電話首脳会談の漏洩と「国民の知る権利」

＜韓国で、野党議員が国家機密である文在寅（ムンジェイン）大統領とトランプ米大統領の電話協議内容を暴露したとして議論が起きている。康京和（カンギョンファ）外相は２５日、現役外交官の関与が疑われるとして、徹底調査と責任追及を表明。一方、議員側は「国民の知る権利のための正当な行為だ」と反発している。

　きっかけは文政権と対決姿勢をとる最大野党、自由韓国党の姜孝祥議員が、今月７日にあった米韓首脳電話協議の内容を記者会見で暴露したこと。文氏がトランプ氏に対し、今月下旬に日本を国賓訪問する際に「少しでも韓国を訪れてほしい」と懇願したとの内容で、物乞いのような外交と批判した。

　これに対し韓国外交省は、駐米韓国大使館の外交官が議員に協議内容を伝えた疑いがあるとして内部調査を始めた。韓国メディアによると、この外交官は議員の高校、大学の後輩。事実なら５年以下の懲役か１００万円以下の罰金に問われる可能性があるという。与党は地検に議員の告発状を提出した。

　対応の背景には、米国の信頼を損なうことになれば、北朝鮮政策などで緊密な情報共有ができなくなるとの懸念があるとみられる。議員が所属する自由韓国党は「政治活動を阻み、公務員の口を封じる違法調査だ」と猛反発している＞(以上「朝日新聞」より引用)


　国民の知る権利とはいかなるものか、と考えさせる「事件」が韓国で起きている。野党議員が国家機密である文在寅（ムンジェイン）大統領とトランプ米大統領の電話協議内容を暴露した、というのだ。
　首脳の電話会談に関与しているのは通訳とその場にいた者たちだけだ。だから韓国政府が首脳会談の内容を野党国会議員に漏洩させたか、を特定するのはそれほど困難なことではない。

　漏洩した内容とは文大統領がトランプ氏に電話会談で「今月下旬に日本を国賓訪問する際に「少しでも韓国を訪れてほしい」と懇願した」との内容だという。まるで物乞いのような外交だと批判したというが、西洋人はいざ知らず、東洋人なら「近所までお越しの節には是非ともお寄りください」と社交辞令で述べるものだ。
　野党国会議員は鬼の首でも取ったかのように、文大統領の「物乞い外交」だと批判したようだが、それは国民の知る権利とは相容れない。国民の知る権利は国家間の政治においては国益との見合いで判断されるべきだ。トランプ大統領も韓国大統領との「電話会談」はその内容が漏洩する可能性がある、と思えば滅多なことは言えなくなる。

　韓国は重要な局面にある、と韓国の国会議員諸氏は認識しているのだろうか。もとより、日本と同様に韓国一国だけでは独立を保つことは困難だ。それは軍事力だけではなく、貿易や国際協調でも然りだ。
　世界の友好国と協力し合いながら、そして敵対国との融和を模索しながら政治を行う責任が政治家には求められる。与野党の対決はあくまでも国家の利益のために行う「コップの中の嵐」でなければならない。政府そのものの信用を失墜させる行為は断じて許されるものではない。

　韓国の独立は米国軍を主体とする「連合軍」の支えによって成り立っている。韓国単独の軍事力で北朝鮮の軍事力とその背後に存在する中国軍を相手にすることは不可能だ。
　そして連合軍の「兵站」として日本の米軍基地が機能していることを忘れてはならない。つまり日米の支援があってこその韓国の独立だと、韓国民は認識していなければならない。当然、韓国の政治家諸氏はそうした現実認識を持っていなければ韓国の政治に関与する資格はない。

　韓国の野党政治家が文大統領を批判するのにも自ずと「限界」と「節度」がなければならない。それは韓国の「国益」と「独立国家の国体保持」に反しないものでなければならない。韓国首脳と米国大統領との関係を棄損する言動は厳に慎むべきだ。そこに「国民の知る権利」などという「三文マスメディア」のような戯言をいってはならない。