2030年、全新車販売でEV化は必ずしもEU諸国で合意に達してはいない。

VW社のEVシフト
 9月14日、フォルクスワーゲン社のツヴィッカウ工場で、従業員総会が開かれ、1万700人の従業員のうち、269人の雇用契約が更新されないことが発表された。つまり、269人が、早ければ11月から失業する。
 本人と家族にとっては悲劇だ。しかも、それ以外にも、1年の雇用契約で働いている従業員がまだ2000人近くいるらしいから、その人たちの運命も安泰とは言えない。この不景気の下、今後、解雇が時間差で告知される可能性がある。
 ツヴィッカウは旧東独のザクセン州の町だ。1990年の東西ドイツの統一直後、フォルクスワーゲン社は同地に進出し、以後、ほぼ30年間、主にゴルフを営々と製造してきた。
 同社はその他、やはりザクセン州の州都のドレスデンとケムニッツ(旧名・カール・マルクス市で旧東独の工業の中心だった)にも工場を持つ。発展がスムーズにいかなかった旧東独地域において、それらが景気高揚の活性剤として重要な役割を果たしたことは言うまでもない。
 ところが、そのフォルクスワーゲンに転機がやってくる。2015年、目玉のクリーン・ディーゼル戦略が不正ソフト事件で崩落し、試行錯誤の末、同社は未踏のEV生産に全面的に舵を切り換える。メディアはこれを、未来のための英断として称賛。それに伴いツヴィッカウでは、2020年2月に最後のガソリン車が製造された後、工場が12億ユーロ(現行レートで約1800億円)をかけてEV専用にリニューアルされた。
 また、それと並行して21年、本体のフォルクスワーゲングループが、30年までの経営戦略『NEW AUTO』を発表し、ディースCEOが、「未来の自動車、未来のパーソナルモビリティは光り輝く!」とEVシフトを大々的に宣言した。当時、中国がすでにEV戦略を明確に立ち上げており、中国市場に依存するフォルクスワーゲン社としては、EVを作らなければ生き残れないという焦りもあったに違いない。
 とはいえ、中国で売るためのEVシフトとは流石に公言できなかったのだろう、同社は、地球温暖化を防止するためにはEVが必須であるという理論で武装し、さらに、ドイツ政府のお墨付きと援助もゲット。9年後の30年にはEVのシェアを50%にするという強気の計画を打ち立てた。
 なお、その際、強い追い風となったのが、CO2による地球温暖化説を強力に主張していたEUの欧州委員会だ。委員長はドイツ人のフォン・デア・ライエン氏。こうして正義感の強いドイツ国民も、地球を守るためにEVシフトを強いられることになった。ちなみに、今では地球温暖化説はさらにエスカレートし、国連総長のグテレス氏が恐怖の地球沸騰説を唱え始めた。

EV所有者の大半が後悔している
 さて、リニューアルが完了したツヴィッカウ工場に話を戻すと、ここで、21年は約18万台、22年は21万8000台のEVが生産された。生産可能台数は年間30万台というから、生産台数は今後も順調に増えるはずだった。
 ところが今年は売上が激減。しかも、9月1日からは法人用のEV購入補助が外れたし、さらに年末には個人購入の補助も最高6750(100万円強)ユーロだったのが4500ユーロ(約68万円)に下がる予定なので、売上回復の見込みもない。そこで生産短縮のため、急遽、リストラとなったわけだ。
 また、インフレも売上落ち込みに輪をかけている。ただ、インフレが収まればEVの売上が戻るかというと、おそらくそれもノー。というのも、充電システムを販売している会社の委託で行われた最近の調査では、EV所有者のうちの大半が、現在、EVを購買したことを後悔しているという結果が出ているからだ。

