中国の軍拡は脅威だが、台湾有事は差し迫ったものではない。

中国海軍空母打撃群の演習
 また、今回この「海上連合2022」が今までのような春や秋ではなく、気象海象の厳しい12月に行われたのにも意味があると思われる。
 というのも、2018年以降、例年この時期に北海艦隊のクズネツォフ級空母「遼寧(りょうねい):CV-16/65,000トン級)」を始めとする空母打撃群(グループ)が、太平洋へ進出して演習を実施していることから、今回この同時期に、「海上連合2022」を重ね、同演習は東シナ海で、空母グループは太平洋で演習することによって、台湾を囲んで東シナ海から太平洋へかけての軍事的プレゼンスを強調する狙いがあったものと考えられるからである。
 この拙稿でも述べているが、このグループの活動は年々その訓練内容が深化してきており、昨年初めてこのグループに参加した中国最新鋭のレンハイ級ミサイル巡洋艦が、今回は2隻「鞍山(あんざん)CG-103及び無錫(むしゃく)CG-104/13,000トン級」と、これにミサイル駆逐艦「ルーヤンIII:DDG-120/7,000トン級」、ミサイルフリゲート「ジャンカイII:FFG-542/4,000トン級」、「フユ級高速戦闘支援艦:AOE-901/48,000トン級」の3隻が随伴し、これら計6隻の陣容で今回のグループが構成されていた。
 一見、昨年5月は8隻で構成されていたグループが今回は6隻と規模が小さくなったように感じられるが、これは今回このグループとは別に、北海艦隊所属のレンハイ級ミサイル巡洋艦「拉薩(らさ)CG-102/13,000トン級」、ミサイル駆逐艦「ルーヤンIII:DDG-124/7,000トン級」、フチ級補給艦「AO-889/23,000トン級」計3隻の艦艇群が別動隊として構成されていたことによると思われる。
 この3隻の艦艇群は、空母グループに先んじて12月14日に大隅海峡を(空母グループは12月16日に沖縄・宮古島間を)通峡して太平洋へ進出しており、過去の訓練状況などから、空母グループに対抗する仮想敵部隊としての任務を付与されていたものと推定される。同時に、この艦艇群はわが国に対する挑発行動も兼ねていたと見られ、太平洋進出時はわが国により近い大隅海峡を通峡したほか、本正月の3日未明には、2016年以来7年ぶりに与那国島と西表島間のわが国の接続水域を航行したあと、尖閣諸島の魚釣島(沖縄県)西方約70kmの海域を北上(空母グループは元日に沖縄・宮古島間を通峡)し、帰航した。

航空機の活動

 以上のような、中露による艦艇の活動に呼応する形で航空機も活発にわが国周辺を活動した。
 昨年12月の「海上連合2022」に先立ち、11月30日には中国戦略爆撃機(H-6)2機とロシア戦略爆撃機(Tu-95)2機による、中露共同パトロールと称される示威行動が行われた。この爆撃機の飛行に際し、対馬海峡付近と沖縄・宮古島間周辺の空域で中国の最新鋭戦闘機(推定J-16)がエスコート(援護飛行)を実施した。

 このようなわが国領空付近の空域で中国の戦闘機がエスコートすることは、わが国のスクランブル(戦闘)機と戦闘機同士が近接する可能性があり、偶発的な衝突事案に発展しかねない極めて危険な行為である。わが国は、このような行為に対して政府は強く抗議するべきであろう。
 また、本正月の元日と2日には、空母グループの沖縄・宮古島間の北上に合わせて中国軍の偵察型無人機(WZ-7)が沖縄・宮古島間から宮古島南方の海域で午前から午後にわたり偵察活動を実施した。この機種の無人機がわが国周辺で確認されたのは初めてであった。

