習近平氏よ、亡命してはどうか。
<日本は〝第二の幕末〟に直面している。
林子平といえば、明治元(1868)年の82年前に脱稿した、「江戸の日本橋より唐、阿蘭陀(オランダ)まで境(さかい)なしの水路なり」という、著書『海国兵談』で知られている。
19世紀に入ると、日本の沿岸に外国船がやたらと出没して、徳川幕府はその対策に苦しんだものの、歴史上まれにみる泰平が続いたために、具体的な対策をとろうとしなかった。子平の『海国兵談』は、幕府の無為無策を正面から批判したものだった。
幕府が攘夷を唱えながら、西洋式の近代兵備を整えることを嫌ったために、子平は版木を没収され、蟄居(ちっきょ)となって幽閉中に憤死した。
日本は先の大戦に敗れて以来、76年にわたって米国鷲(アメリカン・イーグル)という親鳥の雛(ひな)のように守られてきた。中国の切実な脅威が迫っているというのに、泰平になれて政府も国民も右往左往(うおうさおう)するばかりで、具体的な対策をとろうとしない。
「東京・日本橋から、アフリカのサヘル地帯のニジェール川まで、境なしの水路が通じている」
といっても、読者にはサヘル、ニジェール川がどこにあるのかご存じないだろう。
サヘルはスーダンから大西洋岸のセネガルにいたる熱帯雨林地帯で、ギニアからマリ、ニジェール、ナイジェリアなどの諸国を洗う、全長4000キロのニジェール川が流れている。日本から約1万3000キロも離れている。
米軍はアフガニスタンから完全撤収したばかりだが、サヘルのニジェール、ブルキナファソ、マリが交わる国境地帯で、勢力を増すイスラム過激派に対して、1万人以上の米軍とフランス軍などが投入されて戦っている。
私はアフリカも専門としているから戦況を追っているが、イスラム過激派が中国製のミサイルなどを使って、米国やヨーロッパを攻撃した場合、アジア太平洋が手薄になってしまおう。
米軍が来援しないと他の諸国軍は、台湾、日本を救わない。
吉田松陰は、幕末の代表的志士だった。松陰は「時代が翔(と)が如(ごと)く」激しく動いているのに、幕府が「一日の安(あん)を偸(ぬす)むの論盛んにして、君臣将子必戦の覚悟未(いま)だ定まらず」と悲憤慷慨(こうがい)したが、安政の大獄によって投獄され、明治元年の9年前に刑死した>(以上「夕刊フジ」より引用)
日本が第二の開国に直面しているとは一つの歴史観だが、開国ではなく何度目かの戦争の危機に直面しているというべきではないか。引用した加瀬英明氏(外交評論家)の論評は歴史ロマンの香り漂うものだが、現実はもっと激しい国際的な駆け引きの修羅場だ。
林子平といえば、明治元(1868)年の82年前に脱稿した、「江戸の日本橋より唐、阿蘭陀(オランダ)まで境(さかい)なしの水路なり」という、著書『海国兵談』で知られている。
19世紀に入ると、日本の沿岸に外国船がやたらと出没して、徳川幕府はその対策に苦しんだものの、歴史上まれにみる泰平が続いたために、具体的な対策をとろうとしなかった。子平の『海国兵談』は、幕府の無為無策を正面から批判したものだった。
幕府が攘夷を唱えながら、西洋式の近代兵備を整えることを嫌ったために、子平は版木を没収され、蟄居(ちっきょ)となって幽閉中に憤死した。
日本は先の大戦に敗れて以来、76年にわたって米国鷲(アメリカン・イーグル)という親鳥の雛(ひな)のように守られてきた。中国の切実な脅威が迫っているというのに、泰平になれて政府も国民も右往左往(うおうさおう)するばかりで、具体的な対策をとろうとしない。
「東京・日本橋から、アフリカのサヘル地帯のニジェール川まで、境なしの水路が通じている」
といっても、読者にはサヘル、ニジェール川がどこにあるのかご存じないだろう。
サヘルはスーダンから大西洋岸のセネガルにいたる熱帯雨林地帯で、ギニアからマリ、ニジェール、ナイジェリアなどの諸国を洗う、全長4000キロのニジェール川が流れている。日本から約1万3000キロも離れている。
米軍はアフガニスタンから完全撤収したばかりだが、サヘルのニジェール、ブルキナファソ、マリが交わる国境地帯で、勢力を増すイスラム過激派に対して、1万人以上の米軍とフランス軍などが投入されて戦っている。
