兵站なき戦争は負け戦だ。

<ウクライナ情勢は泥沼化の様相を呈している。そして、苦戦続きのロシアが「自滅」するというシナリオも現実味を帯びてきた。ロシア軍の一日の戦費に関して、日本円でおよそ3兆円にのぼり、すでに国家予算の3倍以上のカネがかかっているという。
 では一日3兆円ものカネは一体何に使われているのか…? 前編記事『ここにきて「プーチンの自滅」が現実味を帯びてきた…ロシア「一日3兆円の戦費」の衝撃中身』引き続き、その内訳を明かそう。

徴集兵の月給は3000円
 東京大学先端科学技術研究センター専任講師で、ロシアの軍事・安全保障政策を専門とする小泉悠氏はこう解説する。 
 「かつて行われたロシア軍の大演習では、1週間で10万トンの弾薬を使用しています。ちなみにこの消費量は、自衛隊の備蓄弾薬(推定11万トン)に匹敵します。 
 ロシア軍が、ウクライナ侵攻を演習レベルで行っているとすれば、1週間で10万~20万トン使っていても不思議ではありません」 
 '15年に陸上自衛隊が行った「富士総合火力演習」では、3億7000万円相当の弾薬35・6トンが費やされたと記録されている。
  この数字を参考にして、ロシア軍が週に10万トンの弾薬を使ったと仮定してみよう。あくまで単純計算ではあるが、3月末までに約5兆3421億5625万円もの弾薬費をかけたと考えてもおかしくはない。
  3月下旬には、ロシアがウクライナ領内に対人地雷を仕掛けていることも明らかになった。その名を「POM-3」という。直径約6~7cm、高さ約20cmの金属製のシリンダーで、空中から散布して設置できる。地雷内部にある電子機器が周辺の振動を検知し、確実に人だけを狙って殺傷する。
  仮に、現在までウクライナ領内に10万個ほど設置されているとすれば、総額約3億円だ。  次に、ロシア軍の兵士にかかるカネも見てみよう。まず人件費だ。EU圏のニュースサイトによると、正規兵の月給は約9万円、徴集された兵士の月給は約3000円だと報じられている。総兵力のうち約7割が正規兵だと言われているので、3月末までにかかった人件費は約145億6920万円となる。
  食糧費も忘れてはならない。陸上自衛隊の食費と同じ一日あたり約900円であると仮定したら、食糧だけで約61億5600万円もかかる。 
 そして、何より大切なのが兵站だ。 
 実業之日本フォーラム編集委員で元海上自衛隊情報業務群司令の末次富美雄氏はこう語る。 
 「燃料など物資の補給や食糧などの配給、整備、兵員の展開や衛生、施設の構築や維持など後方支援すべてを指します。 
 正確な金額を把握することは不可能ですが、'03年のイラク戦争が参考になります。当時の戦費を確認すると、人件費を4倍にしたら、兵站にかかる経費に近くなるんです」
  そうなると兵站には約582億7680万円かかるという計算になる。
  ウクライナ侵攻では陸軍が目立っているが、戦闘機などを扱うロシア航空宇宙軍も戦費を垂れ流していると言っていい。 
 たとえば、最新鋭戦闘機「Su-35」は一機約122億7600万円もする。現在、ロシア軍の主力とされている「Su-30」の価格は約45億9700万円、「Su-34」は約44億1300万円とおしなべて高い。そして、そのすべての機種がウクライナ軍によって撃墜されたことが確認されている。
  また、主力の戦闘ヘリコプターも、「Ka-52」は約42億9100万円、「Mi-28」は19億6000万円する。
  戦闘機や戦闘ヘリコプターは飛行するだけでも整備費や燃料費など飛行コストがかかる。たとえば、「Su-34」と同程度の性能を持つとされている米戦闘機「F-15E」の一時間あたりの飛行コストは約242万円だ。

