プーチンの戦争は一年も経たずして遂行能力が失われるだろう。

資金流出で“ルーブル安”が止まらない
 このところ、ロシア・ルーブルが米ドルに対して下落している。2023年の年初から6月12日までの下落率は、約13%に達した。その背景には、ロシアから流出(逃避)する資金が増えていることがありそうだ。ある意味では、ロシア国民もロシアに見切りをつけ始めているということかもしれない。
 ウクライナ紛争の発生後、米欧などが一部のロシアの銀行を国際資金決済システムから排除した。ロシアから撤退する海外企業も増加し、資金は流出した。財政の悪化懸念も高まった。主要な輸出品である原油価格下落などによって、歳入は減少した。一方、ロシアの戦費は増加し、2022年の財政収支は赤字に転落した。
 5月以降は、ルーブル下落などによって、ロシアのインフレ懸念も高まり始めた。5月、消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比2.5%(前月は2.3%)だ。現時点で物価上昇率はまだ低いが、ロシア中銀は今後のインフレ進行に警戒を強めている。
 足許、世界的に景気の後退懸念は高まっている。原油需要は減少し、エネルギー資源の価格には下押し圧力がかかりやすくなっている。ロシアの原油関連収入は減少し、財政悪化懸念も高まるだろう。財政面からの景気下支えは難しくなりそうだ。

4四半期連続でマイナス成長に陥っている

 今後の展開次第でロシアは、物価高騰と景気後退が同時に進む“スタグフレーション”と呼ばれるような、厳しい状況に陥る恐れもある。それが現実となれば、経済の厳しさが増し、国民の反戦感情も高まるだろう。ルーブル下落、インフレ上昇によって、ロシアが紛争を長期間続けることは難しくなるかもしれない。
 現在、ロシア経済は後退している。先行きの状況は楽観できないだろう。2022年1~3月期の実質GDP成長率は前年比プラス3.0%だった。その後はマイナス成長が続いている。2022年暦年の実質GDP成長率はマイナス2.1%だった。なお、2022年のマイナス成長率は、ロシア政府などの予想を上回った。要因の一つとして、輸入の伸びが抑えられた。
 GDPは、個人消費、政府の支出、投資(設備投資など)、純輸出(輸出から輸入を控除)を合計することで求められる。2022年、ロシアの輸入は前年から減少した。一方、中国やインドなどによるロシア産原油の購入が、輸出の減少を食い止めた。そのため、想定ほど経済成長率は低下しなかった。
 2023年1~3月期、ロシアの実質GDPは同1.9%減少した(速報値)。4四半期連続でロシア経済はマイナス成長に陥り、景気後退は深刻だ。主たる要因として、個人消費の減少は大きい。

戦争長期化で縮小均衡に向かうロシア

 冷戦終結後、ロシア経済は海外企業の直接投資を受け入れ、飲食などのサービス、アパレルなど、民間の需要を満たした。しかし、ウクライナ紛争が始まって以降、ロシアから撤退する海外企業は増えた。
 ロシアの企業が撤退した企業の店舗を利用して飲食などのサービス業に進出するケースはある。それでも、消費者にとってマクドナルドなど主要先進国のブランドに匹敵する満足感を得ることは難しい。戦闘継続による先行き不透明感の上昇もあり、個人消費の減少傾向は強まった。
 また、財政も悪化した。昨冬、欧州が暖冬だったこともあり、天然ガス価格も下落した。原油価格下落に加え、主要先進国はロシア産ウラル原油に上限価格を設定した。そうした影響から、ロシア政府の歳入は減少した。一方、ウクライナでの戦闘が続いているため、戦費支出は増加した。2023年1~4月の累計でも、財政は赤字だった。
 民間と政府の支出、投資、輸出のいずれにおいても、ロシア経済が短期間で持ち直しに向かうことは想定しづらい。ロシア経済は縮小均衡に向かっていると考えられる。

