親中派評論家の「中国経済は好調」という宣伝に騙されてはならない。
<1.沿海部から内陸部への若手社会人移動
北京、上海、広州など沿海部主要都市の消費が停滞している。
一方、武漢、成都などの内陸部主要都市では消費が相対的に高い伸びを維持している。
筆者が定期的に訪問している北京、上海、広州の大型ショッピングセンターを見ると、最近は恐ろしくなるほど買い物をしている人が少ない。
フロアを見渡す限り店員の数の方がお客の数より多いといった光景を頻繁に目にする。
一方、内陸部の成都、武漢では巨大なショッピングモールが賑わっていることが多い。
とくに週末の差が大きい。
北京や上海ではショッピングセンター内のレストランに行列ができる店は多くないが、武漢や成都では多くの店で行列ができており、レストランのフロアには人があふれている。
家族連れの客が少ない沿海部とは対照的に、内陸部では家族連れが中心であり、客層に大きな違いがある。
2024年1~11月累計の消費財販売額の前年比の伸び率を比較してもその違いは明らかである。
沿海部では北京市-2.8%、上海市-3.1%、広州市+0.3%、深圳市+1.5%であるのに対して、内陸部は武漢市+5.3%、成都市+2.9%、重慶市3.8%と、どの都市も沿海部を上回っている。
この間、2023年末の常住人口の増加率を5年前の2018年との比較で見ると、沿海部の北京市+0.6%、上海市+0.5%、広州市+7.2%、深圳市+6.8%に対して、内陸部は武漢市+31.3%、成都市+13.5%、重慶市+8.7%とやはり内陸部の伸びが高い。
これは20~30代の若手社会人が沿海部から内陸部に職場を移していることが影響している。これにより大規模な人口移動が生じている。
こうした人口移動の主因は、沿海部の住居費、生活費が高騰し、20~30代の若手社会人にとって、経済的な生活条件が厳しすぎることにあると考えられる。
こうした年齢層の若手社会人は子育ての年齢層でもあるため、生活費の高騰は一段と重くのしかかる。
このため、若手世代を中心に沿海部から内陸部への労働力人口シフトが生じており、これが常住人口の伸び率の差に表れている。
若手世代は中国の消費の主力となっていることから、この世代が減少する沿海部主要都市における消費押し下げの影響は大きい。
中国企業の工場も沿海部から内陸部へとシフトしており、これが若手世代の人口移動を加速している。
例えば、四川省にはBOE(京東方科技集団:PC、スマホ、テレビ等向けディスプレイ)、CATL(寧徳時代新能源科技:電池)、BYD(比亜迪集団:電気自動車)など、世界シェアトップ企業の大規模工場が集中するようになっている。
その背景は、第1に、人件費、不動産価格、物流コスト等沿海部の生産コストの上昇。
第2に、工場建設に適した立地条件の工場用地の不足や環境規制等沿海部の制約条件の増大。
第3に、内陸部地方政府による積極的な企業誘致策などである。
これらの要因は将来も変わらないことが予想されるため、中国企業の内陸部へのシフトは今後も続くことが予想されている。
瀬口 清之(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)氏が経済崩壊している最中の中国でも「景気悪化続く中国経済も、内陸部市場は成長持続で要注目ーー新規市場開拓のカギは中国政府に対するロビー活動の強化」と政府に対する賄賂持参で中国へ進出すべきと説いている。狙い目は海岸デルタ地域ではなく、内陸部だというからビックリ仰天だ。
北京、上海、広州など沿海部主要都市の消費が停滞している。
一方、武漢、成都などの内陸部主要都市では消費が相対的に高い伸びを維持している。
筆者が定期的に訪問している北京、上海、広州の大型ショッピングセンターを見ると、最近は恐ろしくなるほど買い物をしている人が少ない。
