この国の最大の政治課題は超円高是正だ。
超円高是正のために政府と日銀は一体何をやって来ただろうか。この国のマスメディアは超円高がもたらす弊害について真面目な報道をして来ただろうか。実体経済と比してあまりに高い円で新卒者のみならず働き盛りの人たちから職場を失っていることに気付かないのだろうか。
関係ないかも知れないが不動産業界では安い地域の土地を安く仕入れて宅地開発するよりも高い地域の土地を高くても仕入れて宅地開発する方が多く儲かるし早く売れる、という常識がある。つまり宅地開発する費用は全国どこでも大して変わらないが売価に一定の利益率を見込むなら土地の値が高い地域の方が利益は多くなるし、土地が高い地域というのはそれだけ潜在需要があるのだから早く売れて資金回収も早いというのだ。
超円高では外国人各行旅行者が日本を敬遠するのは当然の行為だが、今が円の使いでがあるから海外旅行へ行くべきだ、と煽るかのようなキャンペーンを張るマスメディアには苦境に陥っている日本国内の観光業者の気持ちが分からないのだろう。
輸入品の価格が下がるから輸出品の価格は抑えられるだろう、という考える人は超円高が対外収支を赤字に振れさせる要因になることも理解できないだろう。
日本は本来加工貿易で資源のない国土で多くの国民が生きてきた。仕入れた素材を加工して海外に売って利益を得て食料を買って暮らして来た。それを米国から「内需拡大せよ、輸出要因となっている円の為替相場を切り上げる」との要請に従って政府と日銀は営々とやって来た。その結果としてGDPに占める貿易額は14%にまで落ち込んだ。円は国民生活に身の丈の2倍程度まで高くなっている。このままではデフレ経済構造はますます進むだけだ。一番怖いのはデフレ経済下の不況だ。現在はそうした状況下にある、という認識が税で食っている連中、つまり官僚や政治家たちに希薄なのが最大の問題だ。
かつて4年前に大統領に就任したオバマは100兆円を超える「グリーンニューディール」を断行して失業を輸出し、国内景気を改善し米国民100万人に職を創設する、と宣言した。日本の超円高は米国のドル安政策と背中合わせだ。日本政府と日銀が米国大統領の国内政策に協力して、日本国民に塗炭の苦しみの目にあわせているとしたら、この国の政治とは一体何だろうか。
確かに米国に日本は防衛を担ってもらっている。しかし、そうした体制を作ったのは米国だ。米国による日本支配の仕組みをGHQは日本国憲法の中に埋め込み、日本の軍事権を奪うことによって日本と日本国民を操って来た。軍隊を持たないで外国軍の駐留を受け容れているということは日本政府による独自政策実施を放棄しているということでもある。深刻な影響を国民に与えていることに光を当てない日本のマスメディアもまた米国の配下にある。
一体いつまで日本は米国の属国の位置に甘んじて、米軍の国内駐留を受け容れているのだろうか。日米安保ただ乗り論は大間違いだ。日米安保で日本は防衛経費が安上がりだったからその資金で経済成長できた、という飛んでもないおバカな論理だ。
米国の属国であり続ける保証として日本は大っぴらな軍需産業を放棄させられて来た。それにより失っている産業の経済効果のマイナスを検証したことがあるだろうか。同じように制限させられている航空機産業も然りだ。そろそろ米国支配の呪縛から自らを解き放して世界の「普通の国」へ向かって進むべきではないだろうか。
だから直ちに日米安保を廃棄しようというのではない。駐留なき日米安保体制へ移行し、日本国防衛は一義的に日本国民が担う体制に移行することだ。その費用は米軍に対する思いやり予算を回せば良い。軍の装備品も国内生産すれば現行の半値以下になるのは明らかだ。新しい産業が起こり技術革新の芽も新分野から出て来るだろう。首都圏といういわば喉元に匕首を突き付けられているような駐留米軍の基地展開をみると、とても独立国家とはいえないだろう。いつでも米国は好きな時に日本を制圧できる軍事体制にある。
為替相場は経済での対外戦争だ。プラザ合意以来、日本は一方的に米国の言いなりになって来た。この間、日本が失った国富は想像を絶する額にのぼるだろう。そろそろ経済面だけでも日本は米国の属国から脱しても良いのではないだろうか。日本国民の一人一人が日本の国家経営戦略について真剣に考えなければならない。いつまでも「あなた任せ」では当のあなたが裏切った時に立ち直れない国家になり果てている可能性すらあることを忘れてはならない。