頼みの人民元決済も、対ドルで低下傾向

 経済の先行き懸念の高まりを背景に、年初来でロシア・ルーブルがドルなどに対して下落した。ルーブル安は、自国に見切りをつけて海外に資金を持ち出し、命の次に大切なお金(資産)を守ろうとする国民の増加を示唆する。
 ウクライナ紛争の発生後、米国などはロシアを国際的な資金決済システムである“国際銀行間通信協会(SWIFT)”から排除した。なお、ズベルバンクと、ガスプロムバンクは排除の対象外とされた。現在、ロシア経済は、米ドルを基軸通貨とする国際金融市場から、事実上、隔絶されている。
 ロシアは経済運営のために中国との関係強化に動き、人民元建ての決済を増やした。2023年6月にはパキスタンがロシア産の原油を、人民元建てで輸入した。ただ、中国経済の成長率の低下懸念などを背景に人民元も対ドルで下落傾向にある。

2023年末のインフレ率予想は最大6.5%にも

 その影響を回避するために、ロシアではさまざまな方策を用いて制裁をかいくぐり、海外に資金を持ち出そうとする人が増えた。ウクライナ紛争の発生直後、一部の富裕層はビットコインなどの“暗号資産(仮想通貨)”を用いて海外に資産を移したようだ。アラブ首長国連邦(UAE)などで仮想通貨を用いて不動産を購入し、ルーブル安から逃れようとする人は増えたと報じられた。
 また、2023年6月、ロシアでは闇市場でルーブルを売って米ドルなどに変え、海外の銀行に送金する人が増えているとも報じられた。財政の悪化懸念を背景に、ルーブル建てのロシア国債が債務不履行に陥るとの懸念を持つ国民も増えているだろう。こうして外国為替市場でルーブルはドルなどに対して下落した。
 ルーブル安の影響から、徐々にロシアの消費者物価指数は上昇し始めた。6月9日、ロシア中銀は事前予想通り、政策金利を7.50%に据え置いた。今後の経済の展開予想として、2023年末時点のインフレ率は4.5~6.5%に上昇するとの予想を中銀は示し、年内の利上げの可能性が高まっているとの見解を示した。

国外脱出がルーブル安に拍車をかける
 今後もルーブルは、米ドルなどに対して下落する可能性が高い。足許では、原油価格の下落リスクは高まっている。欧米では、物価が高止まりしている。連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めを継続する公算が大きい。それによって、世界全体で需要は減殺される。原油価格には追加的な押し下げ圧力がかかりやすくなるだろう。
 今後、ロシアの財政悪化懸念は高まり、経済運営の厳しさも増しそうだ。そうした懸念から、ロシアからの脱出を考える人も増えている。ウィズコロナによって多くの国で経済活動が正常化する中、タイを訪問するロシア人観光客は急増した。一部には、そのままタイで生活したいと考えるロシア人観光客もいると報じられた。
 ロシアから海外に移住しようとする人が増えれば、ルーブルの下落圧力も高まる。ロシアの経済環境や、ウクライナ紛争の先行き不透明感の高まりによって、社会心理も不安定化するだろう。それに伴い、海外に資金を持ち出し、ドルに替えて資産を守らなければならないと考える市民も増える可能性は高まる。

景気後退でウクライナでの戦争継続に問題も

 そうした展開が現実となれば、ルーブルの下落は鮮明となるだろう。自国通貨の下落によって、ロシアの輸入品の価格は押し上げられる。食品、日用品、家電などの価格は上昇し、ロシア国民の生活の苦しさは増す。個人消費は減少し、雇用、所得環境の悪化懸念も高まると予想される。
 ルーブル安の食い止めと、インフレ沈静化のために、ロシア中銀が大幅な利上げ実行に追い込まれる恐れも増す。その結果、ロシア経済の縮小均衡は深刻化するだろう。ロシア経済が、物価の高騰と景気後退が同時に進行する“スタグフレーション”に向かう恐れも排除できない。
 今後、ロシア経済はかなり厳しい状況に向かいそうだ。市民生活の苦しさは高まり、厭戦(えんせん)感情が広まる展開も考えられる。財政悪化によって、戦費負担も難しくなるのではないか。ルーブル下落と物価高騰、景気後退の深刻化などを背景に、ロシアがウクライナでの戦闘継続が難しくなる展開も想定される>(以上「PRESIDENT」より引用)