フロアを見渡す限り店員の数の方がお客の数より多いといった光景を頻繁に目にする。
一方、内陸部の成都、武漢では巨大なショッピングモールが賑わっていることが多い。
とくに週末の差が大きい。
北京や上海ではショッピングセンター内のレストランに行列ができる店は多くないが、武漢や成都では多くの店で行列ができており、レストランのフロアには人があふれている。
家族連れの客が少ない沿海部とは対照的に、内陸部では家族連れが中心であり、客層に大きな違いがある。
2024年1~11月累計の消費財販売額の前年比の伸び率を比較してもその違いは明らかである。
沿海部では北京市-2.8%、上海市-3.1%、広州市+0.3%、深圳市+1.5%であるのに対して、内陸部は武漢市+5.3%、成都市+2.9%、重慶市3.8%と、どの都市も沿海部を上回っている。
この間、2023年末の常住人口の増加率を5年前の2018年との比較で見ると、沿海部の北京市+0.6%、上海市+0.5%、広州市+7.2%、深圳市+6.8%に対して、内陸部は武漢市+31.3%、成都市+13.5%、重慶市+8.7%とやはり内陸部の伸びが高い。
これは20~30代の若手社会人が沿海部から内陸部に職場を移していることが影響している。これにより大規模な人口移動が生じている。
こうした人口移動の主因は、沿海部の住居費、生活費が高騰し、20~30代の若手社会人にとって、経済的な生活条件が厳しすぎることにあると考えられる。
こうした年齢層の若手社会人は子育ての年齢層でもあるため、生活費の高騰は一段と重くのしかかる。
このため、若手世代を中心に沿海部から内陸部への労働力人口シフトが生じており、これが常住人口の伸び率の差に表れている。
若手世代は中国の消費の主力となっていることから、この世代が減少する沿海部主要都市における消費押し下げの影響は大きい。
中国企業の工場も沿海部から内陸部へとシフトしており、これが若手世代の人口移動を加速している。
例えば、四川省にはBOE(京東方科技集団:PC、スマホ、テレビ等向けディスプレイ)、CATL(寧徳時代新能源科技:電池)、BYD(比亜迪集団:電気自動車)など、世界シェアトップ企業の大規模工場が集中するようになっている。
その背景は、第1に、人件費、不動産価格、物流コスト等沿海部の生産コストの上昇。
第2に、工場建設に適した立地条件の工場用地の不足や環境規制等沿海部の制約条件の増大。
第3に、内陸部地方政府による積極的な企業誘致策などである。
これらの要因は将来も変わらないことが予想されるため、中国企業の内陸部へのシフトは今後も続くことが予想されている。
2.内陸市場の重要性の高まり
以上の事実から明らかなように、中国の経済成長の約6割(寄与率)を支える消費の主力が沿海部から内陸部にシフトしている。
世界で最も競争の激しい中国市場で生き残るためには、この経済構造の変化に対応してマーケティング戦略を修正する必要がある。
日本企業の進出先はこれまで、上海、広州を中心に沿海部に集中していた。
そのため、沿海部では日本企業向けのビジネスも拡大しており、中国に進出してはいても、製品・サービスの主要な納入先は日本企業というケースがかなりの比率を占めていた。
しかし、今やその図式が崩れてきている。
従来沿海部に出ていた日本企業は競争力が低下している。中国の優秀な若手社会人が内陸に移転しているほか、沿海部は生産コストが押し上げられているためである。
こうした事情から、コロナ明け後に、沿海部の日本企業、とくに日本企業向けのサプライヤーとして中国に進出した日本企業が厳しい状況に直面している。
これに対して、内陸部主要都市の日本企業の一部では、中国企業向けの市場を開拓し、業績の停滞を防ぐことができている企業がある。
この1~2年、沿海部の日本企業の業績悪化傾向が広がる中で、内陸部に進出する日本企業の相対的優位性が注目され始めている。
