「ロシアは永遠に戦争を続ける用意がある」とロシア側は威嚇するが、

5月16日、イスタンブールで、ロシアとウクライナの停戦協議が行われたが、双方の主張が大きく隔たっており、事実上、決裂した。会議には、プーチン大統領もトランプ大統領も参加しなかった。5月19日に、トランプとプーチンの電話会談が行われたが、これは永続的な和平に繋がるのであろうか。

米露首脳電話会談
 電話会談では、プーチンは、欧米が求めていた30日間の即時停戦には応じず、「将来の平和条約に関して、ウクライナと協力して覚書をまとめる用意がある」と述べるにとどまった。さらに、「最も重要なのは、この危機の根本的な原因を排除すること」であると強調した。
 一方、トランプは、電話会談が「うまくいった」と評価し、「ロシアとウクライナは、停戦交渉を開始する」と述べた。会談内容は、ゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領、フォンデアライエンEU委員長にも伝えたという。そして、場合によっては、仲介役から退くこともある」と付け加えた。
 ゼレンスキーは、「ロシアからの提案を待ち、それを受けてウクライナ側の考えを示す」と語った。

過去の停戦交渉
 2022年2月24日、ロシア軍はウクライナに侵攻した。プーチンのいう「特別軍事作戦」である。
 戦闘と同時に、ロシアとウクライナの間で停戦協議が開始された。第1回目は2月28日に、ウクライナ国境に近いベラルーシのゴメリで行われた。その後、2回目は3月3日、3回目は3月7日と実施された。3月14日には、オンラインで4回目の交渉が行われた。そして、5回目は、3月29日に、トルコの仲介で、イスタンブールで開催された。
 最初の2月28日の協議では、停戦合意には至らなかった。ロシア軍の即時撤兵を要求するウクライナ側とウクライナの非武装化・中立化を求めるロシアの主張が大きくかけ離れており、話し合いが纏まるのは無理であった。
 2回目の会談は3月3日に行われた。その結果、民間人避難のためのルート、「人道回廊」を設定することで同意した。
 3月7日にも停戦協議は行われた、また、ロシアとウクライナの停戦交渉やフランス、ドイツ、トルコ、イスラエルなどによる仲介の努力も続いたが、期待されたような成果は生まれなかった。
 ウクライナ側はロシア軍の即時撤退を要求し、ロシア側はウクライナの非軍事化、中立化、非ナチ化を求めた。プーチンは、ウクライナがNATOに加盟しないことを文書で誓約すること、ウクライナにNATOの攻撃兵器を配備しないこと、ゼレンスキー政権が退陣することを求めた。

因縁のイスタンブール交渉
 3月29日に行われたイスタンブールでの停戦協議では、大きな進展が見られた。
 トルコが仲介する停戦交渉の場で、ウクライナ側は、「NATOに代わる安全保障の枠組みができれば、中立化を受け入れる」と明言した。「中立化」とは、具体的にはウクライナ国内での外国軍の駐留や基地は認めないということである。また、核兵器など大量破壊兵器は保有しないという。
 一方、ロシア側は、「非ナチ化」、つまりゼレンスキー大統領の退陣は条件としないともした。また、停戦に向けたロシア側の誠意を示すために、キーウやチェルニヒウ地域での軍事作戦を縮小するという信頼醸成措置を掲げた。
 クリミアの帰属問題については、ウクライナは15年間かけて議論するとした。つまり「棚上げ」ということである。
 ウクライナはNATO加盟を断念する代わりに、関係国が安全を保障することを求めた。関係国とは、国連安全保障理事会の常任理事国、そして、ドイツ、トルコ、ポーランド、イスラエル、イタリア、カナダである。この提案をロシアは持ち帰って検討し、対案を出すと応じた。
 ロシアに有利な案であるが、この提案で停戦は可能だと思えたのである。
 ところが、キーウ近郊のブチャでロシア軍によって民間人が多数殺害されていることが判明したのである。ロシア軍は2月27日にブチャに入り、ほぼ1ヵ月占拠したが、ウクライナ軍の反撃に遭い、3月30日に撤退した。その後、民間人の多数の遺体や集団墓地が発見された。このことに対して、国際法違反で戦争犯罪だとする批判が世界各地で巻き起こった。
 ウクライナ側が態度を硬化させた。さらに、西側はウクライナへの武器支援を強化し、そのおかげで優勢に立ち始めたウクライナは強気になり、停戦交渉も中止となってしまった。

