自民党や小池氏が展開してきたB層相手の選挙戦略を野党連合も採り入れよう。

なぜ有権者はこうも愚かになったのか。東京都知事選雑感
 先週のこのコーナーは「灼熱の東京都知事選!」と銘打って、7日7日投開票だった都知事選の結果について、東京新聞の出口調査のデータなどから蓮舫さんの敗因などを考察しました。そして、あたしは蓮舫さんの敗因を「政党政治を嫌う無党派層に対して、政党色を強く出し過ぎた点」と分析しました。

 これは、都知事選と同時に行なわれた都内9選挙区の都議補選の結果からも顕著です。新聞などは「自民が2勝6敗で惨敗」と報じましたが、これは野党も同じなのです。立憲民主党は1勝2敗、日本共産党は0勝4敗、日本維新の会は0勝2敗と、野党もすべて負け越しているのです。
 唯一「勝った」と言えるのは、3勝1敗の都民ファーストの会だけで、残りの3選挙区の当選者は、無所属が2人と諸派が1人です。この結果を見れば、自民党が嫌われているのは当然として、野党もまた「自民党の受け皿にはなりえない」として有権者から見放されている実態が見えて来ます。
 結局、大阪だけでしか相手にされていない日本維新の会のように、東京の地域政党である都民ファーストの会が、地の利を利用してうまいこと立ち回った選挙だったというわけです。
 都知事選での上位3人の無党派層からの得票割合は、小池百合子氏が30.6%、石丸伸二氏が38.0%、蓮舫氏が16.6%でした。選挙に慣れていない若年層が石丸氏の戦略にまんまと乗せられたことは仕方ないとしても、公約の「7つのゼロ」を1つも達成していないどころか、疑惑と無駄遣いと差別のカタマリのような小池氏に、蓮舫氏の2倍近い無党派層が投票したという事実からは、与党野党に関係なく、政党政治というものに不信感を抱いている有権者の急増という現状が見えて来ます。
 しかし、これはあくまでもあたしの分析です。このメルマガの読者の中には、あたしとは違った見方をしている人もたくさんいるようで、今回はいつも以上に数多くの感想やご意見のメールをいただきました。そこで今回は、その中から代表的なご意見のメールを2通、紹介させていただきたいと思います。
 どちらもご本人に打診して、メルマガへの掲載を快諾していただきました。また、お名前に関しては「イニシャルにしましょうか?」とお聞きしたところ、どちらも「本名で構わない」とおっしゃるので、そのまま公開させていただきます。どちらもちょっと長めのメールですが、あたしが勝手に切り取ってしまうとそれぞれの本意が伝わらなくなる恐れがあるため、以下、全文をそのまま紹介させていただきます。

