中央アジア5ヶ国との「東京イニシアティブ」は未来のサプライチェーンのカギを握る。
<日本政府と中央アジア5か国による初の首脳会合が19日、2日間の日程で東京都内で開幕した。中央アジアは経済や安全保障面で中国やロシアとの結びつきが強く、日本としては自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて連携を深める狙いがある。重要鉱物が豊富なことでも知られ、経済安保上の協力強化にもつなげたい考えだ。
首脳会合に参加しているのは、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5か国。高市首相は同日夜の夕食会で、「中央アジアと日本の古くからの絆の存在を強く実感している。長い歴史的礎に思いをはせ、友好を深めたい」と呼びかけた。
現在、中央アジアに積極的な関与を深めているのは中国の「新シルクロード(一帯一路)」構想だ。2025年現在、従来のインフラ建設から重要鉱物の確保とデジタル・グリーン分野への投資へと質的な転換を遂げ、中国以外の主要国も参入する「多極的な資源・物流争奪の場」となっている。
1. 中国による投資の再加速と質的転換
中国の「一帯一路」投資は2025年上半期に過去最高水準を記録し、特に中央アジアが最大の受益地域となっている。 ことに中国の資源確保の激化がみられ、カザフスタンのアルミ(120億ドル)や銅(75億ドル)など、電気自動車(EV)やハイテク産業に不可欠な金属・希少資源への巨額投資が集中している。
また中国は法的枠組みを強化して、 2025年6月の「中国・中央アジア首脳会議」で、インフラ協力だけでなくデジタル・シルクロードやAI分野での協力、さらには貿易円滑化を目的とした法的枠組み(友好協力条約など)の整備を進めている。
2. 多極化する国際協力(日本・欧米の参入)
中国の影響力に対抗し、またロシアを回避する物流ルートを確保するため、他国も関与を強めている。 カスピ海横断ルート(ミドル・コリドー): ロシアを迂回して中国・中央アジア・欧州を結ぶ物流網の整備が急務となっており、2025年には日本もこのルートを含むコネクティビティ強化への支援を表明した。
日本の高市早苗首相は遅ればせながら「日本・中央アジア首脳会合」を開催して 、脱炭素や資源安定供給、デジタル化支援を柱に、今後5年間で約3兆円規模の民間プロジェクト実施を目指す「東京イニシアティブ」を立ち上げた。 米国やEUも重要鉱物や輸送インフラに関する首脳会議を相次いで開催しており、中央アジア諸国側も「マルチベクトル外交(多方面とのバランス外交)」を維持しようとしている。
3. 具体的な進展プロジェクトとしては中国・キルギス・ウズベキスタン(CKU)鉄道構想があり、2025年内に47億ドルの資金調達が完了して建設に向けた大きな進展が見られた。これにより貨物輸送時間が従来の半分(約1週間)に短縮される見込みという。また中国によるエネルギー・デジタル網の構築が進行していて、カスピ海海底ケーブルによる東欧へのクリーンエネルギー供給計画や、AI協力センターの設立など、ソフト・ハード両面でのコネクティビティが強化されている。このように現在の中央アジアは、単なる通過点から世界のサプライチェーンを支える「戦略的資源・物流拠点」へとその役割と重要性を急速に拡大させている。
首脳会合に参加しているのは、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5か国。高市首相は同日夜の夕食会で、「中央アジアと日本の古くからの絆の存在を強く実感している。長い歴史的礎に思いをはせ、友好を深めたい」と呼びかけた。
20日の会合では、サプライチェーン(供給網)や人工知能(AI)などについて、協力のあり方を議論する。重要鉱物などをカスピ海経由で欧州に輸送する物流網の整備支援などを盛り込んだ共同宣言を採択する見通しだ。
中央アジアとの関係強化を進める背景には、中国がレアアース(希土類)の輸出規制を経済的圧力の武器として使っていることがある。重要鉱物やエネルギーの供給網を多角化し、経済安保の強化を図りたい考えだ。経済成長が著しい中央アジアでの日本企業のビジネス拡大につなげる狙いもある。 首脳会合は昨年8月、当時の岸田首相がカザフスタンを訪問して開催する予定だったが、南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)発表で延期していた。>(以上「読売新聞」より引用)
「政府が中央アジア5か国と初の首脳会合…豊富な重要鉱物、経済安保上の協力強化狙う」との見出しに、日本政府が中央アジアの人々にとって良い関係を築けることを願う。
中央アジアとの関係強化を進める背景には、中国がレアアース(希土類)の輸出規制を経済的圧力の武器として使っていることがある。重要鉱物やエネルギーの供給網を多角化し、経済安保の強化を図りたい考えだ。経済成長が著しい中央アジアでの日本企業のビジネス拡大につなげる狙いもある。 首脳会合は昨年8月、当時の岸田首相がカザフスタンを訪問して開催する予定だったが、南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)発表で延期していた。>(以上「読売新聞」より引用)