これらの企業は沿海部と異なり、提携先になる日本企業が少ないため、中国企業と提携することが多い。
提携先中国企業の力を借りて新規顧客開拓や政府渉外を進めていることが、好業績につながっている。
以上の事実から明らかなように、中国の経済成長の約6割(寄与率)を支える消費の主力が沿海部から内陸部にシフトしている。
世界で最も競争の激しい中国市場で生き残るためには、この経済構造の変化に対応してマーケティング戦略を修正する必要がある。
日本企業の進出先はこれまで、上海、広州を中心に沿海部に集中していた。
そのため、沿海部では日本企業向けのビジネスも拡大しており、中国に進出してはいても、製品・サービスの主要な納入先は日本企業というケースがかなりの比率を占めていた。
しかし、今やその図式が崩れてきている。
従来沿海部に出ていた日本企業は競争力が低下している。中国の優秀な若手社会人が内陸に移転しているほか、沿海部は生産コストが押し上げられているためである。
こうした事情から、コロナ明け後に、沿海部の日本企業、とくに日本企業向けのサプライヤーとして中国に進出した日本企業が厳しい状況に直面している。
これに対して、内陸部主要都市の日本企業の一部では、中国企業向けの市場を開拓し、業績の停滞を防ぐことができている企業がある。
この1~2年、沿海部の日本企業の業績悪化傾向が広がる中で、内陸部に進出する日本企業の相対的優位性が注目され始めている。
これらの企業は沿海部と異なり、提携先になる日本企業が少ないため、中国企業と提携することが多い。
提携先中国企業の力を借りて新規顧客開拓や政府渉外を進めていることが、好業績につながっている。
3.内陸部を狙う日本企業の課題
内陸部にチャンスがあるとはいえ、中国国内市場の競争は激烈である。生半可の努力では生き残ることは難しい。
技術やサービスの競争力はもちろんのこと、中国国内市場のニーズを的確に把握して、多様な顧客ニーズに的確に応えるマーケティングが重要である。
一言で内陸部と言っても、武漢、重慶、成都、西安等の主要都市の産業構造や消費者の特性の違いに加え、東北、華北、華中、華南等の違い、各省別の違いなど地域格差は大きい。
加えて、内陸部は経済成長率も比較的高いため、所得の上昇に伴う市場ニーズの変化も早い。
こうした複雑多様な市場を的確に開拓するためには、各地の市場動向に精通したマーケティング戦略の専門人材が不可欠である。
日本企業の大半はこれまで沿海部に集中していたため、企業内の優秀な中国人材も沿海部の市場に詳しい人材が多い。
また、日本企業向けの販売に大きく依存してきた企業も多い。そうした企業では、内陸部の市場開拓に必要なマーケティング力を備えている人材は少ない。
このため、今後日本企業が内陸部の市場を開拓する場合には、以下の点を実践することが不可欠の条件となる。
第1に、内陸部重視と社長が口で言っても企業は動かない。まずは社長自身が内陸部に頻繁に足を運ぶことが重要である。
1年に1~2回では行ったうちに入らない。1年間で数日だけ現場を見ても市場ニーズを肌で感じることはできない。
最低でも年数回は定期的に足を運ぶことが必要である。社長として中国事業以外にもやらなければならないことが多くて年数回も内陸部に足を運ぶ余裕がないと社長が言っている限り、内陸部の市場開拓は覚束ない。
第2に、中国ビジネスの基本戦略として、内陸市場重視の方針を明確に示すことだ。
そのために必要な内陸部拠点運営の見直し、内陸部のマーケティングに強い人材の確保などが必要になる。
内陸部は沿海部に比べて発展が遅れていたため、日本企業には今もなお発展が遅れているイメージが残っている。
しかし、実際に足を運んでみると沿海部に見劣りしないインフラやショッピングセンターがどんどん増えていることに気づかされる。
まずは多様で変化の速い内陸部の市場ニーズを的確に把握できる体制を構築することが必要だ。
