なぜ「鑑定留置」が必要なのか。

<秋葉原通り魔事件で7人を殺害、10人に重軽傷を負わせた加藤智大死刑囚の死刑が執行された。昨日7月26日のことだ。
 私が法廷取材で見てきた刑事被告人に死刑が執行されたのは、オウム真理教の教祖・麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚などを含めて、これで15人目になる。法廷での怯えたような目をよく覚えている。

7人殺害、10人に重軽傷を負わせた加藤智大が死刑、では1人を殺害した山上徹也容疑者は
 加藤死刑囚は2008年6月8日午後0時半ごろ、休日で歩行者天国だった東京・秋葉原の交差点にトラックで突入。通行人をはねて3人を殺害、2人にけがを負わせると、トラックを降りて通行人をダガーナイフで刺し、4人を殺害、8人に重軽傷を負わせた。
 死刑の執行は昨年12月以来で、岸田文雄政権では2回目になる。
 先週末の金曜日22日には、参議院選挙の応援演説中に銃撃されて死亡した安倍晋三元首相の「国葬」を閣議決定したばかり。賛否両論が巻き起こり、また、事件をきっかけに自民党と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連を批判する世論が勢いを増す、このタイミングでの死刑執行。それも日本中を震撼させた事件だっただけに、国民の関心事をそちらに向けたい政権の意図が働いたとしても、違和感はない。
 そこで気になってくるのが、被害者が1人であっても、「国葬」にまでさせる事件を引き起こした山上徹也容疑者(41)が、死刑になる可能性だ。犯行態様にしても、選挙演説中の元首相を背後から手製の銃で撃つという、民主主義の根幹を揺るがす極めて悪質なものだ。

山上容疑者に刑事責任能力はあるはず
 山上容疑者は7月25日から、鑑定留置に入っている。精神鑑定で刑事責任能力の有無を調べるのが主な目的だ。
 だが、殺傷能力のある銃を、独自でネットで調べながら完成させて、試射まで行っている。刑事責任を問えないとする心神喪失、あるいは刑を減軽する心神耗弱の人間に、そんなことができるはずがない。事件現場では、1発目を発射したあとに、安倍元首相にさらに近づいて2発目を発射。確実に標的を狙い殺すための的確な判断もできている。刑事責任能力は認められ、まず間違いなく起訴されるはずだ。
 鑑定留置で調べるとすると、母親がのめり込んで財産を奪われた統一教会から、安倍元首相に殺意が向かった心理的な要因や、親が宗教に傾倒した子ども、すなわち“カルト2世”の精神状態が問われるはずだ。その見通しと見解については、すでにまとめている*。
* 山上容疑者の供述から見える宗教依存の親による「カルト2世」への虐待の実態(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71081)
 そうなると、元首相とはいえ被害者が1人で、死刑が適用されるのか、日本の刑事司法の在り方の問題だ。

被害者1人の事件で加害者に死刑判決が下されることもあったが…
 実は、殺害された被害者が1人でも死刑になった事件はある。
 それも、山上容疑者が裁かれる裁判員制度が導入された2009年以降、被害者が1人でも一審の裁判員裁判で死刑判決が言い渡されたケースは4件ある。以下に死刑判決が出た順に列記する。
(1)【東京南青山強盗殺人事件】2009年11月16日、強盗目的で東京・南青山のマンションに入り、飲食店店長(当時74歳)の首を包丁で刺して殺害。逮捕された男は、1988年に自宅に放火するなどして妻子を死なせる事件を起こし、懲役20年の判決を受け服役。出所後わずか半年で、この事件を起こした。男は捜査段階から公判を通じて完全黙秘を貫く。2011年3月15日、死刑判決。
(2)【千葉女子大生殺害放火事件】2009年10月22日、千葉県松戸市のマンション2階の一室から出火。焼け跡からこの部屋に住む女子大生(当時21歳)が刃物で胸を刺された全裸の遺体で発見。その後、女子大生のキャッシュカードを使って現金を引き出した男が逮捕。男はこの事件と前後して、強盗致傷や窃盗、強姦未遂などを引き起こしていたことに加え、強盗と強姦の前科があった。2011年6月30日、死刑判決。
 (3)【岡山元同僚殺害事件】2011年9月30日、当時27歳の派遣社員だった女性を岡山市の元勤務先の倉庫に誘い込み、性的暴行を加えて、財布を盗み、「誰にも言わんから、助けて」と懇願されながらも刺殺。遺体を大阪市に運んで刃物で解体し、川などに遺棄。強盗殺人、強盗強姦などの罪で男が逮捕起訴された。前科は無かったが、2013年2月14日、死刑判決。
(4)【神戸女児殺害事件】2014年9月11日、神戸市長田区の小学1年生の女児が行方不明となり、同月23日に雑木林から切り刻まれた遺体が発見。現場に診察券とタバコの吸い殻が落ちていたことなどから、近くに住む男を逮捕。男は女児に「絵のモデルになって欲しい」と声をかけ、自宅アパートに誘い込み、そこでビニールロープを首に巻き締め付けた上、刃渡り約15.5センチメートルの包丁で後頸部を4回以上突き刺して殺害。その腹部を切り開いて内臓を摘出し、身体を頭部、上半身、右脚と左足に切断したほか、両乳首あたりの皮膚を削ぎ落としている。これらをコンビニ袋に入れるなどして、雑木林に捨て置いた。男は心理検査の結果、知的障害と正常の境界域にあるとされたが、2016年3月1日、死刑判決。