なぜ大差で落選したか分かっていない蓮舫氏
 件名「ご連絡」
 こんばんは。
「きっこのメルマガ」、毎回楽しみにして読んでいます。きっこさんの博学にはいつも驚かされます。
 さて、今回の都知事選の結果分析については、やや私とは違っているので、一言だけ言わせていただきます。簡単に言うと、今や「知名度」だけで勝てる時代ではなくなったということです。2位で、小池を脅した石丸候補は、誰もその実績や素性を知らないままに、運動中(それ以前からの岸田の地元広島で)のちょっと耳にしたことに過大な期待をし、何のしがらみもない候補者と思ったのでしょう。これこそ戦略です。バカな有権者は、小池よりましか、と思って石丸に入れただけです。何か変化を求めて。
 現に、今ではSNSなどで石丸は「ボロクソ」に言われている始末。化けの皮が剥がれた、とはこのことでしょう。
 つまり、有権者に(1)ムードと言うものがあって、実態を何も知らずに期待を込めた投票をすること。(2)本来はマスコミが書くべき大企業とズブズブの中で、小池の「よきに計らえ」と連中の言われる通りにやってきた、小池の実態を都民は知り得なかったマスコミ全般の堕落がより顕著だったこと。ズブズブの一族は、小池に投票するに決まっている。そういう悪材料を指摘しない狂ったマスコミ。さらにもっと言えば、(3)愚かな有権者の愚かな投票に尽きる、ということです。きっこさんには「書けない言葉」でしょうが、これが事実。
 東京は特段に富裕層が多く、懐に温かいものを黙っていても入れてくれる小池に、有権者たちが「ノー」と言う筈がない。
 そして、一番違和感を感じたのは、蓮舫さんの惨敗の理由は「政党色をぬぐい切れなかった」ことではありません。彼女は参議院議員で、全国的に知名度は抜群です。でも可哀そうに、なぜ大差で落選したか分かっていないことです。
 理由は明快。天下国家では、国会であれだけ頑張ったのにもかかわらず、かなしいかな、本人が東京での実績と接触が殆どなかったことです。小選挙区では、実際地元でどれだけの成果を上げたか、地元の声をどれだけ反映したか、選挙民は分かります。(それとお金ですね)蓮舫さんには両方ともなかった。これが惨敗の理由だと思いますが、間違っていますか?これだけ知名度の高い彼女がなぜ、惨敗したか。
 アメリカでは、陪審員の評決が「有罪」であっても、裁判長が有罪判決を言い渡さない限り、大統領に立候補できるのです。そして、陪審員に犯罪者と有罪評決されても、国民の熱狂はやまないのです。本当に、人間って愚かなんですね。
 それでは長文失礼しました。
 今後のご健闘を祈念します。
                                 横浜市 寺井 洋一


小池百合子氏に票を投じる「救い難い愚者」
 件名「灼熱の都知事選!」
 きっこさん、こんにちは。
 私はロサンゼルスに住んでいる87歳の老人で、きっこさんの記事を何十年も愛読しています。
 それにしても今度の結果には本当にがっかりです。一説には石丸さんが立候補したのはアンチ小池層を分断するための小池側の深謀遠慮だったとありますがさもありなんとも思えます。しかしあんなに正体を暴露されている大嘘つきのペテン師に1票を投じる都民には本当に呆れて言葉も出ません。
 普通の神経を持った人間なら学歴詐称がバレた時点で恥いるものですが彼女は今だに開き直っているのです。超有名な嘘つき安倍晋三は以前、経歴に南カリフォルニア大学留学と称していましたが、事実は同校に入る前の準備のための英会話学校に通っていたに過ぎません。それも勉強ができずにドロップアウトしましたが、嘘がバレると流石に経歴から同校名は消しました。安倍晋三は空前絶後の嘘つきと思いましたが、小池はそれ以上でこれほどモラルのない恥知らずはいないでしょう。
 彼女は政界に出てもその場その場で思いつく嘘でのし上って来たのですが、それはバレた時点で信用はゼロのはずです。それをいまだに自分の権力と都民の血税を使って「カラスは白いし、カイロ大学は認めている」というような嘘とゴマカシを平気で言い張っているのです。それをマスコミは追及せず、周りの人間もほとんど非難の声を上げず、それどころか拍手で迎えているのも不気味です。日本全体がすでに狂っているとしか思えません。
 確かに小池に投票してそのおこぼれに預かる者もいるでしょうが、それは小池が獲得した票数のほんの一部に過ぎません。だから小池に投票した大多数の都民はまったく考える知能がないとしか言い様がありません。これからも三井不動産や電通のような抜け目のないの連中が東京都からたっぷりと血税のうまい汁を吸っていくでしょうし、その弱みを握ったエジプト軍事政府は日本からお金を吸いとるでしょう。
 彼女の嘘と人間性の無さがはっきり暴露されているのに小池を信じ小池に投票する人間は救い難い愚者ですが、それに巻き込まれるまともな都民は本当に気の毒です。
                                     成松 隆

