すべての核保有国は核なき世界を実現する責任がある。

<ポンペオ米国務長官は1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約について破棄通告を発表、2日から義務履行を停止すると明らかにした。「核兵器なき世界」に逆行する動きで、軍縮の行方には不透明感が漂っている。条約違反を巡る対立に加え、中国が条約に縛られずにミサイル開発を進めてきたとのトランプ政権の懸念が背景にある。

 条約は2日の正式通告の6カ月後に失効する。記者会見したポンペオ氏は、ロシアが条約違反によって「欧州や米国の人々を危険にさらした」と批判。「ロシアが根本的に態度を変えることを望む」と述べ、6カ月以内に違反を解消するよう要求した>(以上「共同通信」より引用)


 米ロ中距離核戦力(INF)廃棄条約が実施されていないといって、米国が破棄通告を発表した。すべての人類の安全にかかわる核なき世界を実現する第一歩として歓迎された条約だが、米国のトランプ氏はロシアがINFに反して超音速ミサイル開発をしているし、INFに参加していない中国がミサイル開発を続けているとの懸念を表明していた。
 米・中・ロの軍産共同体はいつまで危険な「核ゲーム」を続けるつもりだろうか。ミサイルや核開発を続けて、その先に一体いかなる「夢」を夢見ているのだろうか。実に愚かというしかない。

 米・中・ロは軍事大国だが、軍事力に比して国民福祉は恐ろしくお粗末というしかない。国家は国威発揚に勤しんでいるが、国民は税負担に喘いでいる。いったい三ヶ国の政治家たちはいつの時代を生きているのだろうか。
 彼らは中世の軍事力が国力という時代錯誤の中にあるようだ。しかも核兵器は「悪魔の兵器」で核ミサイルを一旦撃ち合えば世界は滅亡する運命にある。人類のみならず、すべての地球上の生命は死滅することになる。

 一体何を求めて、三ヶ国は核を保有し、遠距離核攻撃を可能にする核搭載ミサイル開発に血眼になっているのだろうか。まさか何処かの国を核攻撃で滅ぼして世界を手中に収める、などといった餓鬼大将の発想に捕らわれているのではあるまい。
 腕力で相手を支配するには痛めつけた相手も生きていなければ意味がない。しかし核兵器を使用すれば相手が決定的な打撃を受けるだけではない。相手の国土は放射能で汚染され、武により領土を奪っても進駐も利用も出来ず、それは戯言でしかない。

 核兵器は膨大な予算を食い潰す。核兵器の原料の中核をなすプルトニュウムも核兵器に組み込まれても絶えず崩壊し続け、十数年で威力は半減する。つまり数百発から数千発も保有する米・中・ロは新しいプルトニュウムを絶えず精製補給し、古くなった核兵器を廃棄し続けなければならない。
 ミサイルも一度配備すれば永遠にもつものでもない。精密機器と鉄の塊に過ぎないミサイルは完成と同時に劣化の一途をたどる。微細なロケットエンジンの噴射ノズルなどは最も劣化速度が速く、地下サイロに格納していれば高湿度により数年にして錆を発生するだろう。つまりミサイルも配備すれば終わりではなく、絶えず生産ロットを稼働させて古くなったミサイルを入れ替えて更新しなければならない。

 これほどの無駄を米・中・ロ各国の国民は負担していることを理解し是認しているのだろうか。それでも国連などで世界に大きな顔をする自国が誇らしいのだろうか。何とも馬鹿げてはいないだろうか。
 人類は何のために生存しているのだろうか。他人を奴隷として使役し、怠惰にして裕福な暮らしを送るために生きているのだろうか。数えきれないほどの部屋数の豪邸に暮らし、山海珍味に飽食して美酒に酔うために生きているのだろうか。そんな人生にどれほどの意味があるというのだろうか。

 長年教員として共働きして、定年退職したいまは潤沢な共済年金を頂戴して毎月のように海外旅行をしている、と自慢するご夫婦と会ったことがある。話を聞いていて胸糞が悪くなった。
 勤労者平均所得を上回る「年金」を老人夫婦が頂戴して何になるというのだろうか。そして死を待つばかりの老夫婦が世界旅行を毎月のように出掛けて、見聞を広めて何になるというのだろうか。なぜ長年の教員経験を生かして、地域の子供たちに何かを教えるボランティアに尽くそうと思わないのだろうか。

 海外を旅行して見聞を広めるのは若者にこそ必要だ。海外の日本とは異なる慣習や文化に触れるのは若者にこそ必要だ。日本の未来を担う若者が貧困化して、海外旅行どころか婚姻すらままならないという。こうして日本は衰亡の一途をたどるしかない状況にある。
 米・中・ロの三ヶ国はその老夫婦と似た状況にある。世界を支配するに十分な軍備を保有して国民を貧困化させ、決して使用できない核兵器を大量に保持して世界人類に核戦争の脅威を与え続けている。迷惑千万な振舞いに世界の人類が眉を顰めているのが解らないのだろうか。

 米・中・ロの軍産共同体に関りのない国民もこぞって自国が世界を破壊し尽くす核兵器を保有していることが誇らしいのだろうか。恰もロシア国民が北方領土は「戦争」の戦利品だと信じ込まされているのと同じように、米国民も広島・長崎への原爆投下はジェノサイトではなく、戦争を早期終結させるために必要だったと信じ込まされているように、中国民がそれまで大陸国家で海洋進出などついぞして来なかった国家が南シナ海に岩礁を占拠して軍事基地を建設する中共政府に拍手喝采しているのだろうか。
 彼らは軍産共同体に支配されている国家・政府がそれぞれの国のマスメディアを使って国民を洗脳し軍産共同体なかりせば他国により侵略されると信じているのだろうか。確かに自国防衛のための軍備は必要かもしれないが、自国防衛戦争には決して使用されない核兵器の保有を、各国民はいかにして正当化しているのだろうか。

 INF全廃条約は気に反対する。そして米ロだけではなく、中国や他の核保有国も核軍縮のテーブルについて、核廃絶に向けて真摯に話し合い実効性のある核廃棄へ向けた歩みを進めるべきだ。
 人類は決して文明的な世界を構築しているわけではない。狂気に満ちた核兵器に囲まれた世紀を生きている。それは戦争で領土を奪い合った中世的な愚かさの段階とは比較すべきもない。
 世界のすべての人類が共通認識として、核廃絶を希求するなら必ずや「狂気の世紀」を終わらせることが出来る。その第一歩を歩み出す立場に米・中・ロの指導者たちは立っているのだが、最初の一歩を踏み出せないでいる。なぜなのか。

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