「一日でも長く独裁者の地位が守れるか」だけが独裁者の最大唯一の関心事だ

ロシアの銀行危機
 現在ロシアとの戦争を戦っているウクライナが、経済面でも大きな痛みを受けているのは間違いないが、ロシアにも大きな経済的な痛みが発生している。その痛みは恐らく多くの人たちが思っている以上に深刻なものだ。
 2月に入って2025年の第四四半期(10月から12月)に、モスクワ信用銀行というロシアで7番目に大きな銀行が、90億ルーブル(180億円)の純損失を計上したということが報じられた。モスクワ信用銀行の預金量は3兆ルーブル(6兆円)規模だから、180億円程度の損失を計上したからといって、直ちに経営が行き詰まるものではないが、注目したいのは貸し出し残高の28%が延滞債権になっているというところだ。これは異常としか言いようがない。
 ちなみに、東京商工リサーチが昨年12月に発表した日本の銀行の不良債権比率は1.06%だ。延滞債権と不良債権は実際には違うもので、延滞債権が全て不良債権として分類されるわけではない。それでも28%という延滞債権比率が異常に高いのは、イメージできるだろう。
 昨年7月にブルームバーグは「ロシア大手銀行、来年の政府救済要請を内々に議論-関係者」との記事を掲載した。この記事には、ロシアの一部大手銀行の幹部が、今後1年にわたって不良債権比率の悪化が続くようであれば、今後12カ月以内に公的資金の注入が必要になる可能性を協議していることが記されている。今のままでは銀行経営がうまくいかず、公的資金の注入が必要になるんじゃないかという話し合いが、個別の銀行の垣根を超えてなされるくらいに、ロシアの銀行の経営状態は厳しい環境になってきているのである。
 ブルームバーグはこの件についてロシア中央銀行にコメントを求めたが、返信はなかったとも、記事に記されている。
 ここからすると、この記事は飛ばし記事などではなく、こうした動きがロシアの銀行業界の中にあったのは、間違いない。ロシアの銀行側からブルームバーグに対して、こういうネタが恐らくは意図的にリークされたもので、銀行業界がロシア政府に対してSOSを発したと見るべき話だ。
 ロシアの銀行全体がモスクワ信用銀行と並ぶくらいにひどい経営状況に陥っているのだが、この半年ほどの間にロシア政府から銀行救済の動きが鈍いために、ロシア信用銀行が内情を開示することで、実際の厳しさを改めて訴えたということのように、私には感じられる。
 そもそも、ロシアの中央銀行が、現在ロシア経済が直面している経済的困難を考慮して、銀行に対して、不良債権認定の柔軟化、引当金積み増しの猶予、一部情報開示の簡略化を認めて、融資条件を緩くするように求めている。
 昨年12月にロシア中央銀行は市中銀行に対して、「ロシア中央銀行は銀行が債務再編を行うことを推奨する」との文書を出している。債務再編というのは、従来のままでは不良債権扱いになるものについて、融資条件を変更して、不良債権扱いにならないようにしてやる処置だと考えればいいが、こういう処置を銀行側が取ることを、さらに半年延長するということが、この文書には書かれている。目先の破綻を回避するために、中央銀行が市中銀行に無茶を強いているのが、透けて見えるだろう。

