氏が変更しようとすることを、苦々しく受け止めるかもしれない>(以上「BBC news」より引用)




 トランプ氏がフェイクニュースだと批判して来たCNNに出演する、ということで通常は100万人程度の視聴者数が三倍の300万人に跳ね上がったという。CNNにとって「90分間のタウンホール集会」の決着はどうであれ、TV番組としては成果を上げたとみるべきだろう。
 同時にそれはトランプ氏にとっても大統領選に向けて有意義な宣伝作戦だった、というべきだろう。CNNはトランプ批判の急先鋒だった。かつてホワイトハウスからの中継を当時のトランプ大統領が演説中にも拘わらず中断するほどのタカ派だ。

 しかし報道機関が偏向した報道で世論を誘導するのはいかがなものだろうか。CNNは偏向していない、偏向しているのはトランプ氏の方だ、と主張するのは自由だが、そう主張する限りはトランプ氏に反論する機会を与えなければフェアーとはいえない。
 やっと、というべきかCNNは夕刻の看板番組にトランプ氏を登場させた。司会を務めたケイトラン・コリンズ記者は主として6項目でトランプ氏を吊るし上げようとした。その6項目は引用記事で番号が振ってあるからわかりやすいだろう。
■1)2020年を過ぎたことにできない 
■2)E・ジーン・キャロル裁判をあざ笑う
■3)債務上限問題への最後通告
■4)ウクライナ侵攻、誰の味方か明言せず
■5)中絶をめぐる泥沼 
■6)議会襲撃事件の恩赦 

 これらの項目についてケイトラン・コリンズ記者は執拗にトランプ氏を追い詰めようと試みたが、老獪なトランプ氏に躱され、却ってトランプ氏に得点を与えた印象が強い。2020米大統領選が不正塗れだったことは日本に暮らす私にも容易に理解できる。
 開票監視人がいなくなった深夜にバイデンジャンプが起きた怪奇現象は真摯に検証されるべきだし、一部選挙区では登録選挙人よりも投票数が上回る、という奇怪な事態が起きているが、その投票は「有効」とされた。そもそも郵便投票に「本人確認」の手続きがないのは選挙制度として不適切で採用すべきではない。

 E・ジーン・キャロル裁判に到っては「米国の司法制度はマトモか」と首を傾げざるを得ない。事件そのものは「1996年春にデパート「バーグドルフ・グッドマン」の試着室でトランプ氏からレイプされた」とE・ジーン・キャロル氏が主張している「話し」だ。
 だいたい、30年近く経った「性暴行罪」が裁判に問われるのだろうか。米国の「時効」に関して詳しくないが、概ねこうした犯罪の時効は五年ほどではないかと記憶している。そして私はデパート「「バーグドルフ・グッドマン」の試着室がどんなに豪華な密室か知らないが、E・ジーン・キャロル氏が試着している密室にトランプ氏が入り込んで「レイプ」したという「犯罪」だ。それほどの犯罪が行われてデパートの関係者は誰も警察を呼ばなかったのだろうか。それが30年近くの時を超えて突如としてニューヨーク州の判事が「事件化」して判決を下した。トランプ氏が「知らない」と云えば、E・ジーン・キャロル氏が客観的に実証する手立ては何もないように思える。

 6項目に関しては、私は何度もこのブログで取り上げた。トランプ氏がホワイトハウス前で支持者に「連邦議会を取り巻いて抗議しよう」と扇動演説をしたのは確かだが、演説の三分後には群衆が連邦議会へ突入している。どうやってホワイトハウス前から連邦議会まで三分で駆け付けたのだろうか。彼らはドラエモンの「どこでもドア」を持っているのだろうか。
 そして今年になってFOX・TVの番組で1月6日に連邦議会に突入した群衆が議会内で大暴れしているのではなく、当日の議会内の監視カメラには群衆が議会観光のように静かに見学して回っている様子が映し出された。暴徒が連邦議会へ乱入したというのはフェイク・ニュースだということが明らかになっている。

 CNNは図らずもトランプ氏本人に弁明の機会を与えた。これは素晴らしいことだ。本来、マスメディアはこうあるべきだった。テレビ局として偏向するのは自由だが、敵対する相手の発言機会を奪うのは報道機関として責任ある行動とはいえない。
 敵対するのであれば敵対する相手の言い分も、自分の主張と同量の時間を割いて視聴者に届けるべきだ。そして自分の主張が正しいと判断するのは自分ではなく、視聴者に委ねるべきだ。CNNがそうして来なかったは視聴者が愚かだから「結論」まで押し付けなければ判断を誤る、と考えたからだろう。CNNはトランプ氏をバカにしているつもりが、最も大事なCNN贔屓の視聴者をバカにしていたことになる。そうしたパラドックスに全米の主要マスメディアはやっと気付いたようだ。

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