政治は国家と国民のためにある。政治家のためにあるのでも、官僚のためにあるのでもない。

<インフレの波が生活の隅々にまで及ぶ中、食卓に欠かせない「コメ」も例外ではない。価格高騰が続き、消費者の負担は増す一方だが、その裏には単なる需給の問題では語れない、日本の農政の深い闇がある。なかでも象徴的なのが、数百パーセントとも称されたコメ関税──その数字は、果たして現実を反映していたのだろうか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が、農政に潜む欺瞞を徹底的に問う。

ホワイトハウス報道官が日本の市場障壁を強く非難
 アメリカのドナルド・トランプ大統領は、日本の貿易慣行、特に農産物に対する関税について、繰り返し厳しい姿勢を示してきた。その象徴的な例が、2025年3月11日、ホワイトハウスのレビット報道官が記者会見で日本のコメ関税を名指しで批判した一件である。レビット報道官は、各国の関税率を示す資料を手に、「日本がコメに課している関税は700%だ」と断じ、「トランプ大統領は相互主義を信じている。彼が求めているのは公正でバランスのとれた貿易慣行だ」と述べ、日本の市場障壁を強く非難した。 
 この「700%」という数字は、日本のコメ関税の実態とは大きくかけ離れている。日本はミニマムアクセスとして年間約77万トンの米を無関税で輸入しており、その最大の供給国はアメリカである(2023年度実績で34万トン超)。この枠外の輸入には1キロあたり341円の従量税が課される。農林水産省は過去、WTO交渉において特定の低い国際価格を基準に「778%相当」と説明した経緯があるが、それはあくまで限定的な状況下での試算に過ぎない。

日本のコメ関税の仕組みは複雑怪奇
 なぜこのような誤解、あるいは意図的な数字の利用を招く土壌が存在するのか。その根源には、日本の農政を司る農林水産省、長年政権を担ってきた自由民主党による、国民、特に農家に対する長年にわたる悪質な欺瞞、姑息な情報操作が存在する。  日本のコメ関税の仕組みは複雑怪奇に設計されている。政府、農水省はしばしば「日本のコメ関税は極めて高く、外国産米の流入を鉄壁に防いでいる」と説明してきた。「100円の外国産米は関税で877円になる」といった説明がなされ、778%という数字が独り歩きした。  しかし、当然ながら、この説明は完全な「まやかし」であった。実行関税は1キログラムあたり341円という「従量税」が基本であり、「778%」という異常な高率に見えたのは、比較対象となる国際価格が極めて低かった特定の時期の計算に過ぎない。重要なのは、関税が「割合(%)」ではなく、「決まった金額(円)」で設定されている点である。輸入される米の価格が上昇すれば、この固定額関税の負担率は相対的に低下する。

“778%関税”は虚構だった──農水省が操作した数字の正体
 この農水省と自民党による長年の欺瞞は、白日のもとにさらされることになる。当時はあまり問題にならなかったようだが、2013年の日本経済新聞の記事は、その動かぬ証拠として永久保存版だ。  日経新聞は2013年11月15日付の記事「輸入米関税『778%』から『280%』に 農水省が見解修正」で、農水省がコメ輸入関税1キロ当たり341円を税率換算で778%としてきた見解を、突如「280%」に修正したと報じた。その理由は「コメの国際相場が大幅に上昇する一方、国産のコメ価格は落ち着いており内外価格差が縮小している」ためだという。記事によれば、農水省は2005年のWTO交渉時に当時の国際相場(1キロ44円弱)を基準に778%と算出していた。しかし、2013年に09年の相場(1キロ122円)で再計算した結果「280%」になったというのだ。 
 この記事が暴露しているのは、農水省と自民党がいかに恣意的に、都合の良い数字だけを国民に見せてきたかという事実である。「778%」という数字は、あくまで特定の低い国際価格を基準とした計算上の値に過ぎなかった。国際価格が変動すれば変わるはずの数値を、あたかも固定された鉄壁の関税率であるかのように長年説明し続けてきた。そして、国際相場が上昇し、内外価格差が縮小して「778%」という数字の根拠が薄れると、今度はTPP交渉を目前に控えたタイミングで、過去の相場を持ち出して「280%」という新たな数字にこっそりと見解を修正する。これは、国民、特に「778%」を信じてきた農家に対する完全な裏切り行為である。国際情勢の変化に応じて数字が変わるのは当然かもしれない。問題なのは、その事実を正直に説明せず、常に自分たちの政策に都合の良い数字だけを選び出し、プロパガンダとして利用してきたその不誠実極まりない姿勢である。

