「二島先行」で平和条約などあり得ない。
<安倍首相が来年1月21日、モスクワでプーチン露大統領と首脳会談を行う見通しであることが分かった。首相はスイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)への出席前にロシアに立ち寄る方向だ。これに先立ち、河野外相が1月14日にモスクワを訪れてラブロフ露外相と会談し、首脳会談に向けて詰めの協議を行う。
首相は11月の日露首脳会談で、北方領土のうち歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約締結交渉を加速化し、年明けにモスクワを訪問することで合意していた>(以上「読売新聞」より引用)
首相は11月の日露首脳会談で、北方領土のうち歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約締結交渉を加速化し、年明けにモスクワを訪問することで合意していた>(以上「読売新聞」より引用)
多くの日本国民は安倍氏の「11月の日露首脳会談で、北方領土のうち歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約締結交渉を加速化し、年明けにモスクワを訪問することで合意していた」ことに合意していない。
北方領土は四島であって、決して二島ではない。しかも人の住めんでいない岩礁だらけの歯舞・色丹の「二島先行返還」なぞ北方領土解決に何の足しにもならない。こんな愚かな「外交」のために安倍氏がわざわざモスクワへ立ち寄るなど以ての外だ。
ロシアはモスクワから遥か彼方の遠隔で漁業以外に「生産性の無い」極東の島に日本の経済と技術援助が欲しいだけだ。さらに原油価格が1バレル40ドル割れかといわれるほど下落してはロシア経済はウラル山脈以東へ投資する余裕などない。
ロシア国民の困窮は想像を絶するものがある。ロシア国民の20%は貧困層だという。ロシアの貧困とは月収1000ルーブル(約1605円)以下の所得しかない人たちをいうが、公務員や医師や教師など高学歴層の平均月収が2,300ルーブル(約3万7000円)で職業の他にアルバイトをしなければ家庭生活が維持できない状況にある。
ロシアの村や町には、西側諸国と比べて圧倒的に多い貧困層の人達が見られ、とりわけ2人、3人以上と沢山子供のいる家庭では常に貧困の危機にされされている。子供達は高校卒業後、職業訓練などを受ける機会が減ってきており、貧しい家庭においては、子供たちのうち、わずか15%だけが技術系の学校や大学に進学している。
こうした子供達の教育を受けるチャンスが減っている事で、貧困の原因に拍車をかけている事になる。貧困は、病気やアルコール中毒などの悲劇的状況をも生み出し、ロシアでは所帯を持っている人達は平均して58歳にもなれば自分達の伴侶を亡くし、60歳前から残りの人生を独りで乏しい年金で生活して行くことになる。
その反面、一握りの「資源マフィア」や「軍産共同体マフィア」と呼ばれる人たちは世界的な高所得者番付に顔を出すほどの巨万の富を手にしている。ロシア国内にいる億万長者は、その数では世界で3番目、大企業の数は13番目のランキングとなっている。恵まれたひと握りの億万長者は、ロシア国内にある大企業の数のほぼ半数を独占所有している。
米国はというと、この6%でしかない。ウォールストリートに巣食っている米国の1%ですら、手にしている富はロシア・マフィアたちの足元にも遠く及ばない。
少し古いが、2003年の世界銀行の調査によれば、ロシア大企業23社はロシアの工業生産の57%を占めており、ロシア国内ににいる億万長者は36人存在するという。実際にはこれよりも多くいるかもしれないと発表していました。36人の億万長者らの資産時価総額は約11兆円にのぼるとも言われ、これは国内のGDPの24%に相当する。
こうしたたったひと握りの富裕層だけが新たなビジネス分野から巨万の富を得、社会に君臨している。大企業のトップの管理職らの年収はというと、ロシア一般国民や年金受給者をはるかに上回る額で、ガゼッタのサイトでは彼らの年収は約1兆から3兆円の間の額をもらっているという。ロシア最大の石油会社であるルークオイルの社長は年収1兆5千万円をもらっている。もしビジネスが軌道に乗っていけば2兆円2千万円のボーナスをもらえる事になるという。ルークオイルの副社長は年収8千万円をもらっており、ボーナスは1兆1千万円とのことだ。
彼らは自分たちが手にしている富を国民に分け与えるのではなく、さらに独占しようとしている。ロシアの現行体制維持を図り、プーチン氏の後ろ盾となってロシア大統領の地位を保障しているのも彼らだ。
プーチン氏が誰の味方なのか明らかではないか。彼はロシア国民の敵に過ぎないが、プーチン大統領を批判する者は誰であろうと次々と殺害される。既に100人を上回る政治家やジャーナリストや学者たちが何者かによって殺害されている。そしてその犯人は殆ど誰も逮捕されていない。
そうした人物と安倍氏は「交渉」しにモスクワへ行く、という。米国や西側諸国がウクライナ・クリミア半島制裁をロシアに課している。ことに米国は安倍氏の「制裁破り」を許すとでも思っているのだろうか。
現在の原油価格の下落に米国の増産が大きく関わっていることを安倍氏は御存知ないのだろうか。なぜ米国が増産に踏み切っているのか、答えは簡単だ。ロシアを疲弊させるには原油価格をロシア原油の損益分岐点の1バレル30ドル台まで引き下げれば良いからだ。ロシアを崩壊させるには核ミサイルや砲弾を撃つ必要はない。かつてソ連を崩壊させたように、経済を締め付ければ良いだけだ。
そうしたトランプ氏の努力に水を差そうとしているのが安倍氏だ。しかもノコノコとモスクワへ出掛けて「米軍基地なき二島先行返還」という馬鹿げた口先の約束だけで、日本国民の税金を北方領土のロシア化を推進する「開発援助」というプレゼントまでつけて行こうとしている。
ロシアを巡ってアメリカでは、政府や議会に加えメディアに至るまで、好意的な見方は皆無だ。専門家は、ウクライナ問題や中東情勢をはじめ、アメリカと対立点の多い分野で政策に変化が見られなければ、今後も経済制裁をはじめとした対応は一層厳しくなり、米ロ関係はさらに冷え込むと見ている。そうした米国の意向に逆らってまでプーチンのロシアと仲良くしたいのはなぜだろうか。なにか「悪巧み」を考えているのではないかと勘繰るのは私だけだろうか。