現代にこそ007は必要だ。

<ロシアによるウクライナ侵攻がつづいている。しかし、短期間でゼレンスキー政権を打倒し、傀儡政権を樹立、ロシアの要求を受け入れさせるという当初の計画は挫折した。

 戦いは長期化し、国際社会はウクライナ支持で一体化している。ロシアは完全に孤立し、プーチンは「現代のヒトラー」(プトラー)と呼ばれている。  そんな中、これまでプーチンを支えてきた支持基盤も、いよいよボロボロになってきたーー。

プーチンが抱える三つの支持基盤
 プーチンには、大きく三つの支持基盤がある。
  一つ目の基盤は、「シロビキ」と呼ばれる軍、諜報、警察などだ。  軍は、戦争を遂行し、勝利することで、プーチン人気を支えてきた。実際プーチンは、「チェチェン戦争」「ロシア‐ジョージア戦争」「シリア内戦への介入」「クリミア併合」「ウクライナ内戦への介入」「IS攻撃」「カザフスタンの大規模デモ鎮圧」などで、ことごとく勝利してきた。  日本人にはなかなかわからない感覚だが、プーチンは、戦争をすることで、高い支持率を維持してきたのだ。
  諜報は、わかりやすいだろう。プーチンは、元々KGBの諜報員だった。ソ連崩壊後は、KGBの後継機関FSBの長官までのぼりつめた男だ。諜報機関は、プーチンの手足となって働き、反プーチン派を容赦なくつぶしてきた。 
 警察は、ロシアで時々起こる大規模デモ(たとえば今なら反戦デモ)を、力で鎮圧している。  二つ目の基盤は、新興財閥だ。日本でも「新興財閥=オリガルヒ」という言葉が知られている。 
 そしてその新興財閥には、筆者が「譜代新興財閥」と「外様新興財閥」と呼ぶ二つの層がある。 
 「譜代」とは、プーチンが大統領になる前から、彼に従っている新興財閥のことだ。彼らは、東ドイツでプーチンがスパイ活動をしていた時期、あるいはサンクトペテルブルグの副市長だった時代に彼と知り合った。代表的な人物は、国営石油会社のCEOセーチンと国営ガス会社ガスプロムのCEOミレルだ。 
 では、「外様新興財閥」とは、なんだろうか? これは、「プーチンが大統領になった後に忠誠を誓った新興財閥」のことだ。 
 プーチンが大統領になる前の90年代、ロシアの政治経済は新興財閥に支配されていた。当時の代表的新興財閥は、「クレムリン・ゴッドファーザー」と呼ばれたベレゾフスキー、「ロシアのメディア王」グシンスキー、「ロシアの石油王」ホドルコフスキーなどだ。3人とも「ユダヤ系」という共通点がある。
  この3人は、2000年から03年にかけて、プーチンに挑戦し、敗北した。そしてベレゾフスキーは英国に、グシンスキーはイスラエルに逃げ、石油最大手ユコスのCEOだったホドルコフスキーは2003年、脱税などの容疑で逮捕され、シベリア送りにされた(彼は2013年に釈放された後、英国に逃れ、今も熱心に反プーチン活動を行っている)。  新興財閥の超大物3人が敗れ、他の新興財閥はプーチンに勝てないことを悟った。それで、彼らはプーチンに恭順を誓ったのだ。 
 三つ目の支持基盤は、「メディア」と「洗脳された国民」。プーチンは2000年代、テレビを完全支配することに成功している。
  ロシアの3大テレビ局は「ロシア1」「1カナル」「NTV」だ。どの局でも、プーチン批判はまったく聞かれない。それは、他のテレビ局でも同じだ。
  プーチンは、テレビを通して、国民を自由自在に洗脳しつづけている。だから、プーチン政権は盤石に見えたのだが……。