全てを知りながら国民を騙し続けてきた与党
 日経記事はさらにこう指摘する。 「コメの関税を巡っては、関税額よりも税率に注目が集まり、国内の議論も778%の関税率をどの程度下げるかが議論になってきた。実態に即した280%の税率に見解を修正することは、今後のコメ交渉を巡る論議に影響が出る可能性がある」 
 まさにその通りである。農水省と自民党は、「778%」という幻の数字を盾に国内の改革論議を封じ込め、補助金漬けの現状維持を図ってきた。その一方で、TPPのような国際交渉の場では、実態に近い(それでもまだ高いが)「280%」という数字を使い分ける準備をしていた。この記事に登場する当時の自民党幹事長、石破茂氏の「(精米の関税率である)778%が唯一絶対のものではない」という発言は、与党中枢ですら「778%」が虚構であることを認識していた動かぬ証拠である。彼らは全てを知りながら、国民を騙し続けてきたのだ。

目先の票のために対外的な信用を犠牲にした
 この国内向けのプロパガンダ、農家を騙すための方便が、国際社会における日本の立場を危うくした。アメリカのような国が「700%」(元は778%)という数字を真に受け、不当な貿易障壁であると声高に批判する格好の口実を与えてしまった。自らが国内向けについた嘘が、ブーメランのように返ってきて、国際的な非難と貿易摩擦を引き起こす。これほど愚かで無責任な政策運営があるだろうか。農水省と自民党は、目先の票、組織の維持のためだけに、国家の対外的な信用、円滑な通商関係を犠牲にした。その責任は万死に値する。 
 さらに問題なのは、この「まやかし関税」が、日本のコメ政策の根本的な矛盾と怠慢を覆い隠す役割を果たしてきた点である。農水省と自民党は、「コメだけは自給率100%を維持する」という非現実的かつ硬直的な目標に固執してきた。そのためには、輸入米を可能な限り排除する必要がある。高関税はそのための重要な手段であった。しかし、国際価格の上昇、国内生産コストの高騰により、国内米価が上昇し続ければ、いずれ341円/kgの関税を払っても輸入米の方が安価になる状況が訪れる。そうなれば、「まやかし関税」のメッキは剥がれ、自給率100%目標も維持できなくなる。このリスクを農水省と自民党は十分に認識していたはずである。 
 にもかかわらず、彼らは根本的な対策を怠ってきた。国内農業の生産性を向上させ、コスト競争力を高める努力。あるいは、高品質な日本米を積極的に海外に輸出し、国内市場だけに依存しない構造を作る努力。さらには、関税の仕組みと日本の農業が置かれた真の状況を国民、特に農家に正直に説明し、現実的な政策目標へと転換を図る努力。これら全てを怠り、ただひたすらに「まやかし関税」と補助金による現状維持に固執してきた。国際社会の変化、市場原理の現実から目を背け、思考停止に陥っていた。そのツケが、国内価格の高騰、そして「700%関税」という国際的な誤解と批判なのである。

最大の被害者は言うまでもなく国民だ
 この欺瞞の最大の被害者は、言うまでもなく国民である。消費者は、実態以上に高く見える関税を根拠に、長年にわたり割高な国産米を購入させられてきた。農家は、「鉄壁の関税」という虚構の安心感を与えられ、真の経営改革や自立への努力を怠るよう誘導されてきた。保護されているようで、実はその保護自体が成長の機会を奪い、国際競争の激化という現実から取り残される原因となっていた。農水省と自民党は、消費者と農家の双方を裏切り、欺き続けてきたのである。 
 正直な情報公開をせず、一部の票田維持、既得権益の保護のためだけに、国の食料政策、通商政策を歪め、国民全体に不利益をもたらし、国際的な信用まで失墜させる。これが、農水省と自民党農政の本質である。「700%関税」というアメリカのミス、でなければ戦略的なプロパガンダを許したのは、まさしく、農水省と自民党がついてきた嘘のせいだ。日本の農政を支配する者たちが長年にわたって積み重ねてきた嘘、欺瞞、怠慢、そして国民を愚弄する姿勢が生み出した、必然的な結果なのである。 
 彼らに日本の食と農の未来を託すことなど、断じてできない。彼らが国民を欺いてきた罪は、決して許されるものではない>(以上「MINKABU」より引用)





