崩壊する中国を救う道は。

「機能不全」の中国経済
 体制内のエコノミストから上がった習近平独裁の転換を求める声は、何を意味するのだろうか。魏加寧は目下の中国経済の直面する問題が「6つのゾンビ化(機能不全)リスク」と表現しているが、以下、ひとつずつ見ていこう。  
 1.市場のゾンビ化 
 米国が主導する中露“デカップリング”に加え、国内市場がコロナ防疫政策の影響をうけて計画経済回帰に進み、国内消費が委縮したことが問題の深刻さに拍車をかけた。 
 よく中国に14億人の巨大市場があるから問題ない、という人がいるが、魏加寧は「巨大人口規模は改革開放(国際市場とのリンク)があるからこそ有利に働くのであって、改革開放がなければ巨大人口は不利にしかならない」と指摘している。 
 2.企業のゾンビ化 
 中国がこの数年、国有企業の利潤化を進めるために民営企業を犠牲にしたことが原因。
  民営企業は銀行からの融資を受けられず、一方国有企業は国家信用を担保に低利の融資を受けて、それを民営企業にまた貸しすることで中間利益をとるようなこともしている。 
 そして国有企業は市場を寡占し価格を上昇させている。近年上流価格が上がり、下流価格が下がっているのは、国有企業が上流市場に集中し、寡占による価格上昇で利益をむさぼっているからだ。 
 一方で民営企業は独禁法違反や融資基準が厳しく取り締まられ、倒産や夜逃げが増えた。世論から批判され、政策環境は変化が多く、民営企業に「躺平」(なにもしない、諦めムード)が広がっている。
  比較的経営がうまくいっている民営企業があえて銀行から資金を借りずに、事業を縮小して身を守る「借り惜しみ」、あるいは借り入れしていた資金を期日前に返還する現象も最近増えている。  こうした状況により国有企業、民営企業ともに、競争力、体力を失われている。

中央銀行もあきらめムード

 3.銀行のゾンビ化 
 国有大型銀行については、融資意欲が下降し、貸し渋り現象、債務の前倒し返済現象が起きている。また銀行と企業が結託したフェイク・ローン(銀行は融資ノルマを達成し、企業は借りた金を同じ銀行に預金し、利子を得る)などの現象も増加。
  中小民営銀行は不良資産を抱えて立ち往生し、一部中小銀行は不正や不良債権が暴露され、河南村鎮銀行の取り付け騒ぎのような問題も発生。国有大手銀行も中小民営銀行も、融資能力が低下し、機能不全に陥っている。 
 4.中央銀行のゾンビ化 
 企業の「借り惜しみ」、銀行の「貸し渋り」現象の増加は、貨幣政策の柔軟性を失わせた。通貨の供給過剰は実体経済に至らず、むしろ物価を押し上げ最終的にスタグフレーションを引き起こいしている。
  5.財政のゾンビ化 
 中国の国家財政はもともと、東南部沿海省、特に長江デルタを構成する省市が上納する財政余剰金を中西部の貧困省に移転することで運営されてきた。だが、今年、長江デルタ一体の省市の財政収支に巨額赤字が出現。 
 このため国家の財政政策はポジティブな影響力を持てなくなった。
  また、インフラ施設建設がGDPの占める割合が上昇し続けている昨今、GDP成長が減速の一途をたどっているということは、投資による経済成長効果が下がっているということでもある。

習近平「独裁体制」の弊害

 6.政府のゾンビ化 
 目下、決策の重心が高く偏りすぎており、必然的に下の現場に降りてくる政策の左右の振れ幅が大きくなり、極端から極端に変わる。
  防疫政策のプロセスにおいて、「躺平」(寝そべり、何もしない)でいくかどうかは、民衆側の選択の問題であり、政府としての「躺平」(無策)は永遠にあってはならない。 
 資本主義社会であろうと社会主義社会であろうとこれは同じだ。
 今回のゼロコロナ政策放棄は、三つの大問題があった。まずタイミングが悪い。冬季のインフルエンザや感染症が流行りやすい時期に行った。2022年4月、上海の感染拡大時に転換するか、23年4月まで待つべきだった。 