…そんなわけで、どちらもなかなかパンチの効いたメールですが、あたしのところには「サスガにこれは一部を黒塗りしないと公開できないな」と思うようなメールを含み、今回の小池百合子氏の再選や蓮舫さんの惨敗にガッカリしたというメールがたくさん届きました。また、1通目の寺井洋一さんからは、ご自身の「愚かな有権者の愚かな投票」という文言に問題があると感じたら、もう少しやわらかい表現に変えてください、とご指示がありました。
 しかし、あたしは変える必要はないと判断しました。人生の大先輩である2通目の成松隆さんも「小池に投票した大多数の都民はまったく考える知能がないとしか言い様がありません」と明記していますが、これは悲しいことに事実なのです。
 無党派層で小池百合子氏に投票した30.6%、石丸伸二氏に投票した38.0%は、あたしから見ても有権者の知能の低下と思考の劣化が反映された結果としか思えません。そして、この「有権者の知能の低下」は、20年間にわたる自民党政権の選挙戦略によって意識操作された集大成なのです。

狙い撃ちされた「騙されやすい知能の低いバカ」
 2004年の第2次小泉政権で、当時の小泉純一郎首相が郵政民営化に反対する自民党内の勢力と対立し、「自民党をぶっ壊す!」と叫んで俗にいう「郵政解散」をした時、国民の多くは小泉首相を支持し、小泉首相は党内の反対派をすべて黙らせて第3次小泉政権へと進みました。そして、多くのことがフリーハンドになった小泉首相は、規制改革担当相だったコバンザメの竹中平蔵氏の入れ知恵で数々の悪法を強行し、現在の「日本経済低迷」の基盤を作ったのです。
 この時に小泉首相が「郵政民営化」を国民に浸透させるために行なった戦略が、有限会社スリードという広告代理店が発案した「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」でした。この戦略案は今でも以下のリンク先でPDF資料を見ることができます。
 この資料を見れば分かるように、当時の政権は国民を「知能の高いA層」と「知能の低いB層」に分けています。グラフは縦が「IQ軸」、つまり「知能指数の軸」であり、グラフの上は「大学教授やホワイトカラーなど知能の高いA層」なので「郵政民営化にはネガティブ」と明記されています。一方、グラフの下は「主婦や子どもやシルバー層など知能の低いB層」なので「郵政民営化について具体的なことは分からないが、マスコミ報道に流されやすく小泉首相のキャラクターを支持している」と書かれています。
 結局、小泉首相が解散総選挙で実践した戦略は、国民の1割にも満たないA層など無視して、単純なワンフレーズの連呼だけで簡単に騙すことができる「国民の大多数を占める知能の低いB層」にターゲットを絞った戦略でした。そして、まんまと騙された多くの有権者は、小泉首相の政策に反対した自民党候補を落選させるために、小泉首相が刺客として送り込んだ別の自民党候補に投票し、小泉首相が望んだ小泉カラーの新生自民党の立ち上げに協力させられたのです。
 大学教授でもそこらの主婦でも1票は1票なので、それなら大多数の騙されやすい知能の低いバカを狙い撃ちにした選挙戦を繰り広げたほうがいい。この時から自民党の選挙戦略は、この方式に統一されました。そして、この時の小泉劇場を当時の環境大臣として目の前で見ていた小池百合子氏は、今から8年前、この戦略をそのまま丸パクリし、自民党を離党して「自民党都議連をぶっ壊す!」と叫び、まんまと都知事の座に居座ったのです。
 1通目のメールをくださった寺井洋一さんは、某新聞社に長年つとめて来た経歴があります。2通目のメールをくださった成松隆さんも、日本ではあまり取り上げられなかった安倍晋三元首相の学歴詐称問題まで詳しくご存知なのですから、お2人とも、この「郵政解散総選挙」の顛末と、その後の自民党政権による「IQの低いB層の有権者を狙い撃ちにした選挙戦略」についても良くご存知のはず。
 こうした「真実を知る人たち」からのメールですから、多少、きつい表現があったとしても、それは事実に裏づけされた的確な表現として、あたしは受け入れさせていただきました。そして、ここまで自民党政権からバカにされても、それでもホイホイと「隠れ自民党」や「自民党予備軍」に投票する有権者が後を絶たないうちは、あたしは今後も歯に衣着せぬ発言を続けて行くつもりです>(以上「きっこのメルマガ」より引用)




