ロシアはウクライナ戦で消耗し尽くして、再起不能になる。
<<ウクライナに固執し続けるプーチンに周辺親ロ派諸国の「ドミノ倒し」が迫る。西側がロシア版「ドミノ理論」を戦略的に使えば、プーチン失脚も見えてくるはずだが──>
ウクライナから日々伝えられるニュースを見て、多くの人はこの戦争の行方に悲観的な予想を抱いているだろう。ロシア軍は人的犠牲をいとわず執念深く侵攻を進め、じわじわと支配地域を拡大している。
だが、こうした見方では、「木(戦況を伝える日々のニュース)を見て、森(実際にはロシアがどれほど打撃を受けて傷ついているか)を見ず」になりかねない。
今のプーチンは偏執的にウクライナにこだわるあまり、それ以外の地域の地政学的な課題に目を向けようともしない。結果、親ロシア派の国や地域が次々に倒れるロシア版「ドミノ理論」が現実になりつつある。
最初のドミノが倒れたのは2023年の秋。アゼルバイジャン軍がアルメニアと領有権を争うナゴルノカラバフに侵攻し、多数のアルメニア系住民が家を追われた。
このときアルメニアの重要な安全保障上のパートナーで、この地域に平和維持部隊を駐留させていたロシアはアゼルバイジャン軍の作戦を阻止しなかった。
1年後、次のドミノが倒れた。シリアのバシャル・アサド前大統領の失脚で、ロシアは中東における重要な同盟国を失ったばかりか、アサド率いる独裁政権の後ろ盾としての自国のメンツまで失うことになった。
この2つのドミノを倒したのは、どんな代償を払ってもウクライナを従属させようとするプーチンの執念だ。そこから2つの疑問が浮かぶ。この状況下で、次に倒れる親ロ派のドミノはどの国・地域か? そして西側はこの状況を最大限に利用する準備ができているだろうか。
まず、最も長くロシアの庇護下にあったドミノに目を向けてみよう。それはモルドバ東部の沿ドニエストル地域だ。ロシア系住民が多く住むこの地域はソ連崩壊後にロシアの支援を受けてモルドバからの分離独立を宣言、未承認国家となった。
西側はこの地域の厄介な帰属問題に首を突っ込もうとしなかった。
1990年代末には、ロシアがモルドバから部隊を撤収させるという約束を守らないことは分かり切っていた。ヨーロッパの真ん中に親ロ派の独立国を誕生させる計画を断念するとの約束も守られるはずがない。それでも西側はこの地域を現状のまま放置した。
ところが今になって突然、ロシアはこの地域を見捨てたようにも見える。
今年初め、ロシアはウクライナ経由のモルドバへの天然ガス供給を停止した。ロシア産ガスで発電を賄っていた沿ドニエストル地域は文字どおり暗闇に包まれた。
その後に電力回復に向け一定の進展はあったが、ロシアの後ろ盾を失ったこの地域が「崩壊」するのは時間の問題ではないかとの臆測が飛び交った。
だが西側はこの事態が戦略的に何を意味するかはおろか、可能な解決策を探る議論にも加わらなかった。
沿ドニエストル地域はウクライナと国境を接していて、ロシアはこの地域を最終的にウクライナの支配地域と連結する構想を持っている。にもかかわらず西側がこの地域に関心を示さないのは全くもって不可解だ。
さらに同じカフカス地方のジョージアは、ここ何年かで最悪の政治的な混乱に陥っている。昨年10月の議会選挙(不正を指摘する声が多い)では、親ロ派の与党「ジョージアの夢」が勝利を宣言。
有権者の信任を受けたとして親EUから親ロシアへの路線転換を急ピッチで進めている。同党指導部はジョージアの民主主義体制を切り崩そうとさまざまな策を弄してきた。昨秋の議会選はその総仕上げのようなものだ。
ウクライナではビクトル・ヤヌコビッチ元大統領が自国の民主主義体制を骨抜きにし、親ロ路線を突き進もうとしたために14年にマイダン革命が起きた。
