ビル・ゲイツ氏はネット・セキュリティーを開発する義務を負っている。
< ’20年1月14日にサポートが終了するWindows7。’15年発売のWindows10へのアップグレードが進められるなか、日本の企業のあいだでは、いまだに旧OSが活躍していた。専門家や愛用者の証言からその実態に迫る!
OSを勝手に変えるMSの商法は感心できない。セキュリティーの問題があるからだ、という理由だが、OSのセキュリティーをいかに高めても、所詮はイタチごっこだ。
なぜネットのセキュリティーを高めようとしないのだろうか。不正アクセスする利用者を「ネット監視機構」が即座に警告する仕組みを考えるべきではないか。
まだ動く自動車を外観がモデルチェンジしたから買い替える人はいない。だがPCは十分に利用できるにも拘らず、OSの保障期間が終了したから買い替えろ、と強制するのはおかしい。
さすがに、その点はビル・ゲイツも反省したらしく、Win7からWim10への転換に際しては無料で対応した。しかしWin7がカツカツ動いていた低スペックのPCではWin10は無理だ。
元々Win95が動いていた当時のスぺックは低くてメモリも8mbなどといったものだった。WinXPになってもCPUが1GHZに達するものも稀で、メモリも512mbもあれば最高スペックだった。
しかし、それではVISTは動かなかった。つまりPCそのものを買い替えなければ新しいOSに対応できなかった。そのため地方の小・中学校には未だにXPのPCが鎮座している。
高スペックになるに従ってOSそのもののbitも16から32へ、そして64bitへと進化している。それにより使用していたソフトが新機種のPCでは動かない、という不具合が発生する。
従来のソフトを使い慣れている高齢の従業員を再教育するのは困難を伴う。それ以上にシステムを組み替えるのもタダではない。中小零細企業でXPのPCを見かけるのはそうした理由からだ。
それでも来年一月上旬にはWin7がセキュリティー切れになる。まだ30%を超えるシェアを誇るOSが廃品とされるのは日本人の心情にそぐわない。デスクトップに表示させていた便利なガシェットが消え去るのも釈然としない。
趣味で旧OSを使用するのは勝手だが、仕事でXPを使い続けざるを得ない事情を抱える人たちをピル・ゲイツはどのように考えるのだろうか。有料OSを販売したからには、それらを搭載しているすべてのPCが壊れて消え去るまで安全を保証すべきではないか。それが無理ならビル・ゲイツはネット・セキュリティーを開発する必要があるのではないか。
数十年にわたってモノ作りを支え続ける旧OSの底力
サポート終了の日が刻一刻と迫るなか、Windows7の人気はいまだに根強い。Web分析会社のNet Applicationsが発表したデータでは、8月時点でデスクトップPC利用者の約3割が、Windows7を使い続けていた。無論、これだけサポート終了が宣伝されているので、割合は減っていると予想されるものの、このデータは氷山の一角。
旧OSに明るいある情報筋によると、「ほとんどの大手企業で、7よりも古いOSのPCが、いまでも現役で稼働している」という。 「しかも、使われているのは’90年代に発売された旧OSがザラ。トヨタや東芝といった大企業でも、’98年に発売されたWindows98が、いまだに第一線で活躍していますよ」
なぜ日本の企業は古いOSのPCを使い続けているのか。その実態を、旧型マシンやOSの修理に長けたピーシーエキスパート代表の森田達也氏はこう解説する。
「企業がOSをアップグレードしない理由は、大きく分けて2つあります。1つ目は、そもそもアップグレードを行う必要がないケース。サービスが終了したOSは、インターネットに接続するとウイルスに感染するリスクが高まりますが、そもそも最新のウイルスは、XP(’01年発売)より前の旧OSに感染できないので安全です」
インターネットに接続せず、カメラで写した製品の不良品をチェックするといった単純作業なら、古いOSの性能でも十分だという。
