行政の簡素化に逆行する法務局。

 私の友人が「古民家」を購入した。山林も分けて頂いたようだが、田舎のことだから山は笑っていたらタダでくれるほど、価値がなくなっている。友人は家屋敷や山林まで手に入れた。そこで自分で所有権移転登記すべくPCを紐解いて登記申請書を記入して、売却人の委任状等の付属書類も整えて、勇躍張り切って法務局へ出掛けたそうだ。
 しかし所有権移転登記の本人申請はそれほど甘いものではなかったようだ。まず購入不動産の評価額を売却人から聞いてなかったため、法務局で教えてもらおうと思ったようだ。しかし法務局では「分からない」と申請書を突っ返されたようだ。

 そこで友人は車で20分かかる家へ帰り、遠隔地の売却人に電話した。「今年五月に家屋等が所在している市から送られて来た固定資産税納付書を見て「固定資産評価額」を教えて欲しい」とお願いし、固定資産評価額と税率に則った登記税を登記申請書に記入して、午後から法務局の提出窓口へ行ったという。
 そうすると今度は法務局窓口の人が申請書等が2ページに渡るため割り印が要る、といわれた。もちろん友人は申請用紙等が二ページにわたる際は割り印が必要な人は承知していた。だが割り印の方法は複数あるため、法務局で聞いてから割り印を押すべく本人の実印を持参していた。しかし法務局の提出窓口の人は「売却人の実印」の押印も必要だと云ったそうだ。法務局のホームページにある書き方では「割り印は申請人だけで良い」と書いてあったが、地方の法務局の指導は法務局のホームページとは異なるようだ。しかも売却人の実印が押してある領収書を添付するように言われたという。友人は売却人が遠隔地に住んでいるため、購入金額を銀行振り込みで済ませ、領収書は徴していないと回答した。振り込んだ証拠として銀行口座を見せてもダメで、売却人本人が実印を押した領収書を持参するように厳しく云われ、申請書を突っ返されたという。同時に、登記申請人の住民票も取って来るように云われたという。友人は本人確認のためにナンバーカードと免許証を持参していたが、それらを確認すらしなかったという。地方の法務局では本人確認としてマイナンバーカードは役に立たないことが解った。

 所有権移転登記申請が本日のことにはならないが、とにかく法務局の窓口の人が「指導」した通りにすべく、家に帰って登記申請書等を速達で遠隔地のへ売却人の許へ送ったそうだ。
 もちろん午前と午後に法務支局を訪れた際に、登記に必要な購入土地や屋敷さらには山林の登記情報証明書や売却人の住民票、さらに印鑑証明や委任状などは添付していたという。

 夕刻、人の良い友人も憤慨やるかたない面持ちで私に愚痴をこぼした。行政の簡素化という掛け声は、末端の地方法務局までは届いてないようで、逆に煩雑化・複雑化しているようだ。法務局行政がそうだからすべてがそうだとは云わないが、余りにバカバカしいので私のブログに書いた。これが日本の政府・官僚組織の実態だ。
 マイナンバーカードは本人確認のために必要だ、行政の一元化のために必要だ、というのは掛け声だけのようで、未だに紙切れの住民票の方が重宝されている。つまりマイナンバーカードは行政が国民を監視し把握するために利用する道具でしかないようだ。
 従来の「権利証」を廃して、登記情報証明書に変えた意味も殆どないようだ。ただただ法務局の登記行政を複雑怪奇にしただけのようだ。さらに云えば、私たちの棲む地域は元々近くに法務局があった。しかし合併により出現した650㎢もの広大な新市の中央に鎮座する法務局に統合され、周辺地域に暮らす者にとって法務局へ出掛けるのは一仕事になっている。

 さらに、さらに言及すれば、法人登記関係はすべて県庁所在地の法務局に統合されてしまった。そのため法人登記が義務付けられた役員改選期の登記でも、片道が自動車で一時間もかかる県庁所在地へ出掛けなければならない。役員本人が申請すれば、必ず一度ではすまず、二度三度、ひどい時には四度も出掛けたことがある、と知人から聞いたことがある。
 国会議員や官僚たちは地方に暮らす者たちの利便性など一顧だにしてないようだ。行政の簡素化のシワ寄せを地方住民に被せて、自分たちはノウノウとしているとは何事だろうか。国家組織は統治者に都合が良ければ、すべて良いとでも考えているのだろうか。

 所有権移転登記など実は簡単なことだ。譲渡人と権利者の本人確認と所有権移転自由が明確化できれば事足りる。それを一々割り印に譲渡人の実印が必要だとか、銀行振り込みでの記載された通帳の提示では駄目で、実印を押した領収書を提示しろ、とは何事だろうか。
 そもそも法務局が不動産評価額の情報がなくして登記申請書に添付する登録印紙額をいかにして算出するというのだろうか。登記申請書に添付した印紙額が適正かをどのようにしてチェックしているというのか。友人が売却人から固定資産評価額を聞いてなかったのは固定資産税納付書に記載されている「固定資産価格」には複数あり、殆どの国民は登録免許税の算出根拠として「固定資産課税価格」ではないことすら知らない。だから法務局で聞いた方が間違いないだろうと判断してのことだった。しかし法務局の窓口氏が「知らない」というのなら売却人から電話で聞いて、法務局ホームページに書いてある登録免許税額の算出方法を参照して算出するしかない。

 それとも、法務局は手続きを煩雑化することにより、本人申請を排除して司法書士に頼め、と暗に指示しているのだろうか。それは税務署も同じだ。簡単であるはずの税務申告を複雑化して、本人申請を諦めさせて税理士に依頼するしかないように仕向けているのかと疑わざるを得ない。今度導入するインボイス制度などはまさに税理士たちからの要請ではないかと疑わざるを得ない。
 煩雑な手続きを国民に強制して、不要な出費を強制するなど「悪政の見本」のようなものだ。政府説明は「本人確認」と「行政の一元化」のためにマイナンバーカードが必要だと強弁しているが、法務局では全く物の役には立たなかった。まさに支配者と被支配者がいるだけではないか。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。