トランプの登場
 それ以降、停戦交渉は行われてこなかったが、「自分が大統領になれば24時間以内に戦争を終わらせる」と豪語してきたトランプが政権に就いたことによって、停戦交渉が再開されたのである。
 2月12日には、トランプとプーチンが停戦交渉を開始する事で合意し、2月18日にはサウジアラビアで米露高官協議が行われた。その後も、ヨーロッパ諸国も交えて、様々な停戦への取り組みが展開されてきた。
 5月10日には、英仏独ポーランドの首脳とゼレンスキーが会談し、30日間の無条件停戦をロシアに求め、それにトランプも賛成した。そこで、プーチンは対抗策として、トルコで直接協議を行うことを提案したのである。こうして、5月16日にはウクライナとロシアの直接交渉が行われたのであるが、1000人の捕虜交換が決まったくらいで、大きな成果はなかった。
 4月中旬にアメリカがまとめた仲裁案は、ロシアの主張を容認したものとなっている。
 具体的には、(1)ウクライナはNATO加盟を断念する、(2)ロシアによるクリミア併合をアメリカが承認する、(3)ウクライナ東・南部4州(ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン、ルハンスク)の大部分(現にロシアが支配している地域)のロシアによる占領を承認する、(4)ザポリージャ原子力発電所はアメリカが管理する、(5)ウクライナの安全保障を確約する(具体的には欧米諸国が対応する)、(6)対露制裁の解除である。
 ロシアが反対するのは(4)と(5)のみである。ウクライナの頭越しに、アメリカとロシアが交渉すると、このような結果となるのである。
 ところが、5月16日の停戦協議では、ロシア側は、このアメリカ提案以上のものを求めたと報道されている。具体的には、ウクライナ東・南4州からのウクライナ軍の撤退、ウクライナ領内への外国軍の駐留禁止、ロシアへの戦争賠償請求の放棄、スムイ州、ハルキウ州の割譲などである。これは、ウクライナには受け入れがたいものである。
 この協議は2時間で終わったが、ロシアは永遠に戦争を続ける用意があると威嚇したようである。 
 今後、停戦交渉がどのように進むのか、プーチン・トランプの電話会談が大きな変化をもたらすのか、先はまだ読めない>(以上「現代ビジネス」より引用)




 舛添 要一氏は国際政治学者を自認しているが(実際に彼が何らかの公的な「国際政治学者」としての学位を得たとの報道に接したことはない)ウクライナ戦争の停戦行儀に関して発言しているから一読した。しかし「「ロシアは永遠に戦争を続ける用意がある」と威嚇…プーチン・トランプ会談で停戦交渉は前進するのか」は酷い内容だ。
 舛添氏はトランプ氏がロシアに大幅に譲歩してウクライナを脅して、ウクライナのレアアース鉱山開発利権を手に入れようとしていることを知ってか知らずか、プーチン主導でウクライナ停戦協議が行われていると見ているようだ。

 停戦協議のトルコへ赴くどころか、プーチンはクレムリンから出られなくなっている。なぜなら、クレムリンから出れば身の安全が保障されないからだ。それはハーグにある国際刑事裁判所から「戦争犯罪人」として逮捕状が出ているからではない。ロシア国内に不穏な空気が流れているからだ。
 2022年2月24日に、ロシアは突如としてウクライナ領内へ進軍した。プーチンは「特別軍事行動」と称しているが、実際には「ウクライナ戦争」で、ロシアは兵士や兵器を大量に投入して闇雲に前進させる消耗戦を遂行した。闇雲に前進すれば国土面積や人口で劣るウクライナが音を上げるとみたからだ。実際にウクライナの国土面積は60万3,520平方キロメートルで、人口は約4,113万人(2022年2月1日時点、クリミアとセバストポリ市を除く)であるのに対して、ロシアの国土面積は約1,710万平方キロメートルで日本の約45倍もあって、人口は約1億4,615万人と人口ではウクライナの三倍以上もいる。

 兵器も旧ソ連時代に備蓄していた戦車などを入れれば、ウクライナを圧倒するのは時間の問題だった。だからロシア軍は各地の戦線で兵士たちを強引に前進させる消耗戦を挑み続けた。自国の兵士が多少戦死したところで、プーチンは少しも気にしていなかった。だが、想定した以上にウクライナ軍が粘り強い抵抗を続けたため、ロシア軍の消耗戦は兵站の枯渇を招いた。
 しかしロシア軍は碌な装備を持たない兵士たちを前線へ派兵し、激しい損耗を続けた。自国民だけでは兵士を賄えなくなり北朝鮮や中国から派兵を要請し、前線へ送り続けた。だが、それでも戦況は好転しなかった。

 ロシア国内は戦時経済の軍需産業に特化した供給体制になり、西側諸国の経済制裁と相まって民生物資が極端に不足し猛烈なインフレが起きている。開戦当時はシベリア原油や天然ガスがロシアの戦費を賄っていたが、経済制裁により欧州を主体とした取引が激減し、代わりに輸入国に登場した中国やインドがロシアの足元を見て国際相場の70%程度に買い叩いたため、ロシアは戦費不足に陥った。
 しかもSWIFTコードの停止により、ロシア・ルーブルはドル経済圏で使用不能となり、ルーブルは下落し益々ロシアのインフレを進行させた。

 戦争は経済戦争でもある。経済が悪化して兵站が崩壊すれば、戦争遂行どころではなくなる。激しい消耗戦でソ連当時の歴史遺産のような戦車まで戦場に投入されたが、新しく戦場に登場したドローンによってたちまち破壊された。
 攻め込むには守備側の三倍の兵力を必要とされる。ロシアはウクライナの頑強な抵抗により、消耗速度は増して一日に千人もの戦死者を出している。ロシア軍は次第に指揮系統が機能しなくなりつつあるという。「ロシアは永遠に戦争を続ける用意がある」とロシアが威嚇するのは自由だが、NATO側はロシアの継戦能力は尽きかけていると見ている。米国の軍事専門家も今年末までロシア軍は枯渇するだろうと予測している。

 ロシアが「敗北」を認めれば、ロシアの体制はプーチンを必要としなくなる。むしろ停戦協議するにあたって、プーチンは邪魔になる。つまりプーチンは「排除」されるため、何が何でもプーチンは戦争を継続するしかない。独裁者とは、そうしたものだ。舛添氏は独裁者の命運が脆弱なものだとご存知ないようだ。歴史上非業の最期を遂げた独裁者より、天寿を全うした独裁者の方が圧倒的に少ない。プーチンも歴史の常識から逃れられないようだ。

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