コメ価格の高騰は「国内農産品価格」といった「井の中の蛙」議論でしかない。
<小泉進次郎農相は21日の就任記者会見で、政府備蓄米を集荷業者に売り渡す入札をいったん中止すると発表した。石破茂首相から随意契約を活用した売り渡しを指示されたことを理由に挙げた。
当初は新たに見直した入札制度の下で、今月28~30日に4回目の放出分を実施する予定だった>(以上「毎日新聞」より引用)
当初は新たに見直した入札制度の下で、今月28~30日に4回目の放出分を実施する予定だった>(以上「毎日新聞」より引用)
米価高騰に対して無能・無策の江藤農相が更迭され、JA解体を叫んでいた小泉氏が新農相に任命された。その小泉氏に対して「小泉農相、備蓄米の入札中止を発表 石破首相が随意契約を指示」と、石破首相が指導したという。
米価高騰を引き下げる、というのなら、当初からJAを指定業者とはしないで、備蓄米を買い入れた当時の価格で市場に米価が値下がりに転じるまで無制限に放出すべきだった。なぜ市場原理を逆手に利用した政策を実行しなかったのだろうか。
石破氏は「備蓄米放出に随契」を指導したというが、特定の業者が米価高騰を利用して「中抜き」による利益を上げれば、米価は決して下がらない。商売人がこうした千載一遇のチャンスをミスミス見逃すとは思えない。
国民のために活動している商売人が一体何人いるというのか。JAも利益を上げなければ赤字団体になり最終的には破産するしかない。だから農林中金が米国で出した1兆9千億円もの巨額損失を穴埋めしなければ、全国組織のJAを維持出来なくなる。だから米価を利用して「中抜き」をしただけではないか。そのような価格決定を政府が認め、長年にわたって「集荷業者」として利用し「既得権」をJAに与えた来た結果ではないか。もちろん多数の農水官僚たちがJA関係に天下り、自民党の農水族政治家諸氏が多額の政治献金を受けてきた。
結果として、日本の農産品は国際水準から大きく乖離した高額商品に成り果てている。それにも拘らず、高品質農産品は世界的に高額で売れる、とマスメディアは宣伝に努めて、米価の国際市場価格が1kg100円以下だという現実を一切報道していない。米国産米が5kg650円で日本に入ってきている「事実」すら報道されていない。
小泉氏は「コメ価格引き下げに全力を注ぐ」と就任会見で主張していたが、市場原理で米価が低下するまで、それは意図によって「作られた価格」でしかない。従来の米価も、実は意図によって「作られた価格」でしかない。つまり「市場価格」ではなく、「作られた価格」と云うことだ。
「作られた価格」と云うことはトランプ氏から見れば非関税障壁が働いている、ということになる。「作られ」てないなら、日本国内の米価も国際市場価格になるからだ。政府やJAが米価を「作られた価格」にしなければ雪崩を打って世界中から日本国内へ大量のコメが入って来るだろう。もちろん5kg650円の米国産米だけではない。昨日の国際相場で1kg73円のビルマ米も入って来るだろう。日本の1kg1,000円以上の国内産米が敵うはずがない。
そうした事実を日本国民は知らなければならない。スーパー店頭にそのような廉価な外国産米が並んでも、それでも食糧安全保障のために10倍以上も高い日本産米を買う、と云うことを日本国民は選択するのか。そうした問い掛けを、政府は国民にすべきだ。
もちろん日本の農業が太刀打ちできないのは明らかだ。日本の農業だけではない。日本並みの農業予算しか支出しないなら、欧州諸国の農産品も、米国の農産品も太刀打ちできない。なぜなら国民の生活水準や賃金水準が決定的に異なるからだ。それでも欧米諸国の農産品が国際水準とそれほど懸け離れいないのは、各国政府が補助金を出しているからだ。
欧州では例えばドイツでは農家の所得の100%が、フランスでは農家の所得の95%が国家の補助金だ。そうした農家の所得補償制度により、安い農産品が安定的に供給されている。米国では農産品の価格に直接政府補助金が支出されて国際市場用価格に近い価格が維持されている。日本もそうしたいずれかの制度を導入すべきだが、そうした議論は全くない。ただ2009民主党マニフェストで農家の所得補償制度の導入を明記したことがあった。しかし、そのマニフェストを策定した小沢一郎氏は政権獲得の直前に『陸山会事件』という冤罪により検察とマスメディアのプロバカセンダ攻撃により政治の表舞台から引き摺り下ろされてしまった。
小泉氏に農政の大転換を構想する構想力が果たしてあるのか。チマチマとしたレジ袋有料化といったポピュリズムを発揮することはあっても、日本の農業の未来を見据えた理論構築は出来ないのではないか。そうするためには利権の巣窟に成り果てている農水省の解体をするくらいの覚悟が必要だ。そうした度量を持ち合わせた政治家が小沢氏以外に見当たらないのは残念でならない。
日本の農政は今後とも迷走するだろう。迷走した方が既得権益者たちにとって利益確保に最適だからだ。もちろん小泉氏も既得権益者の一員でしかない。だから自民党の農水部会長までしたが、農政の転換が必要だとの議論は何もなかった。コメ大臣として随契業者と暴利を貪るだけだろう。しかし、そうした政治家を選んでいるのも、私たち日本国民だ。もっと日本国民が賢くならなければ「国内農産品価格」といった「井の中の蛙」議論に明け暮れるだけだ、という現実すらマスメディアの「情報統制」によって知らされないままだ。