「財政規律論」という大嘘を暴くMMT理論。
<「財政赤字は問題ない」という米国生まれの新理論が話題になっている。「Modern Monetary Theory」、略称「MMT」といい、日本語では「現代金融理論」「現代貨幣理論」などと訳される。
同理論提唱者の米学者が日本のアベノミクスが実例だと主張し、国内でも論争に発展している。その背景とは。
MMTは、通貨発行権を持つ国家は紙幣を印刷すれば借金を返せるのだから、財政赤字で国は破綻しないと説く。実際には通貨を発行する中央銀行が国債を買いいれるということだ。提唱者であるニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授は「民主社会主義者」を自称するバーニー・サンダース上院議員のアドバイザーで、民主党左派が医療保険など低所得者支援や環境対策のため財政支出を拡大するべきだという主張の理論的根拠になっている。
不況の時に国債を発行して公共事業を拡大して景気を回復させるという「ケインズ経済政策」はいくらでも例があるが、これは短期的政策で、ケインズ自身も、景気が回復して税収が増えたら国債の借金を返すと言っている。
MMTが単なる財政出動と違うのは、長期的に財政赤字を続けてもいいということだ。といっても、いくつかのポイントがある。まず、国債を発行するという時、自国通貨建てというのが大前提だ。アルゼンチンなどの途上国の例を見るまでもなく、ドル建て債券を国際市場で発行し、自国経済が悪くなって返済できなくなり、債務不履行になることがありえるからだ。そう考えると、基軸通貨国であるアメリカのほか、国債を国内で消化できる日本などはMMTが可能ということになる。欧州連合(EU)のユーロ圏は、各国が自由にユーロを刷れないから、ギリシャのように財政破綻状態になりうるので、MMTはできない。
もちろん、お札をバンバン刷ればインフレになるというのが経済学のイロハで、MMTも、「インフレとならない限り」と前提条件をつける。ただ、MMT論者は、簡単にハイパーインフレは起きないし、兆候があれば財政を正常化すればいいと主張し、そもそも通貨発行と課税によって秩序ある財政赤字を続けられると考える。課税については、財政を賄う面とともに、再配分(格差是正)や温暖化防止といった政策誘導の道具として積極的に位置づけてもいるのは左派らしい一面だ。
この話が日本に飛び火した。ケルトン教授が「日本はMMTを実証している」と言っているというのだ。確かに、日本の国と地方の長期債務残高は2019年度末にGDPの2倍規模の1122兆円に達する見込みで、日銀が異次元緩和を始める前の2012年度末の1.2倍に膨らんでいるが、消費者物価(生鮮食品を除く)は2018年度も0.8%の上昇にとどまり、財政赤字と低インフレが見事に共存している。
財政法は戦時インフレの教訓から日銀による国債の直接引き受けは禁じているが、日銀は異次元緩和の6年間で計350兆円の国債を市中で買い増しており、実質的に新規発行の国債を丸ごと引き受けているのと同じで、「お札を刷って政府の財政赤字穴埋め」というMMTを地で行く形になっているともいえる。
MMTは国会でも取り上げられた。財政支出に積極的な自民党の西田昌司参院議員が4月4日の参院決算委員会で質問に立ち、「日本はこの20年金利も物価も上がっていない。いつの間にかMMTをやっている」と指摘。安倍首相はMMTを否定しつつ、「確かに(アベノミクスの柱である異次元金融緩和をやったら)国債は暴落し、円も暴落すると言われた。実際は、国債の金利は下がり、円が暴落したわけではない」と応じ、満更でもない様子だった。「安倍政権は消費税増税を2度延期し、財政健全化目標も先送りするなど、財政再建には積極的とは見えないことも、安倍首相とMMTの親和性を感じさせる」(大手紙経済部デスク)面は否めない。
もちろん、財務省は警戒していて、麻生太郎財務相は「財政規律を緩めると極めて危険なことになりうる」と国会で答弁し、黒田東彦日銀総裁も「財政赤字を考慮しないというのは極端な主張でなかなか受け入れられない」と、懐疑的だ。
