大原氏の戯言。

実は戦争に弱い米国
 米国は長年にわたって世界最強クラスの軍事大国と考えられてきた。例えば、第1次世界大戦、第2次世界大戦は、米国の参戦が勝敗の行方を決めたと言える。
 第1次世界大戦中の1915年5月にアイルランド南岸で「英国の」豪華客船ルシタニア号がUボートに撃沈され、「米国人の」乗客に犠牲が出た。この時に米国民の反ドイツ感情が高まったが、実際に米国が参戦したのは「無制限潜水艦攻撃作戦」の開始に対抗する形で、ドイツとの国交断絶(1917年2月)、宣戦布告(同年4月)を行った時である
 第2次世界大戦への米国参戦については、日本が大きく関わっているが、2月1日公開「100年前に逆戻り、我々は『世界戦国時代』へ突入するのか?」3ページ目「我々は『戦前』に向かっているのか?」の通りだ。
 民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領が、執拗な経済制裁で日本を苛め抜き、1941年8月1日には、対日石油輸出全面禁止という暴挙に出た。
 その結果、日本が真珠湾に「手を出す」ことを強いられ、それが米国の第2次世界大戦参戦の口実となったのだ。
 どちらも米国(が参戦した)陣営の圧勝に終わった。特に日本は第2次世界大戦で米国にボコボコにされた上に占領までされたから、米国が「戦争に強い」との印象があるのはある意味当然だ。

 だが戦後の、「世界大戦」ではない「局地戦」ではどうであろうか?
 まず1950年の朝鮮戦争で、米軍は一時朝鮮半島の南端まで追い詰められ、その後紆余曲折を経て、結局、元々米国とソ連の分割占領線であった北緯38度線でいまだににらみ合っているから、せいぜい引き分けである。
 また、1975年の惨めなサイゴン陥落で、実質的に大敗北したベトナム戦争は、長い間米国のトラウマとして残った。
 1991年初頭に米国の攻撃が功を奏した湾岸戦争は「大勝利」とされるが、フセイン政権は結局存続している。
 そして大量破壊兵器の保有という「言いがかり」をつけて2003年に侵攻したイラク戦争では、フセイン政権を打倒し同年中に「大規模戦闘終結宣言」が出たものの、戦争は2011年のオバマ大統領の正式な「終結宣言」までの長期にわたった。しかも、この戦争と「占領」がイラクなどアラブの人々にどのように受け取られたのかは、アラブニュース3月13日「多大なる犠牲を払ったイラク介入を絶対に繰り返してはならない」が参考になる。同記事で述べられているように、米国のイラクへの介入は「大失敗」であったといえよう。
 同じように、色々な理屈はつけられているが、9.11事件の実行犯とされるアルカイダへの事実上の報復のために、2001年に「アフガニスタンで大多数を占める善良な国民を巻き込む形」で米国のアフガニスタン侵攻が始まった。この戦争は2021年8月21日公開「サイゴン陥落のデジャブ『アフガン大返し』でバイデン3日天下?」、同9月4日公開「『タリバンを持ってISを制す』高等戦略はバイデンには期待できない」で述べた惨めな撤退まで20年間も続いた。
 米国が強く関与するウクライナ戦争の今後を占う上で、「戦争を始めても、結局後始末ができない」米国の歴史をしっかりと見据える必要がある。

戦わずして勝つのが孫子の戦略

 2019年4月11日公開「戦わずして勝つ! 孫子に学ぶ投資の極意」で述べたように、そもそも戦争とはむやみやたらに行うべきものではない。多くの国民の命を失うだけでは無く、財政的な負担も大きい。
 もちろん、孫子も戦争を全く否定しているわけでは無く、現代で言えば外交戦略やスパイを用いる諜報戦略を駆使してもどうしても解決できない時には、武力の行使を是認している。
 ただし、その際には「一撃必殺」で「完勝」することも求めている。だらだらと続ける戦争は、多数の国民の命を危険にさらし、大量の資源を消費するからである。
 その点で、米国の過去の戦争(少なくとも第二次世界大戦の後)は、湾岸戦争を例外として、人命と費用の浪費に終わっただけで、「成果」といえるようなものは全くと言ってよいほど無かった。
 ロシア軍のウクライナ侵攻の是非は別にして、ベトナム・イラク・アフガン同様「勝ち目の無い」戦争をダラダラと続けることは無意味であると考える。
 ベトナム戦争の際に米国が学んだことの一つに「戦争報道の規制」の重要性がある。前記「100年前に逆戻り、我々は『世界戦国時代』へ突入するのか?」冒頭ページに掲載されている「ナパーム弾の少女」の写真のような、戦争の悲惨さを伝える報道が相次いで行われたことから、反戦運動が高まったからだ。
 それ以後、米国政府は強力に戦争報道を規制し、湾岸・イラク・アフガン戦争などで一般市民が犠牲になる姿を我々が見ることは無くなった。
 だが、それは米政府の圧力によってメディア各社が「報道しない自由」を駆使しているだけで、戦場となった国々の一般市民の生活が悲惨であることに変わりは無い。もちろん、ウクライナでも同様だ。