 評論家によってはウクライナ戦争は10年戦争になるとか、EUはプーチンの戦争が5年は続くと見ているとか、様々な観測が出ているが、真壁昭夫氏(多摩大学特別招聘教授)はPRESIDENT誌に「ロシア国民もロシアを見捨てつつある…ルーブル安が止まらなくなったプーチン政権の避けられない末路4四半期連続でロシア経済はマイナス成長に」と題する論評を掲載した。
 それによるとロシアは戦時経済もいよいよ行き詰まりになり、年内にも物価高騰とマイナス経済に陥るとみている。そして縮小均衡へ向かうという。果たしてそうだろうか。

 真壁氏は戦争支出を軽く見ているのではないだろうか。戦争遂行のためにロシアがどれほどの支出をしているか、それは国家財政規模を超える超過負担になっているはずだ。
 プーチンが戦争を始める前のロシアのGDPは韓国並の日本の約1/3程度でしかなかった。戦争を始めてから先進自由主義諸国が対ロ経済制裁に踏み切った。そのためロシアのGDPは激しく下落しているはずだ。

 中国とインドはここぞとばかりにロシア産原油などを安価に爆買いしている。ことに中国は爆買いに専念してロシア国家財政を支えているが、ただし中国も対外決済に必要な米ドルが払底しているため、紙屑同然の「元」を決済に使用している。習近平氏は「元経済圏」などとほざいているが、国際流通量の円の半分にも満たない元流通量で「経済圏」を形成して「元基軸通貨圏」を構築するなど噴飯ものだ。
 ロシアは原油決済で国庫に積みあがる「元」で、何を買い求めるというのだろうか。その頼みの綱の「元」も中国でハイパーインフレの前兆が見られ有様だ。しかも地方政府のみならず中央政府の金庫までも空っぽのため、「元」増刷圧力に抗えなくなっている。そうするとハイパーインフレが中国から「元」経済とコミットしたロシアに輸出されて、ロシアもハイパーインフレに巻き込まれる可能性が高い。

 プーチンが戦争を始めた当初、ロシアは激しいインフレに見舞われて中央銀行は金利を前代未聞の40%台に引き上げる、というルーブル安の食い止めとインフレ沈静化を断行した。それによりロシアは狂乱物価を回避したが、そのツケは大きく国民生活を圧迫している。
 戦争遂行のために少なく見積もってもプーチンは国家予算の約1/2(ロシアのGDPの約3%、つまり年間約670億ドル(約9兆3000億円)と推定されている)を支出している。財政規模に見合わない戦争支出が国家のあらゆる機能をマヒさせ、国家としての体をなさなくなりつつある。

 プーチンの戦争が長引けば、ロシアは国家として全土を統制するのは困難になり、多民族国家の宿命として内部から分裂・崩壊するだろう。既にそうした動きが伝えられている。
 戦争が長期化するだろう、というのは国家としてのロシア全体が見えていない者の妄言だ。アフガン侵攻ですら、ロシアは僅かGDPの0.4%しか支出していない。その10倍近い支出を一年余で行ったツケは衝撃波となって国民生活に襲い掛かる。経済の裏付けを持たない戦争は在庫が払底すればそれで終わりだ。ロシアを国家経済から見ても、プーチンの戦争は終わりに近づいている。原油代価として受け取った「元」が暴落すれば「元」と連動したルーブルも暴落し、プーチンの戦争はたちまち継続困難に陥る。

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