第3に、上記の方針を固めたら、迅速に実践行動に移すことが重要である。
腰を据えて内陸部のマーケティングに取り組むには内陸部拠点への人材投入が必要である。
最近は多くの日本企業で内陸部拠点から駐在員を引き上げる傾向が見られている。
それと並行して、従来の独立した内陸部拠点が沿海部の拠点の分公司(所属組織)に格下げされることが多い。
現地駐在員を削減した分は上海等沿海部から遠隔で管理するようになるが、沿海部の拠点ではそのための人員が追加的に割り当てられないため、新たに担当を追加された沿海部の駐在員は片手間で内陸部を見ることになる。
そういう体制になると沿海部から内陸部には年1~2回しか来ないという企業も多いと聞く。これでは内陸部の市場が分かるはずがない。
常駐が難しい場合でも、同一人物が少なくとも数年以上にわたって毎月数日程度、内陸部の主要都市に滞在するような人材配置が必要である。
そうした人材は日本人にこだわる必要はない。
第4に、内陸部の市場開拓は中国企業との合弁・提携により、中国側の政府交渉力、市場開拓力等を活用することが有効である。
その際、どのような中国企業と合弁・提携するかが極めて重要な課題となる。
中国企業は非常に数が多く多様である。しかも、内陸に強い中国企業は沿海部に重点を置く日本企業の中国ビジネス関係先の中にあまり多くは含まれていない。
したがって、どの企業が優良企業であるのか日本人駐在員にも分からない。
日系や外資系のコンサルタント企業に依頼しても、中国の内陸部に強い百戦錬磨の人材はほとんどいないことから、信頼できる提携先を見つけられる可能性は低い。
内陸部にチャンスがあるとはいえ、中国国内市場の競争は激烈である。生半可の努力では生き残ることは難しい。
技術やサービスの競争力はもちろんのこと、中国国内市場のニーズを的確に把握して、多様な顧客ニーズに的確に応えるマーケティングが重要である。
一言で内陸部と言っても、武漢、重慶、成都、西安等の主要都市の産業構造や消費者の特性の違いに加え、東北、華北、華中、華南等の違い、各省別の違いなど地域格差は大きい。
加えて、内陸部は経済成長率も比較的高いため、所得の上昇に伴う市場ニーズの変化も早い。
こうした複雑多様な市場を的確に開拓するためには、各地の市場動向に精通したマーケティング戦略の専門人材が不可欠である。
日本企業の大半はこれまで沿海部に集中していたため、企業内の優秀な中国人材も沿海部の市場に詳しい人材が多い。
また、日本企業向けの販売に大きく依存してきた企業も多い。そうした企業では、内陸部の市場開拓に必要なマーケティング力を備えている人材は少ない。
このため、今後日本企業が内陸部の市場を開拓する場合には、以下の点を実践することが不可欠の条件となる。
第1に、内陸部重視と社長が口で言っても企業は動かない。まずは社長自身が内陸部に頻繁に足を運ぶことが重要である。
1年に1~2回では行ったうちに入らない。1年間で数日だけ現場を見ても市場ニーズを肌で感じることはできない。
最低でも年数回は定期的に足を運ぶことが必要である。社長として中国事業以外にもやらなければならないことが多くて年数回も内陸部に足を運ぶ余裕がないと社長が言っている限り、内陸部の市場開拓は覚束ない。
第2に、中国ビジネスの基本戦略として、内陸市場重視の方針を明確に示すことだ。
そのために必要な内陸部拠点運営の見直し、内陸部のマーケティングに強い人材の確保などが必要になる。
内陸部は沿海部に比べて発展が遅れていたため、日本企業には今もなお発展が遅れているイメージが残っている。
しかし、実際に足を運んでみると沿海部に見劣りしないインフラやショッピングセンターがどんどん増えていることに気づかされる。
まずは多様で変化の速い内陸部の市場ニーズを的確に把握できる体制を構築することが必要だ。
第3に、上記の方針を固めたら、迅速に実践行動に移すことが重要である。
