中共政府の実態は軍閥政権だ。

<ニューヨーク市立大学政治学教授の夏明(かめい)は、10年以上前に中国で「黒社会(暴力団)」の調査を行った。彼によれば、一般的に暴力団は民間の結社から発展したものが多く、通常は政府や官僚が民衆に対して正義を提供できない時に何らかの作用を発揮したのだという。ところが、彼は現在の中国における暴力団の構成員や組織は昔の中国と比べて違いがあると指摘し、次のように述べている。
 昔の暴力団は、水滸伝であろうと「哥老会(かろうかい)」や「紅幫(ほんぱん)」、「青幫(ちんぱん)」といった秘密結社であろうと、彼らはまず初めに政府の役所に抵抗したものだった。彼らは一種の庶民の正義、あるいは暴力団の正義と呼ばれるものを提供していたが、現在の暴力団にはそのような特徴はない。それは彼らの最たる特徴が官憲と結託することにあるからである。

唐山市暴行事件
 さて、話は昨年(2022年)の6月に遡るが、後述する事件は発生直後に日本のメディアが大きく報じたので記憶されている方もおられるのではなかろうか。ちなみに、中国ではこの事件を「唐山打人案(唐山市暴行事件)」と呼ぶ。
 2022年6月10日、中国河北省東部に位置する唐山市にある焼肉店「老漢城焼烤」は深夜の午前2時半近くにもかかわらず、多数の客でにぎわっていた。入口に近いテーブルには4人の若い女性が2人ずつ対面で座り、和気あいあいとビールを傾けながら焼肉を楽しんでいた。
 そこへ突然に、店内にいた1人の男がテーブルの通路側に座る女性の背後に近づき、「よう、姉ちゃん」と声をかけて女性の背中に左手を置いた。見知らぬ男に背中を不意に触られた女性は「嫌だ、何するのよ」と拒絶したが、男は「何だ、この野郎」と応じて一呼吸入れたかと思ったら、右手でいきなり女性の頬を平手打ちしたのだった。
 一般的に中国の女性は気性が強く、うじうじしていない。頬を打たれた女性が「何するのよ」と叫んで男に組み付くと、それを見た仲間の女性がテーブルにあったビール瓶を手にして男の頭めがけて振り下ろした。ビール瓶は粉々に砕けたが、頭がよほど固いのか、男は無傷で平然としていた。
 丁度この時、店外にいた男の仲間数人が新たに店内へ乱入した。男がビール瓶で殴った女性を引きずり倒すと、仲間も加わって当該女性を足蹴にした。これを見たもう1人の女性が倒れた仲間を守ろうと覆いかぶさると、すかさず仲間の男が女性2人をめがけて椅子を投げつけた。それでも怒りが収まらない男たちは、髪をつかんで最初の女性を無理やり店外へ引きずり出すと、殴る蹴るの激しい暴行を続けたし、これを阻止しようとした女性の仲間にも暴行を加えた。
 そうこうする間に店内の誰かが公安警察に通報したと知るや、彼らは蜘蛛の子を散らすように現場から逃走したのだった。

