ハマスの最高指導者はカタールの豪邸で取り巻きに囲まれて何をしているのか。

中東問題専門家の意見
 7日にハマスがイスラエルを急襲し、戦争状態と表現した。その後ハマスは大規模なミサイル攻撃を続け、複数の箇所でイスラエル領内に侵入した。イスラエルは不意を突かれて今後は猛烈な報復に出るだろう。
 まず、イスラエルとハマス、パレスチナ、アラブ諸国の関係を整理しておこう。
 ハマスはテロ組織でイスラエル殲滅を目標としているが、パレスチナの「代表」ではない。ハマスはガザを実効支配し、パレスチナ人を抑圧している。
 番組では、ほんこんさんが、高橋和夫先生に「ハマスはパレスチナ人に支持されているのか」と質問したが、「今ではされていないだろう」と返答していた。
 パレスチナはイスラエルと長い間争っているが、それは第一次世界大戦中に秘密協定を結んだ英国がアラブ人にもユダヤ人にも独立国家建設を約束した「二枚舌」によるものだ。
 イスラエルとパレスチナ問題は、国際的には二国家解決という方向性が出ている。イスラエルと米国はこれに反対してきたが、バイデン政権は容認している。

テロ行為として理解すべき

 アラブ諸国は心情的にパレスチナを応援している。一方で、イスラエルとサウジアラビアの宥和路線のように、ここ数年イスラエルとアラブ諸国は急速に関係改善が進んでいる。
 ハマスはこの宥和路線を苦々しく思っているという中東専門家も多いが、高橋和夫先生は時系列的に今回のハマスの攻撃は別とみているとのことだった。
 筆者は、今回のハマスの急襲は、歴史問題というよりテロ行為として理解すべきだと思っている。
 そこで番組の中でも、ハマスは公安調査庁の資料でもテロ組織とされていることをいい、平和的な音楽祭を襲い、欧米人を含む多くの人を惨殺し人質にしたことからも今回が単なるテロ行為であることを明白に示しているとした。
 これに対し、高橋和夫先生も今回がテロであるといえるとした。中東専門家の意見を聞いていると、テロという明示的にいう人は少ない。今回の行動は「窮鼠猫をかむ」というものだったとする向きが多いなか、高橋和夫先生も、「テロだが、しかし…」という論法だった。
 ほんこんさんは、高橋和夫先生に「ハマスが民間人を人質にして学校、病院などに軍事施設を隠しているのは本当か」と質問したが、高橋和夫先生は「それは事実だが、かつてユダヤ人もゲリラ運動でやっていた」と返答した。
 番組は、プレゼンターと芸人との間のやりとりが基本であり、筆者はあまり意見を言えない。しかも、生番組なので時間の制約が多いが、筆者にとっては、このほんこんさんの質問と高橋和夫先生の返答がキモだったと思っている。

イスラエルの「自衛権」

 まず、今回の件が「テロである」という認識は、番組内で共有できた。
 米国、英国、ドイツ、フランス、イタリアの各国首脳は電話会談し共同声明を出したが、この共同声明はハマスによるテロとし、イスラエルの自衛権行使は当然としている。
 高橋和夫先生は、これは、アメリカ、イギリスなどユダヤに原罪意識がある国としているが、欧州の民主主義国では共同声明には加わらなかったが、ほとんど同じような声明を首脳から出されている。
 もちろん、イスラエルの自衛権行使としても、国際法に則ったものであることは必要だ。
 ここでの国際法とは、主に1949年のジュネーブ条約、1977年のジュネーブ諸条約第一追加議定書、1907年のハーグ条約(陸戦の法規慣例に関する条約)および慣習諸規則をいう。
 その前提として、紛争当事者はつねに戦闘員と民間人を区別しなければならない。民間人が攻撃の意図的な標的になることは決してあってはならない。その上で、攻撃の目標は「軍事目標」に限定される。
 軍事目標とみなされないもののすべてを「民用物」として定義し、戦時国際法の下保護されている。民用物(家屋、集合住宅、企業などのビジネス、礼拝所、病院、学校、文化財など)への直接攻撃は、それらが軍事目的に使用されていたり、軍事目標になっていない限り、禁止されている。
 しかし、通常民用物とされる施設に軍隊が配備されている場合、攻撃は禁止されない。

ハマスは完全に国際法違反

 さらに、「人間の盾」とは、特定の場所・地域または軍事勢力が、軍事攻撃の対象とならないよう、民間人の存在を意図的に利用することと定義されており、この行為は戦争犯罪である。
 こうした国際法に照らしてみると、ハマスの人質は戦争犯罪であり、学校、病院などに軍事施設を隠していて攻撃されても国際法上は文句を言えない。
 もっともハマスは主権国家でないので、そもそも国際法が適用できるかどうかという根本問題があるが、現段階でその趣旨とは著しく外れているといえるだろう。
 高橋和夫先生のロジックは、かつてユダヤ人も国際法違反をしていたから、ハマスもやってもいいだろうとのロジックであり、少し乱暴だ。
 岸田文雄首相は、8日にXにポストした。しかし、冒頭から「ハマス等パレスチナ武装勢力」とハマスとパレスチナが分けられていない。欧米では、ハマスだけを取り上げ、ハマスとパレスチナは分けられている。
 しかも、テロという言葉がなかった。これは不味い。12日になってようやく松野博一官房長官から「テロ攻撃」という表現が出た。あまりに現状認識が遅すぎる。
 さらに、岸田首相は、「全ての当事者に最大限の自制を求めます」とした。ここは、国際法に基づく自制とすべきだろう。当然、自衛権行使は国際法の範囲内であればかまわない。
 今のところ、ハマスが完全に国際法違反である。イスラエルが、どのように反撃するか、それが国際法を逸脱するのかどうか、注意深く見守らなければいけない。

