日本マスメディアは曲学阿世の輩の巣窟だ。

安倍晋三首相は11日の自民党山口県連会合で、平成24年に総裁選に出たときの志を抱き続けていることを訴え、立候補の意向を示した。だが、志は変わらずとも、6年前と現在とでは総裁選の構図も情勢も大きく異なっており、首相は圧勝を目指す決意だ。
 「邦家の為(ため)に正義を起こさんことを要す 雲となり雨となり天地を揺るがさんとす」
 首相は6年前、総裁選を迎えるに当たり衆院議員会館の事務所にこの言葉を掲げた。これは幕末の志士、高杉晋作が決起を決意した際のものである。
 この時、首相は5人の立候補者中、本命どころかよくて3番手だという見方が大勢の一挑戦者だった。自民党も野党時代で、総裁に選ばれても直ちに首相になれるわけではなかった。
 「6年前は谷垣禎一総裁(当時)の出馬断念があったが、今回はよーいドンで新しく総裁を選ぶのとは違う。現職がいるのに総裁選に出るというのは、現職に辞めろと迫るのと同じだ」
 首相は最近、周囲にこう語り、11年の総裁選で現職の小渕恵三首相に加藤紘一元幹事長が挑んだ際との類似性を指摘する。この時、小渕氏の不出馬要請に逆らい立候補した加藤氏とその側近らは、総裁選後に人事で徹底的に干された。加藤氏にはその後、首相の座をつかむどころか閣僚に就く機会も訪れなかった。
 選挙で現職首相を追い落とそうとするには、それだけ重い覚悟が必要となるのは間違いない。
 首相にしてみれば、国政選挙で自民党を前例のない5連続勝利へと導き、各種経済指標も向上させてきたうえ、外交面でも成果を挙げている自分を、何のために代えようというのか-というところだろう。
 6年前の総裁選では、党員票では石破氏の165票に対し、87票と大きく水をあけられた首相だが、首相は今回、党員票についても手応えを感じている。6年前は所属する派閥の長だった町村信孝元官房長官も立候補していたため、都道府県議らに十分働きかけができなかったが、今回はそうした縛りはないからだ。
 「(自分は党員票に強いという)石破さんの幻想は崩れるだろう。幻想だとはっきりさせられるという点では、総裁選があってよかった。首相は党員票、かなりいけると思う」首相陣営はこう自信を示し、圧勝に向けて着々と準備を進めている>(以上「産経新聞」より引用)


 実に不可解な「産経新聞」に掲載された論評だ。この論評を書いた阿比留瑠比氏を私は不明にして知らないが、阿比留氏は経済のこともお分かりでないようだ。
 論評中に「5連続勝利へと導き、各種経済指標も向上させてきたうえ、外交面でも成果を挙げている自分を、何のために代えようというのか」と書いているが、経済指標で改善されているのは株価と失業率だけだ。

 確かに国民を作為的にミスリードしようとしているマスメディアが流している「いざなぎ景気以来の長期好況」という現状認識は財務官僚の会見をそのまま活字にしたのだろうが、そこには実質経済と名目経済というレトリックを巧みに使い分けた「作為」がある、と分析して示すべきがマスメディアの役目ではないだろうか。
 確かに名目で見れば経済は僅かながらプラスだ。「経済成長している」といえなくもない。しかし実質で見るなら「デフレーター」を加味して経済指標を見なければならない。つまり日本経済はアホノミクスによりデフレ化からの脱却に失敗して依然としてデフレ下にある。

 つまり国民所得は「減少」している。そして消費も「減少」している。ただそれ以上にGDPが「減少」しているから、GDPを基準とした名目上は所得が「増加」し、消費が「増加」している。こうした数字の上のレトリックをマスメディアは解説して、正しい現状認識を国民に報道すべきだ。
 しかし阿比留氏も含めてマスメディアに関わる人たちの不勉強なのか、あるいは財務官僚におもねているのか、財務省の発表通りの経済認識を報道している。断っておくが、株価が上がっているのは株式売買の70%を占める外国投機家たちによる「為替差益」見込み売買による変動に過ぎない。日本の株価が「円」為替によって上下するのはまさしくそうした現象からだ。景気判断の目安にはならない代物に日本の株価はなり下がっている。
 失業率が改善したのは団塊の世代がゴッソリと労働人口からいなくなったからだ。団塊の世代は同年人口が250万人を超えていた。それに対して新規に労働人口に参入して来るのは同年人口100万人程度だ。その差が失業率改善に役立っただけでしかない。つまり少子化による失業率改善ということでしかないのをマスメディアは国民に示そうともしない。マスメディアが腐り切っている、と私が断罪する所以だ。

 さらに阿比留氏は「外交面でも成果を上げている」と安倍世界漫遊記を評しているが、それなら具体的な外交の成果を列挙して頂きたい。
 就任から70ヶ国以上も世界を訪問したそうだが、彼がやったのは政府専用機を駆使して世界各国を漫遊してカネをばら撒いただけだ。喫緊の課題の「北朝鮮拉致問題」に関しては未だに金正恩氏と面会すら果たしてないではないか。トランプ氏におもねて擦り寄ったが、ポンコツ米兵器の押し売りと高関税を掛けられる、といった「成果」を得ただけだ。外交においても安倍氏は結果を何も残していない。

 これほど無能な総理大臣に日本国民は3年も耐えなければならないのか。原発も停止すると公約して選挙に勝って再稼働に勤しんでいる。いや、そもそも政権奪還選挙で「TPP絶対反対」と叫んだ人物が真っ先駆けてTPPに参加したではないか。まさしくグローバル化という米国の1%に日本を餌食として貢ぐ政策を推進しているのが安倍自公政権だ。彼の政治により国民の生命線というべき食糧安全保障はことごとく破壊されようとしている。これほどの亡国政権を私は知らない。

 そして北朝鮮の軍事的脅威をJアラートまで鳴らし、半島有事のXデーは○日だと騒ぎ立てたマスメディアは「国難」と銘打った選挙で自公が大勝すると北朝鮮の軍事的脅威に関してパタリと言及しなくなった。
 安倍氏は高杉晋作の言葉を総裁選決起の言葉として用いたようだが、チャンチャラおかしい。高杉晋作が功山寺で決起した当時、高杉晋作の許に駆け付けたのは伊藤俊輔(後の伊藤博文)率いる力士隊約20人と他藩脱藩浪士らを主体とする堀慎五郎率いる遊撃隊60余人の計83人に過ぎなかった。たったそれだけの手勢で俗論派に乗っ取られた長州毛利藩に戦いを挑む。高杉晋作は死を覚悟して「長州藩のためにはこうするしかない」と決死の覚悟で決起し、雪の功山寺に滞在していた三条実美卿に決意と根性の別れの挨拶に上がった。「邦家の為(ため)に正義を起こさんことを要す 雲となり雨となり天地を揺るがさんとす」との言葉に込められたのは悲壮なまでの高杉の決意だ。その言葉は劣勢でも敢然と立候補を決意した石破氏にこそ相応しい。

 そうした安倍氏が引用した高杉氏の言葉の背景すらも検証しないで漫然とした論評を書いて俸給が手に出来るとは、言論人とは余程気楽な稼業だ。すくして日本のマスメディアは国民の信を失い没落して行くのだろう。しかし国民をミスリードする情報操作だけは断じて許せない。

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