高力ネジの不足が鳴らした警鐘に、日本国民は謙虚に耳を傾けるべきだ。

<今秋開催されるラグビーワールドカップで会場の一つとなる「えがお健康スタジアム」(熊本市)で、大型ビジョンの鉄骨土台の建設が止まっている。原因は業界が「まさか足りなくなるわけがない」と思っていた小さな部材、ねじにある。

 橋や高層ビル、細長いオフィスビルなどの鉄骨をつなぐ鉄鋼製の高力(ハイテンション)ボルトと呼ばれるねじの不足が、全国各所で工事を遅延させているのだ。

 不足は昨夏ごろから始まった。10~11月時点では、高力ボルトを扱う会社の8割以上で工期に影響が出ていた(国土交通省の調査)。そこで、年末に国交省が買いだめを控えるよう業界に要請したが、改善に時間がかかっている。

 国内にはボルトメーカーが十数社あり、商社や問屋を通してゼネコンに供給される。平時では、先々の分を注文する方法と、問屋が持つ在庫を供給するルートがあるが、後者の在庫がなくなっている。本来は発注から1ヵ月半程度で届くはずが、半年近く待たされるケースも出ているのだ。

 部材の調達力がある大手や準大手のゼネコンは「発注を前倒ししているので工事に影響はしない」と口をそろえる。実害の中心は中小ゼネコンや、他業界の会社が自前で納入工事をする場合だ。
● 職人不足が問題に拍車

 不足の背景は、東京オリンピック・パラリンピックの関連工事や、都市部を中心とした再開発の増加で鉄骨の需要が高まったことにある。「建設用に加工する鉄鋼全体が、約2年前から不足している」(鉄鋼大手の社員)のだが、なぜ、こと高力ボルトで問題が深刻なのか。

 建設業界の人手不足に対処すべく行われた建設の工法変更が不足に拍車を掛けたからである。

 コンクリートを流し込むための型枠を作る職人が足りないため、柱や梁など建物の骨組みの製作は、コンクリートを鉄筋で補強した構造材を使う鉄筋コンクリート(RC)造りから、鉄骨(S)造りに変え、工期短縮を図るケースが増えている。これが裏目に出た。

 S造にすると、高力ボルトが必要になる。その需要増に対応し切れなくなったのだ。

 逼迫に伴い、代表的な型の価格は昨年11月以降に上昇し、1組当たり約3%増で高止まりしている。公共工事の完成が集中する3月に向けた需要のヤマはすでに越し、今後は在庫状況の改善が予想されるが、ねじに翻弄された。

 職人不足が元になった部材の不足は、鉄の表面を覆う耐火被膜でも同様に起きている。建設投資は2010年を底に増加しているが、1992年をピークに“失われた18年間”で他業界に人材が流出し、若手の採用を絞ったことは業界の大きな痛手となっている。
工法や調達を工夫するものの、急激に高まる建設需要に対して綱渡りする状況は当分続きそうだ>(以上「週刊ダイヤモンド」より引用)


 日本の基礎体力が弱っているようだ。高力ネジというなんでもない部品にも日本の技術が詰まっている。その高力ネジが不足して建設などの工事現場が止まる、という信じられない現象が起きているという。
 なぜそうなったのか。経営者が安易に「正社員」の採用を抑えて、利益を優先したためだ。現場で技術の継承が行われないまま、工員などが高齢化した。それは何も高力ネジだけの分野に限ったことではないだろう。

 同様の現象が職人不足が元になった部材の不足は、鉄の表面を覆う耐火被膜でも同様に起きている、という。技術は人によって存在し、人によって継承される。その肝心の人の採用と育成を怠れば技術は簡単に失われる。それも極めて短期間に。
 週刊ダイヤモンド誌もかつては国際分業を煽ったクチだ。1990年台のバブル崩壊時にマスメディアはこぞって企業の日本脱出を煽った。業界誌も例外ではなかった。

 そして技術立国日本の空洞化が進んだ。生産していても、その多くが海外工場という現状は危険だ。日本の技術は日本国民で継承されなければ意味がない。海外で教えた日本の技術者が日本国内で後継者を育成していなかったら、海外で教えた技術者たちが退職したら日本からその技術が失われる。
 日本は素晴らしい、と褒め殺しのようなテレビ番組があるようだが、「人を蹴落とすのに批判は必要ない。盛大な拍手だけで良い」とはけだし箴言だ。「日本は素晴らしい」テレビ番組の制作者たちは日本を蹴落とすための陰謀ではないかと思えるほどだ。

 むしろ「週刊ダイヤモンド」のように警鐘を鳴らすことこそが必要だ。日本は政治のみならず官僚も企業も劣化している。そしてマスメディアは戦前から伝統的に腐り切っている。
 高力ネジの不足が鳴らした警鐘に、日本国民は謙虚に耳を傾けるべきだ。

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