ブラフをカマシてくる相手に、ブラフをカマシ返さないでどうする。ディールを持ち掛ける相手に対して、ディールを倍返ししないでどうする。
<関税攻勢から始まって、ウクライナ停戦まで、トランプ大統領は、公約で掲げた政策を矢継ぎ早に実行しているが、思い通りの成果は上がっていない。副作用のほうが大きいし、アメリカ国内でも批判が強まっている。
損失の数々
トランプ関税には、アメリカの生産者も消費者も困り切っている。物価は上がるし、アメリカ製品の輸出も捗らない。カリフォルニア州、ニューヨーク州、アリゾナ州など12の州が、トランプの関税政策の停止を求めて裁判を起こした。
トランプ関税は世界中から反感を買い、アメリカ製品のボイコットや観光客のアメリカ旅行取りやめなどが起こっている。
ハーバード大学などへの「リベラル狩り」については、先週の本コラムで解説したが、世界の若者が留学先を他国に変更している。
私の経験からしても、若い頃に留学した国は、第2の故郷のようになるもので、トランプは、次の世代の有為な人材を反米にしてしまう。
アメリカのビザを申請すると、スマホやパソコンを調べられ、反米的発言が見つかると、ビザをもらえない。これは、独裁国家と同じで、民主主義国家の行うことではない。
関税については、朝令暮改で、方針を次々と変える。市場は混乱するし、世界中が迷惑を被っている。4月23日は、中国に対する145%の税率を大幅に引き下げると意向だということが報道された。具体的には、50%〜65%に引き下げ、安全保障上の脅威にならない商品については、35%にするという。
中国は、報復としてアメリカに125%の関税を課しているが、1年前から周到に報復の準備をしており、どの商品を禁輸対象にすればアメリカが困るかを見極めてきた。レアアースなどがその典型例である。我慢比べで、先に音を上げたのはアメリカのほうである。
朝令暮改のもう一つの例は、パウエルFRB議長の解任問題である。トランプがパウエルの解任を目論んでいると報じられると、ドルへの信頼が失われ、株式市場が急落した。そこで、急遽、方針を転換し、解任する気はないと述べたのである。
損失の数々
トランプ関税には、アメリカの生産者も消費者も困り切っている。物価は上がるし、アメリカ製品の輸出も捗らない。カリフォルニア州、ニューヨーク州、アリゾナ州など12の州が、トランプの関税政策の停止を求めて裁判を起こした。
トランプ関税は世界中から反感を買い、アメリカ製品のボイコットや観光客のアメリカ旅行取りやめなどが起こっている。
ハーバード大学などへの「リベラル狩り」については、先週の本コラムで解説したが、世界の若者が留学先を他国に変更している。
私の経験からしても、若い頃に留学した国は、第2の故郷のようになるもので、トランプは、次の世代の有為な人材を反米にしてしまう。
アメリカのビザを申請すると、スマホやパソコンを調べられ、反米的発言が見つかると、ビザをもらえない。これは、独裁国家と同じで、民主主義国家の行うことではない。
関税については、朝令暮改で、方針を次々と変える。市場は混乱するし、世界中が迷惑を被っている。4月23日は、中国に対する145%の税率を大幅に引き下げると意向だということが報道された。具体的には、50%〜65%に引き下げ、安全保障上の脅威にならない商品については、35%にするという。
中国は、報復としてアメリカに125%の関税を課しているが、1年前から周到に報復の準備をしており、どの商品を禁輸対象にすればアメリカが困るかを見極めてきた。レアアースなどがその典型例である。我慢比べで、先に音を上げたのはアメリカのほうである。
朝令暮改のもう一つの例は、パウエルFRB議長の解任問題である。トランプがパウエルの解任を目論んでいると報じられると、ドルへの信頼が失われ、株式市場が急落した。そこで、急遽、方針を転換し、解任する気はないと述べたのである。
ウクライナ停戦…公平さを欠く仲介役
関税をはじめ、トランプの経済政策は経済学的にもデタラメであるが、まだ経済分野については、「取引(ディール)」を主張するのは理解できないことではない。しかし、政治や安全保障は、ディールには適切でない点が多々ある。政治はビジネスとは異なるのである。この点をトランプは全く分かっていない。