腰を据えて内陸部のマーケティングに取り組むには内陸部拠点への人材投入が必要である。
最近は多くの日本企業で内陸部拠点から駐在員を引き上げる傾向が見られている。
それと並行して、従来の独立した内陸部拠点が沿海部の拠点の分公司(所属組織)に格下げされることが多い。
現地駐在員を削減した分は上海等沿海部から遠隔で管理するようになるが、沿海部の拠点ではそのための人員が追加的に割り当てられないため、新たに担当を追加された沿海部の駐在員は片手間で内陸部を見ることになる。
そういう体制になると沿海部から内陸部には年1~2回しか来ないという企業も多いと聞く。これでは内陸部の市場が分かるはずがない。
常駐が難しい場合でも、同一人物が少なくとも数年以上にわたって毎月数日程度、内陸部の主要都市に滞在するような人材配置が必要である。
そうした人材は日本人にこだわる必要はない。
第4に、内陸部の市場開拓は中国企業との合弁・提携により、中国側の政府交渉力、市場開拓力等を活用することが有効である。
その際、どのような中国企業と合弁・提携するかが極めて重要な課題となる。
中国企業は非常に数が多く多様である。しかも、内陸に強い中国企業は沿海部に重点を置く日本企業の中国ビジネス関係先の中にあまり多くは含まれていない。
したがって、どの企業が優良企業であるのか日本人駐在員にも分からない。
日系や外資系のコンサルタント企業に依頼しても、中国の内陸部に強い百戦錬磨の人材はほとんどいないことから、信頼できる提携先を見つけられる可能性は低い。
4.ロビー活動の重要性
日本企業がこのような状況に置かれている場合、内陸部の市場開拓のために活用すべきはロビー活動である。
合弁あるいは提携先を見つけたい場合、日本企業の進出先地域の地方政府に相談したとしても、地方政府の管轄地域内の情報に限られるため、選択肢が限られる。
中国全土の中で自社製品に適した合弁・提携先企業を探すには中央政府関係部門に対する政府渉外を通じた情報収集が重要である。
ただし、地方政府でも広い人脈をもつ人物がいれば、強力な支援を得られるケースもある。
中国政府も優良な外資企業の対中投資を促進したいため、信頼できる提携先中国企業を紹介し、外資企業の合弁・提携意欲を高めるインセンティブがある。
ロビー活動を展開する上で政府関係部門との人脈構築、意見交換を順調に拡大するには政府渉外の豊富な経験が必要である。
社内に優秀な中国人を抱えていても、その人物が政府渉外に強いケースは稀である。
このため外部のロビー活動の専門家に依頼するのが確実である。
ロビー活動を行う専門家はロビイストと呼ばれる。彼らは政府から高い信頼を得ているのみならず、多くの政府関係部門との人脈を継続的に維持していることが望ましい。
企業が直面する問題は多様であり、内陸部の市場開拓はその中の一つである。政府のどの部門に接触して相談するかは案件によって異なる。
限られた分野の案件しか取り扱えない場合には、政府渉外において多くの経験を積むことができないため、ロビイストとしての能力を高めることが難しい。
信頼できるロビイストの数は限られている。当然委託費用はある程度かさまざるを得ない。
米国でのロビー費用は年間数億から数十億円かかると報じられている。それだけのコストを負担しても期待する結果を得られないこともある。
しかし、だからと言ってコストを削減するために短期的なロビー活動を散発的に利用していると、政府からも信用されないため、ロビー活動の効果は低下する。
信頼できるロビイストに委託し、長期的に腰を据えて政府関係部門との良好な関係を構築する努力が重要である。
日本企業は1990年代半ば以降、官僚と民間企業の接触に関する規制が大幅に厳格化されたことから日本国内に政府渉外の習慣がほぼなくなってしまった。
このため、日本企業全体においてロビー活動の重要性に対する認識が低下している。