「2つ目は、OSのアップグレードを行いたくてもできないケースです。Windows3.1(’93年発売)で動いているものを、データベースに互換性のあるNT(’94年発売)になら切り替えられたんですが、3.1からいきなり10に切り替えることはできません。互換性がないので、OSを替えるならデータを打ち直すしかないのですが、大手の企業にもなると、データ量は100万件規模になることも。仮に打ち直すとしても、おそらく億単位のコストがかかると思います」
また、数多くのPCを抱える企業は、アップグレードに莫大なコストが必要に。たとえ予算が下りても、OSのアップグレードは数年単位の長期計画で進められるケースが多いので、森田氏のもとには、「サポート終了後も数年間は7を使いたい。どうすればいいか」といった相談が後を絶たない。 「少なく見積もっても、日本の企業のあいだでは、数十万台規模の旧OSのPCがいまも使われているのではないでしょうか」 ▼デスクトップOS別シェア率(2019年8月調べ)
Windows 10 51.0%
Windows 7 30.3%
macOS 10.14 6.0%
Windows 8.1 4.2%
macOS 10.13 1.7%
Windows XP 1.6%
その他 5.2% ※Net Applicationsの’19年8月のデスクトップOSのシェア率のデータを参照して作成。
約3割の人がWindows7を使っていた。XPの人気も根強く、1.6%の人が愛用している
OSの使い勝手はXPや95が最高!
旧OSが多くの企業を長年支えている一方で、個人で古いOSを使い続けている人もいる。森田氏のもとには、個人からの修理依頼も数多く届いているそうだ。
「旧OSの愛用者に多いのは、表計算ソフトのLotus1-2-3や、ワープロソフトの一太郎の古いバージョンなど、使い慣れたソフトを継続して使いたい方。実は僕も、プライベートではXPのマシンを愛用していて、自動車のコンピュータを調整するソフトを使っています。10にも類似のソフトはありますが、高価ですし、新しい機能も特にないので、買い替える必要がありません。むしろ専用機として考えれば、サクサク動いて最新のOSより快適ですよ」
最新OSを動かせるマシンには、あえて大好きなXPを搭載!
7が発売された’09年、わざわざXPを入手し、デスクトップPCを自作したモコたん氏(男性・40代)も旧OS信者の一人。約10年間、メインマシンとして愛用しているPCは、インテルCore i5のCPUに、4GBのメモリ、SSD(読み書きの速度が非常に速い記憶装置のこと)を搭載した、XPにとっては“パワーマシン”に進化した。このスペックは、メモリの容量が少し厳しいものの、10も稼働するほどの性能を誇る。
「僕はPCのインストラクター経験がありますし、職場では10のマシンを使っていますが、むしろXPがいかにいいOSか再確認できました。XPは、WindowsのOSの中で、ひとつの完成形だと痛感しています」(モコたん氏) 彼がXPに心酔する最大の理由は“カスタマイズのしやすさ”だ。
「Windowsのエクスプローラーの上側には、メニューのアイコンが並んでいるじゃないですか。7や10にもありますが、アイコンの入れ替えが簡単に行えるXPの使い勝手のよさは、群を抜いています。むしろ10は、メニューが複雑になっていて面倒で……」
モコたん氏は、XPの使い慣れたソフトで音声の編集作業を行っているほか、メールのやり取りやインターネットの閲覧、YouTubeの視聴など、あらゆることをXPのマシンに頼っている。 「外出中にどうしてもXPのマシンが使いたくなったときは、リモートで遠隔操作することもありますよ(笑)。ウイルス対策ソフトを入れているので、セキュリティも万全です。ウイルスに感染したことはこれまで一度もありません」
Windows95を使い続けて22年
