世界平和を米中・二大覇権国家に委ねたままで良いのか。
<◎「経済成長は中国、安全保障は米国」という前提が揺らいでいる
◎米国の中国に対する優位性、いつまで続くかが問題に
中堅国(ミドルパワー)は今、どう動くべきなのか。トランプ米大統領は軍事作戦を断行しベネズエラのマドゥロ大統領を拘束、イランに対する軍事攻撃の可能性も示唆した。
中国は、南シナ海でのフィリピン船舶への嫌がらせや台湾への軍事的威圧を強めている。世界1、2位の経済大国がいずれもルールに基づく国際秩序の限界を試している。
アジア太平洋地域は長年、「経済成長は中国、安全保障は米国」という単純な構図に支えられてきた。これが1世代にわたる安定と繁栄の土台となり、グローバル化の波に乗って各国の所得と生活水準は向上した。
しかし、経済力も軍事力も大国に及ばない中堅国にとって、その前提が揺らぎ始めている。
トランプ氏は隣国カナダとの貿易合意についても懐疑的な姿勢を示しており、そうした中で、カナダのカーニー首相は北京で習近平国家主席と16日に会談した。
数年前にカナダの元外交官ら2人が中国本土で拘束され、両国関係は冷え込んでいた。しかし、今回の首脳会談では輸入障壁の緩和で合意。カナダが課す中国製電気自動車(EV)への関税も大幅に引き下げられる予定だ。
カナダの首相による訪中は8年ぶりで、カーニー氏は「新しい世界秩序」に言及し、トランプ政権が国際的な規範を根底から覆していると示唆した。
アジアでは、シンガポールの前首相でもあるリー・シェンロン(李顕竜)上級相が米国の一方的な行動に対し、小国にとって大きな問題だとの警鐘を鳴らした。
シンクタンクが8日主催したイベントで、ベネズエラが深刻な国内問題を抱えていることは認めつつも、それが米国の行動を正当化するものではないと主張。「小国の立場からすれば、もしそれが世界の動き方だというなら、われわれは問題を抱えることになる」と語った。
中国との同質性
米移民・関税執行局(ICE)の捜査官が自動車を運転していたレネ・ニコール・グッドさんを7日に射殺した事件は、中国が自国民に対して行使する強権や国際水域での船舶への嫌がらせなど、米国が長年非難してきた行動と似ていると指摘する声もある。
中国とアジア太平洋・アフリカ・中南米・中東・中央アジアの関係を分析するシンクタンク「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト」の共同創設者エリック・オランダー氏は、長らく米国の安定性を前提としてきた小国や中堅国にとって、こうした強硬姿勢は戦略的なジレンマをもたらしていると言う。
オランダー氏は「トランプ氏が全てをひっくり返し、この地域の政府に衝撃を与えた」と語る一方で、「それでも各国は現実的だ。米中を二者択一とは見ておらず、中国を同盟国とも脅
威とも捉えず、経済的な機会と見なしている」と説明した。
米国は依然首位、だがその座はいつまでか
米国の影響力が低下し、北京が追い上げている
Source: ローウィー研究所の「アジア・パワー・インデックス2025」
こうした認識は、シドニーに拠点を置くローウィー研究所の「アジア・パワー・インデックス2025」にも反映されている。これは、軍事・経済・外交・文化の各分野にわたる国家の影響力を測定する年次指数だ。昨年も米国をアジアで最も影響力のある国と評価したが、2位の中国との差は2020年以来最も小さくなった。
主な要因は、おおむね米国の要求に従ってきたアジア各国に対するトランプ氏の政策と関税措置を巡る不確かなスタンスにある。中国は軍事力の拡大を続け、米国の経済的圧力にも自信を持って対応。対抗関税や輸出規制で応じている。
ただし、アジア各国の中国に対する疑念も根強い。係争海域での外国船への衝突や放水、政治的意向に従わない国への経済報復といった強圧的な行動は、国際規範を軽視する姿勢として懸念を強めている。台湾周辺での威圧的行動や急速な軍拡、広範に及ぶ海洋権益の主張も相まって、多くの国々は中国への過度な依存を避けようとしている。
新たな世界で生き残るには、多角的な対応が不可欠だ。中堅国は地域フォーラムや共同声明だけでなく、海洋安全保障や貿易といった実務レベルでも相互協力を深める必要がある。
すでにそうした行動は始まっている。中国に急接近したカナダの姿勢は利己的に映るかもしれないが、カーニー氏はその後、カタールやスイスも訪問し、貿易の分散化を図った。
歴史問題で対立が続いてきた日本と韓国も、中国への不安や米国への不信を共有する中で関係を深めている。オーストラリアとフィリピンも軍事面での連携を強化しており、今年の豪国防支出にはフィリピン国内5カ所の基地でのインフラ整備が含まれる見通しだ。
一方、ローウィー研究所のインデックスで米中に次ぐ第3の影響力を持つとされたインドは、今年4度目のBRICS(主要新興国)議長国を務めている。グローバルサウス(新興・途上国)の橋渡し役としての立場を生かし、貿易統合を一層進める可能性がある。