第三次世界大戦前夜

 今回のハマス急襲の背後には、イスラエルに核などのカードで水面下で対抗しているイランがいると言われている。
 イスラエルの優先度が高い米国は、当然ながらイスラエルへの軍事支援になる。米国下院のケヴィン・マッカーシー氏議長の解任で、ただですらウクライナ支援がやりにくくなっている状況だが、それにより拍車がかかる。
 率直に言って、今の米国はイスラエルとウクライナ両国の支援はできない。ウクライナは長期的にはドイツなど欧州で支援せざるを得なくなる。
 そうした玉突きのような国際情勢が日本にどのような影響をもたらすか。差し当たり台湾有事だ。
 今回の事件は、人質も取られているので解決は長引きそうだ。その結果、ウクライナは欧州で、イスラエルは米国で、北朝鮮は韓国で対応となる可能性もある。
 その場合、台湾は日本となるが、まるで第三次世界大戦前夜のようなのに、日本は大丈夫なのだろうか。世界各地で、民主主義対専制主義の争いが起きそうである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 髙橋 洋一(評論家)氏の「ハマスのイスラエル急襲はやはり「テロ行為」だ…遅きに失する日本政府の対応、そして忍び寄る「第三次世界大戦」への懸念点」と題する極めて当たり前の論評が掲載されたので、私も一言云っておきたいと思った。
 いわゆる専門家には「専門家バカ」なる人種が存在する。その一人と思わしきが論評に登場する。文中で「高橋和夫先生も、「テロだが、しかし…」という論法だった」とあって、「高橋和夫先生に「ハマスが民間人を人質にして学校、病院などに軍事施設を隠しているのは本当か」と質問したが、高橋和夫先生は「それは事実だが、かつてユダヤ人もゲリラ運動でやっていた」と返答した」という。

 歴史的にユダヤ人もかつてはテロを行っていたから、今回のハマスのテロを甘受すべきだ、という論法は通用しない。テロはテロだ。憎むべき犯罪であって、批判されるべきはハマスだ。
 ついでながらハマスの最高指導者ハニヤ氏はカタールの豪邸に暮らし、私有財産は40億ドルに達するという。大勢の取り巻きに囲まれて戦禍のない楽園からガザにいるハマスのテロ戦闘員に攻撃指令を出している。最も批判されるべきはカタールで豪勢な暮らしをしているハニヤ氏ではないか。

 ガザ地区の政府はパレスチナか、という疑問がある。実際はハマスがガザ地区の六割近くを統治していて、学校や病院まで支配しているという。しかしガザ地区を代表しているのはパレスチナのアッバス議長だ。
 確かにハマスがガザ地区の大半を支配しているが、彼らは「武装組織」でしかない。そのため存続するために武装闘争を繰り返す。そうしなければハマスへの援助が途切れるからだ。武装闘争することによってハマスの幹部たちは懐が潤う。

 歴史的な行きがかりはどうであれ、今回の戦闘はハマスのテロ行為が契機になっている。何本ものトンネルを掘ってイスラエル国境を越えて侵入し、イスラエル市民を殺戮し拉致して連れ去った。このような蛮行を許してはならない。
 しかもハマスは統一した軍服を着用しないで、便衣兵としてアラブ人市民の中に紛れ込む。いわば市民を盾として利用し、今回の非戦闘員はガザ南部へ避難せよというイスラエルの呼びかけを無視し、ハマスは道路を閉鎖してアラブ市民の移動を阻止した。まさにテロ集団としての戦術を採っている。

 イスラエルへのテロ行為で米軍をウクライナとイスラエルの支援に二分割し、中国が台湾へ軍事侵攻しやすくした、と分析する軍事評論家や世界大戦がはじまるのではないか、と騒ぎ立てる評論家がいるが、二ヶ国の戦闘は極めて限定的だ。
 しかも世界の独裁者たちは自身の暖衣飽食の暮らしを永続させたいと願っている。アラブの王族たちや宗教指導者はハマスを支援しても、自身が自国軍の先頭に立ってイスラエルを攻撃しようとはしない。それは習近平氏も金正恩氏も同じだ。ただ愚かなプーチンだけが先頭に立ってウクライナへ攻め込んだ。彼は蓄財した金融資産だけでも22兆円と云われ巨万の富を使うことなく独裁者を追われ、すべての財産を没収されるだろう。

 アラブの王族たちや宗教指導者たちが独裁者として権力を掌握しているのは軍を擁し莫大な財産を手にしているからだ。それらを除けば強欲な凡人でしかない。彼らは決して国民や民衆によって選ばれた指導者ではない。極めて少人数の取り巻きによってさえられている専制主義者たちだ。テロを繰り返す武装集団は彼らの存続を正当化する道具の一つでしかない。しかし、道具たちも独裁者たちからの支援を懐に入れて武装集団の存続を正当化するためにテロを繰り返す。
 武装集団に踏みつけられ困難を強いられるのは多くのアラブ人たちだが、彼らにそうした図式は見えていない。そして国際社会にもアラブの独裁者たちを支持する声がある。人類の叡智は石器時代から少しも進歩していないようだ。

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