シロビキの忠誠が揺らいでいる
 先述の通り、「シロビキ」といえば軍、諜報、警察などのことだ。 
 軍については、以前「全ロシア将校協会」が1月31日、「ウクライナ侵攻計画中止」と「プーチン辞任」を求める「公開書簡」を発表したことを書いた。
  参考)2022年2月16日付『全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…!  キエフ制圧でも戦略的敗北は避けられない』 
 つまり、プーチンの支持基盤であるはずの軍将校たちが、この戦争に反対しているのだ。  これについて「フェイクだ」と主張する人もいるようだが、「フェイクではない」ことを強調しておきたい。公開書簡をまとめたイヴァショフ退役上級大将自身が、YouTubeでその意図を語っているからだ。 
 参考)Леонид Ивашов и Общероссийское офицерское собрание “Путин должен уйти в отставку” 
 そういえば、ロシア軍の士気の低さがたびたび報じられている。イヴァショフの公開書簡を読めば、前線の兵士たちの士気が下がるのも理解できる。
  彼は書簡の中で、ウクライナ侵攻の結果、「ロシアは間違いなく平和と国際安全保障を脅かす国のカテゴリーに分類され、最も厳しい制裁の対象となり、国際社会で孤立し、おそらく独立国家の地位を奪われるだろう」と書いていた。 
 「独立国家の地位を奪われる」以外は、すべて現実のものとなっている。しかも、これが、ウクライナ侵攻の25日前に公開されていたという事実に注目する必要があるだろう。  さて、「シロビキ」の構成要素である「諜報機関」にも、大きなできごとがあった。3月14日付の時事を見てみよう。 
 〈 ウクライナ侵攻後、ロシアのプーチン大統領が在籍した旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関、連邦保安局(FSB)内部で異変が生じているもようだ。〉 
 〈 プーチン氏にウクライナ情勢を報告する立場にあったFSB幹部が自宅軟禁されたとの見方が浮上。事実なら、戦況が思うように進まない「誤算」の責任を取らされた可能性が高い。「侵攻から2週間。プーチン氏は第5局に対する弾圧を始めた」。ロシア独立系メディアは12日、FSBに情報筋を持つ著名記者2人の話を基に伝えた。〉 
 〈 独立系メディアは「第5局は侵攻に先立ち、プーチン氏にウクライナの政治状況を報告する任務にあった。第5局はリーダー(プーチン氏)を怒らせることを恐れ、聞き心地のいいことだけを報告したもようだ」と分析している。〉 
 「自宅軟禁された」といわれているのは、FSB第5局セルゲイ・ビセーダ局長だ。彼は、「全ウクライナが、解放者としてのプーチンを待ち望んでいる」などと報告していた。 
 プーチンは、2~3日でゼレンスキー政権を打倒できると確信し、ウクライナ侵攻を決断したといわれる。この判断は、第5局の間違った情報を基に下されたのだろう。
  しかし、記事内にある「第5局はリーダー(プーチン氏)を怒らせることを恐れ、聞き心地のいいことだけを報告したもようだ」という部分が重要だ。「プーチンが恐ろしすぎて本当のことをいえない」というのは、プーチン政権の致命的欠陥に思える。 
 たとえば2月21日、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国の独立承認に先立ち、プーチンは安全保障会議のメンバー一人ひとりに、自分の意見をいわせた。 
 しかし、メンバーたちは、プーチンの反応が恐ろしく、「プーチンが聞きたいことをいう」ことだけに神経を使っていた。
  その中で、対外情報局(SVR)のナルイシキン長官は、独立を承認する前に、西側に最後のチャンスを与えようと提案した。 
 すると、プーチンが、「対話プロセスをはじめようと提案しているのか?」と問う。その一言で、ナルイシキンはおびえてしまい、前言を撤回。 
 「はっきりいえ」というプーチンに押され、「私は、ドネツク、ルガンスク人民共和国がロシア連邦の一部になることを支持する」と発言した。 
 プーチンは、「私たちはそんな話はしていない。彼らの独立を認める否かの話をしているのだ」と笑った。 
 このエピソードからわかることは、ナルイシキンのようなシロビキの超大物でも、プーチンには本音を語ることができないということだ。 
 そして、ナルイシキンは、ドネツク、ルガンスクの独立承認すら本音では反対していた。そうなると、ウクライナの首都キエフや第2の都市ハリコフへの侵攻は、「プーチンが独断で決めたのではないか」という疑念がでてくる。 
 その判断の基になっている情報は、FSB第5局から出ている。その5局は、「プーチンを怒らせると怖い」ので、「彼が聞きたい情報」を出していた。 
 つまり、プーチンは、その「怖すぎるキャラ」によって、「本当の情報」を得ることができなくなっているのだ。

