病膏肓に入る
<科学者の代表機関「日本学術会議」の会員の「任命」を巡り、政府と学術会議との対立が深まっている。学術会議から推薦された候補全員を「そのまま任命する必要はない」とする政府側に対し、学術会議は過去の政府答弁を引き合いに「首相には会員を選ぶ権利はない」と主張。議論は平行線をたどっている。
「法に基づいて、内閣法制局にも確認の上で、日本学術会議の推薦者の中から首相として任命している」。菅義偉首相は5日の内閣記者会のインタビューで、学術会議から推薦があった候補者105人中6人を任命しなかった問題について、正当性を主張した。内閣府が2018年にまとめた文書でも「推薦の通りに任命すべき義務があるとまでは言えない」との見解を示しており、政府側は学術会議から推薦された全員を任命する必要はないとの立場を取る。
日本学術会議法では、会員について「推薦に基づいて首相が任命する」と規定している。官邸幹部は「推薦されていない人を任命しているわけではない」と法的に問題がないと主張し、「基本的には自主的な判断を尊重し、向こうが推薦した中からやっている。それがけしからんと言うなら、首相の判断に介入しているのは学術会議の方ではないか」と語った>(以上「毎日新聞」より引用)
引用記事で「官邸幹部は「推薦されていない人を任命しているわけではない」と法的に問題がないと主張し、「基本的には自主的な判断を尊重し、向こうが推薦した中からやっている。それがけしからんと言うなら、首相の判断に介入しているのは学術会議の方ではないか」と語った」というから「病膏肓に入る」だ。
そもそも学術会議の判断に官邸が異を唱えることがあってはならない。御用評論家の中には「任命しなくても学問の自由を侵害していない」とか「学術会議の会員になれなくても学問は出来る」と屁理屈を述べて官邸に擦り寄っている者までいるが、恥を知るべきだ。
菅氏が何かの場面で「学術会議に年間予算10億円を動じている。彼らは国家公務員だ」と意味不明な言辞を吐いていたようだが、菅氏の思考構造がいかに貧弱で支離滅裂かよく表している。学術会議に10億円を動じているというが2,000人を超える会員を擁する学者団体に年間10億円の運営費を投じているのは少ないくらいだ。現在は「独立行政法人」と妙ちくりんな名に変えているが、国立大学や私学にも巨費を投じている。そして大学で研究している内容に一々嘴を挟まないのが国家権力のあり方と憲法に定めてある。
また菅氏は国費を投じているから「学術会議」の委員は国家公務員だ、と鬼の首でも獲ったかのような顔をしていたが、国家公務員というのなら国会議員も「学術会議」委員と同じ「国家公務員特別職」だ。だから、どうしたというのか。「学術会議委員」は国家公務員だから行政の長たる総理大臣の配下で「殺生与奪権は自分にある」とでも言いたいのか。バカもここまで徹底すれば見事というしかない。
国家公務員特別職たる国会議員の罷免権が総理大臣にないことは誰でも知っている。同じく「日本学術会議」の選任にを受けて総理大臣が任命する、というカタチを経て日本学術会議委員に就任する。だから「任命権は我にあり」と思い上がるのは法体系のあり様を知らない無知蒙昧の輩の妄言でしかない。まさか日本の総理大臣や官邸の巣食う連中までも無知蒙昧の輩に堕したのだろうか。権力欲に憑りつかれた輩の成れの果てを見ているようで、痛ましいというしかない。
記事にある「内閣府が2018年にまとめた文書でも「推薦の通りに任命すべき義務があるとまでは言えない」との見解を示しており、政府側は学術会議から推薦された全員を任命する必要はないとの立場を取る」との菅氏流の論理を推し進めると、やがて大学などの教授人事まで政府が介入する事態を招来しかねない。
日本の最高裁判所に「違憲立法審査」機能が付与されてないのは憲法の大きな欠陥だ。国会が常に憲法を正しく運用しているとは誰も保証できない。国会議員そのものの劣化が激しいからだ。思い上がった馬鹿が官邸に巣食ってやりたい放題の「解釈改憲」を「閣議」で決定している。それに国会議員が議事を止めて猛抗議するでもなく、愚かな議員の大集団が「違憲法律」を制定して嬉々としている。
それなら憲法改正など不要ではないか。国会で多数を握れば何でも出来る。憲法など画餅以下の存在でしかない。最も憲法を遵守すべき国会がこの有様だ。ついに「病膏肓に入る」でポンクラ総理大臣まで出現した。こんな末期的な国会など、一日も早い総選挙の実施を望む。