その後悔の最大の理由は、電気代の高騰。
 現在、ドイツでは電気は恒常的に欠乏物資だ。ロシアの安いガスがない上、今年の4月15日には原発も自発的に止めた。しかし、再エネだけで産業国の電気は賄えないので、石炭や褐炭を炊き増しつつ、高いLNGまで発電に注ぎ込んでいるが、それでもまだ足りない。
 そこで、止むを得ず毎日、散発的に、あるいは終日、隣国から電気を輸入している。隣国でも電気が逼迫しているときは、当然、その価格が跳ね上がる。
 以前はEUでの電気の取引価格は、1MWh当たり平均60ユーロだったのが、現在は100ユーロ以上のことが多い。8月11日の19時には、524ユーロという過去最高の高値が記録された。
 今はまだ夏なので、暖房のためのガス需要がない上、昼間は太陽光発電が機能する日も多いが、冬になると、ガスも電気もさらに不足し、価格が上がるだろう。ドイツは間違いなく足元を見られている。そんな国で高いEVを買うのは、確かに博打だ。

電気の高騰で政府の信用はガタ落ち

 現在、ドイツ政府はその対策として、風車をさらに増やすよう必死で発破をかけているが、ドイツには3万本近い風車が立っており、発電容量はすでに64GW、つまり、原発60基ほどもある。
 ただ、問題は、思ったように風が吹かないこと。この状況は、風車の数が倍になっても、大容量の蓄電ができない限り改善されることはない。それどころか、実際には、風車は増えれば増えるほど電気代が高くなり、供給も不安定化することがわかってきたため、今や政府の信用はガタ落ちだ。
 その政府が、今、熱心に進めているのがスマートメーターであり、よりによって、送電センターと交信可能なEVの充電装置。
 これらの普及は便利なようだが、送電会社が各家庭への送電量を操作できることが、いわば両刃の剣。つまり、電気の逼迫時には、停電とまではいかなくても、供給を減らされる可能性がある。
 現在、先進国といわれている国々では、過去100年間、いかに多くの電気を、安価で安定供給するかということが、産業発展および国民生活向上のための最重要課題だった。暑くても寒くても、365日、24時間、安心して電気が使えることは文明国の必至条件で、それを立派にやり遂げたのがドイツであり、日本だったのに、今のドイツ政府にとっては、そんなことは大切ではない。それどころか、電気が足りなくなることが想定済みらしく、まさに文明の退化だ!
 ところが、例えば緑の党の欧州議員、シルヴィア・コッティング−ウール氏はそうは思っていないらしく、「電気の供給量を需要に合わせるのではなく、需要を供給量に合わせるべきだ」と言い切った。
 氏は、EUが原子力を温存することに強硬に反対してきた人で、化石燃料を使う車も飛行機も皆、敵視している。こうして再エネだけしかなくなれば、もちろん、需要を供給に合わせる以外、当面、方法はないわけだ。
 それを聞いた私は、そこまで科学の進歩の足を引っ張ってよいものかと腹を立てたが、EUの欧州議会とは不思議なところで、氏のこの発言に対して、あからさまに憤った議員がいた傍ら、拍手をした議員も結構いた。

ガソリン車の人気は落ちていない

 ただ、興味深いことに、現在のドイツでは、ここまでCO2や車が敵視されている割には、実際問題として乗用車の数は増えている。今年の1月1日の時点で4880万台が登録されており、これまでの最高新記録だそうだ。うち2.1%がEV。
 また、2012年から22年までの10年間で、一家で車を2台持っている世帯も、24.5%から27%に増えた。つまり、いくら政府が「脱炭素」の笛を吹いても国民は踊らず、ガソリン車の人気も落ちていない。言い換えれば、共に笛を吹いているドイツの自動車メーカーも、実は、ガソリン車をまだたくさん製造しているということだ。
 それでもフォルクスワーゲン社は、「EVの未来については100%確信している」という。だから、EVシフトの経営方針の変更は想定しないそうだ。もっとも、本社のあるヴォルフスブルクで計画されている新しいEV工場が、本当に建てられるかどうかは不明だ。
 そもそも、ドイツのメーカーが、これ以上EVシフトにしがみついても、CO2は大して減らないし(減るとすれば脱産業で景気が落ち込んでのこと)、潤沢に利益が上がることもないだろう。はっきり言ってライバルが強すぎる。中国のBYDなどと同じ土俵で戦っても、太刀打ちできるはずもない。
 ドイツ経済の実態とは、「EUを一歩出れば(為替調整が行われれば)、ハイブリッド車などの先端技術では日本勢に歯が立たない上に、中国や韓国が製造する『安い製品』にも対抗できない」と、大原浩氏が9月11日付の寄稿で指摘されていたが、これがおそらく真実だ。
 だから、日本の自動車メーカーはこれら非現実的な愚策を真似ず、自主性を持って独自の道を歩んでほしい。環境にあまり負荷をかけず、しかも国民の利便を重視した本当の意味で高品質な車を作るチャンスは、今、日本のメーカーの手の内にある。
 それが首尾よくいけば、ジャパン・アズ・ナンバー1の再来も夢ではないと、私は思っている>(以上「現代ビジネス」より引用)



