ウクライナ側は停戦協議を急ぐべきではない。

<ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、戦費がプーチン政権の重荷になり始めている。米欧などによる経済制裁で国家財政が苦しくなり、戦闘機の補修やミサイルなど兵器の補給にも制裁の影響が及んでいる模様だ。
 露国防省によると、セルゲイ・ショイグ国防相は25日、アントン・シルアノフ財務相と会談し、軍予算の増額について協議した。

 ロシアはウクライナ侵攻の戦費を公表していないが、巨費に上るとの指摘が相次いでいる。
 英国の調査研究機関などは今月上旬、ロシアの戦費に関し「最初の4日間は1日あたり70億ドル(約8610億円)だった。5日目以降は200億~250億ドル(約2兆4600億~3兆750億円)に膨らんだ」と試算した。露政府の歳入は年間で25兆ルーブル(約31兆2500億円)程度だ。
 ロシアの調査報道専門メディア「インサイダー」によると、ロシア軍が26日に発射した52発のミサイルの総額は推計3億4000万ドル(約418億円)だった。プーチン大統領は、ロシア軍が6日にウクライナ中部の空港に高価な長距離精密誘導弾8発を撃ち込んだことに激怒したとも報道された。
 北大西洋条約機構(NATO)のジェームス・スタブリディス元欧州連合軍最高司令官は今月中旬、米通信社への寄稿で、プーチン氏は「国民の支持を失う前に金欠になるだろう」と皮肉った。
 制裁はロシア軍の補給にも影響する。戦闘機などにはロシアへの輸出が禁じられた部品が使われている。ミサイルや戦闘機の製造に不可欠な半導体も禁輸対象となり入手が困難になった。
 戦闘での損失状況を確認している軍事情報サイト「Oryx」によると、露軍は侵攻で戦車約300両など2000以上の兵器や装備品を失った。その数はウクライナ軍の損失の約4倍とされる>(以上「読売新聞」より引用)




 ロシアのウクライナ侵略戦争に掛った経費は一日当たり3兆円ほどか、と英国の調査研究機関などは今月上旬に発表した。それに対して日本の経済学者はケタが2ほど多過ぎはしないか、と異論を唱えている。
 しかし現実に侵略戦争に要した「戦費」を何処まで含めるか、によってロシアが支払った戦争費用が変わって来る。たとえば、破壊された戦車の値段を「戦費」に含めるのか、兵隊の人件費を「戦費」に含めるのかといった具合に、だ。なぜなら戦車は製造された年の軍事費として計上され、備蓄されていたのだから今回のウクライナ侵略戦争用として調達したわけではない、という考え方もあるだろう。兵隊の人件費もロシア国内にいようがウクライナで作戦中だろうが変わりないから「戦費」に入れるべきではない、という考え方もあるだろう。

 しかし戦場に関係するすべての経費を「戦費」とする、という観点に立てば、作戦に投入された戦車や攻撃機などは「再調達価格」で計算した金額を「戦費」としてカウントすべきだろう。もちろん兵隊の人件費もウクライナ侵略戦争に従事した期間の部分は「戦費」としてカウントされるべきだろう。
 記事によると「ロシア軍が6日にウクライナ中部の空港に高価な長距離精密誘導弾8発を撃ち込んだことに(プーチン氏が)激怒した」という。しかしロシア軍は通常兵器として備蓄していたミサイルを殆ど使い果たし、高価な長距離精密誘導弾しか手元になかったのだろう。伝えられるところによるとロシアではチップの輸入制限により高性能ミサイルどころか戦車の生産ラインすら止まっているという。ロシアで製造されるチップは90nmまでで、最新兵器に組み込まれる7nmチップは自前で製造できないからだ。

 確かに真水で月30兆円も「戦費」として支出できる国は世界にないかも知れない。しかし作戦に使用した兵器やミサイルなどの消耗品などの総額を「戦費」として集計すれば一日当たり3兆円消費したとしても不思議ではない。
 戦闘機が一機数百億円もするものが撃墜されたり、一台10億円もの戦車が何台も破壊されればそれくらいの「戦費」を支出している勘定になるのかも知れない。ただ、ロシアの場合は勝敗に関係なくウクライナの戦後復興費がロシア経済に重くのしかかることを忘れてはならない。勝利したとしても荒廃したウクライナでは利用価値がないだろうし、破壊した社会インフラの復旧は必要だ。負ければ非戦闘員の賠償責任まで追及され、資源輸出代金は数十年もの間、賠償金に充当しなければならないだろう。

 ウクライナは停戦交渉を急ぎ、少しでも非戦闘員の犠牲者を少なくしたいところだろうが、安易な妥協はしない方が良い。それはミンスク合意で明らかになったように、ウクライナの意に沿わない妥協は次の侵略戦争の口実とされる可能性があるからだ。
 プーチン氏を独裁者の椅子から引き摺り下ろすまで、大変だろうがウクライナには頑張って欲しいと願う。お節介焼きがプーチン氏の顔も立てる必要がある、などとシタリ顔でゼレンスキー氏を説得に掛かるかも知れないが、断じてプーチン氏が政権維持できる条件で停戦合意してはならない。彼を独裁者のままにしておくと、必ず軍を立て直してリベンジを果たそうとする。今度こそは、とプーチン氏は侵略戦争のやり直しに死力を尽くすだろう。

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