オンライン化を利用して憲法改正を進める悪巧みを批判する。

<新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、永田町でインターネットなどを使ったオンライン審議が注目されている。国会内での「3密」回避の有効な手段として、自民党の若手議員らが積極的に導入を提言している。ただ、憲法56条は議員の出席を求めており、早期実現は見通せていない。

 「憲法で規定している『出席』はどういう意味なのか。もっと議論を深めていくべきだ」

 自民の若手議員でつくる「コロナを機に社会改革プロジェクトチーム」の古川康衆院議員は14日、緊急提言を党幹部に提出後、記者団にこう問題提起した。

 新型コロナの感染拡大を受け、ブラジルや欧州連合(EU)など海外の議会では、電子メールなどを用いた「遠隔投票」を取り入れる動きが活発だ。緊急提言も議場や委員会室に行かずにネット中継の視聴などを出席とみなすことや、法案採決のオンライン投票の実現などを求めている。

 遠隔投票はこれまでも国内で議論されてきた。自民の小泉進次郎環境相らが国会改革の一環で、昨年の通常国会で妊娠・出産前後の女性議員を対象とした遠隔投票を目指したが、実現しなかった。憲法56条は「総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と明記しており、「憲法との関わりがあり慎重な議論が必要」(森山裕国対委員長)と指摘する声が少なくなかったためだ。

 オンライン審議の導入を強く要望している一人に難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を患うれいわ新選組の舩後靖彦参院議員がいる。人工呼吸器を手放せない舩後氏は「感染症にかかると命に関わる」として一時国会を欠席。3月18日の文教科学委員会では「緊急事態で1カ所に集まることが難しい際には誰にとっても有用だ」と述べ、オンライン審議の意義を訴えた。

 新型コロナの収束が見通せない中、国会では「柔軟性を持つべきだ。『これでなければだめだ』では国会の審議が進まない」(参院ベテラン)と容認論も広がりつつある。国難を機に、憲法の壁に阻まれていた国会改革が進むのかが注目される>(以上「産経新聞」より引用)



 「新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、永田町でインターネットなどを使ったオンライン審議が注目されている」という。ただ憲法の国会審議の規定で「本会議主義」を採っているため、国会議員は国会に出席して議案を決しなければならない。
 だから憲法改正が必要だ、という議論は早計に過ぎる。国会本会議に出席して決議する必要がある、としている憲法を改正する必要が本当にあるだろうか。

 実は各委員会は憲法の「本会議」主義にない運用規定だ。だから新規に「環境委員会」などを憲法を改定することなく新設できる。同じように委員会決議も運用規定でオンライン化することは不可能ではない。
 しかし問題がある。国会内の委員会審議では委員長が「非公開」とすれば記者たちは入れないし、委員の賛成を得て「秘密会」とすれば委員各位は審議した内容を秘匿しなければならない。

 オンライン審議でそうした事が可能なのか。委員会審議ですら現行の運用が制限されることになりはしないかオンラインで果たして委員会の「非公開」や「秘密会」を実施できるのか。
 本会議主義では議員は必ず本会議に出席して決議を行わなければならない。そのため決議に入ると議員の出入りを禁じて「議場閉鎖」する。オンラインでそうした措置と同等のことが果たしてできるのか。何よりも、オンラインで議員は何者にも規制されない自由な意思で議論し決議することが出来るのか。

 現状の党規に縛られて投票を行う本会議を見てオンライン化を議論してはならない。党規に縛られているから本会議に出席していようとオンラインであろうと頭数を数えれば良いだけではないか、という論は暴論に過ぎるだろう。
 国会議員は誰もが国民の負託を受けている。たとえ比例当選であろうと、党規に縛られるべきではない。しかし現実は党に縛られて個々の議員が党決定通りの評決を行っている。そこに自由な議論が存在しているのだろうか。党優先の現行国会のあり方こそ議論されるべきではないか。

 国会改革がオンライン化に特化されては議論の幅を狭めるだけだ。国会が政党に助成している「政党助成金」存在が党を個々の議員よりも優先させて、憲法に保障されている自由な議論を蔑ろにしてはいないだろうか。
 議会のオンライン化よりも自由闊達な議論が保障される運用に改める方が先決だ。自民党内に存在する消費税廃止を主張する議員諸氏が他の政党の消費税廃止を主張する議員たちと党横断的に手を組めるようにする方が必要ではないだろうか。「党」が個々の議員の議論を封殺する現行運用のあり方こそ問題視されるべきではないだろうか。

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