世界から孤立する中国。
<トランプが仕掛けた中国への「罠」
中国の習近平国家主席は4月11日、「米国との貿易戦争の激化について、中国は恐れていない」と述べた。習氏が公の場でトランプ関税について発言するのは初めてだ。習氏はさらに、「(米国の)一方的ないじめ行為には共に抵抗すべきだ」と中国訪問中のスペインのサンチェス首相に呼びかけた。
トランプ関税に関して、米国にプラスか中国にプラスかを巡って様々な論評が出ている。当初、トランプ氏がすべての国にトランプ関税を課すと発表したことから、「米国ファースト」どころか世界から米国がデカップリングされるのではないかと思った。しかしここに来て、トランプ氏は「対抗関税措置」を講じなかった国には90日間の猶予を与えると発表して、トランプ関税の実態が対中デカップリングだったことが判明した。
中国の習近平国家主席は4月11日、「米国との貿易戦争の激化について、中国は恐れていない」と述べた。習氏が公の場でトランプ関税について発言するのは初めてだ。習氏はさらに、「(米国の)一方的ないじめ行為には共に抵抗すべきだ」と中国訪問中のスペインのサンチェス首相に呼びかけた。
だが、中国政府の対応に微妙な変化が生じている。 米国からの全輸入品に対する関税を最大125%に引き上げる一方、今後米国がさらなる関税を課したとしても無視する方針を明らかにした。 現行の関税水準で米国からの輸入品が中国市場に受け入れられる余地はすでになく、さらなる関税引き上げの合理性が失われたとしているが、中国ウオッチャーからは「米国が報復しなかった国々に90日間の猶予を与えたことで、米中関係を巡る情勢が変化したことが影響したのではないか」との分析が出ている。 米国が相互関税を発表した時点では「アメリカ対世界」の構図だったが、中国が反撃に出たことで「アメリカ対中国」に変わり、その後、米国が70以上の国々と交渉する姿勢を示したことにより、「世界対中国」に移行したというのがその理由だ(4月11日付RecordChina)。 ベッセント米財務長官は9日、「(中国が対抗措置を講じたことを)大きな間違いだ」とした上で「同盟国と貿易協定を結び、その基盤を築いてから、中国に対して不均衡な貿易構造を是正するよう集団でアプローチする」との構想を示した。
いつの間にか「孤立させられた習近平」
中国も反撃に出ているが、絵に描いた餅に終わりそうだ。 習氏は米国から高率の相互関税を課された東南アジア諸国(ベトナム、マレーシア、カンボジア)を14日から歴訪する。今年初の外遊に赴く習氏は「近隣諸国との全面的な協力を深める」と表明しているが、ベトナム政府はトランプ政権の関税を回避するため、自国を経由して米国に出荷される中国製品の取り締まりを強化しようとしている(4月11日付ロイター)。 西側諸国も、中国との連携に後ろ向きだ。 カナダのカーニー首相は3月末、「価値を共有していない中国との貿易拡大に非常に慎重でなければならない」と述べた。豪州政府も中国からの貿易面での協力要請を拒絶した(4月10日付AFP)。 強硬な態度を見せていた欧州連合(EU)も工業製品の関税をゼロにする案を提示するなど米国に歩み寄りの姿勢を示している。 「トランプ関税に反発して米国との貿易関係を見直す国々が次々と出てくる」と期待していた中国の思惑は、外れてしまった格好だ。
米中関係は「危機的局面」へ
トランプ氏は習氏との会談に意欲を示しているが、両国の交渉は入り口でつまずいたままだ。 中国は「(米国が改善を求める合成麻薬フェンタニル問題は)自国の台頭に対抗するための口実に過ぎない」と思っている節があるが、米国は本気だ。米財務省の金融犯罪捜査部門は9日、フェンタニルに関連する2024年版の報告書を公表し、「中国が主要な供給国だ」と問題視している。 こうして、両国の関係は急速に冷え込んでいる>(以上「現代ビジネス」より引用)
いつの間にか「孤立させられた習近平」
中国も反撃に出ているが、絵に描いた餅に終わりそうだ。 習氏は米国から高率の相互関税を課された東南アジア諸国(ベトナム、マレーシア、カンボジア)を14日から歴訪する。今年初の外遊に赴く習氏は「近隣諸国との全面的な協力を深める」と表明しているが、ベトナム政府はトランプ政権の関税を回避するため、自国を経由して米国に出荷される中国製品の取り締まりを強化しようとしている(4月11日付ロイター)。 西側諸国も、中国との連携に後ろ向きだ。 カナダのカーニー首相は3月末、「価値を共有していない中国との貿易拡大に非常に慎重でなければならない」と述べた。豪州政府も中国からの貿易面での協力要請を拒絶した(4月10日付AFP)。 強硬な態度を見せていた欧州連合(EU)も工業製品の関税をゼロにする案を提示するなど米国に歩み寄りの姿勢を示している。 「トランプ関税に反発して米国との貿易関係を見直す国々が次々と出てくる」と期待していた中国の思惑は、外れてしまった格好だ。