容疑者だけでなく公安当局も摘発

 唐山市公安局路北分局は上記の事件に関して、事件発生直後の状況説明に続く第二弾として6月10日付で次のような「警情続報(重大事件続報)」を発表した。

《警情続報》
 唐山警察は全力を挙げての業務遂行を経て、6月10日に唐山市路北区の某焼肉店で発生した「因縁をつけて騒動を起こした暴行事件」の容疑者のうちの主犯である陳某志と劉某を逮捕した。
 初歩的捜査で判明したところでは、主犯の陳某志は焼肉店に入ると、食事中であった女性4人の中の1人に対してセクハラを行った上で殴打した。その後、陳某志に同行していた劉某などが店内へ突入して被害者を殴打し、被害者らを店外へ引きずり出してさらに殴打を続けた。事件発生後に犯罪容疑者は現場から逃走した。現在2名の女性が医院で治療を受けているが、負傷の状況は安定しており、生命の危険はない。別の女性2名は比較的軽傷であり医院に入院はしていない。
 本日、主犯容疑の2名はすでに法に基づき刑事拘留しており、その他の犯罪容疑者は現在全力を挙げて逮捕すべく追跡中である。警察は法に基づく処置を厳格に行い、断固として被害者の合法的権利を擁護する。
                  唐山市公安局路北分局
                  二〇二二年六月十日
(注)陳某志の実名は陳継志(事件当時41歳)、劉某の実名は劉涛(事件当時33歳)
 この事件のニュースが中国全土へ報じられると、この種の「流氓(ならずもの)」がのさばるのは、『公安警察が「黒社会(暴力団)」と癒着し、彼らの「保護傘(後ろ盾)」として機能し、彼らの犯罪に手心を加えているからだ』という厳しい非難が全国で巻き起こった。これに驚いた中央政府「公安部」は河北省公安庁経由で唐山市公安局に対して当該事件の容疑者9人(男7人、女2人)を速やかに逮捕するよう命じたのだった。その結果、9人の容疑者全員が6月11日までに逮捕されたのだったが、これは未だかつてないスピード逮捕だと世間は驚きを以て受け止めた。
 その後、主犯の陳継志や劉涛の関連から新たに19人が組織犯罪事件の容疑者として逮捕された。2022年9月23日に河北省廊坊市広陽区人民法院(地裁)で彼ら28人に対する刑事裁判の判決が下されたが、その内容は主犯の陳継志を懲役24年、その他27人には個々に懲役11年から6か月の刑が言い渡されたのだった。
 一方、これに先立つ8月29日、河北省紀律検査委員会は同委員会のホームページに「悪勢力(反社会勢力)」の「保護傘(後ろ盾)」として機能していた容疑で唐山市公安局所属の役人15人の名前を公表した。そこには唐山市路北区副区長で唐山市公安局路北分局長の馬愛軍を筆頭に路北分区派出所長など8人の管理職が含まれていが、その容疑は紀律・法律違反、職権濫用、贈収賄などであった。
 これを知った中国国民は「責任追及は市公安局の分局長止まりで、毎度のことながらトカゲの尻尾切りで一件落着だ」と呆れると同時に公安系統の根深い腐敗構造を嘆いたのだった。

坊主頭、全身入れ墨、「愛党愛国」

 ところで、2022年6月10日に上述した事件の発生を報じた中央電視(中央テレビ)のニュースは、事件の当事者9人中の3人は「江蘇黒帮(江蘇省を根城にする犯罪組織)」である「天安社(正式名称:天安社兄弟商会)」の構成員であり、彼らは価格が数百万元(約5000万~8000万円)の高級車である「メルセデス・マイバッハ」を運転して逃亡中であり、当該車のナンバープレートは江蘇省の特別ナンバー「蘇M-A7777」であると報じていた。
 「天安社」とは起源を江蘇省に持つ「黒帮(犯罪組織)」であり、中国では非常に名高い存在である。2018年1月24日に中国共産党中央と国務院は連名で『掃黒除悪(犯罪組織と悪党を一掃する)闘争』を3年かけて実施する旨の通知を出した。この闘争によって多くの暴力団や犯罪組織が打撃を受けたにもかかわらず、天安社に大きな影響は出ていないようである。
 天安社のメンバーは全員が成年男子であり、常に坊主頭、全身に刺青(入れ墨)を入れるのが掟(おきて)のようだ。彼らは集会のある時には、メンバー全員が白の短パンに黒のTシャツでいなせに決めたり、刺青の上半身を晒(さら)して白の短パンを穿くのが常である。
 彼らは天安社メンバーであることを示す身分証として金属製の札を所持しているが、そこには所持者の天安社内における通称である「天安XX(注:XXは漢字)」、「生年月日」、「天安社兄弟商会」の文字、さらに天安社内の登録番号である「結義兄弟:(数字)哥」(「哥」=兄)が刻まれている。そして、その下には大きな文字で「愛党愛国不忘初心(共産党を愛し、国を愛し、初心をわすれない)」と刻まれていた。
 2015年8月9日、河北省涿州市松林店鎮楼桑廟村にある「三義宮(小説『三国志演義』の第1回で劉備と関羽、張飛の3人が『桃園結義(桃園で結んだ義兄弟の契り)』を行った場所)」に天安社のメンバーが集結した。その人数は109人で、小説『水滸伝』に登場する英雄の人数と同じであった。彼らは三義宮で桃園結義をまねて「結義(義兄弟の契り)」の儀式を行うために集合したのだった。彼らは桃園結義で3人の英雄が行ったのと同様に、「不求同年同月同日生、但求同年同月同日死(同じ年月日に生まれることを求めないが、同じ年月日に死ぬことを求める)」と天に誓ったのだった。

