米国は世界の警察に疲れている。
世界を支配する、という幻想と付き合うには強大な国力が必要だが、米国は相対的に国力を失い続けている上に、イラクでもアフガンでも泥沼の戦争に足元を掬われて倦み、疲れてしまったのだろう。しかし米国が世界の警察国家として国際社会を仕切るというのが、そもそも幻想に過ぎないのだ。
人は頭の中で空想を風船のように限りなく膨らませることはできる。しかし空想に現実を合せようとすると想定していなかった様々な要素に阻まれて計画を変更し、縮小し、ついには撤退しなければならなくなる。世界に冠たる強大な国家が世界史上いくつか存在したが、それらは瞬間の儚い輝きに過ぎなかった。
地中海沿岸という当時の先進諸国を束ねたローマ帝国はどうなったか、中央アジアの平原から興り西は欧州の一部へ、東はユーラシア大陸の東端まで支配した元はどうなったか。そして七つの海を支配していた大英帝国はどのようにして凋落したのか、歴史を見れば一国が世界を支配しようと試みるのは一炊の夢に過ぎないのは明らかだ。
米国も第二次世界戦の欧州戦線の後方支援と物資生産国との漁夫の利の立場から軍事強国となり、ついには世界支配の幻想に憑りつかれて米国の若者の多くを死地へ赴かせたが、やっと世界支配が幻想に過ぎないと気付き始めたようだ。世界に展開していた米軍を米国本土防衛に必要とされる線まで撤退させるのは当然の帰結だろう。
韓国からも日本からも、米軍は撤退する方向にある。それはこのブログで何度も指摘した。日米安保と在日駐留米軍こそが日本防衛の要と信仰に近い信念を持っている軍事アナリストたちも米国の世界警察国家という幻想に憑りつかれている連中だ。
米軍は基本的に米国本土防衛のために存在する。たとえ日本に駐留する米軍といえども日本の防衛のために存在しているのではない。
しかし、日本を取り巻く近隣諸国に親交を結んで安心な国家は一つとして存在しない。どの国も隙を見せれば日本の領土を掠め取ろうと虎視眈々と狙い、何かにつけて日本に因縁をつけるヤクザまがいの国家ばかりだ。
言葉面での友好関係は必要だとしても、それが防衛の一環だという幻想は持たないことだ。文化交流も人事交流も、一朝事あれば瞬時にして霧散解消してしまうものだと心得なければならない。そして着々と防衛力の増強を図らなければ米軍の撤退による軍力バランスの空白を隣国に衝かれかねない。
日本国は日本国民が守る、という当たり前のことを政府は宣言することだ。そして核武装も視野に入れて武器開発も行い、武器輸出も解禁することだ。日本だけが愚かな原則を自らに強いている間にも、国連の常任理事国は揃いもそろって武器輸出大国になっている。日本が本気で兵器開発を行えば世界の兵器市場を席巻するだけのものが造れるだろう。その分野を創出するだけでも万を超える人たちの職場が出来ることになる。