米中関係は「危機的局面」へ
トランプ氏は習氏との会談に意欲を示しているが、両国の交渉は入り口でつまずいたままだ。 中国は「(米国が改善を求める合成麻薬フェンタニル問題は)自国の台頭に対抗するための口実に過ぎない」と思っている節があるが、米国は本気だ。米財務省の金融犯罪捜査部門は9日、フェンタニルに関連する2024年版の報告書を公表し、「中国が主要な供給国だ」と問題視している。 こうして、両国の関係は急速に冷え込んでいる>(以上「現代ビジネス」より引用)
トランプ関税に関して、米国にプラスか中国にプラスかを巡って様々な論評が出ている。当初、トランプ氏がすべての国にトランプ関税を課すと発表したことから、「米国ファースト」どころか世界から米国がデカップリングされるのではないかと思った。しかしここに来て、トランプ氏は「対抗関税措置」を講じなかった国には90日間の猶予を与えると発表して、トランプ関税の実態が対中デカップリングだったことが判明した。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)が「習近平、絶望…いつの間にか「世界から孤立」していた!報復関税で直面する中国経済の「悲惨な末路」と、トランプが仕掛けた「ヤバすぎる罠」」と題する論評で、その経緯を子細に語っている。
習近平氏は慌ててベトナムへ赴き、ベトナムに対米輸出の経由地になって「三角取引」に応じるように要請した。つまり中国から米国へ輸出すると145%の関税が掛けられるが、ベトナムを経由すればベトナムに掛けられる関税で済むからだ。
しかし、どうやらニベもなく断られたようだ。引用記事に「ベトナム政府はトランプ政権の関税を回避するため、自国を経由して米国に出荷される中国製品の取り締まりを強化しようとしている(4月11日付ロイター)」とある。だからなのか、日本で法人設立申請する中国人が増えているという。日本を米中貿易の経由地にして、三角貿易をしようというのだろう。だが、そうした姑息な手を米国が見逃すはずがない。三角貿易に使っている中国人法人に米国が制裁する可能性があるが、その前に経産省が中国人経営企業の対米輸出に目を光らせるべきだろう。
米国が中国を問題視しているのは「現代のアヘン戦争」だ。引用記事で藤氏が指摘しているように合成麻薬フェンタニルだ。フェンタニルは中国で製造された原料をメキシコの犯罪組織・麻薬カルテルが加工して米国に密輸され、米国で多くの死者が出ている。バイデン米大統領と中国の 習近平シージンピン 国家主席は昨年11月の会談で、中国が原料の製造企業の取り締まりを強化することなどで一致したが、今もなおメキシコ経由で大量の合成麻薬フェンタニルが米国内へ密輸されている。
中国政府にフェンタニルの製造を禁止するように依頼してもそれが果たせないなら、対中貿易を全面停止する以外に流入を防ぐ手立てはない。そして経由地になっているメキシコに対しても「優先的」な望遠相手国から除外して、トランプ関税の対象国にして厳しいディールを課した。麻薬取引を潰すのもトランプ関税の目的の一つなのは間違いなく、その目的達成のための手を緩めることはないだろう。
習近平氏はホワイトハウスがトランプ関税を発表した時、世界各国が米国を非難したことから、世界各国を味方できると判断した。EU諸国に対して習近平氏は対米連携を呼び掛けたが、欧州諸国は中国製EVの雪崩のような輸出攻勢に手を焼いたばかりだったため、対中貿易協力には否定的だった。中国はWTO体制を利用して、貿易相手国の国内事情などお構いなく際限なく輸出する「攻撃的な貿易」に辟易している。
BRICS諸国も同じく中国の輸出攻勢を受けて国内産業が危機的状況に陥っている。ことに鉄の際限ない輸出攻勢は後進国で育てなければならない基幹産業を破壊しかねない。中国が後進国の仲間として国際舞台で政治的影響力を持つのは構わないが、後進国の経済や産業までも牛耳ろうとする姿勢は後進国の反発を招いている。まさしく、習近平氏の「中華思想」そのものを体現したような外交姿勢により、中国は世界で孤立した。トランプ関税という米国を孤立化させる絶好の機会に、過去の所業から習近平氏は世界各国から孤立化される皮肉な結果になっている。