経済を回す「GO TO キャンペーン」が経済を止める。
<新型コロナウイルスの感染が急拡大していることについて、日本医師会の中川俊男会長は18日の会見で、政府の旅行支援策「Go To トラベル」が「きっかけになったことは間違いない」との見解を示した。
中川氏は感染拡大とトラベル事業との関連性を問われ、「『Go To トラベル』自体から感染者が急増したというエビデンス(根拠)はなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いないと私は思っている。感染者が増えたタイミングを考えると関与は十分しているだろう」と話した。 東京都でこの日過去最多の493人の感染者が確認されたことについては、「第1波や第2波と違って若年者主体ではなく、中高年の割合が増えている」と懸念を表明。「コロナ慣れしないでください。甘く見ないでください」と国民に呼びかけ、今週末の3連休は「秋の我慢の3連休としてください」と訴えた。一方、加藤官房長官は「県をまたいだ移動について一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない」と述べた>(以上「朝日新聞」より引用) ついに一日当たり新規感染患者数が2,000人を超えた。東京都でも500人に迫る最大の感染患者を出した。
日本医師会の中川俊男会長は新型コロナウイルスの感染が急拡大していることについて18日の会見で「政府の旅行支援策「Go To トラベル」がきっかけになったことは間違いない」との見解を示した。しかし、医師会会長の見解に対して加藤官房長官は「県をまたいだ移動について一律に自粛を要請する必要があるとは考えていない」と述べた、というから驚く。
以前から私はこのブログで「GO TO キャンペーン」策は感染拡大のアクセルだと批判してきた。感染拡大策を「経済を回す」と称して推進しているが、それもすべての観光業者や飲食業者に等しく政策の恩恵が行き渡るものではなく、特定の手続きを踏んだ業者だけが恩恵を得られる「特異」な政策だが、結果として「経済を止める」ことになると警告してきた。
果たして全国的な感染拡大が起きて、飲食業者に営業時間短縮の「自粛」要請を出す地域が出て来た。東京都は小池知事が「検査を拡大したから感染患者が多く見つかっただけ」と能天気な発言をしていたが、一日当たり500人近い患者が発生しても小池氏にとっては「喉元」を過ぎた「熱さ」なのだろうか。
国民の健康と命を守る治世者は「熱さに懲りて膾を吹く」ようでなければならない。死者数がインフルエンザよりも少ないからOKだ、と嘯くお笑い芸人がいたが、彼らの親しい仲間の志村けん氏が亡くなったことを忘れたのだろうか。
死亡者数が少ないから問題ではない、というのなら殺人事件も放置すれば良い。交通事故もせいぜい年間4,000人未満の死者数だ。癌や心臓病と比較すれば「大したことない」のではないか。いや、年間3万人を超える勢いの自殺者の増加に対して、政治は一体いかなる対策を施しているのか。それも若い女性の自殺が急増している、というが、国会の審議会などで大問題として議論されたことがあるのだろうか。
今週末は3連休だ。早くから「GO TO トラベル」で遠隔地への旅行を計画している人たちに「中止にせよ」と強く警告しない政治家たちは感染拡大を推進している馬鹿な連中でしかない。なぜ感染症の蔓延に関して医師の意見に耳を傾けないのだろうか。
医師とは真逆の見解を述べる官房長官こそ問題ではないか。引用記事に「中川氏は感染拡大とトラベル事業との関連性を問われ、「『Go To トラベル』自体から感染者が急増したというエビデンス(根拠)はなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いないと私は思っている。感染者が増えたタイミングを考えると関与は十分しているだろう」」とある。直接的なエビデンスがないにしても、ある程度の相関関係があれば、それを病原として疑うのが慎重を期す医師の立場だ。しかし業界への配慮を見せる能天気な政治家は国民の健康と命など「経済を回す」ためには後回しのようだ。
経済を回す「GO TO キャンペーン」が経済を止めることになる。感染症の蔓延防止策で医師の警告を無視する政治家とは一体何だろうか。それほど政治家は偉く万能なのだろうか。
「検査と隔離」を拡大して、面的に抑え込むことが先決で、その間は地域を跨ぐ移動を最低限に制限すべきだ。それこそ最終的には都市閉鎖の措置に出なければならなくなり、本当に経済を止めざるを得なくなる。何度も書くが、飲食業界と観光業者だけで経済が回っているのではない。むしろそれらの業界は経済の主役ではなく、個人消費のパイの一部の分け前に与るバイプレーヤーでしかない。製造業や金融業などの経済の主役を止めてしまっては元も子もないことを忘れてはならない。