しかし、日本以外の米国、欧州、中国、韓国等他の主要国ではロビー活動の重要性は認識されている。
中国の内陸部への進出促進はもちろん、その他の中国およびグローバルビジネス展開においてもロビー活動は重要である。
そのための必要なコストを惜しむと合弁・提携先の選択ミス、政府の政策意図の把握不足などの問題が生じ、結果的に大きな損失を招く。
情報収集や政府渉外には必要なコストを惜しまず対応することが日本企業の今後のグローバル展開において重要な課題である>(以上「JB press」より引用)
日本企業がこのような状況に置かれている場合、内陸部の市場開拓のために活用すべきはロビー活動である。
合弁あるいは提携先を見つけたい場合、日本企業の進出先地域の地方政府に相談したとしても、地方政府の管轄地域内の情報に限られるため、選択肢が限られる。
中国全土の中で自社製品に適した合弁・提携先企業を探すには中央政府関係部門に対する政府渉外を通じた情報収集が重要である。
ただし、地方政府でも広い人脈をもつ人物がいれば、強力な支援を得られるケースもある。
中国政府も優良な外資企業の対中投資を促進したいため、信頼できる提携先中国企業を紹介し、外資企業の合弁・提携意欲を高めるインセンティブがある。
ロビー活動を展開する上で政府関係部門との人脈構築、意見交換を順調に拡大するには政府渉外の豊富な経験が必要である。
社内に優秀な中国人を抱えていても、その人物が政府渉外に強いケースは稀である。
このため外部のロビー活動の専門家に依頼するのが確実である。
ロビー活動を行う専門家はロビイストと呼ばれる。彼らは政府から高い信頼を得ているのみならず、多くの政府関係部門との人脈を継続的に維持していることが望ましい。
企業が直面する問題は多様であり、内陸部の市場開拓はその中の一つである。政府のどの部門に接触して相談するかは案件によって異なる。
限られた分野の案件しか取り扱えない場合には、政府渉外において多くの経験を積むことができないため、ロビイストとしての能力を高めることが難しい。
信頼できるロビイストの数は限られている。当然委託費用はある程度かさまざるを得ない。
米国でのロビー費用は年間数億から数十億円かかると報じられている。それだけのコストを負担しても期待する結果を得られないこともある。
しかし、だからと言ってコストを削減するために短期的なロビー活動を散発的に利用していると、政府からも信用されないため、ロビー活動の効果は低下する。
信頼できるロビイストに委託し、長期的に腰を据えて政府関係部門との良好な関係を構築する努力が重要である。
日本企業は1990年代半ば以降、官僚と民間企業の接触に関する規制が大幅に厳格化されたことから日本国内に政府渉外の習慣がほぼなくなってしまった。
このため、日本企業全体においてロビー活動の重要性に対する認識が低下している。
しかし、日本以外の米国、欧州、中国、韓国等他の主要国ではロビー活動の重要性は認識されている。
中国の内陸部への進出促進はもちろん、その他の中国およびグローバルビジネス展開においてもロビー活動は重要である。
そのための必要なコストを惜しむと合弁・提携先の選択ミス、政府の政策意図の把握不足などの問題が生じ、結果的に大きな損失を招く。
情報収集や政府渉外には必要なコストを惜しまず対応することが日本企業の今後のグローバル展開において重要な課題である>(以上「JB press」より引用)
瀬口 清之(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)氏が経済崩壊している最中の中国でも「景気悪化続く中国経済も、内陸部市場は成長持続で要注目ーー新規市場開拓のカギは中国政府に対するロビー活動の強化」と政府に対する賄賂持参で中国へ進出すべきと説いている。狙い目は海岸デルタ地域ではなく、内陸部だというからビックリ仰天だ。