今のジョージアはそれと似た状況にある。EU加盟を望んでいた国民は権威主義に急傾斜する与党に猛反発しており、このままでは政権崩壊を招きかねない。
ロシアはウクライナにこだわるあまり、引き返し不能な状態まで自国軍を摺り潰している。「ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふり」をする「プーチン失脚」へのスイッチとは?」との記事を読んで、モスクワのグリップが弱まればロシア帝国は内部から崩壊する、との感を強くした。
ウクライナから日々伝えられるニュースを見て、多くの人はこの戦争の行方に悲観的な予想を抱いているだろう。ロシア軍は人的犠牲をいとわず執念深く侵攻を進め、じわじわと支配地域を拡大している。
だが、こうした見方では、「木(戦況を伝える日々のニュース)を見て、森(実際にはロシアがどれほど打撃を受けて傷ついているか)を見ず」になりかねない。
今のプーチンは偏執的にウクライナにこだわるあまり、それ以外の地域の地政学的な課題に目を向けようともしない。結果、親ロシア派の国や地域が次々に倒れるロシア版「ドミノ理論」が現実になりつつある。
最初のドミノが倒れたのは2023年の秋。アゼルバイジャン軍がアルメニアと領有権を争うナゴルノカラバフに侵攻し、多数のアルメニア系住民が家を追われた。
このときアルメニアの重要な安全保障上のパートナーで、この地域に平和維持部隊を駐留させていたロシアはアゼルバイジャン軍の作戦を阻止しなかった。
1年後、次のドミノが倒れた。シリアのバシャル・アサド前大統領の失脚で、ロシアは中東における重要な同盟国を失ったばかりか、アサド率いる独裁政権の後ろ盾としての自国のメンツまで失うことになった。
この2つのドミノを倒したのは、どんな代償を払ってもウクライナを従属させようとするプーチンの執念だ。そこから2つの疑問が浮かぶ。この状況下で、次に倒れる親ロ派のドミノはどの国・地域か? そして西側はこの状況を最大限に利用する準備ができているだろうか。
まず、最も長くロシアの庇護下にあったドミノに目を向けてみよう。それはモルドバ東部の沿ドニエストル地域だ。ロシア系住民が多く住むこの地域はソ連崩壊後にロシアの支援を受けてモルドバからの分離独立を宣言、未承認国家となった。
西側はこの地域の厄介な帰属問題に首を突っ込もうとしなかった。
1990年代末には、ロシアがモルドバから部隊を撤収させるという約束を守らないことは分かり切っていた。ヨーロッパの真ん中に親ロ派の独立国を誕生させる計画を断念するとの約束も守られるはずがない。それでも西側はこの地域を現状のまま放置した。
ところが今になって突然、ロシアはこの地域を見捨てたようにも見える。
今年初め、ロシアはウクライナ経由のモルドバへの天然ガス供給を停止した。ロシア産ガスで発電を賄っていた沿ドニエストル地域は文字どおり暗闇に包まれた。
その後に電力回復に向け一定の進展はあったが、ロシアの後ろ盾を失ったこの地域が「崩壊」するのは時間の問題ではないかとの臆測が飛び交った。
だが西側はこの事態が戦略的に何を意味するかはおろか、可能な解決策を探る議論にも加わらなかった。
沿ドニエストル地域はウクライナと国境を接していて、ロシアはこの地域を最終的にウクライナの支配地域と連結する構想を持っている。にもかかわらず西側がこの地域に関心を示さないのは全くもって不可解だ。
さらに同じカフカス地方のジョージアは、ここ何年かで最悪の政治的な混乱に陥っている。昨年10月の議会選挙(不正を指摘する声が多い)では、親ロ派の与党「ジョージアの夢」が勝利を宣言。
有権者の信任を受けたとして親EUから親ロシアへの路線転換を急ピッチで進めている。同党指導部はジョージアの民主主義体制を切り崩そうとさまざまな策を弄してきた。昨秋の議会選はその総仕上げのようなものだ。