外様新興財閥がプーチンに反旗
 プーチン政権第2の支持基盤である新興財閥も揺れている。
  新興財閥は、ウクライナ侵攻で甚大な被害をこうむっている。欧米では、新興財閥の銀行口座、豪邸、高級マンション、プライベートジェット、スーパーヨットなどを差し押さえる動きが広がっている。 
 そんな中でも、譜代新興財閥のプーチン支持は揺るいでいない。しかし、外様新興財閥は、公然と反旗を翻すようになっている。 
 ウクライナ侵攻に反対している新興財閥は、たとえば、ルサルの元CEOデリパスカ。彼は2008年時点で世界10位、ロシア1位の大富豪だった(2020年時点で、ロシアで41位まで資産を減らしている)。 
 ロシア石油2位ルコイルのアレクペロフ社長。彼は2020年時点で、ロシア5位の富豪だ。  ロシア4位の銀行アルファバンクなどを傘下におさめるアルファグループの創業者フリードマン。彼は2020年、ロシアで8位の富豪だった。 
 さらに、2020年ロシア1位の富豪だったポターニン(インターロスグループ会長)も、ロシア政府の政策を厳しく批判している。 
 具体的には、政府が、「ロシアからの撤退を決めた外国企業の資産を没収すると決めたこと」に反対したのだ。 
 3月12日付CNN.co.jpを見てみよう。 
 〈 ロシアで最も裕福な実業家ウラジーミル・ポターニン氏は10日、大統領府がウクライナ侵攻を受けロシア事業撤退を表明した企業の資産差し押さえを示唆したことに触れ、国を100年あまり逆戻りさせる措置だと警鐘を鳴らした。〉  
〈 ポターニン氏は金属大手ノリリスク・ニッケルの社長で、同社の筆頭株主を務める。欧米企業や投資家に対して門戸を閉ざせば、1917年の革命以前の混乱した時代に逆戻りする恐れがあるとして、資産接収に関しては極めて慎重に対応するようロシア政府に促した。 
 ポターニン氏はテレグラムに投稿したメッセージで、資産接収に動けば「今後数十年にわたって世界の投資家からロシアに不信感が向けられる結果になる」と指摘した。〉 
 これまで、新興財閥にとってプーチンは、「自分の富を守ってくれる存在」だった。ところが、ウクライナ侵攻後のプーチンは、「資産を没収される原因を作った迷惑な存在」になっている。 
 彼らは、すでにウクライナ侵攻やロシア政府の政策に反対することで、「反逆者」になってしまった。果たして外様新興財閥は、プーチンに黙ってつぶされるのだろうか? 彼らの立場に立ってみれば、プーチン打倒を目指してもおかしくはない。

内部崩壊するロシアメディア
 3番目の支持基盤は、メディアだ。ここでも、大騒ぎが起きている。 
 3月14日、国営テレビ「1カナル」のニュース番組中、同局の女性スタッフ が「反戦プラカード」をもって現れた。そこには、「戦争反対」「プロパガンダを信じないで」「あなたは騙されている」と書かれていた。 
 女性の名は、マリーナ・オヴシャンニコヴァ。彼女は、YouTubeに投稿した動画の中で、「今ウクライナで起こっていることは犯罪だ。ロシアは侵略国だ。責任はプーチン一人だけにある」「1カナルで働き、クレムリンのプロパガンダを行ってきたことは、とても恥ずかしい」「テレビでウソをつくことを許してきたことが恥ずかしい」「ロシア人をゾンビ化することを許してきたことが恥ずかしい」などと語っている。 
 同じように考えているメディア関係者は、少なくないようだ。日本では報じられていないが、ウクライナ侵攻後、キャスターや記者が続々とテレビ局を去っている。 
 たとえばロシアの民放最大手NTVで、ニュース番組「シヴォードニャ」のキャスターだったリリヤ・ギリデェーヴァは、辞職し、即座にロシアから脱出した。国営1カナルでは、在ニューヨーク、在パリ駐在員を務めたジャンナ・アガラーコヴァが辞職した。 
 日本で知られていない名前を列挙しても意味がないので、この辺でやめておくが、とにかく「良心の呵責」に耐えられなくなり辞めるメディア関係者が続出しているのだ。 
 というように、ロシア国内で今、プーチンを支える三つの支持基盤「シロビキ」「新興財閥」「メディア」が、同時に全て揺らいでいる。 
 それでも、仮にロシアがウクライナ戦争に勝利すれば、しばらくはプーチン政権がつづくだろう。だが、世界中からの「地獄の制裁」は解除されず、ロシア経済は沈みつづけていくのだから、先は見えている。 
 ロシアがウクライナ戦争に敗北すれば、当然、プーチン失脚の時期は早まるだろう。プーチンは、ウクライナ侵攻という「歴史的愚行」によって、自ら「墓穴」を掘ってしまったのだ>(以上「現代ビジネス」より引用)




