独裁者プーチン氏の命脈は。

＜ロシア国防省は１３日、ウクライナで４６カ所の軍事施設を空爆し、２機の無人機を撃墜したと発表した。主に東部への攻撃とみられる。ウクライナメディアによると露軍は１３日、東部ドネツク州や南部ザポロジエ州で攻撃を続けた。ウクライナ内相顧問は同国メディアに、露軍による南東部への「大規模攻勢が既に始まっている」との認識を示した。

　露国防省は１３日、露軍が包囲してきた東部マリウポリでウクライナ軍兵士ら１千人超が投降したと発表した。ウクライナ国防省報道官は「情報がない」として明言を避けた。露軍はウクライナ東部の制圧に向けて応援部隊を派遣しており、さらなる攻撃激化と被害の拡大が懸念されている。
　ウクライナ治安当局は１２日、「野党プラットフォーム―生活党」のメドベドチュク党首を特殊作戦で拘束したと発表した。同党首はプーチン露大統領と親密な関係にあるとされる。ゼレンスキー・ウクライナ大統領はロシアに対し、メドベドチュク氏と、露軍の捕虜とされたウクライナ軍兵士らの交換を提案した。

　プーチン氏は１２日、停戦交渉について、先月２９日のトルコでの協議で一定の合意に達したにもかかわらず、ウクライナが立場を後退させたと主張した。
　先月２９日の交渉でウクライナは「他国による安全の保証」を要求。プーチン氏によると、ウクライナは「安全の保証」の適用範囲について、ロシアが２０１４年に併合した南部クリミア半島と、親露派勢力が実効支配する東部地域を含まないとした。しかしその後、ウクライナはクリミアや東部も適用範囲だとする立場に戻ったという。
　ウクライナ政府は首都キーウ（キエフ）近郊ブチャなどでの住民虐殺の発覚を受け、「対露姿勢を見直さざるを得ない」としている＞(以上「産経新聞」より引用)

　記事によると「プーチン氏は１２日、停戦交渉について、先月２９日のトルコでの協議で一定の合意に達したにもかかわらず、ウクライナが立場を後退させたと主張した」という。それまでウクライナが停戦合意で一切の譲歩を見せなかったプーチン氏が、ウクライナ側が停戦合意でウクライナ側がクリミア半島まで奪い返す発言をすると「停戦合意」を覆した、と軍事侵攻の正当性を強調する。いかなる譲歩姿勢も見せなかったプーチン氏の方こそ停戦合意のテーブルに着こうとしなかったのではないか。

　東部二州をロシアは簒奪しようとしている。軍事力による国境線の変更を策す国連決議違反だ。到底許されることではない。もちろんクリミア半島のロシア併合も西側先進自由主義諸国は是認していない。ウクライナとロシアの領土問題は2014年以前に帰るべきだ。

　ロシア軍は東部で「最終決戦」を挑もうとしている。陣地を構築し砲列を整えて撃ち合えば、兵器や物量に勝るロシアが優勢だ、という目論見のようだ。しかし2月24日に開始したウクライナへの侵略戦争で、ロシアは手痛い敗北を喫したではないか。

　少なくとも4月8日に、ロシアのペスコフ大統領報道官がイギリスメディアのインタビューに応じ、ロシア軍の状況について「多大な損失が出ている」と明らかにした。推計でロシア軍は1万6千人もの戦死者を出し、4万人ほどが戦列から離れた。大敗というべき状況だ。

　そのペスコフ大統領報道官の発言を受けてロシアの「母の会」がプーチン氏に反発を強めているという。公表では83%もの支持率をプーチン氏は誇っているが、中村 逸郎（ 筑波学院大学政治学教授）は実際の支持率は数%から20%程ではないか、とロシア国内の実情を話ている。

　これまでプーチン氏の支持基盤だった元KGBで現FSB(ロシア連邦保安庁)の幹部150名を罷免したという。いや逮捕され収監されている、という話まで伝わっている。クレムリン内部の不協和音が聞こえて来るようになった。プーチン氏はウクライナ戦線の戦いと同時に、ロシア国内で形成されつつある反・プーチン勢力の摘発に心身を擦り減らすことになりそうだ。

　ロシア側は東部戦線で短期決着を図りたいようだが、ウクライナ側は2035年までかかるだろう、と長期戦を覚悟しているようだ。だが実際は経済制裁を受けているロシアが戦い続けることは困難で、先進自由主義諸国から援助を受けているウクライナ側の長期戦覚悟の戦略に出られると、ロシアは国家体制が持たなくなる。

　柔道の奥義に「柔よく剛を制す」という言葉がある。ロシア側が砲列を揃えて「撃ち合おうゼ」と徴発すれば、ウクライナ側は一旦退いて、ゲリラ的にロシア軍に攻撃を加えるのではないか。これまで非対称戦を行って来たウクライナ軍が戦術を転換するとは思えない。無駄に戦火を交えるのではなく、滞陣を続けるロシア側が疲弊して厭戦気分が蔓延するのを待つのではないだろうか。いずれにせよ、この侵略戦争はロシア側の大敗で決着がついている。残るはプーチン氏の身の振り方だけだ。