ウクライナやガザに平和をもたらそうという決意は良い。しかし、手法が問題である。
第一に、停戦の仲介者は、交戦国双方に公平でなければならない。その点では、トランプは、ゼレンスキーよりもプーチンの主張により耳を傾けている。また、ガザについても、明確にイスラエル支持であり、アメリカの大学でパレスチナ支持派を弾圧している。
この姿勢で停戦を仲介しても、ウクライナやパレスチナには大きな不満が残るであろうし、恒久的な平和につながるかどうかは分からない。
第二に、和平交渉は、ビジネスの取引とは異なる。とくに領土については、ナショナリズムと結合しているので、物々交換のような安易な取引は禁物である。
第一次世界大戦後、戦勝国は、敗北したドイツの多くの領土を奪ったが、そこにはドイツ人が住んでおり、併合された国(たとえばチェコスロバキア)で差別的な扱いを受けた。そのような状況をナショナリズム発揚に利用したのがヒトラーのナチスである。ヒトラーは、政権獲得後、それらの失われた領土を奪還し、大人気を博した。
クリミアや東部4州をロシアに渡してしまえという方針では、ウクライナはトランプ提案を受け入れることはできないであろう。
第三に、停戦後に、アメリカがウクライナの鉱物資源を入手しようという発想は、不動産屋的ビジネスそのものである。ウクライナの資源は、アメリカ人のものではなく、ウクライナ人のものである。トランプによれば、ウクライナへの武器支援などの見返りに資源をよこせということである。まさに、あざとい商売人の発想である。
ザポリージャ原子力発電所のある地域を中立地帯にして、アメリカが管理するという提案も、ウクライナは容認しないであろう。もともとがウクライナのものであるこの原発は、今はロシアが占領し、管理している。ウクライナにとっては、支配者がロシアからアメリカに移るだけである。アメリカとロシアという大国の取引の犠牲になるのはウクライナである。
地政学と国益の配慮がない
第四に、停戦の仲介は、戦争当事国を超える大国にしてはじめて可能なことである。仲介国は、トランプのように経済的利権を入手することだけを考えるのではなく、世界のなかでの自国の威信と地政学的考慮を尽くすべきである。
陸続きで多数の国がひしめくヨーロッパ大陸において、ロシアの軍事的脅威にどう対処するのか、世界一の大国はヨーロッパで重きをなさねばならない。
第二次世界大戦前は、イギリスが世界の覇権を握るパックス・ブリタニカであった。英国は、ヨーロッパ大陸においてバランサーとしての役割を果たすことに腐心した。具体的にはドイツとフランスのバランスをとることである。それは、結局は国益につながった。ところが、トランプには、そのような発想がない。
1904年2月に勃発した日露戦争では、日本は、1905年3月に奉天会戦に勝ち、5月にバルチック艦隊を撃滅したが、戦争を継続していくのは、軍事的にも経済的にも無理であった。そこで、日本は、アメリカ大統領、セオドア・ルーズベルトに講和の斡旋を依頼し、ロシアもそれに応じた。このときに、ルーズベルトが仲介の労をとったのは、アジアにおけるバランス・オブ・パワー、そしてアメリカの国益を考えたからである。
日本かロシアのいずれかが決定的な勝利を収めれば、その国がアジアを支配することになり、それは勢力均衡という観点からは望ましくないと、ルーズベルトは判断したのである。今のトランプには、そのような発想は全くない。
1905年8月にポーツマスでの講和会議が開かれたが、ロシアは南樺太を日本に譲渡したが、賠償金は払わなかった。ある意味で公平な裁定であった。
日本国民は、この結果に不満を抱き、日比谷焼き打ち事件などを起こして抗議したくらいである。
トランプには、このルーズベルトのような公平さを期待できない。彼が望んでいるのは、早期に停戦を実現させ、ノーベル平和賞を受賞すること、そして、ウクライナでビジネスに励み、儲けることのみである。ちなみに、安倍晋三元首相によれば、トランプは、日露戦争のことを知らなかったという。政治家に必要なのは、ビジネス手法ではなく、歴史の知識である。