北朝鮮もこれら中露の軍事活動に呼応か

 前述のような中露の軍事活動とは別に、北朝鮮は昨年12月23日から本正月の元日未明にかけて、計6発(23日×2,31~1日×4)の短距離弾道ミサイルを発射した。中露海軍による「海上連合2022」や中国空母グループの演習などの軍事活動と時機を同じくしてこのようなミサイル発射が行われたのは、とても偶然とは思えない。北朝鮮は中露の軍事活動に敏感に対応しているものと見るべきではないだろうか。
 2021年11月4日の拙稿『中国&北朝鮮合同「台湾侵攻」へのカウントダウン…米高官が示唆した「6年」の現実味』で述べたように、2021年10月21日には北朝鮮・朴明浩(パク・ミョンホ)外務次官が、「台湾の情勢は、朝鮮半島の情勢と決して無関係ではない」、「我々は、台湾問題に対する米国の覇権主義的行動を、朝鮮半島情勢と絡めてこれを注視する」との談話を発表し、米国が主導する多国籍軍の共同訓練を非難するとともに、台湾有事の際は座視しないことをほのめかしていた。
 つまり、北朝鮮もロシアと同様に、中国の台湾への武力侵攻に際して米軍を始めとする多国籍軍がこれに関与した場合には、「わが国も側面から軍事的にこれを支援する」という意思を体現することによって、北朝鮮が米韓合同軍などから攻撃を受けた際には、「中国による軍事支援を期待している」ということを中国に明示したかったのだと考えられるのである。

われわれが今なすべきこと

 結言すれば、中国の台湾侵攻が現実味を帯びてきた中で、ロシアや北朝鮮のスタンスが次第に明らかになってきたということである。つまり、「台湾侵攻に際して米軍や自衛隊を始めとする多国籍軍がこれに関与すれば、ロシアも北朝鮮も座視しない」という姿勢であり、これは第3次世界大戦へと繋がる可能性が大きいということである。
 令和4年は、ロシアによるウクライナ侵攻で、欧州方面において第3次世界大戦が勃発することが危惧されていたが、令和5年以降はこれに加えて東アジアにおいてもその可能性が危惧される事態になってきた。今わが国では、敵基地攻撃能力保有の是非や防衛費増額の財源などがクローズアップされている状況にあるが、悠長な議論とは裏腹に危機は次第に差し迫ってきている。
 本稿でも述べたように、中国は最近になって台湾などへの軍事挑発をエスカレートさせており、最早武力による台湾統一を隠そうともしていない。そして中国は、米軍を始めとする多国籍軍がこれに介入することを可能な限り阻止すべく、自国の軍事力を増強するだけでなく、ロシアなど周辺国も巻き込むことによって、第3次世界大戦へと拡大することを恐れて米軍などが介入をためらうことを狙っているものと見られる。
 中国によるわが国尖閣諸島への度重なる挑発行為もその一環であろうと筆者は考えている。中国が台湾へ武力行使する際には、これに先んじて陽動目的で尖閣諸島を占拠するなどの軍事行動に出る可能性は大きい。
 つまり、中国が台湾への武力統一を企図した場合には、極めて高い確率でわが国は巻き込まれることになるということだ。これに備え、われわれは何よりもまず、憲法も含め、有事を見越した法整備を急がなければならないのである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 相変わらず、というしかない。中国海軍の軍事演習に過剰反応して、台湾有事を日米マスメディアや軍事評論家たちが騒ぎ立てている。現代ビジネスでも鈴木衛士氏(元航空自衛隊情報幹部・軍事評論家)が「日本近海で年末年始に起きていた恐るべき事態と中国がアメリカに仕掛ける「第三次世界大戦」のプレッシャー」と題する論評を掲載している。
 中国の「空母・遼寧」を旗艦とする空母打撃群が新年早々に日本近海で軍事演習をしたのは引用論評を一読して頂ければ、その仔細を知ることが出来る。だが大事なのはそれが情報のすべてではない、ということだ。

 引用した論評に欠落している情報は、たとえば遼寧から離・着艦訓練した中国空軍戦闘機が丸裸だったことだ。たとえば遼寧が遠洋航海しないで、日本近海をチョコチョコと航海していたことだ。たとえば、空母打撃群に不可欠の攻撃型潜水艦の随行が報じられてないことだ。
 ロシア空軍機を劣化コピーした中国空軍機は推力不足という致命的な欠陥を抱えている。だから燃料を満載したら遼寧のジャンプ式離陸方式では飛び立てない。もちろん両翼の下にミサイルなどを装備しても、その重みでジャンプ台から飛び立てず、海に墜落する。だから丸裸の最小限の燃料を搭載した戦闘機が離着艦訓練をしたに過ぎない。