権力の側に立って庶民を苦しめる「ヤクザ」

 そこで、天安社とは何かということになるが、端的に言えば、上述した「愛党愛国不忘初心」を標榜した暴力団である。彼らは中国各地で住民を強制立ち退きさせる現場や、反日デモの際に行われた破壊工作の現場、さらには反政府運動を鎮静化する現場で官側を支援することに活躍している。彼らが何で金を稼いでいるかは定かではないが、砂利採取業界や葬儀業界などに利権を持ち、独占的に暴利を享受しているらしく、新型コロナウイルス(COVIT-19)の感染で死亡した人々の火葬で千客万来の大儲けをしている可能性がある。
 10年以上前にメディアが報じたところによれば、中国には少なくとも100万人以上の暴力団構成員が存在しているとのことだった。その特徴は、(1)義兄弟の契りを結ぶ方式で徒党を組む、(2)内部では分業体制を取り、紀律は厳正である、(3)隠語や暗号を使う、(4)活動は隠密裏に行う、(5)政治的な「保護傘(後ろ盾)」を持つ、すなわち、役人と悪党が結託する、公安警察と悪党が結託する。
 上記の特徴はメディアが10年以上前に報じたにもかかわらず、そのまま現在の天安社に当てはまるように思われる。要するに、中国共産党と中国政府は今までに何度も「黒社会(暴力団)一掃」のキャンペーンを行って来たが、それは表面上のものであり、そこには天安社のような「愛国黒帮(愛国犯罪組織)」の例外があるのだ。
 香港メディアは天安社メンバーの生活ぶりを次のように表現したことがある。すなわち、「酒を飲み、カラオケを歌い、焼肉や海老・蟹のといった高級料理をたらふく食べ、暴行、ゆすり、たかりに、用心棒代の徴収をして、豪華な暮らしを享受しているが、その中の多くが質屋を営業しており、一部のメンバーは前科持ち」である。

闇社会との癒着、腐敗の根はなくならない

 さて、話は2022年6月10日の「唐山市暴行事件」に戻る。上述したように事件の容疑者9人は事件発生翌日の6月11日までに全員がスピード逮捕されたのだったが、その前後に唐山市から約150キロメートルの距離にある同じ河北省内にある廊坊市公安局は次のような発表を行った。それは、「河北省公安庁の指名により本件は廊坊市公安局広陽分局が捜査を担当する」というものだった。
 このように事件発生地点の地元公安局に代わって別地域の公安局が事件の捜査を担当することを中国語で「異地偵辦」と言うが、地元公安局が犯罪集団と結託している可能性が高い場合などに実施される。それは現在の唐山市公安局長である趙普進が元廊坊市公安局長であり、その在職中に廊坊市の公安部門を挙げて「犯罪組織と悪党を一掃するキャンペーン」を実施して成功させた実績に基づき、廊坊市公安局広陽分局に「異地偵辦」の白羽の矢が立ったのだった。このために事件で逮捕された28人の裁判は廊坊市広陽区人民法院で行われた。
 上述したように、唐山市暴行事件を契機として15人もの唐山市公安局員が腐敗の容疑で摘発されたが、「異地偵辦」が実施されなかったならば、唐山市公安局内の腐敗局員により唐山市暴行事件はいつの間にかうやむやにされ、逮捕された28人も罪状軽微として順次釈放されていた可能性が高い。
 その理由付けとされるのが、天安社が標榜する「愛党愛国不忘初心」の精神であり、中国共産党と中華人民共和国の繁栄を図るために尽力するという大義名分なのだが、その実態は腐敗役人が暴力団のおこぼれで私腹を肥やすという構図である。
 中国の「黒社会(暴力団)」が『愛党愛国』を標榜する限り、彼らが一掃されたり、撲滅される可能性は皆無であると言える。逆に言えば、暴力団員が労働者や農民による抗議行動を鎮圧するために雇用される状況が続く限り、役人と暴力団や公安警察と暴力団の癒着が消滅することはない。有名な長嶋茂雄氏の引退スピーチ「我が巨人軍は永久に不滅です」に倣って言えば、「我が党・国を支える暴力団は永久に不滅です」となるが、天安社はその暴力団の最たる存在と言えるのではなかろうか>(以上「現代ビジネス」より引用)




 中国に闇社会があるのは常識として理解している。なぜなら闇社会はいかなる国にも存在しているからだ。日本にもヤクザと称する闇社会があり、かつては「右翼」という団体が幅を利かしていた。
   北村豊氏(中国鑑測家・中央大学政策文化総合研究所客員研究員)が「日本ヤクザそっくりの異形、これが中国の暗部、権力と癒着して弱者を叩く暴力団「天安社」」と題する論評を発表した。中国社会を仕切る「闇社会」を指摘しているが、表社会を仕切ってしまえば、それはもはや「闇社会」とは云わない。暴力団「天安社」そのものが中国社会だ。

