春を迎えるまでに、プーチンの命運は尽きるだろう。

<欧州連合(EU)の首脳は凍結されたロシア資産をウクライナ支援に活用することで合意できなかったため、域内共通予算を担保に900億ユーロを融資することで一致した。首脳は「ウクライナの今後2年間の軍事的・経済的ニーズを満たすものだ」と胸を張った。

「巨大リスクをベルギー一国に背負わせないで」
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は凍結されたロシア資産2000億ユーロの活用を求めていた。凍結資産は2100億ユーロにのぼるが、そのうち2000億ユーロがベルギーにある決済機関に集中している。
 資産を没収してウクライナ支援に使った場合、ロシアが報復としてベルギーを相手取り国際訴訟を起こすのは必至。ロシアの凍結資産を没収・活用することに伴う巨大リスクをベルギー一国に背負わせないでくれと、ベルギーはEUに対し損失が出た際の責任共有を求めた。
 EUによると、ウクライナが今後2年を生き延びるには最大1370億ユーロの追加資金が必要とされる。内訳は国家運営費523億ユーロ、軍事支援834億ユーロなどだ。反対していたハンガリー、チェコ、スロバキアは支払い義務を負わないことを条件に賛成した。

「麻薬密売人から金を没収、テロリストから武器を取り上げるのと同じ」
 ウクライナのキャッシュフローは来年4月に限界にくると予測されている。ゼレンスキー氏は「春までに資金が注入されなければ、ドローン(無人航空機)生産を削減せざるを得なくなる」と警告。今回合意された900億ユーロは1370億ユーロの穴を埋めるためのEUの拠出分だ。
 残り資金は他の国際機関や先進7カ国(G7)諸国からの支援が想定されている。ロシア資産活用案を推していたドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「融資決定はプーチン氏に対し明確なシグナルを送るものだ」と述べた。
 ゼレンスキー氏は12月18日、EU首脳向け演説で「ロシアの爆弾や突撃によって破壊された家をロシアの金を使って再建することがどうして間違っているのか。両親を殺されたウクライナの子供に侵略者に何の非もないと説明できる者は誰もいない」と力説した。
「当局が麻薬密売人から金を没収し、テロリストから武器を取り上げるのと同じようにロシアの凍結資産はロシアの侵略に対する防衛とロシアの攻撃によって破壊されたものの再建に使われなければならない。それは道徳的で公平かつ合法的なものだ」

「戦争と社会の安定の両方を賄える資金はプーチンにはない」
 ゼレンスキー氏は「プーチンがこの戦争を続けられるのは戦線にさらに人を送り込み、海外から装備を購入するための莫大な資金がある間だけ。プーチンが攻撃を続けながら同時にロシア国内の社会の安定を維持するのは不可能だ。両方を賄える資金は彼にはない」と指摘した。
「私たちはすでに兆候を目の当たりにしている。ロシアは戦費を削り始めた。死ぬために送り出される者への支払いさえ減らした。あと1、2年戦えば、欧州は2000億ユーロを返してくれるという希望をプーチンに与えてはならない」(ゼレンスキー氏)
 今回、ベルギーや旧共産圏のハンガリー、チェコ、スロバキアの反対で、ロシアの凍結資産2000億ユーロに手をつけることはできなかった。しかしプーチン氏の戦争継続能力は全面侵攻が始まった22年当時に比べ大幅に低下している。
 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のルーク・クーパー研究員がウクライナ経済・産業に詳しい3人とまとめた最新の報告書『時間との戦い? なぜロシアの戦争経済が時間切れになりつつあるのか』の中でこう指摘している。報告書の中身を見ると――。

より多くの支出を強いられる一方、稼ぐ力は大幅に低下
 ロシアの軍事支出は21~24年に年5.9兆ルーブルから16.2兆ルーブルに3倍に増え、連邦予算の支出に占める割合は24%から40%にハネ上がった。輸出額は年5497億ドルから4753億ドルに13.5%減少した。より多くの支出を強いられる一方、稼ぐ力は大幅に低下した。
 膨大な資源が戦場での武器・軍備・弾薬といった非生産的な「前線の消費」に注ぎ込まれる。兵士たちは社会的に有益な労働に従事することなく、多額の収入を得ている。プーチン氏の軍事経済は人口の8割を占める民生部門の犠牲の上に成り立っている。
 戦争の受益者となっている比較的少数のロシア人の所得は急増。契約兵士、軍需工場の労働者とその家族が含まれ、ロシア人口の2割に達する。彼らの名目所得は3〜7倍に増え、インフレ率を大幅に上回る。しかしそれ以外の実質所得は16〜42%減少した。
 年金生活者、ソーシャルワーカー、教育・医療専門職が割りを食っている。軍事支出は戦争で必要とされる物品や装備の生産に関わる多くの部門の生産を刺激した。しかし軍事支出による財政刺激効果はロシア経済全体の輸入依存度の高さによって相殺されている。