「政府が中央アジア5か国と初の首脳会合…豊富な重要鉱物、経済安保上の協力強化狙う」との見出しに、日本政府が中央アジアの人々にとって良い関係を築けることを願う。
1. 中国による投資の再加速と質的転換
中国の「一帯一路」投資は2025年上半期に過去最高水準を記録し、特に中央アジアが最大の受益地域となっている。 ことに中国の資源確保の激化がみられ、カザフスタンのアルミ(120億ドル)や銅(75億ドル)など、電気自動車(EV)やハイテク産業に不可欠な金属・希少資源への巨額投資が集中している。
また中国は法的枠組みを強化して、 2025年6月の「中国・中央アジア首脳会議」で、インフラ協力だけでなくデジタル・シルクロードやAI分野での協力、さらには貿易円滑化を目的とした法的枠組み(友好協力条約など)の整備を進めている。
2. 多極化する国際協力(日本・欧米の参入)
中国の影響力に対抗し、またロシアを回避する物流ルートを確保するため、他国も関与を強めている。 カスピ海横断ルート(ミドル・コリドー): ロシアを迂回して中国・中央アジア・欧州を結ぶ物流網の整備が急務となっており、2025年には日本もこのルートを含むコネクティビティ強化への支援を表明した。
日本の高市早苗首相は遅ればせながら「日本・中央アジア首脳会合」を開催して 、脱炭素や資源安定供給、デジタル化支援を柱に、今後5年間で約3兆円規模の民間プロジェクト実施を目指す「東京イニシアティブ」を立ち上げた。 米国やEUも重要鉱物や輸送インフラに関する首脳会議を相次いで開催しており、中央アジア諸国側も「マルチベクトル外交(多方面とのバランス外交)」を維持しようとしている。
3. 具体的な進展プロジェクトとしては中国・キルギス・ウズベキスタン(CKU)鉄道構想があり、2025年内に47億ドルの資金調達が完了して建設に向けた大きな進展が見られた。これにより貨物輸送時間が従来の半分(約1週間)に短縮される見込みという。また中国によるエネルギー・デジタル網の構築が進行していて、カスピ海海底ケーブルによる東欧へのクリーンエネルギー供給計画や、AI協力センターの設立など、ソフト・ハード両面でのコネクティビティが強化されている。このように現在の中央アジアは、単なる通過点から世界のサプライチェーンを支える「戦略的資源・物流拠点」へとその役割と重要性を急速に拡大させている。
フランスの人口学者のエマニエル・トッド氏は国家の未来を決めるのは「識字率」と「乳幼児死亡率」だと云っている。フランス革命もロシア革命も起きたのは識字率の向上が切っ掛けだったとトッド氏は断言する。
そうした意味で、中央アジア5ヶ国(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン)は、旧ソ連の影響で教育水準が高く、成人の識字率は概ね99%以上(100%に近い)と非常に高く、地域全体で見ても「ヨーロッパ・中央アジア」は100%に近い高水準で、貧しい国でも識字率が高いという特徴がある。
中央アジア5ヶ国(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン)の乳幼児死亡率は、国や年によって異なるが、一般的に世界平均よりは高いものの、近年は改善傾向にあり、1,000人あたり20〜50人程度(5歳未満死亡率)で推移している。具体的な数値は、ユニセフなどの国際機関のデータで確認でき、例えば2022年頃のデータでは、キルギスが約29、タジキスタンが約32、ウズベキスタンが約25(5歳未満)といった数値が見られるが、最新のデータではさらに低下している可能性がある。
また中央アジア5ヶ国の平均年齢中央値はカザフスタン約32歳、キルギス約25.4歳、タジキスタン22.2歳、トルクメニスタン約27.5歳、ウズベキスタン約29.3歳といずれも若い。また中央アジア5ヶ国の平均寿命は国によって異なるが、概ね70歳から75歳程度だ。近年医療環境の改善で平均寿命は延びているものの、まだ改善しなければならない余地があるとみられる。
中央アジア5ヶ国の人口はウズベキスタン約3600万人、カザフスタン約2000万人、タジキスタン約1000万人、キルギス約700万人、トルクメニスタン約650万人だ。そしてそれぞれの国のGDPは(2023年または直近データ、単位:10億ドル)は、カザフスタンが約2910億ドルで最大、次いでウズベキスタン約1150億ドル、トルクメニスタン約690億ドル、キルギス約170億ドル、タジキスタン約140億ドルと、国によって大きな差がある。カザフスタンは資源(天然ガス・石油)が豊富で経済規模が大きく、特にウズベキスタンは近年経済自由化で成長しており、全体として高い成長率を維持している。遅ればせながら高市氏が呼び掛けた「東京イニシアティブ」により、日本政府がやっと中央アジア5ヶ国に関心を向けたといえるだろう。