小沢さん、出番ですよ。
第一次内閣の退陣との「違い」
全く予想しなかったわけではない。しかし意表を突かれた思いがした。同時に計算高さも感じられた。安倍晋三首相は8月28日の記者会見で、体調を理由に辞意を表明した件だ。
退陣表明の一報が流れたのは、この日の午後2時過ぎだった。だが午前の閣議の後、安倍首相は麻生太郎副総理兼財務大臣とサシで30分ほど話し合い、辞意を伝えた。その後、公明党の山口那津男代表など関係要人にも、電話をかけている。
健康問題を理由とするところが2007年8月27日の第一次内閣の退陣と重なるが、両者は大きな違いがある。今回は「放り投げ」ではなく、安倍首相は後継が決まるまで続投する。すなわち「逃げ」ではないということだ。
自民党は9月1日の総務会で、総裁選の日時と開催方法について決定する。報道によると、党大会に代わる両院議員総会が開かれ、現職の国会議員票(394票)に加えて各都道府県連が3票ずつ持つ地方票(141票)で決せられる。党員投票は郵送など事務手続きに1ヵ月ほどかかるため、今回は省略されるようだ。 もっともこうした略式の投票方法について、自民党の小林史明青年局長が主張するような「国会議員と地方議員が同じ票数を持つべきで、党員にはオンライン投票などで投票できる仕組みをつくり、通常の総裁選で選任すべき」との異論もある。
石破氏をはじきだすために
そもそも党員投票を行わない両院議員総会による略式の総裁選の筋書きは、随分前から安倍首相の頭の中にあったと言われている。すなわち岸田文雄政調会長に禅譲したい安倍首相が、ポスト安倍の最有力候補である石破茂地方創生担当大臣をはじきだすために考え出されたものというのだ。 石破氏は2012年9月に行われた自民党総裁選の第1回目の投票で圧倒的多数の地方票を獲得して1位となり、2018年9月の総裁選でも地方票では安倍首相に迫っている。安倍首相はそのような石破氏を事の他嫌い、他の派閥のパーティーには出席して挨拶するものの、石破派のパーティーには顔を出すことはなかったほどだ。
興味深いのは、石破氏には有利だが岸田氏に不利と思われる党員投票を含む通常の総裁選を主張する小林氏が岸田派の所属であるという点だ。小林氏はまた小泉進次郎環境大臣にも近いとされるが、小泉氏は2018年の総裁選で投票先を直前まで明かさないというやり方でマスコミをじらした経緯がある。 というのもこの時、小泉氏は石破氏に投票する意思を投票会場に入る直前に公表し、これで国会議員票を石破氏に集めて自分の影響力を誇示しようとしたが、タイミングが悪くてあえなく失敗。今回はすでに河野太郎防衛相が出馬する場合、支持することを表明している。 そのほか、若手議員によるパーフォーマンスが行われるのかもしれないが、この度の総裁交代の筋書きはもっと深謀遠慮なものなのだ。
新総理に求められる「選挙管理内閣」の役割
というのは新たに誕生する総理総裁に求められるのは、自民党の再出発のために速やかに解散総選挙に打って出ること。すなわち「選挙管理内閣」の役割だ。 これは満身創痍の辞意表明ともいうべき安倍首相の会見を見た時、「これしかない」と感じたことだ。次期衆議院選がすぐさま行われるなら、事実上の“弔い合戦”となるはずからだ。
実際に安倍首相が辞意を表明した直後から、世界各国の首脳から惜しむ声が次々と届いている。31日にはアメリカのトランプ大統領との日米電話会談もセットされた。これから次の総裁が誕生するまでの半月ほどの期間が、安倍政権の花道(クライマックス)となるだろう。 そのレガシーでもって衆議院選を行えば、ある世論調査で「50議席を減らす」とまで言われた自民党が議席を大きく減らすことはないだろう。内閣支持率こそ下落傾向だったものの、もともと自民党の政党支持率はさほど落ちていなかった。しかも護憲派の岸田内閣なら憲法改正賛成派で議席の3分の2以上を占める必要はなく、自公で3分の2以上を維持できればそれでいい。 実際に解散総選挙に向けた「野党潰し」の仕掛けが感じられる。新総裁を選出する自民党の両院議員総会は「9月中旬に開催」と報じられているが、すでに立憲民主党が9月16日に新党結成の党大会を開く予定だが、もし同時期に総裁選がぶつけられたら、多くの国民の関心はもっぱら新総裁誕生に集まってしまうだろう。