「ロシアの地政学的地位と体制の安定性の両面において危険な計算」
 公式データによると、21〜24年ロシアの国内総生産(GDP)は7.1%成長し、家計所得は24.8%増とされる。しかし22〜24年のインフレ率はそれぞれ25%、15%、20.7%だったと推計され、実際にはロシアのGDPは1.5%縮小、実質家計所得も5.3%低下したとみられる。
 軍事支出増加は国民福祉基金の流動資産により賄われた。22年5月に1480億ドルあった流動資産は3年間の戦争を通じ1130億ドルが使われた。25年末時点でロシア経済は凍結された資産へのアクセス不能、原油価格の下落、軍事支出の激増という組み合わせに直面している。
 その結果、ロシア経済の戦争遂行能力は22年当時よりも大幅に低下している。民生経済と軍事経済間の緊張はいずれプーチン体制の「レジーム・ダイナミクス」に影響を及ぼし、専制的な秩序を保つためエリート層への腐敗まみれの資金を流し込み続けるのが難しくなる。
「プーチンは政治的に長期戦を覚悟し、ウクライナを支える西側の連合が時間の経過とともに弱まりロシアに有利になることを期待している。しかし、それはロシアの地政学的地位と体制の安定性の両面において危険な計算であることを意味している」と報告書は結論づけている。>(以上「JB press」より引用)




ゼレンスキーも苦しいが実はプーチンはそれ以上、ウクライナには欧州が支援を継続、ロシアは継戦能力が明らかに低下」と題して木村正人(在ロンドン国際ジャーナリスト)氏がウクライナ戦争の今後を占っている。
 実は今年中にロシアは敗北するだろう、と私は予測していた。その根拠はロシア経済が持たないと見ていたからだ。今年の夏頃からロシアは物価上昇とルーブルの下落に見舞われていた。さらにロシア原油価格の低落(当時既に1バレル40ドル台)していたし、買い入れ国(中国とインド)に対して米国の制裁が効いて、さらにロシア原油の下落が見込まれていたからだ。実際に現在のロシア原油価格は1バレル30ドル台まで下落し、ロシアは戦費調達すら事欠くようになっている。

 そこでプーチンはオルガリヒが溜め込んだ資金を没収し始めた。殆どのオリガルヒは外国に逃亡しているが、国際手配してまでも取り上げようとしている。ウクライナ戦争に関してプーチンを支持していたオリガルヒの資産に手を付ければ、唯一無二の支持者を失うことになるが、それでもプーチンは背に腹は代えられない。
 だが戦費調達が出来たとしても、国内社会維持にまでは到底回らない。原油産出国でありながら米国以上のガソリン価格の高騰に悩まされるロシア国民の不満は爆発寸前まで高まり、ロシア全国各地の少数民族の独立運動は勢いを増している。もはやロシアは国体維持すら困難な状況になっている。北朝鮮に派兵の代価を支払うことなど当初から困難だった。それは中国に要請した派兵の対価も踏み倒すつもりだった。だから金正恩氏も習近平氏もプーチンを見限った。金の切れ目が縁の切れ目のようだ。

 各地の前線でウクライナ軍の攻勢が続いている。戦線が総崩れになるのも時間の問題だ。未確認情報だが、ロシア国内で「反乱軍」がモスクワを攻撃しているという。「ロシア自由軍」と自称しているようだが、それがどの程度の規模でどのような人たちによる構成か判然としない。
 引用記事にある通り「欧州連合(EU)の首脳は凍結されたロシア資産をウクライナ支援に活用することで合意できなかったため、域内共通予算を担保に900億ユーロを融資することで一致した」という。ロシア資産を直接使用するのと、それを担保に資金を借りるのとは同じことだ。つまりウクライナの戦費調達は問題ないことになった。戦争が膨大な戦費の消耗合戦という経済戦争であることから、ロシアの敗北とウクライナの勝利が見えてきた。暖かくなる前に、プーチンはクレムリンを追われることになるだろう。希望的観測かも知れないが、戦争の勝敗は兵站が決めるという観点から云えば、そう断定せざるを得ない。

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