 またしても現代ビジネス誌に掲載された北野 幸伯氏(国際関係アナリスト)の論評を引用した。プーチン氏の支持基盤が揺らいでいる、と北野氏は見ている。まさにその通りだろうが、その原因は捗々しくないウクライナ戦線にある。
 これまでプーチン氏が他国や他地域を侵略しても、プーチン氏の支持基盤は少しも揺らがなかった。むしろプーチン政権に対する国民の支持率が上がって、戦乱を起こすごとにプーチン氏は独裁政権の地歩を固めてきた。いよいよ2024年の大統領選挙で終身大統領をプーチン氏は宣言するとみられていた。つまり「軍事超大国ロシア」の皇帝になる予定だった。

 人は権力者が権力を掌握すれば彼の許に集まり、権力者が落ち目になると彼の許から去っていく。プーチン氏の周辺に集まっている人々に、ウクライナ軍事侵攻したロシア軍の戦況が詳細にロシア国内に伝わっているのか知らないが、少なくともウクライナへ侵攻したロシア軍の戦況が芳しくないことくらいは嗅ぎつけているのではないだろうか。
 未確認情報だが、北からキエフに迫っていたロシア軍(例の車列60㎞という信じ難い愚かな侵攻軍だ)はキエフから15㎞の地点に迫っている、と報じられていたが、昨日ウクライナ軍の反撃にあい、キエフから50㎞の地点まで撤退したという。他の地域でもウクライナ軍の反撃が始まり、ロシア軍が確保していたクリミア半島からウクライナ東南部への連絡拠点もウクライナ軍に奪還されたという。

 他にも未確認情報ではロシア軍が占拠していた空港をウクライナ軍が奪還したともいわれている。ロシア軍は夥しいロシア兵の死体や破壊された戦車や軍用トラックなどを残して、散り散りに撤退しているという。
 残虐な殺し屋軍団としてチェチェンから鳴り物入りで戦場入りした一団はまともに前線へ行くことなく逃げ去ったという。今後シリアで雇用した傭兵たち4万人や、ロシア東部や極東地域からかき集めたロシア兵がウクライナへ補充兵として投入されるだろうが、軍隊としてモノの役に立つのだろうか。

 傭兵はあくまでも傭兵でしかなく、金儲け集団に過ぎない。命を賭してウクライナ軍と白兵戦を演じるだろうか。極東から軍艦に乗せられて回航する軍隊が他の軍の指揮系統に入って、すぐにモノの役に立つとは思えない。
 しかもロシアは「戦力の逐次投入」という、最もやってはならない軍事作戦を展開している。都市を取り囲んで遠距離からミサイルや砲弾を闇雲に撃ち込んできたが、ロシア軍は弾薬やミサイルが尽き果てようとしている。最後の頼みの綱と思う習近平氏に支援を要請したが、どうやら断られたようだ。

 米国はプーチン氏が化学兵器(毒ガス)を使うのではないかと警告しているが、総崩れになりつつあるロシア軍を立て直すことは出来ないだろう。戦略核を使用してウクライナを「ギャフン」といわせようとすれば、反対にプーチン氏がピンポイント攻撃で爆死することになるだろう。精密殺人兵器では米国の方がロシアより遥かに進んでいる。プーチン氏の所在場所は常に米国により把握され、監視されていると思った方が良い。
 プーチン氏が全人類に敵対するなら、全人類の生存のために彼を排除せざるを得ない。全人類が構成する国際機関を設置して、人類はそうした議論をすべき段階に文明が達していることを認識すべきだ。つまり一人の狂人によって具体的な手法で地球が破滅させられる「道具」が人類に手によって製造されているにも拘らず、その狂人を運命を共にする地球上から排除する国際的な取り決めを行ってこなかった。

 事後法になるかも知れないが、先進自由主義諸国は直ちにそうした議論を始めるべきだ。彼が始めた侵略戦争で戦況が悪くなった今、彼は核兵器の使用を仄めかした。彼が任命した外相までも公然と核兵器の使用を「停戦協議」で訪れたトルコで公然と発言した。
 彼らはもはや人類の「仲間」ではない。ともに全人類の幸福を追求する政治家ですらない。自分の欲望を追及するだけの独裁者に成り果てている。

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