ウクライナではビクトル・ヤヌコビッチ元大統領が自国の民主主義体制を骨抜きにし、親ロ路線を突き進もうとしたために14年にマイダン革命が起きた。
今のジョージアはそれと似た状況にある。EU加盟を望んでいた国民は権威主義に急傾斜する与党に猛反発しており、このままでは政権崩壊を招きかねない。
「プーチン後」に備えよ
一方、西側の視界には入っていないようだが、近々倒れそうな最大の親ロ派ドミノはベラルーシだ。この国では20年に全土で民主化要求デモが吹き荒れ、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の長期にわたる独裁支配が崩壊の危機にさらされた。
だが当時の米政府はベラルーシの民主化運動を支援するどころか、「良きに計らえ」とばかりに影響力の行使をロシアに委ねた。これは1期目のトランプ政権が犯した外交政策上の最大の過ちの1つだ。
プーチンは窮地に陥ったルカシェンコを救い、25年余り続いた権威主義的な体制を支えた。その恩に報いるためか、ルカシェンコは隣国ウクライナに侵攻するロシア軍に自国の基地を拠点として提供した。
そのベラルーシが今、再び転換点を迎えている。今年1月26日の大統領選挙でルカシェンコは政権の座を維持できたが、それがいつまで持つかは分からない。20年の反政府デモは大統領選の直後に起きた。
今のベラルーシの反政府派は5年前よりもはるかに強固に組織化されている。抗議デモが広がれば、ルカシェンコ政権はあっけなく倒れるだろう。頼りになるはずのパトロンがよそに気を取られていれば、なおさらだ。
以上のような状況下で、西側がより賢明な戦略を描けていないことには驚きを通り越して目まいさえ覚える。EUは今もモルドバの親EU路線を支援しているが、沿ドニエストル地域の帰属については相変わらず知らん顔を決め込んでいる。
ジョージアはどうか。バイデン前米政権は昨年末、この国の与党の創設者で大富豪のビジナ・イワニシビリを制裁対象に指定した。だが2期目のトランプ米政権がそれ以上の戦略を練っているとは思えない。
ベラルーシに対する戦略に至っては、西側の外交専門家の間で議論すらされていない。
プーチンは過去10年間、ロシアの他の重要な戦略目標を差し置いて、ウクライナを支配下に置くことに血道を上げてきた。ウクライナを「子分」にするためなら、自身の政権基盤が揺さぶられるリスクすらいとわないありさまだ。
そのためにプーチンの強権支配が危うくなるとしても、それはまだまだ先の話だろう。だが親ロ派のドミノ倒しの行き着く先はそこだ。だからこそ西側はプーチン後のロシアがどうなるか、いや、どうなるべきか、今から構想を練っておく必要がある。
ドミノはいったん倒れ始めたら、後は次々に倒れるのみ。それに備えることが西側の喫緊の課題だ>(以上「 Foreign Policy Magazine」より引用)
一方、西側の視界には入っていないようだが、近々倒れそうな最大の親ロ派ドミノはベラルーシだ。この国では20年に全土で民主化要求デモが吹き荒れ、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の長期にわたる独裁支配が崩壊の危機にさらされた。
だが当時の米政府はベラルーシの民主化運動を支援するどころか、「良きに計らえ」とばかりに影響力の行使をロシアに委ねた。これは1期目のトランプ政権が犯した外交政策上の最大の過ちの1つだ。
プーチンは窮地に陥ったルカシェンコを救い、25年余り続いた権威主義的な体制を支えた。その恩に報いるためか、ルカシェンコは隣国ウクライナに侵攻するロシア軍に自国の基地を拠点として提供した。
そのベラルーシが今、再び転換点を迎えている。今年1月26日の大統領選挙でルカシェンコは政権の座を維持できたが、それがいつまで持つかは分からない。20年の反政府デモは大統領選の直後に起きた。