軍需経済のはずなのに製造業落ち込み
 さて、ロシアというと、軍需によって製造業がどんどん伸びているイメージがあるかもしれないが、それは過去の話だ。
 製造業購買担当者指数(PMI)は、50を上回ると好調、50を下回ると不調となるが、ロシアの製造業PMIは、昨年6月から直近発表の今年1月まで、8ヶ月連続で50を下回り続けている。ロシアのノバック副首相にしても、2025年1~9月の投資成長率はわずか0.5%にとどまり、通年では0%前後と語っている。恐らく実際の経済はこれよりもさらに悪いと見るべきだ。
 ノバック副首相がこうした発表を行った直後に発表された政府の統計機関「ロスタット」の統計によると、2025年の第3四半期(7~9月)に、過去5年間で初めて投資がマイナス成長を記録し、マイナス3.1%になった。経済発展省は、2026年の投資が0.5%減少すると予想している。
 西側の制裁によって、西側の進んだ製品を入手できなくなり、その分を国産化する必要もあって、一時期はかなりの投資がロシアの製造業にはなされてきた。そうした置き換えの需要も一巡して、これ以上の伸びは期待できなくなっているのだろう。
 インフレを抑制するために、ロシア中央銀行は政策金利を今なお15.5%という高金利に設定しているが、こうした高金利が新規投資に大きな影をもたらしている側面も強い。
 例えば、高金利のために、住宅建設が減速し、自動車産業が縮小し、民間投資が停滞する中で、一般用途の鋼材需要はかなりの落ち込みを見せている。当然ながらロシアの鉄鋼産業はこうした痛みを受けて、無休休暇を従業員に取らせたりしている。解雇しないで無休休暇にしているのは、失業率統計に悪影響が出ないためだ。
 ロシアの鉄鋼業界は財務環境が深刻化して、操業短縮、無休休暇を含めた人減らし、一部溶鉱炉の一時停止などのコスト削減措置を進めており、様々な税負担を軽減してほしいとロシア政府に訴えている。ただ、これに対して政府側は、今のところは税の減免を認めない方針のようだ。

もう何ヵ月も給料未払い
 こうした経済の減速は、労働者の生活にも影響を与えている。何ヵ月も給料が支払われない労働者が増えており、2025年9月末時点で未払い賃金の総額は19.5億ルーブル(40億円)に達し、前年の同時期と比べて4倍に増加した。40億円程度は大した金額ではないとの見方もできるが、実はこの統計で出ている未払い賃金は、中堅以上の、それなりに規模の大きい企業に限られていて、小規模事業体を含めた実際の未払い賃金の規模はこれよりもはるかに大きいと見られている。
 未払い賃金労働者は建設労働者が多いようだが、高速道路建設、地下鉄建設などの大規模公共事業に関わる分野でも給与未払いが発生している。石油・石炭などの鉱山系の労働者、教師、医療スタッフなど、未払い賃金はかなりの広がりを見せている。
 こうした未払いは高金利のせいも大きいが、それだけではない。
 ロシア連邦財政は、1月の収入が前年よりも11.6%落ち込んだ2兆3620億ルーブル(4兆8000億円)にとどまり、1月だけで1兆7180億ルーブル(2兆5000億円)の赤字を記録した。この1ヶ月の赤字額は、年間予想の半分がこの1月だけで生じたという、実に大きなものだ。
 これはロシア政府からすれば、想定外の話だっただろう。というのは、ロシアでは日本の消費税に相当する付加価値税の税率が、今年1月から20%から22%に1割引き上げられているからだ。税率が上がれば、税収は当然増え、税収が増えた分だけ、財政収入も増えることになるはずだ。ところが、実際には財政収入が大きく落ち込んだのだ。
 これはロシアの国家財政の柱である石油・ガスの関連収入が、国際的な価格低迷を受けて、わずかに3930億ルーブル(8000億円)に留まったことが大きく影響している。ロシア政府としては、石油・ガスの関連収入は、1ヵ月で2兆ルーブル(4兆円)くらい欲しいところだが、実際にはその1/5程度しかないのだ。