 
 ドイツ在住の川口 マーン 惠美(作家)氏が「「EVシフト」の独フォルクスワーゲンが「EV不振」でリストラへ…その裏でガソリン車人気が衰えない大いなる皮肉」と題する論評を届けてくれた。ドイツの今のナマが垣間見えるようで助かる。
 つい一昨日フランス・ティメルマンス(欧州委員会 上級副委員長)がEUEVは全新車販売のEV化の日程を変更しない、と明言した記事を取り上げたばかりだ。しかし川口氏によると少なくともドイツではそうした動きになってないようだ。

 いや、それはEV化したところで、これ以上CO2削減にならないという。しかし、ここでハッキリとさせておきたいことがある。それは有機物のヒトが存在する限り「カーボンゼロ」などあり得ない、という真実だ。大気中のCO2は必要物質で、自然界に存在する光合成植物はCO2ゼロでは枯渇する。大気中0.04%の濃度が果たして異常に高い濃度化と云えば反対で、光合成植物にとって異常に低い濃度だということを忘れてはならない。
 成人一人で一日に呼吸で約1㎏のCO2を排出する。この厳然たる事実を語らないまま、「カーボンゼロ」などと叫ぶのは見当違いだ。そして「カーボンゼロ」が本当に達成されたなら、緑葉植物は全滅し、光合成が停止するため大気中のO2も減少して生物は死滅する。

 だからCO2削減を議論する場合は、本来なら現在の大気中のCO2濃度約0.04%をどれくらいの濃度までの上昇を容認するのか、という議論でなければならない。或いはCO2濃度を引き下げて大気中濃度を0.03%まで低下させる、といった議論をすべきではないか。ただし、その場合の光合成植物の生存が確保されることも確認しておく必要がある。
 そうした合意が形成されたなら、「カーボンゼロ」運動ではなく、直ちに大気中CO2濃度引き下げに着手すべきだ。大気中のCO2を固定化する技術は既にある。だから大気を大量に取り入れてCO2を除去する装置を世界各地に設置すれば良い。大気中から除去するのでは効率が悪いというのなら、CO2を大量に排出する製造業(例えば鉄鋼業や火力発電所など)の排ガスからCO2を除去すればよい。それだけの話だ。なにもガソリン車を標的にして大騒ぎする必要などない。

 製造から廃棄までトータルのCO2排出で比較するなら、EVもガソリン車もCO2排出総量ではそれほど大して変わらない。ただEVは走行時にCO2を排出しないというだけだ。そんな比較でEV一択などといった馬鹿げた政策に熱中する政治家諸氏は科学を何もご存知ない人たちなのだろうか。
 地球の気候は絶えず変動している。地球は最近の100万年間を見ても数回の氷河期と間氷期を経験している。間氷期とは地球上からすべての氷河が消え去った期間を指す。その間もシロクマは生き延びて絶滅しなかった。しかもCO2濃度と気候変動の間に相関関係は見られない。

 恐竜時代(1億4500万年前 ~ 6600年前)のCO2濃度は0.2%で現在の0.04%の約5倍の濃度があったと判明している。当時の気温は今より10度以上も高く、北極圏でも15度くらいあったとされている。しかし生物は絶滅していない。むしろ巨大な植物が繁茂していた。
 CO2排出を「排出権取引」の道具とするのを止めよう。もっと冷静で科学的な議論をしようではないか。似非・科学者や似非・環境家たちがガソリン車を目の敵にする姿勢から利権の臭いしかしない。

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