命もカネも溶けていく
 ロシアの戦費増大の一因となっているのが、高額な最新兵器の投入だ。特に有名なのは極超音速ミサイル「キンジャール」だろう。3月20日、ロシア国防省は「キンジャール」を使ってウクライナ軍の燃料貯蔵基地を爆撃したと発表している。 
 英紙「ザ・サン」によると、キンジャール一発あたりの値段は約7億2300万円と推定されている。ロシアの調査報道専門メディア「インサイダー」は、プーチン大統領はロシア軍が高価な長距離精密誘導弾8発を一日に撃ち込んだことに激怒したと報じている。それほど懐を痛める兵器というわけだ。 
 上に、ロシア軍の戦費をまとめた表(省略)があるので確認してほしい。どれだけの金額がウクライナで溶けているのかが一目瞭然だ。
  今この瞬間も、兵士や民間人の命が失われている。ロシア兵がキーウ周辺で大量虐殺を行ったというニュースまで報じられるようになった。これに加え、ロシア経済にダメージを与えるレベルの金銭的無駄遣いも続けられているのだ。戦争では命もカネも、かくも無残に消費されていく。この真理に、プーチン大統領はいつ気づくのか>(以上「週刊現代」より引用)



 
 兵站の話ばかりでウンザリされるかも知れないが、戦争とは前線で戦う部隊以上に兵站の戦いでもあることを理解して頂きたい。兵器と違って兵士は道具ではないからだ。人として食事をし、睡眠をとらなければ生きて行けない。つまり兵站は最前線での戦闘以前の問題だ。
 当初から私はロシアのGDPを問題にしていた。侵略戦争では他国領内で戦うため兵站は極めて重要になり、韓国以下のGDPのロシアに継戦能力がどれほどあるのか、が問題になるからだ。しかもロシアはユーラシア大陸にまたがる広大な領土を有している。それらを守りつつ、日本の防衛予算約5兆円より20%ほど多いだけの軍事予算ですべてを賄って来たロシア軍にどれほどの能力があるのか疑わしいからだ。

 しかも通常において独裁専制主義国家は民主主義国家以上に激しく腐敗する。中共政府の中国が賂横行する腐敗国家だということは周知の事実だが、ロシアはそれ以上の腐敗国家と見られる。だからロシア製兵器の多くはカタログ性能よりも劣る、というのが常識だ。
 公表している備蓄兵器や弾薬は、おそらく現実には帳簿上の備蓄と比べて大きく不足しているだろう。キーウへ進軍した兵士たちは賞味期限が数年前に切れたレーション(Ration)を携行していたという。だがアマゾンでロシア製のレーションを購入すると賞味期限内のものが届くという。つまりレーションが軍内部で横流しされているのだ。

 ロシア軍は滞陣している東部戦線で塹壕を掘っているという。いつの時代の戦争を戦っているのかと思うが、ロシア軍は陣地を構築して大砲を撃ち合う戦争を想定しているようだ。しかしウクライナ軍はロシア軍が想定しているような対称戦を展開することはないだろう。
 これまでと同様に携行できる短距離ミサイルを多用するだろうが、さらに中距離精密誘導ミサイルを投入して来るだろう。ロシアが想定する砲撃戦ではなく、援助された豊富な精密誘導ミサイルで確実にロシア軍の陣地を撃破するだろう。そして誘導「カミカゼ」ドローンでロシア軍の将官を狙い撃ちすると思われる。

 ロシアは旧日本軍と酷似している。旧態依然とした戦力と戦法で戦い続けるしかないのだろう。いまさら戦術を変更しようにも、新戦術を実現する新兵器や最先端兵器もロシア軍にはない。あるのは時代物の戦車とナンチャラ誘導ミサイルだけだ。それらも在庫数が激減している。
 製造ラインを稼働させて兵器を製造しようにも、ロシアにチップは自給できないし、部品の多くも輸入に頼って来た。それは中国も同じだ。世界の半導体の90%は米国と韓国と台湾とEUと日本で製造されている。それらすべて対ロ経済制裁に参加している国々だ。プーチン氏の戦略なき暴発としか思えないウクライナ侵略戦争により、ロシアは大敗の坂道を転がり落ちている。武力による戦争こそ、経済戦争だという現実を忘れてはならない。優秀な総司令官は綿密な主計官でもなければならない。

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