プーチン氏は全人類の生存を人質に取る悪辣な悪魔だ。

ウクライナ問題でロシア側を擁護したがる人たちの思考の無原則性
 ウクライナ危機が勃発してから既に1カ月半が経とうとしている。当初は、軍事力で圧倒するロシアが数日で首都「キーウ」を制圧し、傀儡政権を樹立して、ウクライナをかつてのように事実上の属国にしてしまうと予想されていたが、ウクライナ側が予想外の頑張りを見せ、ロシア側の被害も拡大するなか、西側諸国の多くは、積極的に軍事介入することは避けながらも、「ウクライナへの(軍事物資を含む)支援―ロシアへの経済制裁」でまとまっている。これまでアメリカやEUの対ロシア制裁に距離を置いていたインドも、日本の世論も、国連安保理でロシアによる民間人虐殺を非難するに至った。
 同じ東アジアで起こっているウィグルやチベット、香港の問題以上に強い関心を見せ、「一方的な軍事侵略は許されるべきではない」、という方向でまとまっている。しかし、一部には、ウクライナ側にも問題があったとか、アメリカや西側メディアの宣伝に騙されてはいけない、と言いたがる知識人も少なからずいる。彼らは何を考えているのだろうか。

 鳩山元首相、橋下元大阪市長、鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)などは、コメディアン出身で政治の素人であるゼレンスキー大統領が、NATO加盟問題でいたずらにロシアを刺激したことが問題であることを示唆している。ウクライナ問題でのマスコミの動向に批判的な人たちのほとんどは、そこを強調する。しかし、これを今言うのは、おかしな発想であり、プロの政治家や法律家とは思えない。
 喧嘩が起こった時に、やられている側にも問題があるというのはよくあることだ。しかし、先にはっきりした「暴力」行為に及んだのがどちらかはっきりしており、なおかつ、攻撃を開始した方が相手を一方的に攻撃し続け、相手は防戦一方の状態になっているのに、殴らせてしまった責任に言及し、攻撃側を間接的に擁護するのは不公平である。少なくとも、戦闘が完全に終結し、賠償や原状回復が問題になってくる段階になってから議論すればよい。鳩山氏たちのやっていることは、喧嘩のまっ最中に、敗けている方に向かって、「君にも問題があったんじゃないの」、と言っているようなものである。
 また、鳩山氏のように、ロシア側の主張をなぞって、ウクライナ東部で、ウクライナ政府がロシア系の住民を虐殺したことを指摘する人や、テレビ朝日のモーニングショーのコメンテーターの玉川徹氏のように、東ウクライナでの紛争をめぐるミンスク合意に違反する軍事行動をウクライナ政府が取ったことが、ロシアの侵攻の原因になったと主張する人もいる。確かにウクライナ東部で実際に何が起こっているかは定かではないが、あくまで「ウクライナ」国内の問題である。仮に、ロシアやロシア系住民の武装勢力が主張することが正しかったとしても、「他の国」で起こっている紛争に、問答無用でいきなり軍事介入し、当該地域だけでなく、首都まで占拠し、国家を解体に追いこんでいい理由にはならない。ウクライナ側がロシアの安全保障を脅かしたわけではない。

 ロシア帝国―ソ連時代の“偉大なロシア”を念頭に置いているプーチン大統領にとっては、ウクライナの問題は、“ロシアの国内問題”かもしれない。しかし、そうした、現在の主権国家同士の関係を無視した勝手な世界観を認めれば、大変なことになる。全ての主権国家も、いつ、「お前は本来わが国の一部だ」と言いがかりをつけられて、攻められる危険にさらされる。
 左派や親米保守の人々はアメリカが地域紛争に介入するたびに、アメリカの帝国主義だと言って非難するが、アメリカは自分の安全保障が直接脅かされない限り、他の国の紛争にいきなり介入したりしないし、介入する場合でも、大義名分が立つよう、相手に何度も呼びかけるし、単独行動にならないよう、他の西側諸国と連携行動を取ろうとする。今回のロシアはそうした、正当化のための外交的準備さえやっていない。
 橋下氏は再三、戦闘を続ければ一般住民が犠牲になるので、ウクライナ側は多少無理な要求でも飲んで早期停戦にもっていくべきだと主張している。しかし、ロシアがいつ首都を制圧して、ウクライナを占領するか分からない状態のまま停戦すれば、その時は一般市民の命が救われても、ロシア支配のもとでどういう目に遭うか分からない。闘い続けるのと、ロシアの実効支配を受けるのとで、どちらが危ないか、どちらがより人間らしいあり方か選択するのはウクライナ人である。仮に、ウクライナ政府が勝手に戦争をしているのであれば、市民の協力が得られず、すぐに崩壊してしまうだろう。