トランプではアメリカの国益は守れない
4月23日、ロンドンで、ウクライナと、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの政府高官会議が開かれたが、合意には至らなかった。とくに、クリミア半島のロシア統治を認めるアメカ提案をウクライナは拒否した。
これに対して、トランプは、ゼレンスキーを名指しで批判し、「和平交渉で非常に有害だ。争いを終結させることが困難になる」と述べた。
ガザについても、トランプ流の仲介は上手く行っていない。理由は、ウクライナの場合と同様である。
2月に、トランプは、アメリカがガザを所有し、住民全員を域外のヨルダンやエジプトに移住させるとした。
廃墟と化したガザを整地し、住宅を建設して世界中から人々を移住させ、地中海のリビエラのような観光地にするという。この提案は、世界中から非難されたことは、周知の事実である。
イスラエルとパレスチナの二国家が共存していく路線以外には、中東に恒久的な平和は訪れない。しかし、トランプは、1993年のオスロ合意に至る苦難の歴史など振り返ったことなどないのではないか。それでは停戦交渉は成功しないし、公平な和平も実現しないであろう。アメリカに対する中東過激派のテロが頻発することになるかもしれない。それは、アメリカの国益を損なうことになる。
この堕落したビジネスマンには、市場の鉄槌を下すしかない>(以上「 JB press」より引用)
関税をはじめ、トランプの経済政策は経済学的にもデタラメであるが、まだ経済分野については、「取引(ディール)」を主張するのは理解できないことではない。しかし、政治や安全保障は、ディールには適切でない点が多々ある。政治はビジネスとは異なるのである。この点をトランプは全く分かっていない。
ウクライナやガザに平和をもたらそうという決意は良い。しかし、手法が問題である。
第一に、停戦の仲介者は、交戦国双方に公平でなければならない。その点では、トランプは、ゼレンスキーよりもプーチンの主張により耳を傾けている。また、ガザについても、明確にイスラエル支持であり、アメリカの大学でパレスチナ支持派を弾圧している。
この姿勢で停戦を仲介しても、ウクライナやパレスチナには大きな不満が残るであろうし、恒久的な平和につながるかどうかは分からない。
第二に、和平交渉は、ビジネスの取引とは異なる。とくに領土については、ナショナリズムと結合しているので、物々交換のような安易な取引は禁物である。
第一次世界大戦後、戦勝国は、敗北したドイツの多くの領土を奪ったが、そこにはドイツ人が住んでおり、併合された国(たとえばチェコスロバキア)で差別的な扱いを受けた。そのような状況をナショナリズム発揚に利用したのがヒトラーのナチスである。ヒトラーは、政権獲得後、それらの失われた領土を奪還し、大人気を博した。
クリミアや東部4州をロシアに渡してしまえという方針では、ウクライナはトランプ提案を受け入れることはできないであろう。
第三に、停戦後に、アメリカがウクライナの鉱物資源を入手しようという発想は、不動産屋的ビジネスそのものである。ウクライナの資源は、アメリカ人のものではなく、ウクライナ人のものである。トランプによれば、ウクライナへの武器支援などの見返りに資源をよこせということである。まさに、あざとい商売人の発想である。
ザポリージャ原子力発電所のある地域を中立地帯にして、アメリカが管理するという提案も、ウクライナは容認しないであろう。もともとがウクライナのものであるこの原発は、今はロシアが占領し、管理している。ウクライナにとっては、支配者がロシアからアメリカに移るだけである。アメリカとロシアという大国の取引の犠牲になるのはウクライナである。
地政学と国益の配慮がない
第四に、停戦の仲介は、戦争当事国を超える大国にしてはじめて可能なことである。仲介国は、トランプのように経済的利権を入手することだけを考えるのではなく、世界のなかでの自国の威信と地政学的考慮を尽くすべきである。
陸続きで多数の国がひしめくヨーロッパ大陸において、ロシアの軍事的脅威にどう対処するのか、世界一の大国はヨーロッパで重きをなさねばならない。
