正体見たり枯れ尾花、とは。

山口県岩国市の国名勝「錦帯橋」をバイクで走行したとして、山口県警岩国署は21日、文化財保護法違反の疑いで、同県岩国市南岩国町、建設作業員船橋健太容疑者(40)を逮捕した。
 逮捕容疑は、17日午後6時40分ごろ、岩国市の錦帯橋をバイクで走行し、橋板にタイヤ痕を付着させて汚損するなどした疑い。
 岩国市錦帯橋課によると、同時刻に市民から「バイクが錦帯橋を走っている」と市や岩国署に通報があった。木製の橋板550枚のうち、322枚にタイヤ痕が付着していたという。
 錦帯橋は1922年に名勝に指定。車両の通行は禁止されている>(以上「大分新聞」より引用)




 国の名橋「錦帯橋」をバイクで渡った不埒者が逮捕された。それはそれで良いのだが、犯人が岩国市在住でしかも40才の男だというのが全く残念でならない。
 彼が「錦帯橋」に特別の念を抱いていないとしても彼の責任ではないが、常識として誰もバイクや自動車で渡っていない木製の反り橋をバイクで渡ろうと考えること自体があり得ない。

 それとも自分は特別な存在で、何をしても許される存在だとでも思っていたのだろうか。分別盛りの40男にしてはお粗末だ。
 しかし、昨今の「迷惑運転」などを見ると、自分は特別な存在だと思い上がっている人が多いのだろうか。そうした人は古来より一定数いたのか、それとも昨今になって突然澎湃と湧き出したのだろうか。昨今になってワンサカと湧きだしたとしたら、その原因は何だろうか。

 私たちは偶々生かされて、今の時代を生きている。私たちの存在のためには数えきれないほどの先祖がいて、無限の彼方とも思える地球の歴史を経て、私たちの命が一つの結実として地上に存在している。
 そして私たちが生きている時間は経過して、すべては虚空となって未来の人たちがこの地上で生きていく。いわば私たちは先祖から継承したDNAを未来へと運ぶ「容れ物」に過ぎない。もちろん文化や歴史遺産もしっかりと継承して、未来へ遺さなければならない。

 錦帯橋をバイクで渡ったバイク氏が岩国市在住の40才なら、錦帯橋の歴史的価値を充分に承知して、それを語り部として子々孫々に伝える役回りになるべきではないか。錦帯橋の故事来歴の一つや二つくらい即座に語って聞かせられる蘊蓄を備えていて良いはずだ。
 橋板に付けたタイヤ痕は容易には消えないだろう。彼は岩国を形成した先人の業績を貶めただけではなく、タイヤ痕に汚された錦帯橋を見続けなければならない岩国市民の誇りまで棄損した。もちろん文化財を棄損した罪は厳格に問わられるべきだが、それ以上のことを仕出かしたという認識をバイク氏は生涯持ち続けなければならない。

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