「ウクライナも」腐敗国家

 もう一つ「米国が関わる戦争」を特徴づけるのは、米国が支援する相手国がほぼ例外なく「腐敗国家」であり、さらには多くの場合(軍事)独裁の非民主的政権であることだ。
 これは、米国の裏庭(表玄関)ともいえる中・南米の「米国介入案件」で典型的だが、イラク・アフガンの復興政府も例外なく腐敗しており、国民の支持を得ることができなかった。その結果、米国が介入することによって「市民の生活がメチャクチャになる」という「大失敗」に終わったのだ。
 もちろん、ベトナム戦争で南ベトナム側が破れたのも、「私腹を肥やすために解放戦線側に武器を売却する」者までいたとされる政府の腐敗のひどさに、市民が愛想をつかしたという側面が大きい。
 ウクライナも、4月23日公開「マクロン発言は『勇気ある』ものなのか、日本も米国の同盟国だが子分ではない」2ページ目「ノルドストリームと腐敗」で述べたように、腐敗国家ランキングではイランと同率に並ぶ。
 また、「ゼレンスキー大統領が(欧米などによる制裁対象である)ロシアから安くディーゼル燃料を購入する一方、米国が燃料購入代金として送った数億ドルの支援を側近とともに着服している」こともスクープされている。これが事実であれば、南ベトナムで解放戦線に武器を売却したことに匹敵する背信行為だ。
 ゼレンスキー大統領は、18~60歳の男性を出国禁止にした。その結果、父親・夫と引き離された子供や妻たちが、海外で孤独な難民生活を強いられている。さらに父親・夫を含む男性たちも、勝ち目の無い戦闘で命を散らしているのだ。
 彼らの犠牲が、「愛する母国」を守るためのものではなく、ゼレンスキー大統領とその取り巻きやバイデン一家が私腹を肥やすためのものであったとしたらあまりにも悲しい。
 もちろんもし停戦が実現したとしても、市民の心が離れたゼレンスキー大統領がウクライナを統治することは、イランやアフガン同様極めて困難である。

「米国」が負けを認めなければベトナム戦争の泥沼へ

 ドナルド・トランプ氏は「私が大統領であればウクライナ侵攻は無かっただろう」と述べたと伝えられる。「たら、れば」の話であり、ロシアが「手を出した」のは歴史的に見ればクリントン政権以来の「NATOによるロシア囲い込み」によるところが大きい。
 だが、直接的にプーチン大統領に手を出させたのは、昨年3月18日公開「プーチンだけが悪玉か―米国の『幅寄せ、煽り運転』がもたらしたもの」で述べたバイデン氏の稚拙な行為である。したがって、トランプ氏の言い分にも説得力がある。
 前述のように、孫子は「戦わずして勝つ」ことを教えているから、老獪なプーチン大統領も基本はその路線のはずだ。同じことが、5月3日公開「もし習近平が平和統一を画策したとしたら、台湾『香港化』という未来はありうるか」の習近平氏にも言える。
 一方、米国はこれまで述べてきたように、孫子の兵法など無視して、強大な軍事力を背景に次々と戦争を起こす好戦的な国である、しかも、大量の兵力を投入しても「結局負ける」結果となっている。
 これは、米国のような最新鋭かつ強力な装備を備え系統だって指揮される軍隊が、ゲリラ戦に弱いという点が大きな原因だ。ベトナム戦争の頃からあまり変わっていない。
 だが、もう一つの大きな理由は、「米国が世界から嫌われている」という点にある。これまで述べてきたように、米国は「自分の言いなりになる腐敗・独裁政権」を基本的に応援してきたから、世界中の人々に嫌われるのは当然だ。もちろん、当事国の国民はもっと米国を憎む。
 米国が、個々の戦闘で勝つことはあっても「戦後復興・処理」を含めた「戦争」に概ね負け続けているのは、当事国の国民の支持が無いからである。