 2022年6月10日唐山市の焼肉店「老漢城焼烤」で起きた女性に対する暴行事件により、中国で闇社会が批判されるようになった。焼き肉を食べていた女性4人に対して、通りを歩いていた男性一人が店内に入って「付き合え」と声を掛けた。それに対して「いやだ」と返答すると、いきなり男性が暴力をふるい、女性たちが反撃すると店外にいた仲間が乱入して大乱闘になり、女性たちの何人かが重傷を負って入院する騒動になった。
 その暴行事件は当然警察に通報されて警察官が駆け付けたが、なぜか男性たちは逮捕されなかった。そのため中国民が連日当局に抗議を行い、騒動が広く知られるようになったためか、公安が件の暴力をふるった男性たちと駆け付けた警察官たちも身柄を拘束した、という顛末だ。

 そのことになより、警察と暴力行為を働いた者たちとの癒着が明らかになり、暴行を働いた者たちが暴力団構成員だったと判明した。もちろん警察や果ては公安当局まで暴力団と癒着していたことが明らかになった。
 ただ問題は唐山市から約150キロメートルの距離にある同じ河北省内にある廊坊市公安局が動いて事件の解決に乗り出した、という点だ。それは唐山市当局の公安も暴力団と癒着関係にあるからだ。このように中国社会は悪事を働く者と鶏島根者とが癒着している。それでは社会が浄化されることなどない。

 だが暴力団(=闇社会)が中国から一掃されることはないだろう。なぜなら中国共産党そのものが中国の地主や金持ちなどから財産を奪い命までも奪って国家を簒奪した暴力団のような「軍閥」の一つに過ぎなかったからだ。政権にあった「国民党」を打倒して中国の覇を奪い取った中国共産党がそのまま政権の座に座り、現在も中国を強奪した「軍閥」の二世たちが政権中枢に居座っている。
 日本でも700年近く軍閥が政権を奪取しては「幕府」を開いて全国を統治した。ただし天皇の僕として代理して政治を司る、という体裁を取った。つまり将軍は天皇から「征夷大将軍」という役職を戴いて全国を統治した。世は織田信長ブームのようだが、彼もまた中国流でいえば「軍閥」の統帥の一人でしかない。もちろん徳川家康も然りだ。明治維新も軍閥同士の戦いだったと云えるが、政権を樹立した後の明治23年に国会を開設し、不完全だったとはいえ民主的な選挙制度を導入して近代国家の体裁を整えた。

 中国は中共政権が樹立されて70年も経つが、いまだに軍閥の名残を色濃く残す中国共産党の一党支配が続いている。彼らは「軍閥」の末裔で、軍閥こそが正義だから何でも「奪い取る」のを常としている。もちろん領土も科学技術も人の命も奪い取って何が悪いのか、という常識が支配している。
 欧米人は日本が明治維新から四半世紀も経たないうちに民主化したのは国民が豊かになったからだ、と理解した。だから中国も日本と同じアジア人だから、豊かになれば民主化するだろうと思った。だから中国を国際社会に受け入れて貿易や投資を行って中国を豊かな国家になるべく援助した。しかし中国は日本と異なり、豊かになると軍事大国の道を歩みだし、世界に覇を唱えだした。巨大な軍閥国家が出現したことになる。

 唐山市の事件に見える腐敗構造は残念な社会の一端ではない。唐山市で露呈した腐敗構造そのものが中共政府だ。軍閥が国家を支配している事実を忘れてはならない。彼らにとって国民の人権などどうでも良い。自分たちの欲望に楯突く者は排除されるだけだ。
 人の物も自分のモノ、だからジャック・マー氏がIT事業で成功して巨万の富を築いたとしても、政権が簡単に奪い取ってしまう。もちろん中国民も自分たちのことを「ニラ」だと自覚している。政府により刈り取られるだけの存在だと認識している。最近では「ニラ」ですらなく「鉱山」だと自嘲しているという。「ニラ」なら刈り取られてもまだ根が残っているが、「鉱山」なら掘り尽くされてしまえば何も残らない。国民は何も残らない「鉱山」だから、それなら何もしないで寝そべるしかない、というのが若者たちの間で流行っている躺平主義だ。彼らは働きもしないし結婚もしない。

 中国は行き突く所まで行き着いているのではないか。唐山市の事件で中共政権は軍閥政権でしかない、という実態を中国民は再認識した。
 しかし2022年6月10日唐山市の焼肉店で起きた事件以来、中国民の意識は確実に変化している。その証拠に「白紙抗議」や「白髪抗議」が昂然と起き、中共政府打倒や習近平氏の退陣を要求する声が湧き上がっている。建国以来70余年も軍閥政権を維持してきたが、そろそろ制度疲労というよりも限界ではないか。習近平氏は最後の総書記として、中国の国会開設を明言して、普通選挙実施を確約するしか生き残る道は残されてないのではないか。

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