第二次世界大戦前は、イギリスが世界の覇権を握るパックス・ブリタニカであった。英国は、ヨーロッパ大陸においてバランサーとしての役割を果たすことに腐心した。具体的にはドイツとフランスのバランスをとることである。それは、結局は国益につながった。ところが、トランプには、そのような発想がない。
1904年2月に勃発した日露戦争では、日本は、1905年3月に奉天会戦に勝ち、5月にバルチック艦隊を撃滅したが、戦争を継続していくのは、軍事的にも経済的にも無理であった。そこで、日本は、アメリカ大統領、セオドア・ルーズベルトに講和の斡旋を依頼し、ロシアもそれに応じた。このときに、ルーズベルトが仲介の労をとったのは、アジアにおけるバランス・オブ・パワー、そしてアメリカの国益を考えたからである。
日本かロシアのいずれかが決定的な勝利を収めれば、その国がアジアを支配することになり、それは勢力均衡という観点からは望ましくないと、ルーズベルトは判断したのである。今のトランプには、そのような発想は全くない。
1905年8月にポーツマスでの講和会議が開かれたが、ロシアは南樺太を日本に譲渡したが、賠償金は払わなかった。ある意味で公平な裁定であった。
日本国民は、この結果に不満を抱き、日比谷焼き打ち事件などを起こして抗議したくらいである。
トランプには、このルーズベルトのような公平さを期待できない。彼が望んでいるのは、早期に停戦を実現させ、ノーベル平和賞を受賞すること、そして、ウクライナでビジネスに励み、儲けることのみである。ちなみに、安倍晋三元首相によれば、トランプは、日露戦争のことを知らなかったという。政治家に必要なのは、ビジネス手法ではなく、歴史の知識である。
トランプではアメリカの国益は守れない
4月23日、ロンドンで、ウクライナと、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの政府高官会議が開かれたが、合意には至らなかった。とくに、クリミア半島のロシア統治を認めるアメカ提案をウクライナは拒否した。
これに対して、トランプは、ゼレンスキーを名指しで批判し、「和平交渉で非常に有害だ。争いを終結させることが困難になる」と述べた。
ガザについても、トランプ流の仲介は上手く行っていない。理由は、ウクライナの場合と同様である。
2月に、トランプは、アメリカがガザを所有し、住民全員を域外のヨルダンやエジプトに移住させるとした。
廃墟と化したガザを整地し、住宅を建設して世界中から人々を移住させ、地中海のリビエラのような観光地にするという。この提案は、世界中から非難されたことは、周知の事実である。
イスラエルとパレスチナの二国家が共存していく路線以外には、中東に恒久的な平和は訪れない。しかし、トランプは、1993年のオスロ合意に至る苦難の歴史など振り返ったことなどないのではないか。それでは停戦交渉は成功しないし、公平な和平も実現しないであろう。アメリカに対する中東過激派のテロが頻発することになるかもしれない。それは、アメリカの国益を損なうことになる。
この堕落したビジネスマンには、市場の鉄槌を下すしかない>(以上「 JB press」より引用)
「身勝手な関税政策に商売っ気丸出しの停戦交渉がことごとく裏目、混乱もたらすだけのトランプに米国内でも不満高まるーーすべてが利益最優先の「取引」感覚のビジネスマン大統領、必ず歴史に罰せられる」との題からして、いかにも親中派評論家の舛添 要一(国際政治評論家)氏らしい。
もっとも、トランプ氏が提案したトランプ関税は対中国関税を除いてまだ発行してない。ウクライナ停戦に関してはトランプ氏が「ロシアの占領地を安堵するから、停戦協議の席に着け」とプーチンに優しく云ったが、プーチンの方から「占領地だけでは駄目だ、ウクライナ全土を寄こせ」と停戦合意の土俵を変えた。それだけの話で、トランプ関税が本当に商売っけたっぷりのものなのか、トランプ氏が持ち出した停戦協議は本当にプーチンに占領地を呉れてやるつもりだったのか疑わしい。