 更に言えば、橋下氏のような、国政にも関与している有力な政治コメンテーターが、市民の犠牲を避けるために、不当な要求でも飲むべき、というようなコメントを出し続ければ、それが日本の政治家の発想か、と取られかねない。ただでさえ、戦後七十数年間にわたって、戦争を体験してこなかった日本は、アメリカ軍が守ってくれなかったら、何もできない、と他国から思われがちだし、私たちの多くもそう思っている。他の国が自分の主権を守るために必死に戦い、そのおかげで、国際正義の基本原則が辛うじて守られている時に、有力な保守系の政治家が、〈red better than dead〉的な発言をすべきではない。
 橋下氏は、国際政治には裏がある、ということを強調したいのだろうが、先に強調したように、ロシア側の戦闘行為をやめさせ、日本に火の粉が飛んでこないようにするには、日本は今何ができるかを論じるべき時に、“裏”の憶測ばかりしても仕方ない。拘ると、単なる目立つための逆張りになってしまう。こういう時こそ、普段リアリストとして売っている評論家の真価が問われるのではないか>(以上「MAG2」より引用)




 ロシアのウクライナへの侵略戦争を擁護する者がネットもワンサカ湧いているのには驚く。曰く「米国の代理戦争をウクライナがやらされている」とか、曰く「これで米国一極支配が終わる」とか、曰く「ドル基軸通貨圏が崩壊して、元通貨圏やルーブル通貨圏が出来上がる」という論が罷り通っている。そのことを憂える仲正昌樹氏(国際政治評論家)がMAG2に論評を掲載していたので引用した。
 まず最初に明らかにしたい。それは論理や理由は何であれ、他国に軍隊を派遣して他国の都市を破壊し他国民を殺害することに一片の弁解の余地がないことだ。それは侵略であり、現代では決して許されない。ウクライナで起きている戦争の悲劇はすべてロシアの責任だ、という事実を最初に確認すべきだ。

 そうした前提に立って、ウクライナにいかなる非があったのか、を検証すべきではないか。あるいは米国の手先となって、ウクライナ政権がロシアを侵略しようとしていた事実があるのか、を検証すべきだ。あるいはドル基軸通貨経済がロシアにとって極めて不都合なものだったのか、を検証すべきではないか。
 ここで4月13日付けの毎日新聞の記事を掲載する。
「ウクライナ南東部ドネツク州のキリレンコ知事は12日、米CNNの取材に対し、ロシア軍が包囲を続ける同州マリウポリでの民間人の死者を「2万~2万2000人」と推計していると明らかにした。同市で化学兵器が使われた可能性があるとの情報については、まだ詳細は確認されていないという。一方、ロシアのウクライナ侵攻を巡る人権侵害を調査していた全欧安保協力機構(OSCE)の専門家グループは12日、ロシア軍による明確な国際法違反を確認したとする暫定報告書をまとめた。
 OSCEは、欧米やロシアなど50カ国以上が参加する安全保障協力のための枠組み。ロシアのウクライナ侵攻を受け、3月初旬に加盟45カ国がOSCEに対し、専門家チームによる独立した調査を要請していた。
 報告書では3月9日に発生したマリウポリの産科小児科病院への攻撃などを挙げて、露軍による戦争犯罪にあたると指摘。人命尊重や拷問の禁止など最も基本的な人権に対する侵害行為の証拠が見つかったとし、その多くがロシアの支配地域で起きたと述べている。
 マリウポリ市のボイチェンコ市長はAP通信の取材に、露軍が人道支援物資の搬入や民間人の市外への避難を妨害していると主張し、「残虐行為の事実を隠すためだ」と指摘した。路上には市民の遺体が多数残されている状態で、露軍は倉庫や冷蔵庫を備えるショッピングセンターに遺体を運び、遺体処理のために移動火葬車も使用しているという。
 ロイター通信によると、ロシア国防省は13日、露軍が包囲するマリウポリ港で1000人近いウクライナ軍の海兵隊員が投降したと発表した。同通信はウクライナ側の抵抗が続く港湾地区を攻略すれば、市全体を制圧したことになると報じた。ウクライナ国防省の報道官は同日、海兵隊の投降について「情報がない」とした。
 一方、ロシアのプーチン大統領は12日、訪問先の極東での記者会見でウクライナで「軍事作戦」を継続する考えを改めて強調した。
 プーチン氏はさらに、ウクライナとの停戦協議について「行き詰まっている」と指摘し、ウクライナ側の主張が3月下旬の停戦協議から「後退している」と一方的に批判した」(以上毎日新聞より引用)