私はアフリカも専門としているから戦況を追っているが、イスラム過激派が中国製のミサイルなどを使って、米国やヨーロッパを攻撃した場合、アジア太平洋が手薄になってしまおう。
米軍が来援しないと他の諸国軍は、台湾、日本を救わない。
吉田松陰は、幕末の代表的志士だった。松陰は「時代が翔(と)が如(ごと)く」激しく動いているのに、幕府が「一日の安(あん)を偸(ぬす)むの論盛んにして、君臣将子必戦の覚悟未(いま)だ定まらず」と悲憤慷慨(こうがい)したが、安政の大獄によって投獄され、明治元年の9年前に刑死した>(以上「夕刊フジ」より引用)
日本が第二の開国に直面しているとは一つの歴史観だが、開国ではなく何度目かの戦争の危機に直面しているというべきではないか。引用した加瀬英明氏(外交評論家)の論評は歴史ロマンの香り漂うものだが、現実はもっと激しい国際的な駆け引きの修羅場だ。
日本は戦後76年間幸いにして戦争の巻き込まれなかったが、熾烈な東西冷戦の最前線で否応なく冷戦の影響を受けて来た。その責任は冷戦を演じたソ連と米国にある。彼らは第二次大戦後に「連合国=国連」という国際機関により世界平和を樹立する、という国連憲章の下で代理戦争を繰り広げてきた。
そしてソ連が崩壊した後の世界に、経済力を背景とした中共政府の中国が台頭して、米国と覇権を争う愚挙に出た。中国の経済成長を促すために日米をはじめ欧州諸国が力を注いだのは軍事大国を出現させるためではなかった。
世界随一の人口を抱える中国が経済発展に伴い民主化する、との期待の下に欧米自由主義先進国は資金や技術などの投資を積極的に中国に投資した。しかし経済力を獲得した中共政府は愚かにも「戦狼外交」に舵を切った。習近平氏は「一帯一路」や「新シルクロード」といった軍事戦略を衣の下に纏った海外投資を行って、中国の世界に対する影響力を増強した。
しかし、それが何になるというのだろうか。中共政府の中国は先進自由主義国が創設したWTOに加入して、先進自由主義諸国の投資を受け入れる一方で、生産工場進出や先進各国の研究機関などから研究成果を剽窃して自国の科学技術の確立に努めた。
すべては先進自由主義諸国に「おんぶに抱っこ」の状態で、やっと先進諸国の仲間入りを果たした中共政府の中国が、いきなり「俺が世界の親分だ」と息巻いたから変なことになった。「それなら勝手にしろ」と突き放すと、「俺の膝下には百を超える乾分の国々がいるから、世界は俺のものだ」と習近平は胸を張った。
世界には中共政府の習近平氏を真似る独裁者がゴマンといて、敢えて中共政府の投資の罠に嵌って莫大なインフラ投資を受け入れて、中共政府の乾分を装っている国々がゴマンとある。が、かれらも習近平氏と同様に一筋縄ではいかない。飛んだ食わせ者ばかりだということはアフリカなどの国々で「金の切れ目が縁の切れ目」とばかりに中国離れを早々と演じ始めたことからも明らかだ。
日本が直面しているのは第二の開国ではない。それは独裁専制体制の崩壊と、その断末魔の余波が日本に及ばないかといった危機感だ。経済政策を失敗した習近平氏は長く持たないだろうが、彼の後を誰が継ごうと中共政府の「中国共産党一党独裁」政治体制は維持できないだろう。腹ペコになった国民が黙って餓死するとは思えない。中国は中国史が常にそうであったように内部から崩壊するのではないか。
加瀬氏がロマンの香り漂う歴史知識を披歴したが、彼が現在の状況を第二の開国と捉えているとしたら時代錯誤だ。歴史は常に不可逆的的だ。中国共産党の意匠を纏った集団独裁政権は民主主義国家の空気を吸った多くの中国民によって倒されるだろう。
習近平氏もスーパーマンではないし、不死身でもない。限られた命を生きている一介の人でしかない。いかに巨万の財宝を積み上げようと、彼の権力が補強されることはないし、むしろ国民の反感を買うだけだ。愚かな戦争ごっこは止めて、潔く米国へ亡命することをお勧めする。生涯か買っても使い切れない数兆円もの巨額預金を貯めているといわれる米国こそが習近平氏の安住の地ではないか。