無理筋のマナイ保険証をゴリ押するよりも、喫緊の政治課題はあるだろう。

<「メリットが乏しい」──。来秋に予定されている現行の保険証の廃止について、厚労省が出したコスト削減試算に医療関係者から「物言い」がついている。
  ◇  ◇  ◇
 厚労省は保険証廃止に伴うコスト削減について、①マイナ保険証の利用登録率が現状より進む場合と、②利用登録率が現状のままの場合の2パターンに分けて試算。利用登録率が65~70%に達するとした①では削減額が100億~108億円、利用登録率が現状の52%のままとした②では同76億~82億円──とはじき出した。24日の社会保障審議会医療保険部会で示した。
 一見すると、保険証廃止によるコスト削減のメリットが大きいように見えるが、実はそうでもない。全国保険医団体連合会(保団連)は25日、厚労省の試算について検証。次のように指摘している。
〈2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない〉
 岸田首相は今月4日の総理会見で、マイナ保険証を普及させるメリットについて「従来の健康保険証に比べ、発行コストあるいは保険者の事務負担は減少する。これは当然のことだと思っています」と胸を張っていたが、医療費全体からしてみればコスト減は極めて小さいのだ。さらに保団連は、厚労省が推計している現行の保険証発行にかかるコスト235億円を引き合いに出し、〈医療給付全体だとわずか0.053%に過ぎない〉と指摘。〈健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である〉と喝破している。

■国民皆保険制度が揺らぐ事態
 保団連の竹田智雄副会長(竹田クリニック院長)がこう言う。
「極めて粗い試算とのことですが、それにしても、保険証廃止によるコスト減は微々たるものです。さらに言えば、マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」

「せめて紙の保険証と併用するべき」
 政府は保険証廃止の唯一のメリットを「コスト減」とうたってきたが、どう考えても削減効果は極めて乏しい。皆保険制度を危機にさらしてまで推し進めるべきではないことは明らかだ。
「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」(竹田智雄氏)
 使いたい人だけがマイナ保険証を使えるようにすればいいだけの話である。スケジュールありきの保険証廃止が生む混乱は、ムダ以外の何ものでもない>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)




 マイナ保険証は無理筋の「木に竹を継ぐ」制度改定だ。マイナカードは最初から保険証と一体化するために設けられたものではない。それは約1兆円かけて始めた住基カードが不発に終わっため、顔写真とIC入りのプラスティック・カードを政府が新たに考案して、国民に普及させようとした制度だ。
 しかし普及が捗々しく進まないため、2万円のポイント贈呈を餌にしたが、それでもすべての国民に行き渡らない。そこで考え付いたのが保険証と一体化すれば、日本は「国民皆保険」が実施されているため、マイナカードも「国民すべて」に行き渡ると考えた。

 しかしマイナカードと保険証では制度設計がまるで異なる。マイナカードは国民個々人を前提としているが、保険証は生計を一にする「家族」を前提としている。つまり「個人」と「家」の違いだ。
 だから赤ン坊に銀行口座を作れとか、赤ン坊の顔写真に意味があるのか、といった議論が沸騰した。まるでバカバカしい議論の典型だが、官僚や政治家諸氏は極めて真面目な顔をして議論している。中身が何もない人たちが国会で右往左往している絵を見せられる国民は大迷惑だ。なぜなら、そうした騒動にも国民の税金が使われているからだ。

 制度改定は誰のために何のために実施するのか、といった目的と効果を明確にすべきだ。提案者たる政府にはその説明する責務がある。そして実行させられる国民が不便をかこつようでは新制度は改悪というしかない。
 マイナ保険証は実施するのに様々な不便が起きる。第一、マイナカードが国民全体に行き渡っているのか。そして五年毎の更新を国民は受け容れているのか。保険証の悪用があるからカードと一体化するのだ、というのなら悪用の実態と損害額を政府は国民に示して説明すべきだ。

 保険料の徴収は一方的かつ義務化されているのなら、その反対給付となる保険証の利用はすべての国民がいつでも何処でも可能でなければならない。マイナカードと一体化したから、マイナカードを持たなければ保険受診出来ない、と云うのでは話にならない。
 皆保険制度を危機にさらしてまで推し進めるべきではない、というのは健康保険制度の根幹にかかわる常識だ。無理筋の制度改定を政府は強行すべきでない。国民に不便をかけてまで必死でやることではないし、それ以上に政府が取り組むべき課題は沢山あるではないか。それとも暇な官僚たちが庁舎内でウロウロして、暇つぶしに思いついた制度改定を政治家に使嗾して仕事をやっている感を出しているのだろうか。

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