 遼寧を旗艦とする空母などの艦船を、空母打撃群と云うには余りにお粗末だ。それは米海軍の空母打撃群と比較すれば明らかだろう。しかも遼寧は機関に致命的な欠陥があり、航続距離は中国の沿岸部を航行するにとどまっている。従って長期間の作戦行動など中国空母には出来ない。
 前述したように、中国空軍の戦闘機はエンジンやステルス性能に問題があって、エンジン出力を全開するとエンジン内部品が破損して墜落する、という欠陥がある。ステルス性能に関しても両翼にミサイルを装備すると普通の航空機でしかなくなるという。こんな欠陥機で台湾進攻など出来るわけがない。

 台湾有事は中国大陸から発射される大量のミサイル攻撃で始まるだろう、と予想されている。中国軍の上陸予定地点の迎撃台湾軍を完全に無力化して、大量の輸送船に兵員を積載して台湾に上陸するだろう。しかし現在中国が軍事演習している空母群や戦闘機などで台湾を直接攻撃することはあり得ない。なぜなら、そうした戦法では日米に適わないからだ。
 中国は伝統的な人海戦術を駆使して、大量の海警船で輸送船団を警護して渡海し、陸揚げした膨大な数のポンコツ戦車や軍用車両で台湾を蹂躙しようとするだろう。当然ながら、人海戦術だから中国軍の戦士者数は目を覆うばかりの惨憺たる有様になるだろう。それに中国軍の母親たちは耐えられるだろうか。一人っ子政策で「小皇帝」として育てられた中国軍人が悲惨な戦場に耐えて前進できるだろうか。

 「戦争」そのものが前近代的で非人道的な外交手段だ。現代では否定されて然るべき政治的手段だが、軍需産業で儲けている連中がいて、軍隊に寄生して生活している連中がいて、彼らの利益を守ることで政権・権力維持をしている政治家がいる限り軍隊はなくならないし、軍隊が必要なものだと国民に知らしめるためには必然的に戦争が必要だ。
 そのために軍事評論家は「有事」が身近にあることを絶えず煽り、国民から税金を奪い取り軍隊に注ぎ込もうとしている。思慮分別のない御用マスメディアは軍事評論家や軍隊の御用聞きに堕した政治家の言葉を無批判に拡散して国民に軍事的危機を煽っている。北朝鮮が発射する打ち上げ花火のように発射しているミサイルに関しても、日本のマスメディアは臨時ニュースやテロップで知らせるが、日本に駐留している米軍に基地の防空体制発令などの動きは皆無だ。

 ウクライナに攻め込んだロシアが苦戦しているのは正規ロシア軍がこれまでの常識的な布陣で進軍したのに対して、ウクライナ軍が非対称的な布陣の携帯ミサイルやドローンなどで応戦したからだ。台湾に中国軍が侵攻する際にはウクライナ侵攻したロシア軍の失敗を生かした戦法で進軍すると考えなければならない。
 雲霞のような無数の「攻撃・自爆型ドローン」を台湾軍基地や前線に投入する、と考えるべきではないか。そうした攻撃から防御するために、強力な電磁波によるドローン戦術妨害などを研究すべきではないか。そして米国が強力に実施しているように、日本政府は半導体や最先端技術や先端機器などの対中輸出に関して厳しく規制すべきだ。もちろんそれらに関する知的・人的流出に関しても規制法を整備して対処すべきだ。

 中国経済は崩壊している。これからは潤沢な国家予算を投じてボンコツ巨額兵器を製造することは出来なくなる。そうすると安価で効果的な攻撃兵器の開発を行うようになる、と予測すべきだ。習近平氏が国内政治の混乱から破れかぶれになって台湾進攻を決断する、と予言する軍事評論家が沢山いるが、海外に隠匿した一兆円を超える財産を無駄にすることはないだろう。スイス政府がロシアを支援する国の政府幹部たちの預金口座を凍結することもありうる、とアナウンスすると、中共政府幹部が慌ててスイスに駆け付けて、スイス政府要人と会談したという。そのような中共政府が台湾への軍事侵攻を決断するだろうか。
 防衛に関してもっと冷静な議論が必要ではないだろうか。防衛費倍増は是認するとしても、財源は国債発行で良いし、武器の調達は国内で行うべきだ。防衛産業を育成しておくことが、日本の防衛力を強めることになる。

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