なぜ内陸部でなく、海岸デルタ地域に外国製造業が進出したのか。それは交通・運輸の利便性からだ。しかも内陸部から大量の農民工が「出稼ぎ」に海岸デルタ地域にやって来ていたからだ。
しかし海岸デルタ地域の最も繁栄した深圳地区ですら失業者が溢れ、撤退した外国企業の工場跡が廃墟になっている。中国経済の発展を牽引して来た海岸部の工業地帯は見る影もなく凋落している。だから大学新卒者の雇用吸収力はなく、新卒者の失業率は政府発表で18%、実際には約50%に達しているとみられる。
そこで海岸部での就職を諦めた新卒者たちは内陸部へ移動しているという。そこで瀬口氏は中国の統計数字を引用しているが「2023年末の常住人口の増加率を5年前の2018年との比較で見ると、沿海部の北京市+0.6%、上海市+0.5%、広州市+7.2%、深圳市+6.8%に対して、内陸部は武漢市+31.3%、成都市+13.5%、重慶市+8.7%とやはり内陸部の伸びが高い」といった数字がどれほど信ぴょう性があるというのだろうか。
海岸部や北京の人口が減少しているのは主として外国人の流出が続いているからで、ことに上海では街に目立っていた外国人を殆ど見かけなくなったという。北京も外交官や外国企業の外国人社員などの多くが帰国したために人口減となっている。
ただ内陸部の人口増は出生などの自然増でないなら、移動による社会増によるものと考えなければならないが、内陸部で社会的な移動を伴う経済拡大がみられているとは思えない。内陸部のどの都市の人口増も沿海部を上回っているのは不自然だ。
さらに消費財販売額の対前年比を見ると「沿海部では北京市-2.8%、上海市-3.1%、広州市+0.3%、深圳市+1.5%であるのに対して、内陸部は武漢市+5.3%、成都市+2.9%、重慶市3.8%」と内陸部で個人消費が増えているが、現在の中国経済を牽引しているのはGDP三本柱のうち好調なのは貿易だけだ。主として不動産購入とそれに関連した個人消費も社会インフラを主体とする政府・民間投資も対前年比マイナスと見なければならない状況だ。
そうすると、貿易による経済の影響を大きく受けるはずの沿岸部で軒並みマイナスを記録しているにも拘らず、直接貿易経済とは縁遠い内陸部で個人消費が増加しているのは解せない。中央政府と地方政府の役人たちが鉛筆を舐め舐め数字を作っているのではないか、と思わざるを得ない。
私がそう思うのは確たる証拠があるからだ。中国は全土で金融機関に対する取り付け騒ぎと、公務員などによる遅配による「労働争議」が多発しているからだ。都市部ではゴミ清掃業者に対する支払いが半年以上も遅れているため、ついにはゴミ収集を行わなくなり、都市はゴミの山が至る所に見られるようになっているという。
さらに人民解放軍までもが兵隊への給料が遅配しているため、士気が著しく低下しているという。退役軍人たちは恩給の遅配に耐えかねてデモを行うまでになっている。中国経済は確実に崩壊の坂道を転がり落ちている。それを少しでも改善しようと、中共政府は外国投資や外国企業の中国進出を必死になって勧誘している。日本政府の要人たちがバカンスでも楽しむかのように中国を訪れ、10年ビザを突如として許可したのも中共政府からの強い要請によるものだろう。親中派経団連が対中進出を呼び掛けているのも中共政府からの要請によるものではないか。
瀬口氏は「中国の内陸部への進出促進はもちろん、その他の中国およびグローバルビジネス展開においてもロビー活動は重要である」と結論付けているが、中共政府は腐敗撲滅で中国の民間企業潰しを実施している。瀬口氏の勧誘は非常に危険だと云わざるを得ない。わざわざ邦人企業が崩壊する中国経済に投資するのは不必要というよりも、危険に過ぎる。
崩壊する経済はやがて社会不安に火をつけ、中国社会秩序は崩壊の段階に到るだろう。そうすると、まず外国企業から破壊と略奪の標的にされるのは火を見るよりも明らかだ。君子たるもの、危うきに近寄らず、だ。