そしてインフレ
 ちょっと脇道に逸れるが、この記事から非常に興味深いことがわかる。付加価値税の収入は25%近く増えて1兆1300億ルーブルに達したというのだが、これをもとに前年の付加価値税の収入を計算すると、9000億ルーブル程度だったことがわかる。このことから、今年は2300億ルーブル程度増えたことになる。本来税率が1割しか増えていないのであれば、9000億ルーブルだった付加価値税収は9900億ルーブル程度に収まるはずだ。GDPがロシア連邦統計局が発表した通り1.0%の増加で、その分だけ国民の支出が増えたとしても、ちょうど1兆ルーブル程度にしかならないだろう。
 ところが、蓋を開けたら1兆1300億ルーブルに達したということは、どういうことを意味するのか。それはインフレによって名目の数字がかさ増ししているということを意味すると理解すればよい。ここからすると、インフレがなければ1兆ルーブル程度だったものが、インフレによって1兆1300億ルーブルに達したと見れば、インフレ率は13%くらいあったことになるはずだ。ロシアの公式の政府統計では昨年1月から今年1月までのインフレ率は6.0%だから、実際のインフレと統計上のインフレが大きく食い違っていることが推察されるのだ。ロシアの公式統計が全然信頼が置けないというのはよく指摘されるところだが、こんなところからもわかる。
 こう考えると、公式発表のGDPの1%成長にしても、本当はウソなんじゃないかと、疑うべきではないか。名目値の経済成長率が本当の数字であっても、インフレ率が大きく違っていれば、実質の経済成長率は大きく異なる。この仮定に基づくと、本当はロシア経済は2025年段階でかなり大きなマイナス成長に陥っていて、インフレ率は15%以上あったと見るのが妥当なのではないかと思われるのだ。
 そうなるとかなり深刻なスタグフレーション状況にロシア経済は落ち込んでいたことになるが、このインフレを抑え込むために、ロシア中央銀行が今なお15.5%という高い政策金利を維持していると考えると、ロシア中央銀行の行動が比較的合理的なものとして理解されることになる。
 話が脇道に逸れたが、こうした状況を見れば、ロシアの財政が想像以上に苦しいものであることが理解できるだろう。
 今、アメリカの圧力を受けて、インドがロシア産の原油の購入を手控える動きに出ている。2月6日に米印の貿易枠組みに関する共同声明が発表になり、アメリカはインド製品に課していた関税のうち25%分を撤廃すると発表した。共同声明にはロシア産原油の扱いには触れていないが、トランプ大統領によると、インドがロシア産原油の輸入を停止することを約束したためだとされている。そして実際に、インディアン・オイル、バーラト・ペトロリアム、リライアンス・インダストリーズというインドの主要石油精製業者3社は、3月積みと4月積みのロシア産原油の購入を手控えているようだ。インドがロシア産原油の購入を控えるようになれば、ロシアの財政状況がさらに悪化することになるだろう。

防衛産業の瀬戸際
 ロシアが厳しい財政状況に陥る中で、ロシア政府は政府と契約する民間企業にも厳しい条件を突きつけている。昨年12月にロイターは「焦点:ロシア防衛企業の苦悩、経営者が赤の広場で焼身自殺を図るまで」という記事を公開した。
 ウラジーミル・アルセニエフ氏が経営する「ボルナ中央科学研究所」は、戦車に搭載する通信装置の部品を製造しているが、ロシア国防省が設定した価格で、決められた納期に合わせて作るのは無理だとして、アルセニエフ氏はロシア政府に抗議の意思を示すために、モスクワの赤の広場で全身にガソリンをかけて、焼身自殺を図ったことを伝える記事だ。
 ロシア政府はソ連時代の独裁者スターリンの恐怖体制さながらに、契約義務を果たさなければ刑務所に送ると脅し、アルセニエフ氏は猛烈なペースで生産を拡大したが、生産計画に遅れが生じ、当局者に助けを求めても無視されたという。納税不履行により同社の口座は凍結され、その結果、労働者に給料が払えなくなったとも書かれている。
 似たような話は他にもある。昨年8月に「AOクロンシュタット」というロシアを代表するドローンメーカーが、経営破綻の瀬戸際に立たされていることが伝えられた。この会社はアメリカの優秀な攻撃型ドローンであるMQ-9リーパーに相当するロシア製の長距離ドローンを生産している企業で、ロシア政府にとっての戦略的価値は非常に高いはずだ。
 そんなこともあって、ロシアの継戦能力を削ぎ落とそうとするウクライナからの相次ぐドローン攻撃で大きな損害を被っている。当然そのことも同社の経営に大きな影響を与えているが、それだけではない。もともと同社の財務状況が厳しくて、取引先から6億ルーブル(12億円)を超える訴訟が提起されているというのだ。ロシア政府の求めに応じて、大量のドローンを納品しながら、そのドローンの代金が適切に支払われていないことが、ここから浮かんでくるだろう。