また、XPよりも古いWindows95(’95年発売)をいまだに使っているのが、たっつん氏(男性・40代)だ。’97年に購入したというNECのマシンとの付き合いは22年目に突入。細心の注意を払いながら、本体はもちろん、ディスプレイやキーボード、マウスも当時のまま愛用している。
「さすがにいまは、週に一回起動させる程度になりましたが、95のロゴが見たくて電源を入れることもありますね(笑)。電源投入時に表示されるメモリのチェックや、デフラグ(デフラグメーションの略称。ストレージの断片化を整理することで、アクセス速度が向上する)も定期的に行っています。マス目がパタパタ青くなるのを見ているだけでも、楽しいですよ」(たっつん氏)
地方の町工場では切実な問題
このように、個人は愛だけで旧OSを使い続けられるが、森田氏によると切実な問題を抱えている顧客も存在するという。それはモノ作りを支える地方の町工場だ。
「町工場の機械を動かすコンピュータはバブル期に導入されたものが多く、そのまま使われてきました。コンピュータで運用されているシステムは、会社ごとに開発されたオリジナルのものなので、新しいOSはサービスの対象外。OSに合わせて設備を入れ換えるには数千万円のコストがかかる場合もあると言われていて、足踏みする町工場は多いです」(森田氏)
さらに、後継者不足の問題もネックに。森田氏のもとには、廃業予定の町工場から、廃業するまでPCを維持させてほしいという依頼も多く寄せられているという。
「たとえいま後継者がいなくても、旧OSのPCを延命して町工場の寿命を延ばすことで、会社が再評価されて後継者が現れる可能性もある。日本の底力である町工場を残すためにも、少しでも多くのPCを延命させたいですね」 人知れず、日本のモノ作りを支えていた旧OSのPC。地方の町工場では、コストや後継者不足の問題はあるものの、旧OSが役目を終えることは当分なさそうだ>(以上「SPA!」より引用)OSを勝手に変えるMSの商法は感心できない。セキュリティーの問題があるからだ、という理由だが、OSのセキュリティーをいかに高めても、所詮はイタチごっこだ。
なぜネットのセキュリティーを高めようとしないのだろうか。不正アクセスする利用者を「ネット監視機構」が即座に警告する仕組みを考えるべきではないか。
まだ動く自動車を外観がモデルチェンジしたから買い替える人はいない。だがPCは十分に利用できるにも拘らず、OSの保障期間が終了したから買い替えろ、と強制するのはおかしい。
さすがに、その点はビル・ゲイツも反省したらしく、Win7からWim10への転換に際しては無料で対応した。しかしWin7がカツカツ動いていた低スペックのPCではWin10は無理だ。
元々Win95が動いていた当時のスぺックは低くてメモリも8mbなどといったものだった。WinXPになってもCPUが1GHZに達するものも稀で、メモリも512mbもあれば最高スペックだった。
しかし、それではVISTは動かなかった。つまりPCそのものを買い替えなければ新しいOSに対応できなかった。そのため地方の小・中学校には未だにXPのPCが鎮座している。
高スペックになるに従ってOSそのもののbitも16から32へ、そして64bitへと進化している。それにより使用していたソフトが新機種のPCでは動かない、という不具合が発生する。
従来のソフトを使い慣れている高齢の従業員を再教育するのは困難を伴う。それ以上にシステムを組み替えるのもタダではない。中小零細企業でXPのPCを見かけるのはそうした理由からだ。
それでも来年一月上旬にはWin7がセキュリティー切れになる。まだ30%を超えるシェアを誇るOSが廃品とされるのは日本人の心情にそぐわない。デスクトップに表示させていた便利なガシェットが消え去るのも釈然としない。
趣味で旧OSを使用するのは勝手だが、仕事でXPを使い続けざるを得ない事情を抱える人たちをピル・ゲイツはどのように考えるのだろうか。有料OSを販売したからには、それらを搭載しているすべてのPCが壊れて消え去るまで安全を保証すべきではないか。それが無理ならビル・ゲイツはネット・セキュリティーを開発する必要があるのではないか。