 次に(政府の)姿勢が悪い。 
 突然ハンドルを反対に切って、予防措置もとらず、慌てて政策を放棄して逃げだした。計画も段取りも対案もない。シンガポールがロックダウンを解除するときは四段階にわけていた。これは中国の伝統文化とおそらく関係がある。必勝の信念だけあり、妥協の精神はなく、どのように撤退するべきかわかっていない。 
 最後に手法が悪い。 
 ゼロコロナの三年間、医療病床、医薬品、ワクチン、医療人員などの確保など全くなんの準備もしてこなかった。日本の防疫政策における成功経験の一つはICU病棟の拡張と医療人員の育成を絶えず行って、重症患者への対応能力を引き上げてきたことだ。 
 だが、中国がこの三年間に精力を傾けていたのは、PCR検査の拡大と隔離施設の拡張で、多くの人材と財政を浪費してきた。そしてゼロコロナ政策転換とともに、今起きているのは隔離施設の解体とPCR検査薬の大量廃棄だ。 
 これらにかけた費用をICU病棟の拡張や正規の医療人員育成に振り向けていれば、たとえ新型コロナ感染が終息したのちも、中国の医療水準引き上げに役にたっただろう。

国際社会の信用を失った習近平

 魏加寧は2020年4月の段階で、こうした提言を行ったが、なぜ聞く人間が政府側にいなかったのか? これこそ政府のゾンビ化ということではないか? 
  魏加寧はこうした六つのゾンビ化を防がねば、中国経済の回復はありえないとみている。だが、どうすればそれが可能なのか。 
 習近平は2022年12月の中央経済工作会議では民営企業の振興を打ち出し、これまでの計画経済回帰路線、国進民退路線を転換させるかのようなシグナルを打ち出した。 
 さらに政治局会議では内需拡大戦略計画綱要を発表し、これまでいじめてきたプラットフォーム企業や教育研修企業に有利な政策を出すようなシグナルも出している。 
 事実なら、習近平は自らの政策が失敗だったと認め、完全に政策転換に動くということになる。 
 だが、問題はそれを中国内外の人々、投資者たちが信じられるかどうか、だ。
 習近平の10年の政策は、中国人民、そして国内外の投資者たち、国際社会からの中国に対する信用を完全に失墜させてしまったのだ。 
 多くの人が、習近平は右にウィンカーを出しながら左にハンドルを切って暴走する運転手であると見ている。 
 そこで魏加寧は言う。 
「まず民衆の信用を取り戻すこと。…私の近年の政策の過ちを批判してきた論文はすべてネットで削除されている。…当局は私の提言文書の削除を解除すべきではないか?」  
「次に、民主的法治建設を中心とすること。ゼロコロナ政策解除後、経済建設を政府任務の重心に回帰させよ、という人がいるが、私の見方では、経済建設中心ではなく、法治建設中心に回帰すべきだ。国内外の投資者が最も重視するビジネス環境は法治である。…中国政府が今から、真面目に法治建設を行えば、必ず中国経済は新しい経済成長の軌道にのる」  
「最後に、真面目に全面的に反省することだ。…心から各地、各レベルの政府と広大な人民は今からすぐに全面的な反省を行い、出来るだけ早く法治上の現代化国家になってほしい。そうすれば中国経済は再び飛躍する」

習近平への「退陣要求」

 習近平を名指しして批判しているわけではないが、文脈から見れば、今の中国経済はこのままでは崩壊を免れ得ず、崩壊を回避するためには、もはや経済政策を講じるのではなく、法治の現代化に舵をきるしかない、ということだ。 
 これは事実上、習近平独裁を捨てよ、と求める意見といえないか。 
 そして、「政府各レベルは真面目に反省せよ」と言うが、おそらくもっとも真面目に反省すべき、この中国の経済崩壊危機を引き起こした最高責任者として、習近平を思い浮かべているであろう。 
 実際、習近平が国内外にわかる形で自らの失策を認め、責任を取らない限り、中国がこの10年で失った信用を取り戻すことはできまい。 
 こうした主張が、体制内のハイレベルのエコノミストから出ているということは、党内ハイレベルでも同様の認識が広がっている、ということではないか。 
 習近平体制を擁護するのか、中国の経済崩壊危機を回避するか、党中央は選択を迫られている>(以上「現代ビジネス」より引用)




