読売新聞の社説「自由貿易を阻む保護主義を廃せ」は的外れだ。

 読売新聞は本日付の社説で「自由貿易を阻む保護主義を廃せ」と主張している。内容は英国のEU離脱や米国大統領の両候補がTPP反対を掲げていることに対する批判だ。
 その論理展開の中で読売新聞は飛んでもない勘違いをしている。「リーマン以後の世界経済の低迷は、各国で失業率の悪化や所得格差の拡大を生み、政治の内向き思考を強める作用をもたらした」とハナシにならない論理展開振りだ。

 リーマンショック以後の世界経済の低迷は供給過多による経済のデフレ傾向がもたらしたものだ。その主因は中国の爆発的な生産能力の拡大にある。その供給過多たるや異常を通り越して狂気の沙汰だ。
 たとえば中国の粗鋼生産能力は年間8億トンに達し、それは中国が投資バブル当時の需要4億トンの倍に達していた。ちなみに日本の年間需要は1億トンに過ぎない。国内で消費しきれない粗鋼が世界の鉄鋼市場へ向けて洪水のように溢れ出し、米国や日本などの粗鋼市場に異常事態を起こしている。

 米国は中国の粗鋼輸出に対してダンピングに抵触するとして提訴する構えだし、日本は日新製鋼がついに音を上げて新日鉄の傘下に入った。中国への投資が企業利益を最大化する近道だとして、世界各国の企業は先を争って中国へ進出した。
 その結果、中国の貿易に占める輸出品の半数が外国企業による、とういう状態だ。安価な製品が世界市場に溢れれば当然のように各国の物価はデフレ傾向にならざるを得ない。それでも中国に投資した企業の利益は最大化している。

 自由貿易が進み関税を廃して自由に「ヒト、モノ、カネ」が行き来するようになると、どういう事態が起こるか。その先進国が英国であり、韓国だ。
 英国はEUという欧州一体化に参加して、短期間に国内に800万人もの労働移民が溢れてしまった。人口6800万人の国に対する800万人だ。日本は人口1億2千万人で、現在は約230万人の外国人がいる。全人口半分の国に、日本の約4倍もの労働移民が押し寄せたのだ。その影響がいかに深刻なものかお解かりだろうか。

 TPPに反対するのを「保護主義」だというのはあまりに短絡に過ぎる。TPPは条約の構造上、日本を丸ごと米国の「金融植民地」にするようなものだ。その格好の例が米国とFTAを結んだ韓国だ。
 たとえば韓国の銀行は一行を除いて、残りのすべては資本金の過半数を外国資本に握られている。韓国内の企業も同様に外国資本に多くを握られていて、いかに銀行や企業が利益を上げようと、その利益は外国投資資本家へ還流されて、韓国内に残らない仕組みになっている。だから韓国の財閥企業が利益を上げようと韓国民の労働賃金は一向に上がらないし、街に腑荒れる失業者たちを雇用しようとする動機にはならない。

 そうした「自由」は投機家たちのための自由であって、国民経済を豊かにするための自由貿易ではない。投機資本による侵略を容易にするための「構造改革」がTPPの真髄だ。だから私はTPPに反対する。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。