正々堂々と政策論で争うべき。
選挙は何であれ、現職が強いといわれている。それは権力を握っているということだ。権力とはポストとカネだ。
まさしく菅氏は権力者の選挙を展開した。議員会館へ赴き議員一人一人の許を訪れ投票を依頼するとともにポストをちらつかせている。
しかし彼が日本の首相であるなら、彼が面会すべきは為替担当の官僚であり、日銀当局であったはずだ。昨日は円高が進み一時83円台へ突入していた。しかし菅氏は危機感を覚えるでもなく、議員会館を人事の空手形を乱発しながら歩いていた。
こうした時期に「円高も悪いことばかりではない」などと能天気なというより、為替政策を惑わすような発言を平気でする評論家がいる。たとえば強力な円を武器に海外の企業買収を行うべきだ、海外投資を行えば大きなリターンが望める、と言った類のものだが、それが国民経済とどの程度リンクした話なのか評論家氏の頭脳から欠落している。
円高により輸入品は安くなり「良いこと」ではないかという人もいる。しかしそれにより利を手にする人と、輸出品がドル換算で高額になって売れなくなる損失とどちらが大きいか、考えるなら一目瞭然だ。円高も良いことだ、とする評論家にはそうした国民生活を考える視点が欠落しているのだ。海外投資して手にする利益で多くの国民を食わせることはできないが、自動車や各種商品が輸出できれば多くの国民が暮らせる。そうした当たり前のことを考えないで「円高も良いことだ」というのは能天気な評論家だ。
菅氏も首相として日々何を為すべきかを考えているのなら昨日は議員会館廻りなどに時を費やすべきではなかった。円高は喫緊の国民生活に影響する解決しなければならない課題なのだ。そうした問題意識すらないのなら、即座に退陣すべきだ。彼が首相でいることが刻々と日本の損失だ。
たとえ劣勢であっても首相は公務を優先すべきで、優勢だと大マスコミから太鼓判を押されているのだから職務に精励して良かったのではないか。
それにしても代表選にうつつを抜かす首相に、当然の批判が大マスコミから一言も上がらないのも不思議なことだ。それとも大マスコミも菅氏の手腕を見限って官僚任せにしておく方が安全だと心得ているのだろうか。円高の主要因は米国国内政治の都合からだから、円安を誘導すると米国の怒りを買うかもしれないからだ。官僚たちは景気が悪化しても国民が円高に苦しもうと自分たちの給与に影響は皆無だ。ここ20年の官僚たちの給与水準の推移をみると良いだろう。そこに政治の無策を感じない政治家は無能の誹りを免れない。景気が自身の給与にリンクしないのなら、誰が本気で景気対策をするだろうか。
そして大マスコミも記者クラブに大甘な現体制を維持する菅氏支持を各種政策よりも優先しているのだろう。国民に顔を向けたジャーナリストとは遥かに遠い存在だ。彼らもある種利権構造に巣食うものたちの変種に過ぎない。とてもまともなジャーナリズムとはいえない。
優勢とされる首相が作り笑いを浮かべて議員会館を廻るさまは無能。無策な首相そのものだ。83円台に突入した瞬間に顔をこわばらせて官邸に引き返さない程度の者に、この国の首相を任せるのが「クリーンでオープンな」政治を実現することなのだろうか。テレビでバカげた菅氏支持理由を述べていた横粂議員には是非とも聞いてみたい。