なぜなら、70余ヶ国に突き付けたトランプ関税はブラフ(ブラフとは、主にトランプゲーム(特にポーカー)において、自分の手が弱くても強い手を持っていると思わせるように振る舞い、相手を騙してフォールドさせる(賭け金に賭けるのをやめる)行為を指す)であって、実際の手の内とは異なる。トランプ氏は大幅な関税引き上げが自国にインフレをもたらす割に自国産業の育成に寄与しないことは知っている。だが米国が双子の赤字に悩まされて来たのも事実で、米国を実質的に支配しているDSたち国際投機家集団と対峙するには、彼らが投資している国々に高額関税を課すと脅して、DSたちの富の源泉を一時的にでも干上がらせるショック療法が必要だと判断したのではないか。
同時に、米国に対抗心を剥き出しにして「一帯一路」や「新シルクロード」といった国際的な暗躍を続けて来た中国に、高関税を課すことによって米国の実力を見せつける狙いがあったのではないか。現に経済崩壊の途上にある中国の習近平氏は、中国経済三本柱の中で唯一機能している貿易を破壊するには高関税を課せば良い、ということは第一次トランプ政権で学習済みだった。
舛添氏は「この堕落したビジネスマンには、市場の鉄槌を下すしかない」とトランプ氏を痛烈に批判しているが、云うまでもなくトランプ氏は米国大統領だ。日本国民の私たちに手出しができる相手ではない。米国民が選出した米国大統領だから、当然ながら米国民の投票という審判に委ねるしかない。
確かに全米で数万人規模の反・トランプデモが起きて、トランプ氏の支持率が42%に堕ちているが、それでもバイデン政権の同時期の39%よりは高い。日本の三倍以上の人口があって何かというとデモで意思表示する米国人が数万人デモを行ったとしても、日本のマスメディアが大騒ぎしているほど、米国では大騒ぎになっていない。むしろ控え目で大人しい日本国民が数千人規模で全国各地で行っている「財務省解体デモ」の方が規模が大きいと見るべきだが、日本のマスメディアは殆ど報道しない。
トランプ氏の得意技はブラフとディールだ。トランプ氏がウクライナ停戦協議でプーチン寄りの妥協案を提起しているが、その線で纏まることはないだろう。もちろんトランプ氏は纏まるとは思っていない。なぜならNATO諸国がトランプ案に賛成してないからだ。
ただトランプ氏がプーチン寄りの妥協案を提示している間は、プーチンはトランプ氏の提案に光明を見出して「平和的」な話し合いを求めるだろう。もっとも、対ウクライナ攻撃の手を緩めることは決してないが、少なくとも核兵器使用に踏み切ることも決してない。つまりダラダラと戦争は続く。ロシア国民に停戦近しの期待を抱かせ、戦争がダラダラと続いてロシア兵の死傷者が増え、国内経済が切羽詰まって来ると、ロシア国民の厭戦気分が高まることは間違いない。トランプ氏は「即時停戦」を唱えつつ、今年いっぱいの戦争を予定しているのではないか。そうすると、プーチンは時間切れになりブラフは終わる。そこからディールが始まると見るべきだ。
トランプ関税に関してもブラフとディールの組み合わせだ。各国に示した高い関税はブラフだ。それで驚いて譲歩してはならない。もちろん在日米軍の費用負担増も、トランプ氏がカマシたハッタリだ。日本の米軍基地は日本防衛のためだけに機能しているのではない、と云うことくらいトランプ氏は知っている。だから日本の負担は過大なくらいだと承知の上で、ブラフを嚙ましているのだ。防衛省関係者は決して狼狽えてはならない。毅然として「なんなら米軍に引き取ってもらっても良い」くらいのブラフをカマシ返すくらいの度量が必要だ。
そうすると米軍は東南アジアはもとより、インド洋からアフリカ東岸までの軍事行動の基地を失うことになる。もちろんその広範囲の戦闘に備えた火薬や兵器などを、日本より治安の悪い他の国の米軍基地へ移動させなければならない。そうしたリスクを米国大統領たるトランプ氏はもちろん知っている。さらに日本の佐世保や横須賀を母港としている空母打撃群は日本を出て、アジア諸国の何処を母港とするのか。韓国に北朝鮮軍が攻め込んだ際、米軍は何処から韓国へ駆け付けるのか。
ブラフをカマシてくる相手に、ブラフをカマシ返さないでどうする。ディールを持ち掛ける相手に対して、ディールを倍返ししないでどうする。それくらいの知恵と勇気のある政治家が日本にいないというのか。