かつてのルールに基づく国際秩序は、急速に色あせつつある。だが、中堅国に手だてがないわけではない。今こそ主体的に行動しなければ、頼みとする規範が修復不能なまでに崩れかねない。>(以上「Bloomberg」より引用)
「米中が壊す国際秩序、今こそ中堅国の出番」と題する論評がある。現在、世界の覇権をめぐって激しく対立しているのは米国と中国だ。その両国のやりたい放題を許している世界にあっ
て、秩序を取り戻すには「中堅国」が声を上げなければならないのではないか、と問題提起している。
ただBloomberg氏は中国経済を過大評価していないだろうか。もはや中国は「世界の工場」ではない。さらに中国当局が発表しているGDPも実に疑わしい。一部の経済学者によれば中国のGDPは発表している数字の2/3~1/2ほどではないかと推計している。いずれにしても、覇権を唱える米国と中国の意のままに揺れる国際社会を現状のまま放置していて良いとはいえないだろう。
Bloomberg氏は世界を米中二国の恣にしておくのではなく、日本やドイツなどの「中堅国家」が二国間に割って入って新たな秩序を構築すべきだと提起している。まさしく、その通り
だと思う。
現在、世界は米中・両国が世界各国の突き付けた経済政策により大混乱している。米国は世界のジャイアン(アニメ「ドラえもん」の登場キャラクター)と化したやりたい放題の課税政策によりWTOを中心とした国際協調体制は崩壊の危機に瀕している。また中国の経済侵略ともいうべき「一帯一路」政策により、中国とかかわった多くの後進諸国は国家財政破綻の危機に瀕している。そうした経済を梃子にした覇権主義は決して良い結果を生んでいない。
幸いなことに、世界経済は米中・二大国家がさらにほかの国々を凌駕する経済成長を持続させていない。中国はむしろ経済成長がマイナスに転じて国家崩壊の危機に瀕している。
1990年代からグローバリズムが世界を席巻して、サプライチェーンのハブとなった中国は経済発展により軍拡に乗り出した。それにより中国当局が発言力を強め、軍事力の拡大こそが国際社会での発言力を強める、と勘違いしたようだ。先進自由主義諸国が中国当局の発言に耳を傾けるようになったのは中国の軍事力に恐れたからではない。中国に進出したそれぞれの国の多国籍企業経営者の圧力により政治家が対中政策を転換したに過ぎない。だから中国市場の「うま味」が減じれば、企業経営者や投機家集団は対中進出の興味を失い、他の「うま味」を目指して撤退する。そうした経済の非情な原理を中国当局は無視していたようだ。
現在、中国「世界の工場」ではなく、「世界の工場の廃墟」になっている。もはやサプライチェーンのハブの立場を他の国に明け渡そうとしている。産業の「コメ」といわれる半導体は日本がサプライチェーンのハブとして確実な橋頭堡を築いている。かつての半導体大国の地位を日本が取り戻すのは確実視されている。
ドイツはメリケル時代に自動車産業を中国に「全振り」したため、大変な苦境に陥っている。ことにエンジン開発を放棄した空白期間を埋めるには多大な努力を要するだろう。だがマイスター制度の技術大国・ドイツがかつての栄光を取り戻すのに、それほど時間は掛からないだろう。
早晩「軍事大国=覇権国家」という構図は日本が開発している防衛兵器により崩れ去るだろう。いかに核兵器とそれを運ぶミサイルを保有していようと、超高速滑空ミサイルですら迎撃できる「電磁砲」や「レールガン」が配備されれば「無力化」される。さらにドローン攻撃にはレーザー砲がことごとく撃墜するだろう。
そうした物理的な破壊をもたらす「兵器」を無力化する防衛兵器が開発され世界各国に配備されば、二大軍事大国の存在など無視できる。日本は既にレールガンの実用化試射に成功しているし、電磁砲は20cmの鋼鉄を打ち抜く性能試験に成功している。レーザー砲開発も実用配備段階に達している。もはや米中・二大覇権国家が軍事力を背景に世界各国の君臨しようとする野望そのものを粉砕する日が近い。
後は「中堅国家」が二大覇権国家に箍を嵌めるだけだ。緊箍児(「きんこじ」とは『西遊記』で孫悟空の頭に嵌められた輪を指す。三蔵法師が「緊箍呪(きんこじゅ)」という呪文を唱えると、この輪が縮んで頭を締め付け、悟空の暴走を制御するアイテムとして知られている)を
米中に大国家の首根っこに嵌めれば良いだけだ。
現代の緊箍児は「経済制裁」だろう。その緊箍児が有効に働くためにはサプライチェーンのハブを米中から取り上げて、「中堅国家」が掌握すべきだ。そうした意味でも日本が半導体のサプライチェーンのハブとしての立場を築きつつあるのは世界平和にとっても好ましいことだ。これからは中国や米国と対等に渡り合える日本政府でなければならない。そうした意味でも、高市政権は日本の未来像を私たち日本国民に示してくれているといえよう。