 なぜオールドメディアはこれほどセンセーショナルな真実を報道しないのだろうか。「トランプ主張「日本のお米関税700%」デタラメ原因は農水省が2013年まで「お米の関税は778%」虚偽を言っていたから」という見出しに驚いた。書いたのは小倉健一氏だが、一読して農水官僚と自民党とオールドメディアに対する怒が心頭に達した。
 彼らの凭れ合いが日本の農業をダメにした。その結果が米価高騰だ。農水省官僚や自民党やオールドメディアが隠していた不都合な真実のツケは国民が支払わされる。もう、こんなバカバカしい政治は沢山だ。オールドメディアの隠蔽体質にもウンザリだ。そして国民に奉仕しない官僚たちの愚かさ加減にも飽き飽きした。

 トランプ関税を打ち出した際、米国は「コメの関税700%」を持ち出した。しかし、それは日本国民を欺くために日本政府が用いた関税率でしかなかった。実際は国際米価の上昇などにより280%ほどになっていたという。それでも現状よりも高い関税率になっているが、国際会議で280%に訂正しようとしていたという。しかし国内では相変わらず「輸入コメに対して700%」の関税を課している、という虚構を国民に信じ込ませた。
 その理由は「これほど自民党政権は外国債米の輸入圧力から高関税を課して国内産米を保護している」というプロパガンダを宣伝して、農民票を獲得してきた。しかし、実際は関税障壁で国内産米を守っているというのは嘘で、減反や転作奨励金などの政策を通して、国内産米の生産量を減らして外国産米を輸入しなければならない下地作りを推進していた。

 その成果が表面化したのが昨年夏だった。端境期になる以前にスーパーなどからコメが消え米価が高騰し始めると、国民は「コメ不足か」と浮足立った。すると農水省は「新米が出始めるとコメは充分に供給され、米価は元に戻る」と説明したが、新米が市中に出回り始めても米価上昇は続いた。
 そして備蓄米放出に当たって「21万トン」と限定して剖出し、しかも「コメ不足」を仕掛けた仲間のJAに90%以上を卸すというデキレースを演じたため、備蓄米放出の米価引き下げ効果は皆無で、さらに米価高騰は続いている。本気で米価高騰を抑制しようと思ったなら「米価が下がるまで備蓄米を無制限に放出する」と農水相は発言すべきだった。そして備蓄米の放出先を仲卸の段階に直接流すべきだった。そうすれば備蓄米は速やかに店頭販売され、米価沈静化に役立っただろう。

 どこまでも農家と国民を欺き続けた自民党と農協の罪は重い。そして主として米国産米をはじめとする外米を国内に大量に入れた農水省とJAは日本の食糧安全保障を根底から破壊しようとする「売国的行為」でしかない。
 まさに米価高騰こそが自民党政権によって日本農業が破壊された証拠だ。転作奨励補助金などで米作農家を弱体化させた農政は直ちに大転換されるべきだ。食糧安全保障を確立するなら、米作農家はもとより酪農家に到るまで、所得補償制度を導入すべきだ。そして農業は公共事業だという認識を国民に広く行き渡らせるべきだ。

 莫大な予算を投じて「CO2地球温暖化ごっこ」を続けているが、多くの気候変動学者たちは太陽活動の減衰などから2030年頃から地球は寒冷化に転じる、と予測している。環境省や「CO2地球温暖化ごっこ」関係予算(もちろん再エネ関係予算も含む)やSDGs予算などをすべて廃止して、食糧増産のための農業所得補償制度に農政を大転換しなければ、寒冷化による世界的な「冷害」や「農作物不作」による食糧危機から日本は国民を守れない。
 現実的に悲劇的なのは「地球温暖化」ではなく、「地球寒冷化」だ。江戸時代の飢饉はすべて寒冷気候による「冷害」だった。気候は変動する。平安期の温暖期から中世の寒冷期を経て、現在は温暖期の只中にあるが、再び寒冷期を迎えて80億人もの人類を抱えた地球の穀物生産量が人類を支えられるのか、そのことこそ心配すべきではないか。

 日本の農政を牛耳って来た自民党国会議員の利権屋たちは大いに反省すべきだ。そして農家の味方のような顔をして、金融三昧で大穴を開けたJA幹部たちは総辞職すべきだ。さらに、野党国会議員諸氏はチマチマとした減税(消費税は廃止すべきだが)に埋没するのではなく、大きく日本国家の未来像を語り合うべきだ。
 政治は国家と国民のためにある。政治家のためにあるのでも、官僚のためにあるのでもない。そして国民のいない国家は存在しない。

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