 いずれも「酷い!」と、思わず叫びたくなるような事件だった。市民感覚を反映することが裁判員制度の目的とすれば、当然の結果と頷きたくもなる。
 ところがだ。これだけの犯行にもかかわらず、(1)南青山(2)千葉(4)神戸の3つの事件は、職業裁判官が3人で裁く控訴審で、死刑判決が破棄され、無期懲役となってそのまま確定しているのだ。
(3)岡山の事件だけが死刑が確定し、2017年7月13日に執行されている。ただし、こちらも一旦は死刑判決を不服として控訴するも、のちに被告人が自ら控訴を取り下げて確定したものだった。この事件も控訴審の判決が出ていたのなら、死刑が回避された可能性は極めて高い。

「被害者が1人の場合は死刑は相応しくない」が司法のこれまでの判断
 その後も被害者が1人でありながら、検察が死刑を求刑した刑事裁判はある。
 たとえば、ベトナム人の父親が日本語で「リンちゃん」と殺された娘の名を呼ぶ姿が報じられて、広く同情を誘った事件。2017年3月24日に千葉県松戸市で小学校に通うベトナム国籍の3年生女児(当時9歳)が行方不明となり、翌々日に排水路脇の草むらで絞殺体となって発見され、被害児童が通っていた小学校の保護者会元会長が逮捕された。1審の裁判員裁判で、検察は死刑を求刑。極刑を望む117万人の署名が寄せられていた。だが、死刑判決とはならず、無期懲役となっている。
 もうすでに、裁判員裁判でも被害者1人では死刑判決とならない状態が恒常的になっている。
 そしてついには、「裁判員制度が施行されてから殺害された被害者が1名の殺人の事案において死刑が確定した事案がない」と断定して死刑を回避した判決まで出た。2016年10月19日の深夜、大阪府門真市の一軒家に、面識のない男が刃物を持って侵入して、寝ていた父親を殺害し、長女、次女、長男の3人に重傷を負わせたあまりに理不尽な事件だった。大阪地裁は2018年4月の判決で、そう断言すると、「公平性の観点を踏まえて、死刑を選択することが真にやむを得ないとする具体的、説得的な根拠を示す必要がある」と、検察側の死刑求刑を暗に批判までしている。
 つまり、日本の司法は裁判員制度など関係なく、殺害された被害者が1人ならば死刑は適用されないことを、明確に示している。
 安倍元首相が「国葬」となったところで、山上容疑者に死刑判決が下ることは、まずない。そう考えたほうがいい。仮に死刑ともなれば、異例中の異例どころか、日本の刑事司法の歴史を変えてしまうことになる。
 もっとも、この日本に「上級国民」というものが存在したり、政治が司法に介入したりするようなことがあれば、先行きはまったく違ってくるはずだ>(以上「JB press」より引用)



 山上被告人が死刑になるのか否か、というよりも安倍暗殺事件は山上被告人の単独犯罪なのか、を疑わなければならないだろう。なぜなら安倍氏に致死傷を負わせた心臓壁を破壊させた銃弾は右鎖骨から入射し、頸動脈を傷つけて心臓壁に到っていると解剖所見にあった。
 それなら左を振り向いた安倍氏を後方やや下方から散弾銃で狙った山上被告の弾丸が右鎖骨から入ることなどあり得ないし、入射角も全く異なることになる。だから山上被告人の単独犯行ではない、という推測が成り立つ。

 それなら、なぜ当日の安倍氏狙撃直後に現場周辺の保存と立ち入り禁止及び周辺ビルの出入り口封鎖とビル屋上の捜査を行わなかったのだろうか。当時の早い段階に警察がそのような措置を取っていたなら、前章で提起したような「推測」が入り込む余地はなかったかもしれない。そして警察は翌日になって現場検証を行い、その日には安倍氏の遺体は東京へ搬送されていた。
 奈良県警は検死解剖を専門医の下で行ったはずだが、安倍氏の体内で弾丸がなくなっている、という不可思議なことが起きたのはなぜなのか。警察発表と奈良県立医大の発表と微妙に異なる点を報道機関は解明していない。

 さらに山上被告は「鑑定留置」された。刑事責任が問われるか否かを鑑定するまでもない、というのがJB press紙の見解だが、山上被告が昨年三月から明確な殺意を持って自作銃を数丁も製造していたのは、明確な意志の下で持続的な行為をしていた証ではないか。それを「鑑定留置」する必要がある、と判断したのはなぜだろうか。
 山上被告が鑑定留置という密室で何かされるのではないか、と危惧するのは私だけだろうか。少なくとも山上被告は自身が犯した事件の全貌を知っている。火薬に黒色火薬を用いた銃身が40㎝ほどの大口径の筒から発射した散弾(ボールベアリング状のもの)が安倍氏の命を奪うほどの威力のあるものなのか、山上被告は知っていたはずだ。

 安倍氏暗殺事件では不可解な点が幾つかある。なぜ身辺警護官たちが狙撃直後の安倍氏の身辺を固めていないのか。なぜ安倍氏が演説する周辺ビルの屋上に警備要員を配置していなかったのか。なぜ現場周辺に規制線を張って、現場検証を直ちに行わなかったのか。なぜ救急ヘリが20分の距離でしかない県立医大病院まで50分もかかったのか。そして警視庁で改めて死体解剖をしなかったのか。
 手抜かりというには余りにお粗末過ぎる。日頃から訓練しているはずの警護要員たちの不手際のオンパレードには首を傾げざるを得ない。そして奈良県警は統一教会との関係から山上被告を一切マークしていなかったのだろうか。マークしていれば彼の部屋から異音がする、と苦情が出ていたことから危険人物として監視していたはずではないのか。山上被告に関する「疑惑」は満載だが、それに応えるマスメディアが日本にないことこそが大問題なのだが。

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