停戦協議の開始を邪魔するテロ集団。

<米国とイランによる対抗封鎖でホルムズ海峡の航行が混乱し、世界のエネルギー市場が大混乱を来たすなか、イランの同盟勢力がもう一つの重大な海峡危機を引き起こそうとしている。
  イエメンの親イラン武装組織フーシ派は6月8日、「イスラエル関連船舶の紅海の通航を全面的に禁止する」と発表した。米国主導の和平交渉が膠着するなか、イランとイスラエルの間で攻撃の応酬が激化し、世界貿易に更なる混乱が広がるとの懸念が高まっている。
 紅海航路の封鎖再開は大きな経済的影響を伴う。フーシ派はガザ戦争勃発後の2023年秋から紅海で商船攻撃を展開し、スエズ運河の物流に大きな影響を与えた。エジプトのスエズ運河を通過する船舶数は約3分の2減少し、多くの船舶がアフリカ南端を迂回する、長くコストのかかる航路を余儀なくされた。

作戦は、昨年10月にイスラエルとハマスが停戦に達するまで約2年間続いた。
 しかし、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動によって、イラン主導の「抵抗の枢軸」が再び活性化した。レバノンのシーア派組織ヒズボラは戦闘に復帰し、フーシ派もイスラエルへの長距離攻撃を再開している。
 フーシ派は、ここ数日イランとイスラエルの攻撃が再燃したことから、イランとの連帯を示すため、作戦をさらに拡大する構えを見せている。
 フーシ派関係者は本誌に対し、「イスラエルはレバノンやガザでの合意を尊重せず、米国もそれを容認している。我々はイスラエルの侵略と断固として戦う」と語った。「我々は『戦線の統一』の一部であり、それこそがイスラエルの無法行為を終わらせる理想的な解決策だ」

停戦に生じた亀裂
「世界は、イスラエルがこの地域で絶えず問題を引き起こすことで、世界経済に重大な挑戦を突きつけていることを理解しなければならない」とこの関係者は述べた。「過去数年にわたりイエメンに課されてきた経済・物流面での締め付け、そしてイランや他の抵抗勢力に対する圧力は終わらなければならない」
 イランとイスラエルの最新の攻撃の応酬は6月7日に始まった。イスラエルがレバノンのヒズボラを攻撃したことへの報復として、イランがミサイルの一斉発射を行った。
 ドナルド・トランプ米大統領は4月8日に停戦を発表し、その後イランとの和平交渉が始まった。協議は現在も続いているが、主要な問題で依然として対立している。その一つが、イスラエルがレバノンへの攻撃を止めるべきだというイランの要求だ。
 しかし先月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はレバノンでの作戦強化を発表した。
 ネタニヤフはヒズボラに決定的な敗北を与えることを目指し、レバノン政府による武装解除を求めている。レバノン政府は、イランとイスラエルの双方が同国を戦争に引き込んでいると非難している。
 トランプとネタニヤフの間で激しいやり取りがあったとの報道も浮上した。トランプ自身も後に、レバノンのヒズボラ拠点への攻撃計画を進めないようイスラエル側に求めたことを認めた。
 イスラエル国防軍(IDF)はその後、ヒズボラによる継続的な作戦への報復として、レバノンの首都ベイルート南郊ダーヒヤ地区にある「ヒズボラのテロ組織司令センター」を攻撃したと発表した。これを受け、イランは4月の停戦開始以来初めてイスラエルへのミサイル攻撃を実施した。

ヒズボラへの攻撃を強化したイスラエル
 トランプは6月7日、米ニュースサイト「アクシオス」のインタビューで、イスラエル首相に報復を控えるよう求めたと明らかにした。だがイスラエルは8日、テヘランやイラン各地の目標を攻撃した。
 イスラエル国防軍(IDF)は、イランの防空システムや兵器生産に関与しているとされる石油化学施設、その他の軍事施設を標的にしたと主張している。これに対しイランは新たなミサイル攻撃で応じた。
 フーシ派も8日、テルアビブの「重要な軍事目標」を攻撃したと発表した。IDFによれば、この攻撃は迎撃されたという。
 トランプは7日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「イスラエルとイランは直ちに発砲をやめなければならない」と投稿した。その数時間後、イラン軍のハタム・アル・アンビヤ中央司令部はイスラエルへの作戦停止を発表したが、ヒズボラへの攻撃が続けばさらに厳しい措置を取ると警告した。
 イスラエルのオフィール・アクニス駐ニューヨーク総領事は声明で、「われわれは、西側文明、そして米国や欧州を破壊しようとする残虐な敵と、その協力者であるヒズボラ、ハマス、フーシ派に屈しない」と述べた。
 フーシ派が紅海および周辺海域に対する実効的な封鎖を再開した場合、すでに不安定な国際貿易に大きな影響を与える可能性がある。
 試算によれば、紅海と地中海を結ぶエジプトのスエズ運河を通らず、南アフリカの喜望峰を迂回する場合、大型タンカーでは1航海あたり最大100万ドルの追加コストが発生し、輸送日数も数週間延びる。