立憲民主党にすれば、国民民主党からの合流を急かすために新党への入党期限を9月3日とし、その後に速やかに新代表と新党名を決定し、華々しく新たな出発を飾るはずだった。「国民民主党潰し」のために計算しつくした日程のはずだったのに、肝心なところを自民党に奪われかねない。それではとんでもない計算違いになってしまう。
解散総選挙、10月25日投開票説
そうした筋書きが実現するには、安倍首相の影響が強く反映される新総理総裁が誕生する必要がある。そして速やかに解散総選挙が行われなければならないのだ。
ここでふたたび浮上するのが10月25日投開票説だ。総裁選の後に速やかに臨時国会を開会し、すぐさま解散。新党結成や分裂騒動で十分に選挙準備ができていない野党にとっては、非常に厳しい日程になる。
しかしそれだけで筋書きは終わらない。次の総裁の任期は安倍首相の総裁3期目の満了期、すなわち来年の9月までという点が肝要だ。 来年9月には新総裁の下で党員投票も含めた正規の自民党総裁選が行われることになるが、この時こそ自民党はこれまでの通りに安倍路線を歩むのか、それとも脱安倍路線を歩むのかが問われることになる。
さらに国内外では米中対立問題や極東のパワーバランスの変化、新型コロナ感染症対策や伸び悩む経済問題など、難題が山積するはずだ。そうした問題に対してどうしても解決困難になった場合には、より強いリーダーシップが求められる。1年間十分に養生した安倍首相が再々登板することも、決して不可能ではないはずだ。 そのための余力を残しておくという意味において、安倍首相はこの時点で辞意表明することを選んだのではないのだろうか。政治家というのはそうやすやすと、自分のプライオリティを他者に渡すものではない。
28日の会見では記者からの議員辞職するのかという質問に対し、安倍首相は「有権者が選ぶこと」と否定した。しかし祖父・寛の時代からの地盤であり、現行制度になっても圧倒的な得票数で安倍首相が当選し続けてきた山口県4区が、容易に安倍首相を見放すはずがない。そもそも永田町は伏魔殿。どんなことも起こりうる
>(以上「現代ビジネス」より引用)安倍退陣劇の裏側の人間模様を「現代ビジネス」が読み物として提供している。深謀遠慮で事がなされたようだが、それらはすべて安倍氏による政治の私物化の延長でしかない。
安倍氏には政治を国家国民のために執るという観点は皆無のようだ。すべては個人的な好悪の念に根付くようだ。ことに、石破氏に対する拒絶反応は凄まじい。学校のイジメにも等しい。
しかも今回も個人的な健康問題を退陣理由に挙げているが、前回のような「放り投げ」ではないという。確実に10月25日投開票とする解散総選挙を前提とする退陣だという。それなら安倍氏は解散総選挙を呑む総理が後継総理にならないと困る。残り任期の一年間を居座られては困るからだ。
それならいっそうのこと、安倍氏が解散を打てば良かった。そうすればスッキリする。退陣表明と同時に解散を打てば、自民党は事実上の総裁選を総選挙に被せることにより関心を呼んで総選挙でも圧勝するだろう。そうした総選挙戦略よりも、個人的な石破憎しの念の方が勝ったというべきか。
しかし、そのようなチマチマとした政界劇を演じている時期だろうか。コロナはもとより、米中戦争の真っ只中ではないか。この非常時に、日本は政権与党の総裁選に突入する、という痴態を演じている。
安倍氏の政治家としての適性を最後まで疑わせる。彼は普通の一般人としても好悪の念の激しい危険人物ではないか。既に退くと決めたなら、誰が総理の椅子に座ろうとニュートラルな気持ちで後継争いと距離を置いて臨むべきではないか。
引用記事にある通り、野党連合は一日も急ぐべきだ。結党大会を前倒しして早々と済まし、新党の政治マニフェストを国民に提示すべきだ。そこには消費税廃止と反・グローバル化を鮮明に打ち出すべきだ。
すべては「国民の生活が第一」の政治を行うために新党は結束すべきだ。バカげた政治ゴッコはやめて、真の政党政治を日本に取り戻すために、野党すべての国会議員は小異を捨てて大同につくべきだ。そして、この乱世を取り仕切れる政治家は小沢一郎氏しかいない。