停戦はどうなる

 このように考えると、ウクライナ国民、さらには世界市民のためには、「早期停戦」が望ましいのは言うまでもない。
 だが、「勝つ見込み」の無い戦争の停戦交渉では有利な条件が引き出せないから、バイデン民主党政権の失敗を公に認めることになる。ましてや、イラン・サウジアラビア国交回復のように、共産主義中国が仲介役として躍り出ればバイデン政権の面目は丸つぶれとなる。
 また、ゼレンスキー政権も国民の支持が無いことはよく自覚していると思われるから、戦後の統治には自信が無いはずだ。もし停戦してもイラクやアフガンのような状態になり、ゼレンスキー大統領は「蓄財」を抱えて亡命することになるであろう。
 したがって、ゼレンスキー政権に「国民の平和のための停戦」の動機は薄いように思える。
 2024年の米大統領選挙の行方は混とんとしているが、共和党候補が勝利し「方針転換」でもしない限り、ベトナム戦争に匹敵するようなウクライナ国民や世界市民の苦しみは長期にわたって続くのではないだろうか。
 2025年以降に共和党の大統領が停戦を実現したとしても、3年以上の長期にわたる「無益な」戦争であったということになる。
 もっとも、それ以前にサイゴン陥落のような、事実上のウクライナ・米国側の敗北によって戦争が終結する可能性は否定できない。>(以上「現代ビジネス」より引用)




 大原 浩氏(国際調停者)が「ウクライナは結局アフガン・イラクになりバイデンは逃げるように撤退するのか」との見出しと、「戦争が終わってもゼレンスキー政権は統治できない」という副題で西側陣営をアジッている。
 なぜ大原氏は米国やゼレンスキー氏を嫌うのだろうか。国際調停者なら公平な立場から論じるべきだろう。大原氏は孫氏の兵法を持ち出してプーチンも戦わずして問題解決したかったのだろうが、それが出来なかったからウクライナ侵略戦争を始めたと結論付けている。

 バカバカしい限りだ。上半身裸で白馬を駆るマッチョマンを気取るプーチン氏が話し合いでウクライナ東部四州をクリミア半島と同様に併呑したとしても、彼を充分に満足させるものではない、という愚かな英雄主義で戦端を切ったのがプーチンの戦争の真実ではないか。
 盛んに軍事パレードを繰り返して威容を誇るのはガキが玩具の兵隊を揃えて悦に入るのと何ら変わらない。それは幼稚性の現れ以外の何ものでもない。本当に哀れなほど幼稚な人格者プーチンだ。

 一方、ゼレンスキー氏は「戦争が終わってもゼレンスキー政権は統治できない」と断定している。要するにそれほど高い支持率を得ていないからだという。もちろん民主主義国にそうした傾向があるのは承知している。英国をヒトラーから救ったチャーチルは戦後の選挙で敗れた。
 しかしゼレンスキー氏の政権が腐敗塗れだから、という批判はアテにならない。援助物資や資金を政権が掠め取っている、と大原氏は指摘するが、ウクライナ政府の収支決算書は財政赤字の急増を受けて、2022年のウクライナ政府の債務残高は4兆728億フリヴニャ(約14兆7000億円)と前年から52.4%増加した(図表2)。とりわけ目立つのが、対外債務の急増だ。人口5千万人の国でこれほどの対外債務の急増が国民生活に影響を与えないはずがない。ゼレンスキー氏本人が腐敗しているなら、国民から怨嗟の声が湧き上がるだろう。

 だが現在のところそうした声は上がっていない。戦争が終われば(大原氏が期待するようにプーチンの勝利で終わることは決してないが、)ウクライナは巨額な戦後賠償をロシアから受け取ることになる。その原資はシベリア油田であり、天然ガスであり、プーチンをはじめとするオルガルヒたちが蓄財した金融資産だ。
 そうすればウクライナは投資による経済成長が起きて、復興景気が訪れるだろう。誰が大統領であろうと、政権運営は容易なはずだ。ゼレンスキー政権は戦後に退陣するだろう、と大原氏が予測するのは、確実にウクライナが敗北してロシアに占領され、ゼレンスキー氏が幽閉される、という事態が起きない限りあり得ない。