紅海封鎖再開の経済リスク
 新たな封鎖の代償はさらに大きくなる可能性がある。ホルムズ海峡では、イランが課した通航料金や保険料の高騰、海峡を通る船舶数の減少によって、石油・ガス輸送コストが急騰している。大規模な戦闘が再燃すれば、輸送量はさらに減少する可能性が高い。
 トランプは昨年、数週間にわたり米軍の空爆を強化して、フーシ派の紅海での影響力を削ごうとしたが、最終的には停戦に至った。フーシ派は依然として大規模な兵器庫を保有しているとみられ、2015年初頭の内戦中に掌握した首都サヌアを含むイエメン国土の約3分の1、人口の約80%を支配しているとされる。
 サウジアラビアの支援を受けるイエメンの国際承認政府は、2022年4月に国連仲介の停戦が成立して以降、フーシ派に対する大規模攻勢を行っていない。今年に入ってからはむしろ、アラブ首長国連邦(UAE)が支援する南部の分離独立派勢力の解体に注力してきた。
 イエメン停戦以前、フーシ派はサウジアラビアやUAEに対してもミサイルやドローンによる攻撃を実施していた。
 その後、米国・イスラエルとイランの戦争が始まると、湾岸協力会議(GCC)の他の加盟国もイランから直接攻撃を受ける事態となり、地域では緊張緩和を求める声がさらに強まっている。
 イランがイスラエルへの攻撃停止を決定したことを受け、トランプは8日、両国が今回の戦闘終結に向けて前進しているとの見方を示した。一方で、最終合意に達するまではテヘランへの封鎖を維持する方針だと述べた。

「和平」に向けた最終交渉
 トランプはトゥルース・ソーシャルで、「イスラエルとイランの双方が即時停戦を望んでいる。『和平』に向けた最終交渉は進行中であり、無知や愚かさが邪魔をしない限り実現するだろう」と投稿した。
 さらに、「最終合意に達するまで封鎖は維持され、全面的に継続される。事態は速やかに動くはずだ」と述べた>(以上「Newsweek」より引用)




イエメンのフーシ派がイスラエルに対して参戦、紅海封鎖を再開へ イラン戦争拡大の危機」との見出しに過剰反応を感じる。なぜならイラン革命防衛隊にそれほど戦力は残っていないし、フーシ派も軍備が拡大して、軍事的脅威が増しているとは思えないからだ。
 実際に米軍を攻撃しているミサイルは移動式のもので、米軍の攻撃ヘリを撃墜したのも肩に担ぐ中国製のロケットランチャーだったという。本格的な戦争に拡大する「脅威」など何処にもない。ただイラン革命防衛隊がホルムズ海峡を封鎖すれば、それはイランにとっても原油輸出ができないだけでなく、イラン国内の油井を止めることになり、イラン経済崩壊を意味する。

 それでもイラン革命防衛隊は利権確保のために停戦協議を邪魔する必要がある。ヒズボラもフーシ派も、イラン革命防衛隊の利権が失われれば存在できなくなる。イラン革命政府が彼らを資金と武器を支援していたからだ。もちろんハマスもイラン革命防衛隊のガザ「部隊」のようなものだ。
 中東の平和を達成するためには、イラン革命政府そのものを瓦解させなければならない。そしてイラン革命防衛隊を殲滅しなければならない。しかし、そうすると戦火がイラン全土に及び、イラン国民の多くが難民化する可能性が高い。トランプ氏はそうした事態を避けるためにピンポイント攻撃に限定し、イラン全土への攻撃を自重している。

 しかし、それを良いことにして停戦協議を邪魔するイラン革命防衛隊は中東の平和にとって邪魔な存在だ。トランプ氏が突如としてイラン革命防衛隊を徹底的に排除する決断をしないとも限らない。そうするとイラン全土を空爆することになり、フーシ派の拠点も空爆することになる。多くの市民の命も奪われることになり、中東の悲劇が拡大する。
 最も望ましいのはイラン国民が蜂起して、イラン革命防衛隊をイラン内部で始末することだ。もちろんイラン国民がイラン革命政府を打倒して、イラン国民による民主政権が樹立されることが望ましい。しかし、そうなる可能性は極めて低いようだ。民主国家の成立にはある程度の国民の教育レベルが必要だが、イランにそうした環境はないようだ。トランプ氏がイラン全土の空爆をされる限り、「熟し柿」作戦を続けるしかない。