MMTを巡る議論が日本でヒートアップしてきた背景に、10月に消費税率アップを控えていることがあるのは間違いない。安倍政権は今のところ、予定通り実施する構えだが、景気が曲がり角に来ているのも確か。景気動向指数は「悪化」のサインを発し、1~3月のGDP統計も内需の弱さを浮き立たせる中、「このまま消費増税を強行することになれば、2014年と同様の景気に大きなマイナスになるのは必至」(エコノミスト)との見方もあり、安倍首相の経済政策のブレーンとされる本田悦朗・前駐スイス大使は消費税の引き上げ凍結を首相に進言している。増税して景気が腰折れするようなことになれば、「だから財政再建を気にせず赤字を増やせばよかったのに」ということになりかねない。
とはいえ、経済運営は国内外の景気動向や為替、金利、財政状況などの総合的な組み合わせの上にある。MMT論者が「インフレになりそうなら増税や金利を引き上げればいい」と言っても、ひとたびインフレに火がつけば、止めるのは簡単ではないし、無理に止めればショックは大きい。自国でお札を刷って赤字を賄うから大丈夫といっても、日本経済が変調をきたせば海外投資家が債券市場や株式市場から資金を引き揚げ、資金の海外流出で円安が進み、輸入インフレという痛みを被る可能性もある。
にわかに注目が高まる「MMT」。その評価が定まるには、まだ時間がかかりそうだ>(以上「Jcastニュース」より引用)
MMTを簡潔に説明した記事がJcastニュースにあったので引用した。米国からやって来たMMT(現代金融理論)は予てより私たち極めて一部の者が主張していた「金融理論」そのものだ。
その概要は「家計簿」と「国家財政」は異なる、という単純明快な理論だ。政府・財務相は「日本には1000兆円を超える借金があり、日本国民一人一人が830万円の借金を負っていることになる。だから消費増税して財政規律を取り戻して借金を返済しなければならない」という珍妙な詭弁だ。
しかし、そのことを日本のマスメディアは大真面目な顔をして国民に「神の御信託」のように報じて、すっかり信用させてしまった。解説番組の「そうだったのか~」でも、政府・財務省の代弁者役を果たしていたのには怒りすら覚えた。
彼らが「国家財政」と「家計簿」とが本当に同じだと考えているのなら、彼らはもう一度程度の良い大学の経済学部に入りなおすべきだ。そして貨幣発行権を有する国家財政と家計簿とは根本的に異なることを基本から学ぶべきだ。
そもそも貨幣を大量発行すればインフレになる、というのも誤りだ。需要と供給の関係からインフレは論じるべきだ。貨幣は日銀の「借用証書」に過ぎない。つまり国民から借りている証書だ。いかに借用証書を乱発したとしても借用証書の価値が下落するわけではない。
それを実証したのが、まさに異次元金融緩和を続けている日本だと、米国の経済学者はMMT理論の正しさをあげている。日本こそがMMT理論の実証国だというのだ。財務省は恥ずかしくないのだろうか。
だから米国の経済学者は「日本は消費増税すべきではない。むしろ消費税をなくすべきだ」と助言している。総需要不足に陥ってデフレ化経済で「不況」になっているのだから、総需要を創出する「財政出動こそすべきだ」と彼らは主張する。私も全く同感だ。
インフレは需要と供給の関係で起きる。インフレになると手が付けられなくなる、というが、日本円が現在でも高水準で安定しているのはなぜだろうか。それは経済基盤がしっかりしているからだ。
まず、日本を取り戻すには「構造改革」をやめて、日本企業の生産性を向上させ、労働分配率を上げて労働者賃金を引き上げるべきだ。それには外国人労働移民など決して実施してはならない。
つまり安倍自公政権の政治の真逆を実行すれば日本は良くなる。安倍自公政権の政治こそ亡国の政治だから、だ。災害劣等の日本国土を強靭化するために公共事業予算を出せば良い。年金支給最低額も生活保護費を上回る水準に引き上げるべきだ。財源は法人税を元に戻し、富裕層への課税を強化すれば良い。もちろん配当なども総合課税に戻して、課税すべきだ。当然、消費税は廃止して、消費拡大を目指すべきだ。
私たちの主張が荒唐無稽なものでないことは米国からやって来たMMTでもお解りだろう。財務省や幇間・評論家たちの妄言にこそ騙されてはならない。