ロシアによるウクライナ侵略戦争と国連のあり方。

<これから始まる首都キエフをめぐる攻防は、目を背けたくなるものになるだろう。一方プーチンは、経済制裁に苦しむロシア経済にはほとんど手を打っていない>

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「戦略的惨事(strategic disaster)」にはまり込んでいると、バリー・マカフリー元米陸軍大将は言う。
 ロシアが2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始すると、国際社会からすぐさま激しい非難を浴びた。挑発されたわけでもないのに始めたこの攻撃を正当化するため、プーチンは「ウクライナの指導者たちは『ネオナチ』だ」とするおかしな説を唱えた。
 だがウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はユダヤ人で、親族にはナチスのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)で命を落とした人もいる。 アメリカとカナダ、それに欧州の同盟諸国は足並みをそろえ、ロシア経済や大物政治家とオリガルヒ(新興財閥)に厳しい経済・金融制裁を科している。
 一方でウクライナ軍は多くの市民ボランティアに支えられながら、多くのアナリストの予想を上回る善戦ぶりだ。 マッカフリーは13日、MSNBCのインタビューに対し、アメリカのバイデン政権は「この事態にアメリカ一国ではなく同盟として前進するという、非常にうまいやり方で対処した」と述べた。 

核攻撃には15分で反撃する
「私たちはプーチンが自らを戦略的大惨事に追い込むのを目の当たりにすることになると思う。首都キエフをめぐる攻防が激化する中、ウクライナの理不尽な苦しみを終わらせるためにわれわれがどう行動するか、それが問われている。これから数週間、見るのもつらい状況になるだろう」とマッカフリーは述べた。 
「首都キエフを包囲し破壊しようとするプーチンの行動は、欧州諸国にとって許容範囲の限界に近付いていると思う」 だが、プーチンが核戦争勃発の「リスクを冒す」のではないか、という懸念は一蹴した。プーチンが核兵器を使う可能性は「ゼロに近い」と彼は言う。
 「ロシア空軍の中佐が核兵器の使用に合意するなど想像できない。米海軍は原子力潜水艦に戦術核兵器を搭載している。もしロシアが核を使えばものの15分で報復できるだろう。核戦争で勝てるなどと正気で考える人間はいない」とマッカフリーは述べた。

経済制裁に無策
 プーチンがウクライナ側の抵抗や西側諸国の反応を甘く見ていたと考えるアナリストは多い。プーチンや政権幹部は数日のうちにウクライナの大半の地域を掌握できると思い込んでいたとされるが、侵攻が始まって2週間以上が過ぎてもロシア軍はウクライナの大都市を陥落させるに至っていない。 
 一方で欧米による制裁はロシア経済に深刻な打撃を与えている。西側諸国の企業は相次いでロシアから撤退し、ロシアの株式市場は2月25日に取引を停止。少なくともあと1週間は取引再開はないだろう。もし再開が認められても株価は暴落するのは間違いないとアナリストは見ている。
 「問題は、ロシア政府が経済について無策だということだ」と、ロシアの経済学者ルーベン・エニコロポフはモスクワ・タイムズに述べた。 多くが旧ソ連育ちの政府幹部は価格統制や国有化で乗り切ろうとするが、それらは一時的には効果があっても、長期的には経済に災難をもたらすものだとエニコロポフは述べた。
  ロシアのアントン・シルアノフ財務省は地元テレビ局に対し13日、経済制裁のためにロシア政府の外貨・金準備の半分が使えなくなっていると述べた。 「ロシアが保有する(外貨)準備の約半分だ。外貨準備の総額は約6400億ドルだが、このうち約3000億ドルが現在使えない」と蔵相は述べたとロシア国営タス通信は伝えている >(以上「NEWS week」より引用)



 正気を失ったプーチン氏はポーランドやバルト三ヶ国にミサイルを撃ち込む、と脅したようだ。NATOに参加した東欧諸国を脅して、NATOを内部対立させようとする策略のようだ。
 核使用を仄めかしたり、プーチン氏はマトモではない。ゼレンスキー氏を「ネオナチ」と称したが、プーチン氏は全人類を殲滅する核の引鉄に手を掛けた「超ネオナチ」ではないか。

 経済制裁は効いている。ことにロシアのSWIFT停止はロシア国家財政を確実に枯渇させている。戦費調達は困難で、保有しているミサイルや砲弾を使い切れば補給は絶望的だろう。例外があるとすれば中共政府の中国が支援すれば補給は出来るだろうが、兵站を戦場へどれだけ運べるか疑問だ。
 プーチン氏は常軌を失っている。ウクライナの各都市を無差別攻撃している。それは明確な戦時国際法違反だ。ウクライナでは非戦闘員も多数死傷している。プーチン氏がウクライナ市民を大虐殺するいかなる正当性も存在しない。

 日本を含めてロシアを経済制裁するだけで良いのか、と西側諸国は独裁専制主義者が侵略戦争の狂気に駆られた場合の対処方法を問われている。ロシアのウクライナ侵攻は中国が台湾進攻した場合の試金石でもある。
 プーチン氏を徹底的に罰せないなら、習近平氏も核兵器の使用に言及するだろう。核の使用を仄めかせば、台湾進攻に挙に出ても西側諸国は手も足も出せない、と習近平は学習したはずだ。国連はプーチン氏を喚問するくらいの行動を起こすべきだ。喚問内容は「全人類を殲滅すると脅した」罪でだ。それが出来ないなら、国連は単なるお喋りの場でしかない。

 記事でマッカフリー氏は「首都キエフを包囲し破壊しようとするプーチンの行動は、欧州諸国にとって許容範囲の限界に近付いていると思う」と語っているが、キエフで起きる市民への大虐殺を西側諸国は傍観するだけなのか。
 二度にわたる世界大戦で、人類は一体何を学んだのだろうか。主権国家は主権の及ぶ国内での「内政干渉」を排除する権利を有するが、主権の及んでいない地域や国に軍隊を派遣して戦場と化して他国の主権を脅かすことを禁じていないのか。軍事力で国境を変更してはならない、というのは前世紀の愚かな大戦で人類が獲得した英知ではないのか。
 その英知に基づいて設立されたのが国連ではないのか。なぜ核保有国が大きな顔をして「常任理事国」という特権を70年以上も独占しているのか。特権を有する国の一つが狂気沙汰を起こして、国連が無力だというのなら、国連そのものの存在意義を根底から見直すべきではないか。

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