 大原氏は頻りと米国は戦争に弱いと指摘する。先の大戦以後、米国が敵国に攻め込まれてどれほどの領土を失ったというのだろうか。確かにベトナムやアフガンでは勝利なき撤退をしたが、それを敗北だというならその通りだろうが、米国はそれらの地域で核兵器の使用を仄めかしてすらいない。通常兵器による通常の戦争を地政学的な優勢をもたらい「限定戦」を実施したための結果だ。
 実は米軍は世界随一の強さを誇っている。兵器のレベルや兵隊の練度などを見る限り、米国に並び立つ国軍は存在しない。しかも米軍の強さは科学研究力と経済力に裏打ちされている。常に米軍は世界最先端の兵器を装備している。しかも兵器のスペックはカタログ上だけのスペックではない。

 世界軍事年鑑を拝見すると強さの順位が出ているが、米国の第一位は当然として、ロシアの第二位、中国の第三位には笑えて来る。たった人口5,000万人の陸続きの隣国に攻め込んでアタフタしているロシアが世界第二位の軍事大国とは悪い冗談だというしかない。
 もちろん中国の軍事力も世界第三位どころの話ではない。習近平氏が種々様々な大宣伝を行って「中国は大国だ」と世界各国に印象付けようと必死になっているが、あらゆる面で三流国以下の弱小国だ。もちろん経済も世界第二位の実力なぞ持ち合わせていないし、通貨だって「元」通貨権を形成する、とは噴飯モノだ。

 現行ですら「元」の国際決済割合は日本「円」の1/2~1/3以下だ。しかも「元」は未だに国際通貨として認証すら得ていない。いわば「元」は中国内で通用するローカル貨幣でしかない。一歩中国を出れば紙屑同然の代物だ。
 科学技術力で中国の研究論文の本数は突出している、と研究者の能力向上を脅威と捉えている評論家がいるが、中国が発表している研究論文の中身を知らないから「脅威」だと感じているのだ。つまり不勉強な評論家がハリボテの大きさに驚いているだけだ。

 大原氏は「イラン・サウジアラビア国交回復のように、共産主義中国が仲介役として躍り出ればバイデン政権の面目は丸つぶれとなる」と中国が仲介の労を取るのではないか、と期待しているようだが、ウクライナ側が拒否したようだ。先のブログで指摘したように、イラン・サウジアラビア国交復興は似た者同士の「コップの中」の斡旋でしかない。彼らは一様に「独裁政権」だ。意匠こそ社会主義と宗教と王制と違いはあれど、国民に君臨して国の富を恣に差配する独裁者の国だ。つまり独裁ゃが国民を奴隷として搾取する独裁国家同士の軋轢など、大したことではない。
 しかしウクライナは民主主義国だ。ロシアは似非・民主主義のプーチン独裁国家だ。隣国といえども、台湾と中国の関係に似て、簡単には譲歩できない。プーチンの戦争は民主主義国家群と独裁国家群との総力戦の様相を呈している。しかも世界経済の大半を握っているのは民主主義諸国群で、科学技術の最先端も民主主義諸国群が大半を握っている。そうした民主主義諸国群の科学技術と自動車産業を破壊して経済力を弱めようと策されたのがCO2地球温暖化やSDGs(Sustainable Development Goals)運動だ。

 そうした意識高め系の運動を背景にドイツでは緑の党が政界から様々な機関の中枢に入り込んで「持続可能な開発目標」ごっこを繰り広げている。「地球にやさしい」運動の究極の目標は一体何だろうか。地上をすべて原野と原生林に戻せ、というのだろうか。彼らの主張に正当性は何もない。
 大原氏は「サイゴン陥落のような、事実上のウクライナ・米国側の敗北によって戦争が終結する可能性は否定できない」と予言しているが、そんな戯言の未来などありうるはずがない。戦争遂行に不可欠な経済力を比べれば一目瞭然だ。韓国と同程度の人口1億4千万人の国・ロシアが一年有余も頑張ったが、もうそろそろ決着が就くだろう。それも前線の戦闘によってではなく、ロシア国内の反戦勢力による政権転覆によって呆気なく終了する、と予想する。

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