もし戦争に勝利できなければ
 2025年12月9日には、ロシアの第308航空整備工場で修理を行なっていた大型輸送機An-22が、修理結果を確認するための試験飛行中に墜落し、乗組員8名全員が死亡するという事故が発生した。アクチュエーター(駆動装置)の整備不良が原因だが、これが整備工場の深刻な財務状況を反映したものではないかと疑われている。この工場の金欠は凄まじく、工場を稼働する電力料金も支払われておらず、従業員に対しても9月以降給与が支払われていないのだ。適切な部品の調達もできない状態だったことが伺える。この工場がまともな仕事ができる状態になかったことがわかるだろう。
 驚くべきは、この工場はこうした軍事輸送機の修理が行えるロシア国内唯一の工場だというところだ。つまり、この工場がなければ、ロシアは軍事輸送機の維持に深刻な課題に直面するのは確実なのだ。しかし、そんな重要な工場を支えるだけの資金をロシア政府は提供せず、この工場が破綻の縁に追いやられているということが、この事故によって明らかになった。
 こうした綻びが出てきているということに対して、今後プーチン政権は渋々ながらも対応は進めていくだろう。だからこれで一気にロシア経済が崩壊し、ロシアの継戦能力がなくなるということはないと見た方が正しいと思う。また、こういう時には独裁政権は強いというのも事実だ。もっと経済的には深刻な状態にある中国でも、体制は維持されているし、そもそもロシアの経済がいくら酷い状態だといっても、ロシアの攻撃を受けているウクライナの方が、当然ながら経済はさらに深刻なのは言うまでもない。
 そうだとしても、ロシア国民が今、深刻な経済状況の中で凄まじい痛みに耐えているのは、間違いないところだ。ここまでの痛みをもたらしながら、この戦争でロシアが勝利できないとなれば、プーチン体制は持たないだろう。そんな経済状態に、今ロシアは突入していることを見落とすべきではない。>(以上「現代ビジネス」より引用)





「モスクワ信用銀行が純損失を計上」プーチンのロシアが想像を絶する経済苦境に陥っている」と題して朝香 豊(経済評論家)氏がロシア国民の酷い有様を報告している。
 ロシア経済は既に崩壊している。自由主義諸国なら政権も崩壊している段階だが、独裁政権は中国を見ても分かるように「恐怖」による支配で、経済崩壊が起きて国民生活まで破壊されても政権維持が出来るようだ。

 その代わり、国民は窮乏生活を強いられている。17%を超える猛烈なインフレと金利15.5%の経済下で、給料が遅配し鉄鋼製造企業が無給休暇を従業員に強制するようでは兵器製造すらままならない状況ではないか。
 それでもプーチンはドローンなどの最先端兵器の納入を強制し、ロシア最先端ドローン製造企業の社長が赤の広場で焼身自殺したという。兵器製造企業に投資して製造を促そうにも財政が赤字となり、国庫が払底していてはどうにもならない。既に公務員や医師や教師などの給与も遅配しているという。

 ロシア軍は前線で無謀な突撃攻撃を繰り返しているが、その圧力は次第に弱まり兵士の消耗が激しくなっているという。現在はウクライナ軍の反撃によりロシア軍が後退しているという。前線維持のためにロシア軍は兵士の補給を要求しているが、ロシア司令部は兵士の手当てに苦慮しているようだ。
 こうした状態でプーチンが戦争を持続することに何の意味があるのだろうか。既にロシア軍が勝利することはない。現状は「負けないため」の戦闘を持続させているだけだ。しかしロシア国内は戦争持続に必要な兵器供給能力を喪失しつつあるし、兵士の供給そのものが枯渇している。

 現状はプーチン及びその取り巻きたちのために戦争を継続しているようなものだ。一時は戦時経済により好景気に沸いた軍需産業の企業経営者たちも材料の供給不足や納入した兵器の代金不払いなどで苦境に喘いでいる。ロシアで唯一の貨物飛行機の整備工場は電気代すら払えず、整備した輸送機がテスト飛行で墜落して乗員8名全員が死亡したという。
 それでもプーチンはウクライナ戦争停戦協議の条件を吊り上げて会議の席に着こうとしない。独裁者が絶対権力を握ると始末が悪い。彼らは国民の事など何も考えてはいない。いかにして「一日でも長く独裁者の地位が守れるか」だけが最大唯一の関心事だからだ。

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