 実に偏見と独断に満ちた「面白い」現代日本選挙考だ。「自民選挙戦略の集大成。無党派層の30%が小池氏を選び38%が石丸氏に投票するという有権者の「知能劣化」」と題するあたり、有権者は全知全能の神だ、とする日本のマスメディアと真っ向から対立する見解だ。
 きっこ氏の伝の通り、正直に発言した方が良いのかも知れない。建前論はしばしば人を勘違いさせる。たとえば「お客先は神様です」とある歌手が発言し、それを日本全国民が受け入れた。しかし「神」でないお客もごまんといる事実まで変わるものではない。

 過半数の有権者の判断が正しい、というのは間違いだ。ただ過半数の判断に従うのが民主主義だ、という決まりがあるだけだ。私たちは民主主義を受け容れているから愚かな大多数の判断にも従っている。
 しかしきっこ氏の考え方にも危険な部分がある。それは過半数の多数であろうと間違いだと断定するのは良いが、それを以て大衆はバカだと判断してはならない。バカだと決めつけないで、それでも自分は大衆とともにある、と思い続けることだ。だから大衆を変えるために努力しなければならない、というモチベーションにすべきだ。大衆が変わらなければ政治は変わらないし、鼻持ちならない大嘘つきが大きな顔をして公職に就き続けることになる。

 確かに自民党は「IQの低いB層の有権者を狙い撃ちにした選挙戦略」に徹底してきた。そのためにマスメディアを再販制度と電波割り当て権で縛り、広告宣伝企業の電通などはイベント事業などで丸投げして抱え込んだ。小池氏も48億円もの都庁舎プロジェクトマッピングを電通に丸投げして選挙戦を有利に戦った。同規模のフランスのプロジェクトマッピング事業は一年たった1100万円でしかない、と批判する都民はIQの高いA層で、彼らの人数はB層と比較するなら無視しても良いほどの少数派でしかない。
 IQの低いB層をターゲットにした自民党の選挙戦略を真似て、維新も大阪万博や大阪IRなどと称してお祭り騒ぎ好き、博奕好きな多数を相手にした戦略を展開している。真面目に大阪の未来などを語ろうなどとは決して考えない。だから集成材で作る木製ドーナツに350億円かけても大阪府民はデモの一つもしようとしない。お笑いと博奕さえあれば大阪府民の多数を掌握できると維新は踏んでいる。

 野党は「消費税廃止」だけで連合を形成すべきだ。生真面目に政策協議などしたところで小異を際立たせるだけだ。それこそ愚の骨頂ではないか。賢くB層に訴えるには、B層でも理解できる政策を提示すべきだ。
 輸入消費財が円安で価格高騰したから、その価格高騰を少しでも緩和するために消費税を廃止すれば10%の価格引き下げと同じ効果をもたらす、と単純明快に説明すれば良い。なにも輸入消費財は全消費財の40%程度で、円安が進んだといっても120円程度から160円になっても25%ほどの価格高騰にならない。その結果、物価全体に及ぶ円安効果は40×25%で10%だから消費税廃止で円安物価高騰は帳消しになる、などと小難しい説明はしなくて良い。なぜなら相手はIQの低いB層だからだ。それよりも一点突破の「消費税廃止」を旗印に野党連合を形成すべきだ。

 反対する者は「造反者だ」と決めつけて、野党連合が「刺客」を立てれば良い。維新が「消費税」に反対して自民党のお仲間だと態度表明すれば、敢然と対立候補を立てて「劇場型選挙」を展開すれば良い。たとえ国民党の党首と雖も野党連合に参加しなかったら、彼の選挙区に刺客候補を立てれば良い。
 そして小泉氏が展開したような「劇場型」消費税選挙を展開すれば必ず勝てる。テレビ対談等には賢い論客が登場して、消費税は景気に関係ない税で、消費税を手に入れたことから財務省は景気に関心を失い、政治家までも景気や労働者賃金に興味を失ってしまった、と丁寧に説明すれば良い。IQの高い者相手にはIQの高い説明を、IQの低い者相手には簡明なスローガンだけを叫べば良い。長々と政治や経済の理屈を話したところで、IQの低い人たちは理解できないからだ。

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