消費増税を主張する総裁候補に唖然とする。

 <自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官は10日放送のテレビ東京番組で、現在10%の消費税率について「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民の皆さんにお願いして消費税は引き上げざるを得ない」と述べた。 

 番組にそろって出演した石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長は態度を明確にしなかった。菅氏は「私も引き上げると発言しない方が良いと思ったが、これだけの少子高齢化社会で、どんなに頑張っても人口減少は避けられない」と強調した>(以上「共同通信」より引用)




 これほど愚かな政治家が総裁選本命とは世も末だ。菅氏は「私も引き上げると発言しない方が良いと思ったが、これだけの少子高齢化社会で、どんなに頑張っても人口減少は避けられない」と強調したというから本格的な経済音痴だ。

 経済を成長させるのは人口ではない。幾ら多くの人口を抱えようが、経済が成長していない後進国は世界に幾らでもある。経済を成長させる原動力は生産性向上だ。産業革命を想起すれば簡単に解ることではないか。


 かつて一人で一台の糸車を回して糸を紡いでいた。糸車で糸を紡ぐ限り、生産性は決して向上しない。多く生産するには多くの人を投じなければならない。

 しかし英国で蒸気機関を用いた紡績機が発明された。それにより飛躍的に生産性が向上した。糸を紡ぐスピードもさることながら、一人が一度に十台もの糸車を回す「自動紡績機」を管理すれば良いだけになった。それが「産業革命」と呼ばれる生産性の向上だ。


 菅氏も歴史で英国で発祥した「産業革命」を学んだはずだ。それにより労働力の安価なインドから輸入していた綿織物を、反対にインドへ輸出するほどに安価にして良質な綿織物を製造できるようになった。

 そうした歴史をしっかりと学んで、経済的な因果関係まで考察すれば、財務省の宣伝する「騙しの構図」、つまり「人口減→経済の後退→税収不足→消費増税」という流れがいかに稚拙にして経済原理を知らない者の戯言か、解るはずだ。


 総裁選の他の候補者も菅氏のトンチンカンな「人口減→経済の後退→税収不足→消費増税」論を批判しなかったということで同じ類の愚かな経済理論の持ち主なのだろう。総裁選で誰が当選しようが、日本経済はデフレから決して脱却できない。衰亡のスパイラルを転落するだけだ。

 経済成長なくして財政の立て直しもあり得ない。私は財務省的な財政立直しが必要とは思わないが、少なくとも税収増をもたらすには経済成長以外にはありえない。なぜなら消費増税はデフレ下経済を招きGDPのマイナスをもたらし、結果として税収減をもたらすからだ。


 経済成長させるにはどうすれば良いか。決定的なことはGDPの六割を占める個人消費を活性化させることだ。そのために消費税を廃止して、個人消費を奨励する必要がある。そして個人の可処分所得を増やすためには安定的な収入増を図ることだ。将来不安があれば人は貯蓄に走るからだ。

 つまり安定的な雇用の確保は必要不可欠だ。非正規や派遣労働を幾ら増やしても個人消費は増大しない。正規社員が増えて労働所得が増加しなければならない。そのためには日本の産業全体が生産性向上のための投資を行う必要がある。生産性の向上無くして製造原価の一部を形成する労働所得の増加もあり得ない。もちろん利益分配に相当するボーナスの増額もあり得ない。


 海外へ移転した工場を国内Uターンを推奨する投資補助金や減税策を大胆に実施すべきだ。今回のサプライチェーンを中国から国内回帰を促すために創設した補助金2,000億円は既に申し込みが殺到して、1兆円ほど必要な状態だという。それなら1兆円ほど財政出動すれば良い。それは必ずGDP増として国民の富に還元される類の支出だから、決して無駄ではない。

 「構造改革」で余りに緩和し過ぎた派遣業法を旧に復して、非正規労働を限定的にすべきだ。公務員に派遣労働が入り込み、いつの間にか窓口業務の大半が派遣労働者となく、深刻な労働格差が公務員の職場でも発生しているとは由々しき問題だ。「公務員の守秘義務」を派遣労働者にも求めるのは困難ではないか。そうした安易な「作業外注」が公務員の質の低下を招いているのではないか。


 ともあれ、消費増税に言及する自民党総裁は国民の敵でしかない。「国民の生活が第一」の政治を希求するなら「消費税廃止」を主張すべきだ。そして産業界に対して技術開発や研究開発を促進するための補助金や減税策を実施すべきだ。その原資は法人税を旧に復せば良い。

 そして産業界で投資できない長期的な基礎的な研究・開発は公的な研究機関で行うしかない。そのための文科予算を増額すべきだ。民では出来ない基礎科学分野は当然公的な機関で受け持つべきだ。そうしなければ日本の技術・研究開発の基礎体力が衰えるだけだ。それは日本の未来を暗くする。


 だから本格的な自公政権と対峙する「野党」は経済成長を政治課題の第一に掲げるべきだ。昔、池田勇人氏が「所得倍増」を掲げたように、現代版の「労働所得倍増」を掲げることだ。

 具体策としては上記で論述した各政策を国民に説明すれば良い。そして技術実習制度の廃止や外国人労働移民法の廃止などを提起すべきだ。これ以上、外国人移民を容れては日本国民の文化や慣習が失われる可能性があるだけでなく、中共政府の中国が日本国内に出現しかねない。それは日本の未来に大きな禍根を残すことになる。

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