今のベラルーシの反政府派は5年前よりもはるかに強固に組織化されている。抗議デモが広がれば、ルカシェンコ政権はあっけなく倒れるだろう。頼りになるはずのパトロンがよそに気を取られていれば、なおさらだ。
以上のような状況下で、西側がより賢明な戦略を描けていないことには驚きを通り越して目まいさえ覚える。EUは今もモルドバの親EU路線を支援しているが、沿ドニエストル地域の帰属については相変わらず知らん顔を決め込んでいる。
ジョージアはどうか。バイデン前米政権は昨年末、この国の与党の創設者で大富豪のビジナ・イワニシビリを制裁対象に指定した。だが2期目のトランプ米政権がそれ以上の戦略を練っているとは思えない。
ベラルーシに対する戦略に至っては、西側の外交専門家の間で議論すらされていない。
プーチンは過去10年間、ロシアの他の重要な戦略目標を差し置いて、ウクライナを支配下に置くことに血道を上げてきた。ウクライナを「子分」にするためなら、自身の政権基盤が揺さぶられるリスクすらいとわないありさまだ。
そのためにプーチンの強権支配が危うくなるとしても、それはまだまだ先の話だろう。だが親ロ派のドミノ倒しの行き着く先はそこだ。だからこそ西側はプーチン後のロシアがどうなるか、いや、どうなるべきか、今から構想を練っておく必要がある。
ドミノはいったん倒れ始めたら、後は次々に倒れるのみ。それに備えることが西側の喫緊の課題だ>(以上「 Foreign Policy Magazine」より引用)
ロシアはウクライナにこだわるあまり、引き返し不能な状態まで自国軍を摺り潰している。「ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふり」をする「プーチン失脚」へのスイッチとは?」との記事を読んで、モスクワのグリップが弱まればロシア帝国は内部から崩壊する、との感を強くした。
既にロシア軍は正規軍としての体裁を失っている。空母の乗組員が歩兵に組み込まれ、歩兵部隊兵士としてウクライナ戦線で突撃しているという。空母乗組員だけでない。空軍パイロットや整備兵まで歩兵部隊員として前線へ送られているという。もはやロシアは常軌を逸して、ウンライナに敗けないために自国軍そのものを擂り粉木で摺り潰しているようだ。
歩兵部隊にしても前線に送る装甲車がないため、普通のトラックに兵隊を乗せて運んでいるという。それはウクライナのドローンの餌食になるようなものでしかない。ロシアはウクライナのドローン攻撃に備えて、無蓋のトラックに兵士を乗せているのだ、と説明している。ドローンを発見すると、兵士たちは銃で撃墜できるからだ、というのだ。
しかし無蓋むトラックで兵士を前線へ輸送するのは余りに無謀だ。クラスター爆弾などを見舞われたなら、すべての兵士が無力化される。前線で戦いに参加する以前に戦列から離脱するのは目に見えている。そうした戦場に長年訓練した空母乗員や航空兵士などを投入するのは正気の沙汰ではない。もはやロシア軍は敗れている、と云わざるを得ない。
これまでロシア軍の「恐怖」で支配していた周辺地域はロシア軍の恐怖が去れば相次いで独立するだろう。またロシア領内の少数民族が暮らす各地域も独立するだろう。独立が予想されるのはシベリアや中央アジアや沿海州地方など、モスクワから遠く離れ少数民族が多く暮らす地域ではロシアから独立する可能性が極めて高い。
そうした動きに対して、軍隊の殆どすべて消耗したモスクワ政府は制御・統率することはできない。そのようなロシア瓦解の道筋が多くのロシア国民にも見えてきた。もはやプーチンの継戦能力は尽きようとしている。欧米諸国はプーチン後のロシア対策を協議すべきではないだろうか。