 前出の長谷川氏の「中国・習近平による「台湾侵攻」は近い」と題する論評を私は荒唐無稽な防衛費倍増の為にする議論だと批判した。その根拠が同じ現代ビジネスに掲載された福島香織氏(ジャーナリスト)の「習近平に退陣要求…体制派エコノミストが政権批判!その深刻な中身と「中国経済」のヤバすぎる現実」と題する論評だ。
 体制派のエコノミストが習近平氏に滞陣せよ、と迫ることはこれまでは決してあり得ないかった。そんなことをすると命取りになるのが目に見えていたからだ。しかし魏加寧氏は6つの論点を上げて習近平氏を批判している。その「習近平体制を擁護するのか、中国の経済崩壊危機を回避するか」と党中央に選択を迫る有様は鬼気迫るものがある。

 魏加寧氏が示した「中国経済の直面する問題が「6つのゾンビ化(機能不全)リスク」」と表現した中国の問題点は、すべて法治主義に帰結すると結論付けている。彼の見識の高さには敬服するが、問題は魏加寧氏の主張を理解できる人物が党中央の幹部に何人いるかではないだろうか。
 残念ながら習近平氏はトップ7を彼の「取り巻き」で固めてしまった。習近平氏に意見する者が政府首脳には誰もいない。魏加寧氏は命を賭して諫言したが、習近平氏が素直に聞き入れるとは思えない。彼は彼と並び立つ者を一切許さない偏執的な独裁者だ。民間企業経営者の雄ジャック・マーにすら習近平氏は嫉妬し、彼から企業を取り上げて丸裸にした。それは法治以前の問題だ。

 中国は魏加寧氏が看破したゾンビによって崩壊する。ゾンビを跋扈させているのは法治主義を無視した勝手気儘な人治主義の社会だ。そこには国家間の信頼関係など存在せず、まさに「戦狼外交」が世界を掻き回すだけだ。
 日本にも「習近平氏は破れかぶれになって台湾を侵攻する」と予言する評論家がいるが、経済が崩壊していて軍隊が動くのか。経済が絶好調だったロシアですら、ウクライナに軍事侵攻したな経済制裁を受けて物価は20%近いインフレに見舞われ、国家財政が破綻の危機に瀕している。既にマイナス成長に陥っている中国経済に、台湾へ軍事侵攻する余力などない。

 断っておくが、IMFをはじめ米国エコノミストなどが2022年中国GDPは3%~4%成長だ、としているが大間違いだ。経済の中心地を自任する上海ですら2022年のGDPは2%↓だったといわれている。中共政府ですら「ギリ3%成長だった」と速報しているではないか。その3%という数字は一昨年の2022年経済は3%台の成長を維持する、という目標数値をなぞったものでしかない。
 ソ連は崩壊するまで西側は数パーセントの経済成長していると「推計」していた。しかし現実はマイナス成長に陥っていた。最終的にソ連は経済崩壊して、版図を維持することが出来なくなった。ソ連と同じ道を中共政府も歩いている。中共政府は経済統計数字を捏造しているうちに感覚が麻痺して経済の実体を見誤り、すべての部門をゾンビ化させてしまった。

 たとえ習近平氏を滞陣させたとしても、ゾンビ化した経済を再生して蘇らせることは出来ない。つまりゾンビ化とは「死に体の経済」を生きているかのように偽っているに過ぎない。崩壊する中国を救う道はゾンビ化した経済を清算するしかない。
 つまり崩壊させて、一から出直すしかない。膨大な不良債権処理をキッチリ行い、商法を制定して企業会計原則に基づく会計処理を行って経済情報を世界に開示する必要がある。さもなくば誰も中国に投資しないだろう。そうした段階を踏まずして中国が甦ることはない。だが、中国の蘇生の仕事は習近平氏には向かない。彼の能力は破壊する能力であって、社会や経済を構築し新しい価値を創出する能力は皆無のようだ。よって習近平氏は退陣するしかない。

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