 ロシア軍の戦争犯罪は明らかだ。ゼレンスキー氏がロシアの仕業に見せて残虐行為を働いた、という批判は全くの見当違いも甚だしい。毎日新聞で指摘したこと以外にも、クラスター爆弾や気化蒸発爆弾の使用などと、他にも化学兵器を使用した可能性も否定できない。ロシア軍は戦争犯罪のオンパレードだ。彼らには軍律も規律も何もないようだ。ただウクライナ人を殲滅して戦争に勝ちさえすれば良い、との考えしかないようだ。

 経済面でドル基軸通貨経済圏が他の基軸通貨、たとえば「元」や「ルーブル」などを基軸通貨とする経済圏が成立して、相対的に米国の地盤沈下が起きると、そうした事態を歓迎するかのような論評がみられる。
 しかし「元」は国際通貨ですらなく、「ルーブル」に到っては紙屑になろうとしている通貨が基軸通貨として機能するのか、冷静に考えた上での論評なのだろうか。先進自由主義経済圏からデカップリングされれば、中國もロシアも経済規模は一気に半分以下に低下し、国内は未曽有のスタグフレーションに見舞われるだろう。もちろん「元」は大暴落し、中共政府が過剰投資を貸し付けた国々は「元」返済額が相対的にみるみる小さくなっていくだろう。もちろん中国もロシアと同様にデフォルトするしかなくなる。

 ウクライナは米国の手先というより、中国の手先だった、と考える方が筋が通るだろう。なぜなら中国が手に入れた空母「遼寧」はウクライナの港に係留されていたワリヤーグという造りかけのロシア空母だったからだ。それを中国が購入し、ウクライナが空母の図面から推進機関のディーゼルエンジンまでのノウハウを中国に提供して「遼寧」製造を助けた。
 さらにロシア製戦闘機を中国は数機購入したが、ロシアに断りもなく勝手に分解してコピーしたため、ロシアが激怒してその後の技術支援を断った。窮地に陥った中国を支援したのもウクライナだった。中国製戦闘機のジェットエンジンは殆どがウクライナ製だ。つまりウクライナは米国の手先ではなく、むしろ中国の手先として働いていた。

 しかしそれは平時での話だ。侵略戦争をロシアがウクライナに仕掛けた事実に関して「善悪」を判断するなら、間違いなくロシアが悪でウクライナが被害者だ。
 しかもプーチン氏は戦況次第では核兵器の使用にまで言及した。これほど悪辣にして卑怯な侵略者がかつて歴史上にいただろうか。彼は全人類の敵だ。ウクライナへの侵略戦争で核使用に言及したことは、ゼレンスキー氏を脅しただけでなく、欧州諸国を巻き込んだで毛でもなく、全地球上の人類すべてを竦ませた。

 かまびすしい評論家たちも一瞬にして黙り込んだ。面と向かって「核使用に言及したプーチン氏は全人類の存在に対する脅迫を行った」と批判する者は、現在のところ皆無だ。
 プーチン氏が核使用に言及した時点でロシアのウクライナに対する侵略戦争のフェーズが劇的に変わった。プーチン氏は全人類に対して戦争を挑んだに等しい。彼は自分こそが全人類に君臨する独裁者を目指している悪魔だと自白した。ウクライナ侵略戦争がいかなる結末を迎えようと、プーチン氏は存在を許されない。彼の言動によりロシアの侵略戦争は一(いち)ウクライナの問題ではなくなったからだ。プーチン氏は全人類の「敵」になった。それも全人類の生存を人質に取る悪辣な悪魔の存在になった。このことを私たちは明確に自覚すべきだ。

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